新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1017 新聞購読料の集金パートの労災事故について


投稿者 Sさん  投稿日時 2011.5.10 PM 1:32 


謹啓 時下益々ご清栄のことと存じます。

突然、失礼いたしますが、私はある新聞社の関連企業で社会保険労務士として働いているSと申します。

宜しくお願い申し致します。

さて、以前より疑問に思っていることですが、新聞購読料の集金のみ(月末集金の方です)のパート(パートといえるのか、請負なのか)で、就労時間が不規則、つまり、自分の都合の良い時間帯で集金してよい。又支払形態が1部幾らというような完全歩合の方は、労災の適用を受けられますか?

個人営業になるのでしょうか?

私はこのケースでの労災申請はまだしたことが無いのですが、聞いたところでは、実際、ある販売店でこのようなケースで申請したところ、労基署(労働基準監督署)にはねられたそうです。

現在、労基署ではどのような見解をもっているのでしょうか?
                                             敬具


回答者 ゲン


まずはじめに、ワシは一介の拡張員にすぎず、管理人のハカセも一般人で法律の専門家やないと言うておく。

そのワシらに、こういう質問をされるというのは、お門違いとまでは言わんが、もっと法律家としての矜持を持って先にあんた自身で調べられたらどうかと思う。いくら法律についてもっともなことを言うてる記述が多いサイトやとしても、あんたから見たら所詮、ワシらは素人なわけやさかいな。

もっとも、ワシらに、どの程度の法的知識があるのかということを推し量るために、こういった質問をしたというのなら、それはそれで分からんでもないがな。

丁寧な文面からは、それは感じられんが、社会保険労務士を名乗っておられるにしては、あまりにも単純すぎて、どうにも解せん質問やったから、ついそう考えたわけや。気を悪くされたら謝る。

ワシらは現在、いくつかの新聞社、特に販売部の人間に煙たがられているということがある。そのためか、ある新聞社販売部では系列の販売店関係者や従業員に、ワシらのサイトとの接触を禁止しとるという所まであると聞く。

その詳しいことは、当メルマガの『第148回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞社がHP『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』を危険視する理由とは?』 にあるので、暇なときにでも読んで貰えたらと思う。

ちょとした被害妄想に陥っとるのかも知れんが、そういう意図での質問なら逃げるわけにもいかんから答えさせて頂く。

また、『新聞購読料の集金のみ(月末集金の方です)のパート(パートといえるのか、請負なのか)で、就労時間が不規則、つまり、自分の都合の良い時間帯で集金してよい。又支払形態が1部幾らというような完全歩合の方は、労災の適用を受けられますか?』というのは、実際にこの業界では、そういう方も数多くおられるので、あんたの質問に答えることで、その人たちのためにもなるさかいな。

しかし、そうは言うても答は単純や。

新聞販売店と個人的に「新聞購読料の集金のみ」の請負契約になっとるのなら、外部委託ということになり従業員とは認められんから、当然のように労災の認定は受けられんということになる。

これは、フルコミでの請負契約専門の拡張員にも言えることで、実際、そのために労災認定が受けられんかったというケースは、いくらでもあるさかいな。

労災の認定は、従業員であろうがパートであろうが、その企業に「雇われている」という雇用形態がしっかりしとる場合に限られる。同じ拡張員であっても、新聞の営業会社である新聞拡張団と社員契約をしていれば労災は適用されるということや。

要は、その雇用形態で決まるということやな。こういうのは、あんたら社会保険労務士さんにとっては常識やないのかなと思う。

当然『労基署の見解』も、それが基準になっとることやと。それ以外に、『労基署にはねられる』要素はないはずや。

実は、あんたからの質問が単純やと知りつつも、社会保険労務士さんからの質問ということで、慎重を期す意味で、当HPの法律顧問をして頂いている今村英治先生に、今回の件を問い合わせたところ、えらくご立腹されておられた。

今村英治先生は、あんたと同じ社会保険労務士の資格も有しておられるさかいな。

その言葉をそのまま伝える。


まずはご質問のお答えですが、集金業務の実態の説明があまりにも簡略過ぎて厳密に100%正しいとは言い切れないものの、「請負」以外の何物でもなく、労災を受けられないのはそりゃあ、当たり前なんじゃないの??

というのが私の単純明快かつ率直な感想です。

それにしても、この人物はいったい何を考えているのでしょうか??

社労士の誇りを持ってより専門的な立場で、労働基準監督官の見解を聞けばいいのでは??

私自身も判断に迷うような時は、懇意にしているベテラン監督官の意見を聞き、その上で、自分の法解釈を重ねて、対策を講じます。

労働法のプロたる国家資格者である社労士が、なぜ、労災のことで、一般の方であるハカセさんやゲンさんにお聞きするのでしょうかね?

甚だ疑問です。

司法試験や税理士試験に受かっただけの人に対し、弁護士とか税理士といった呼称を用いませんし、社労士登録していない有資格者が「社会保険労務士です。」と言いきることは社会保険労務士法違反になりますから、この質問者は勤務社労士として登録している人なんだと思います。

自分のクライアントに対しての営業行為は行えませんが、自分の関わる勤務先の業務に限定して社労士業務を行うのが勤務社労士ですから、不明な点については、しかるべき行政機関に対して正式に打診するのが筋かと思います。

私などは社労士業務を生業としているだけに、疑問点をネットを通じて安易に解決しようとする姿勢はいかがなものかとこの人の甘さを感じてしまいました。


と、かなり辛辣なご意見やが、ワシも同感や。

もっとも、先にも言うたように、ワシらを推し量る、値踏みの意味があったのなら話は別やがな。

あんたの質問以上に、ワシらとしては、あんたの意図の方が疑問に思えてならん。何でこんな質問をされたのかと。


そのワシの疑問に対して、相談者の方から、すぐに返信があった。


投稿者 Sさん  投稿日時 2011.5.11 PM 3:04


早速、回答いただき、非常に単純すぎる質問にもかかわらず、お手間を取らせていまいハカセ様、今村先生に対しお礼を申し上げます。

さて、『集金だけをする人』にとって新聞購読料はエリアも決まり、集金先の受持ちも決まっており、その日集金した分は事故があってはいけませんので、その日その都度、必ず販売店に寄り領収書控と集金金額を経理に渡すのが義務。

一見、請負のようにみえますが、時間が自由という以外では結構拘束される場面もあるようです。

例えば、顧客から販売店へ「今月の集金、今日の何時に来てください。待っています」と電話があり、その旨集金人に連絡して集金人が伺う。

又、請負であれば自前の自転車を使うべきところ、販売店所属の自転車を使って集金する。というような多少販売店に依存している面もあります。

電力会社のメーター検査人や、ヤクルトおばちゃんのように全く一個人経営の実態とは少し違うようなところが気になっていました。

また、多くの販売店主は労災にさえ入っていれば、どんな職種でもカバーしてくれると思い込んでいる店主もおり、労災を受けられる業態か労災を受けられない業態を整理して明確に線を引いて説明したかったのです。

一般論として労基署に確認はしたことはあるのですが、個々の事例はその都度実態を確認してからですね。とあいまいな返答でしたので、もう少し何か事例をお持ちであればとハカセ様にすがってしまった訳です。

安易に甘えてしまった点、お詫びします。私なりに研究整理してから新聞集金人の業態についてまとめてみようと思います。叱咤ありがとうございました。


コメント ゲン


ワシらに対してどの程度の法律知識があるのかを推し量るための、値踏みの意味があって質問してきたのやないかというのは、どうやら「ゲスの勘ぐり」 やったようや。

大変、申し訳ない。ここに深くお詫びする。

『もう少し何か事例をお持ちであればとハカセ様にすがってしまった訳です』ということやが、集金専門の人からのそういった労災事案の相談というのはサイトにはまだ寄せられとらんから、悪いが、「それはない」としか言いようがない。

ただ、あんたがそこまで考えて、今回の質問をされたということに対しては正直、頭の下がる思いがした。

論語に「下問を恥じず」というのがある。

孔子さんは僅かでも疑問が生じた場合、例え相手がどんなに学識のなさそうな人間であろうが、聴くべき知識を持っていると判断すれば、身を低くして教えを請うようにしたとのことや。

これは、なかなかできることやない。

ワシらが、『社会保険労務士ともあろう人が、何でその分野のことを素人に質問するのか』という程度の疑問については、あんたも先刻承知されていたはずや。

たいていの人は「沽券(こけん)に関わる」と考え、それはせん。あんたも、それなりに葛藤もあったと思う。専門家が素人に聴く話なのかと。

あんたも、おそらく、あんた以外の人が同じように「専門の法的知識」について素人に尋ねているという事実を知れば、今村先生同様「もっと社会保険労務士としての誇りを持てよ」と憤っておられたやろうと思う。

少なくとも、「仕方のないことや」とは考えんかったはずや。

それでもご自身の疑問を僅かでも払拭できる可能性があるのならと、敢えてワシらのような素人に教えを請うた。得られるかどうかも分からん答えを求めて。

頭が下がると言う所以(ゆえん)が、そこにある。

その意気に感じてというわけでもないが、前回の質問で突っ込まなかったことにも少し言及したいと思う。

『一見、請負のようにみえますが、時間が自由という以外では結構拘束される場面もあるようです』というのは、それを拘束と取るか、決まりと取るかで、まったく違うてくる。

ご存知のように請負業務というのは、その仕事の期日、成果というのが重要視される仕事や。いついつまでに、これくらいの成果を上げてくれたら、これくらいの報酬額を支払うということでな。

『その日集金した分は事故があってはいけませんので、その日その都度、必ず販売店に寄り領収書控と集金金額を経理に渡す』というのは、その期日を守り、成果を確認するための作業の一環やと言える。

『例えば、顧客から販売店へ「今月の集金、今日の何時に来てください。待っています」と電話があり、その旨集金人に連絡して集金人が伺う』というのも、その請負業務として起こり得る仕事の条件ということになる。

『又、請負であれば自前の自転車を使うべきところ、販売店所属の自転車を使って集金する』というのも、単に仕事の発注先が請負業者に便宜を図ったというだけのことで、そういうのは世の中にはいくらでもある。

ワシは『電力会社のメーター検査人や、ヤクルトおばちゃん』のことは良う知らんが、あんたの弁やと『一個人経営の請負仕事』になるようや。

そうやとしたら、その人たちも日々の仕事の成果報告が義務づけられ、電力会社やヤクルトの営業所から支給された自転車やバイクに乗って仕事しとるわけやさかい、新聞の集金人と何ら変わりがないと思うがな。

それに、そういったことを言い出せば、フルコミの拡張員は、もっと拘束時間も長く、日々の確認作業の多い仕事やのに、請負扱いにしかなっとらんということになるんやで。


拡張員について業界関係者である、あんたに説明するのも何やが、一応しとく。

フルコミの拡張員は毎日、新聞営業会社である拡張団に出社し、そこで点呼、朝礼を受けた後、団から指定された販売店に赴く。

そこで、その販売店のバイクや自転車を借り受ける。これについては業界として、そうせなあかんという決まり、不文律のようなものがある。当然、そのための乗り物の手入れや保険の加入義務も販売店側にあるとされている。

団や販売店、拡張員個々の事情によっても違うが、たいていは入店後、8時間程度で、その仕事の成果をそれぞれの販売店に持ち寄り報告し、その確認を受けて報酬額が決定する。

外見上、および実態として、どこからどう見ても「雇用されている従業員」としか言いようのない状態であっても、フルコミの拡張員は個人事業者としてしか扱われんわけや。

当然のように労災保険の対象外になる。

これについての詳しいことは、サイトの『ゲンさんのお役立ち情報 その1 労災についての情報』 にあるので目を通して貰えたらと思う。

労災が適用されるか否かというのは、前回の回答でも言うたが、その雇用形態がすべてやと言うことや。

「従業員、パート契約」であれば労災が適用され、「請負契約」やと適用されない。

それに尽きると言うしかない。

『多くの販売店主は労災にさえ入っていれば、どんな職種でもカバーしてくれると思い込んでいる』のであれば、正式に従業員、パートとして雇っているかどうかが、その分岐点になると説明したらええだけの話やないかなと思う。

「従業員、パート」というのは、月の報酬額がほぼ決まっているが、「請負」の場合は一定していないというのが一般的とされとる。

しかし、現実には、集金人は、ほぼ決まった顧客に集金に行くさかい、毎月の報酬額も大差ないのが普通や。

外見的には、正規の従業員はともかく、パート扱いのアルバイト配達員と同じようなもんやと言える。ちなみに、パート扱いのアルバイト配達員の場合でも、1部配達する毎にいくらという報酬設定になっとるわけやけどな。

それでも、その違いが生じるのは、パート扱いのアルバイト配達員の場合は、月払いの報酬額がほぼ一定している雇用契約になっているのに対して、集金人にはその取り決めがなく「出来高払い」にしとるからやと思う。

そうやとすれば、その販売店が、集金人に労災の適用をさせたいのであれば、その集金人が1ヶ月間に得られる報酬額を月給として支払うとする「パート従業員」としての雇用契約を結べばええということになる。

その違いがあるからこそ、その労基署も『個々の事例はその都度実態を確認してからですね』と言うてるのやと思う。

つまり、一般的な口頭での請負業務やなく、「ノルマ付きの月給契約のパート従業員」として契約書を交わした上で雇えば、その問題は解消されるのやないかな。

これは拡張員にも言えることで、「ノルマ付きの月給契約」の営業社員として団に雇われとる場合には労災は適用されるさかいな。

せやから、販売店の店主には『どんな職種でもカバーしてくれると思う』のであれば、「すべて同じ雇用形態にしなさい」と指導すればええだけの話やないかな。

これも、あんたに対しては今更なことやが、労基署のような役所には、契約書などの書類が優先するから、すべての職種の従事者との間で雇用契約書を作成することにより働く者を守ることができるということを、その販売店の店主に教えてあげることやと思う。

もっとも、あんたの仕事はそこまでで、その先どうするかは、それぞの販売店店主に任せるしかないがな。


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