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NO.1013 亡くなった父が契約した新聞を解約したい


投稿者 Iさん  投稿日時 2011.4.30 PM 10:08


亡くなった父が契約した新聞を解約したいと、AとMとY新聞に問い合わせたのですが、全て取り合ってもらえませんでした。

さらに、その家に家族が住んでいるならば解約出来ないと、言われました。

半ば、脅しに近い感じで、どうしても解約したいなら、契約時に渡した洗剤などのお金を払えと言われました。

家には、私の妹が一人で住んでいます。収入もほとんど無く生活にも困っています。

この場合、どの様に対処したら良いのか、アドバイス頂ければと思います。

よろしくお願いします。


回答者 ゲン


お父さんが亡くなられたとのこと、お悔やみ申し上げる。

それにしても、『亡くなった父が契約した新聞を解約したい』と言うておられるのに、『全て取り合ってもらえませんでした』というのは何ちゅうこっちゃねんと思う。

そんな鬼みたいなことを言う販売店ばかりが揃っとるのは、一体どこの地域のどこの販売店たちや。できることなら、ここでその販売店名を公開して晒してやりたいくらい腹が立つ。

ワシらの方では、そんなことは考えられんことや。普通は契約者が死亡して、ご家族がそう言えば「仕方ない」とあきらめるもんや。

まして、その理由が『その家に家族が住んでいるならば解約出来ない』というのでは、アホらしいて話にもならん。

ワシも、そちらに余裕があるのなら、「お父さんが好きで読んでおられた新聞やったら、契約を全うするまで、供養と考え取ってあげたらどうや」と言うこともある。

そんなことで揉めたら、お父さんも草場の陰で悲しむのと違うかなと言うてな。

しかし、『AとMとY新聞』の3紙もあり、妹さんが『収入もほとんど無く生活にも困っています』という状況なら、そうしたくてもできんというのはよく分かる。

それにしても、その販売店たちは、契約というものの本質が、何も分かっていないとしか言いようがないな。

法律的にも新聞の購読契約というのは、その新聞販売店と契約者個人の間でのみ有効なもので、その家と新聞販売店との間で結ばれるものやない。

そんな契約なんか、この日本には存在せん。バカなことを言うにも、ほどがある。

その契約の責務を負うのは、あくまでもその契約をした本人や。家には何の関係もない。

まあ、これについては昔から新聞販売店の人間は、新聞はその家に配るもので、個人に配っているわけやないという思い込みが強いからやけどな。

しかも、その思い込みが正しいと信じとるわけや。始末が悪い。

たいていの新聞販売店には、弁護士などの法律顧問がついとるばずで、新聞社の研修でも法律的な指導もしとるのやから、その程度のことは教えとかなあかんと思うがな。

亡くなられたお父さんの契約を唯一、引き継かなあかん場合が考えられるのは、夫婦関係にあるお母さんだけや。

その場合なら、民法第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)の、

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責に任ずる。

というのに該当する可能性がある。

つまり、夫婦が普段生活する上で購入したもの、あるいは契約したものについては、例えその一方が、その事実を知らなかったとしても、それを共有していれば、同等の責任、債務が生じるというものや。

新聞購読契約についての判例は、今のところまだないが、新聞購読は日常家事債務に該当すると考えられるさかい、その可能性が高いと思われる。

しかし、それが親子の間ということになると事情は違うてくる。親がした契約の責任を子供が取る必要はないし、逆に子供が勝手にした契約の責任を親が被ることもない。

もし、その必要があるのなら、それぞれが別途、その契約に対して連帯保証人になっとる場合くらいや。それがないということは、その責務もないということになる。

百歩譲って、その新聞購読契約をお父さんの債務と見なした場合、お父さんに何らかの遺産があって、その相続を子供がしているのなら、その債務も引き継がれるやないかと主張する者もおる。

確かに、相続というのはプラスの財産だけやなく、負の遺産も引き継ぐということになっとる。その意味で言えば、債務も引き継がれると考えるのが普通や。

しかし、これにも問題は多い。

あんたの相談文から、少なくとも、お父さんにはその家に住んでおられる妹さんと、あんたの二人の子供さんがおられるということになる。他にもご兄弟がおられれば、当然ながら、それぞれの相続分に対して債務が引き継がれることになる。

つまり、その家に住んでおられる妹さんが、そのすべての債務を引き受けるいわれはないということや。ご兄弟、それぞれにその債務とされる新聞購読契約の義務が生じるものと考えられるわけやさかいな。

しかし、その新聞購読契約をお父さんの債務と見なした場合の財産分与などしてないやろうから、誰が引き継ぐかは決まってないはずや。

ここで一つ提案やが、それらの販売店の営業区域外に、ご兄弟の誰かが住んでおられれば、その人が「私がお父さんの契約を引き継ぐことになっている」と、それらの新聞販売店に言うこともできる。相続人全員の合意の上でな。

もちろん、あんたが、それに該当するのなら、あんたでもええ。

その場合なら、「どうしても、その契約を続行したいのなら、そちらの販売店から、その債務を引き継いだ私の家に新聞を配達してほしい」と言うことや。

新聞販売店には、宅配制度というのがあって、その地域で配達できる新聞販売店は一店舗と決まっている。つまり、その営業外に権利が移動するということは、引っ越しするというのと同じ事になると考えられるということや。

それらの販売店は、営業区域外への配達ができんわけやから、必然的に契約不履行の状態にならざるを得んということになる。

そう主張するだけで、その契約は自然消滅するしかない。

妹さんには、「その新聞の契約はお兄さん(お姉さん)に権利があるので、そちらと話してください。私は知りません」と、それらの販売店に告げるように言われたらええ。

もちろん、それを宣告するのは、あんたでもええがな。

中には、それでも「引っ越し先の販売店で取って貰う」と強行に迫る販売店の人間もいとるが、それは契約権利保持者のあんたが、「嫌」と言えば、どうにもならんことやさかい心配せんでもええ。

先ほど、『法律的にも新聞の購読契約というのは、その新聞販売店と契約者個人の間で結ばれるもの』と言うたが、実際そのとおりで、何人と言えど、それに介入することは許されんわけや。

もちろん、新聞社であっても、それはできん。というか、新聞社が介入してくることなど絶対にないと断言できる。万が一、そういうことがあれば、それはそれで大問題になる。

よく一般購読者は、新聞購読契約は新聞社と交わしていると誤解する人がおられるが、それは違う。新聞社は、公式にも購読者個人との契約事には一切関与しないというスタンスを取っているさかいな。

それをよく知らない一般購読者の人で、販売店に「引っ越し先の販売店で取って貰う」と言われると「仕方ない」と考えるというケースがあるようやが、それを拒否しても一向に差し支えないということや。

もちろん、法的にも何の問題もない。

ただ、その契約の続行を断るのであれば、お父さんが、それらの契約時に貰った『洗剤』などのサービス品は返還する必要がある。

これはいかなる契約の解除であろうと、それを希望する限りは、先に利益供与された分に対しては返還の義務が生じるというものや。

これに関しての法律には民法545条の原状回復義務というのが、それに該当する。

まあ、これについては、法律云々の問題やなく、その契約を守るつもりがないのなら、明らかに受け取ったと分かるサービス品は返しとくべきやと思う。それを拒否する正当な理由は何もないさかいな。

その意味で言えば、『どうしても解約したいなら、契約時に渡した洗剤などのお金を払えと言われました』というのは、あながち無茶な主張やないということになる。

それで、すべて終わるというのならな。ただ、『お金を払え』というのは、貰った品物は品物で返せばええわけやから、何も金に換算して返すだけが方法やない。同じメーカーの同じ品物を買って返すのでもええ。

ただ、そうするのが面倒とか、それらの販売店がそうすることによって難癖をつけるという危惧があるのなら、取り敢えず、あんたの方は「貰った物は返しますので、そのために必要なお金はどれくらいになるのですか」と、それらの販売店に聞いてみることや。

その返答で、あんたの方が納得できる額であれば、それを支払って終わりにすればええし、納得できんようなら、その内訳を教えて頂ければ、それに即したアドバイスをさせて貰う。

いずれにしても、そちらのケースで『解約出来ない』ということはないから心配する必要はないと言うとく。

ただ、そう言うくらいの販売店たちの中には、『半ば、脅しに近い感じで』と、あんたが感じられたように、実際にもタチの悪い対応をしてくる者がいとる可能性もあるから、今後のやり取りをする場合、念のため何か録音できるものを用意して交渉することを勧める。

言うた言わんの水掛け論を避ける、あるいは本当に脅迫を受けるような言動をされた場合の対処を有利にするためにもな。

これまでのアドバイスで、たいていは上手くいくはずやが、そうならんかった場合は、何度でも相談してこられたらええ。相手の出方次第でいくらでも対処法はあるさかいな。


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