新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1034 転居通知の条件どおりにしなければいけないのでしょうか
投稿者 Cさん 某新聞販売店店長 投稿日時 2011.6.21 PM 1:57
はじめまして。いつも拝見させていただいております。
早速ですが1つお伺いしたい事があります。私は兵庫のとある販売店の店長をしてるのですが、先日近隣の販売店より転通(転居通知)が流れてきました。
その契約内容の期間が固定で毎年1月にVISA券を渡すと記載されたものでした。(金額は1万円らしいのですが記載はされていませんでした。)
当方の販売店は正常化のため、この契約は受けられない旨をお客様に訪問し説明した所、『契約書に(全国どこへ転居されても契約は継続されます)と書いてあるじゃないか』と言われました。
この場合うちは毎年1万円ずつ出さないといけないのでしょうか?
お忙しいとは思いますが、早めにご教授お願い致します。
回答者 ゲン
『この契約は受けられない』ということなら、業者である新聞販売店側、つまりあんたが、その契約を断っても法律的には何の問題もない。
新聞購読契約というのは、購読者と配達をすることになる新聞販売店との間でのみ交わされるもので、その一方が契約の締結に難色を示す、あるいは不承知の意志を伝えれば不成立になるのは、「契約事」の基本や。当たり前やが契約は双方の合意が必要やさかいな。
今回のケースは、『転通(転居通知)が流れてきました』ということやから、その客は『近隣の販売店』の配達エリアから引っ越して来たことになる。
以前の販売店の営業エリア外に引っ越しをする場合、一地域一店舗という宅配制度があるために新聞の配達が不可能になる。そういう状態を不可抗力による「債務不履行」という。
引っ越しする場合は、その時点で一旦契約が解除される。そして、新に引っ越し先の新聞販売店と契約を結ぶということに法律上はなる。
今回の場合は、その時点で契約を拒否するということになるわけや。
ただ、この業界には、その転通(転居通知)システムというのがあり、顧客の利便性のためにという趣旨で引っ越し先でもその新聞が購読できるサービスが一般化されとる。
その客が『契約書に(全国どこへ転居されても契約は継続されます)と書いてあるじゃないか』と言うのは、あくまでもサービスとして行っているもので義務化されとるわけやない。
そのあたりの誤解がある。
もっとも、その客がそれを義務化されていると信じ込むのも無理のない話で、『全国どこへ転居されても契約は継続されます』とあれば、誰でも現在の条件のまま契約が継続されるものと考えるさかいな。
この文面を正しく表記するのなら『全国どこへ転居されても契約の継続が可能になります』という風にせなあかんが、これやと、引っ越しする場合は契約を解除してもええのかと考える顧客が現れて困るということで、いかにも「決まり事になっている」と受け取れる書き方をしとるのやと思う。
そういう書き方になっとるから、今回のようなケースになると揉めるわけや。
賢い新聞販売店の場合やとそれを回避する目的で契約書に『お知らせ』と題して、次のように書かれている。
【お引っ越しの際】
お引っ越し期日、新住所が決まりましたら、当店にお知らせ下さい。当店より新住所担当の店舗に連絡致します。
と。
これなら、あんたのようなケースでも、それほど揉めることはないわな。「連絡は受けましたが、以前の条件での契約は当店では受けられません」と言えば済む話やさかいな。
その転通(転居通知)というのは、どこから回ってきたのかな。その『近隣の販売店』 から直接なのか、この業界でありがちな新聞社経由で回ってきたのやろうか。
それによって、その対処には若干の違いが生じる。
普通、直接であれ、新聞社経由であれ、まずその条件を、引っ越し先の受け入れ店であるあんたの店に打診して、その可否を確認するもんやけどな。
そうすれば、あんたの店では「それはできん」とその時点で断ることができた。
またその理由として、『当方の販売店は正常化のため、この契約は受けられない』という正当な言い分があるわけやから、『近隣の販売店』 も、あんたの店の意向を確かめて、その旨をその顧客に伝えておかなあかんかったということや。
この問題で、あんたが、その引っ越しして来た顧客に『この契約は受けられない旨をお客様に訪問し説明』する必要などなかったと思うがな。
今回の場合、最も責められなあかんのは、あんたの店に何の条件も知らせないまま、その転通(転居通知)をしてきた『近隣の販売店』や。
その『近隣の販売店』に、もっとちゃんと確認を取ってから転通(転居通知)してくれと言うても筋が通る。新聞社経由の場合、その条件をそのまま添付するとも考えられんが、もし、そうやとしても断る理由は正当なものやから、そうしても問題はないはずや。
まあ、そうは言うても、そういう状況になってしもうた限りは、あんたのところで、その客を納得させるのが、一番事が丸く収まってええやろうがな。今更、その『近隣の販売店』と揉めても事がややこしくなるだけで、結果に大差はないやろうとも思うしな。
今回の場合は、その客に『新聞購読契約というのは、購読者と配達をすることになる新聞販売店との間でのみ交わされるもの』、『以前の販売店の営業エリア外に引っ越しをする場合、一地域一店舗という宅配制度があるために新聞の配達が不可能になる』、『引っ越しする場合は、その時点で一旦契約が解除される。そして、新に引っ越し先の新聞販売店と契約を結ぶということに法律上はなる』という説明を、まずすることや。
その上で、「本来でしたら、以前のお店とは解約になるわけですから、お客様は、その契約の際に貰った商品券を返さなくてはなりませんよ」と言う。
これは、民法545条の「原状回復義務」というのがあるためで、契約を解除する場合は、受けたサービスは返還する義務があるとなっとるからや。
もっとも、これは、その『近隣の販売店』が、その客にそう請求した場合で、あんたから、わざわざその連絡をする必要はないと思う。別にしても構わんが。
要するに、「このまま揉めると困られるのは、お客様ですよ」と暗に知らせるわけや。
それでも『契約書に(全国どこへ転居されても契約は継続されます)と書いてあるから守れ』、「それは契約違反や」と強引に迫るようやったら、「確かにその文面だと契約不履行、契約違反に問われる可能性があるかも知れません。しかし、契約不履行、契約違反があったとしても、それに関する最大のペナルティは、契約者がその契約を解除できる権利が得られるだけの話ですよ」と、突っぱねればええ。
事実、契約者にはそれ以上の権利、例えばそれに伴う慰謝料みたいなものは発生せんからな。たまに「損害賠償訴訟をする」という人がおられるが、それはしようにもできんということや。
もちろん、あんたの店でその客の契約がどうしても必要というのなら、その条件を呑んで契約してもええがな。それはそちらの自由や。何度も言うが、契約はお互いが納得して結べばええ話やさかいな。
いずれにしても、その客は、その商品券が目当てなら、あんたのところの新聞は断るやろうし、そうではなく、その新聞に愛着があるのなら、あんたがちゃんと説明することで、納得して、あんたのところの条件で契約するやろうと思う。
宅配制度で、あんたのところの新聞は、あんたの店からしか宅配できんのやさかいな。その客にすれば、その新聞を契約して読むか、そうしないかの二者択一しかないわけや。
そう言うて、その選択を委ねたらええ。
そうすれば、苦しいながらも、『確かにその契約書には、全国どこへ転居されても契約は継続されます、と書いてありますが、それは条件次第、お客様次第ということになります』という言い方も可能になると思う。
しかし、それにしても、その『近隣の販売店』とやらが、ええ加減やと、いらんケツ拭きをさせられて損やわな。次からは、そういう話があった場合は、客の所に行く前に事前に良う確かめとくことやと言うとく。
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