新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.104 日本ではインターネットの普及と新聞の購読者数には関連はあるのでしょうか


投稿者 ウチクラさん 米国 シアトル在住 投稿日時 2005.5.23


サイト見ました。情報量が多いので、読みがいがあります。変な質問ですが、インターネットを使う人たち、米国ではジェネレーションXとよばれる人たちは、新聞を読まないと言われています。実際はどうなんですか? 

インターネットの普及と新聞の購読者数には関連はあるのでしょうか。専門家の意見をお聞きしたいです。


回答者 ゲン


専門家と言われても、ワシは拡張員やからな。まあ、現場というか読者と直接、接しとるということで言えば、そう言えるかな。

少なくとも、どんな新聞社の人間よりかは、ワシら末端の者の方が読者のことは良う分かっとると思う。新聞販売店の人間も含めてな。

そういう意味では、専門家と胸張ってええのかも知れんな。そう思うと、何か急に偉うなったと錯覚しそうや。

ハカセの話からすると、あんたは米国で仕事をされて長いようや。そういう意味では、現在の日本の状況というのが気になるやろと思う。ましてや日本の新聞の事情となると、分かりにくい分、尚更やわな。

あんたの質問の『インターネットの普及と新聞の購読者数には関連はあるのでしょうか』と言うことやけど、これは一見、簡単な質問のようやけど、結構、奥の深い問題や。簡単にこうやとは言い切れんことが多い。いろんな要素が絡み合うとるからな。

まず、これは、あんたにとっては常識的なことかも知れんが、日本でのインターネット人口の推移は、平成10年頃は3000万人程度と言われとったのが、平成12年には4700万人を超え、平成17年には8500万人突破は確実やと言う。つまり、今年やな。

これは、パソコンの普及率以上に携帯電話の普及率がかなり影響しとる。日本では、今やインターネットは携帯電話で見る時代で、そういう人間がかなり増えとるさかいな。インターネットが手頃に見られる環境になってきたわけや。

このサイトも、その携帯電話で見ることが出来るからな。もっとも、データの多いページがあるから全部やないけどな。

しかし、それも、すぐ解決つくのと違うかな。近い将来、少々のデータのあるサイトもその携帯電話で閲覧可能になるやろ。すでにそういう機種もあるようや。ワシのは違うけど。

インターネットの急速な普及は、間違いなくこの携帯電話の影響が大きいと思う。パソコンだけではここまで伸びてないやろなと思う。

ワシのような機械音痴にとって、パソコンは扱いにくい代物やけど、携帯電話は誰でも普通に使うとるからな。今や、どんな年寄りでも持っとる。

この前、田舎で拡張してたら、田んぼの真ん中で農家のおっちゃんが普通に携帯電話で話してたし、休憩しとる時は「孫にメール送るねん」てやってたからな。

今、話題の有名なIT企業の社長がテレビで「携帯電話はパソコン」やて言うてたけど、その通りやと思う。

米国では、そのインターネットの普及に比例して新聞は見んようになって行っとるようやが、日本ではちょっと事情が違う。

日本では新聞各社の発表する発行部数が、そのまま実購読部数にはならんということがある。それには、日本の新聞業界の陰の部分である押し紙の問題があるからやと言える。

発行元の新聞社と、その販売を請け負う販売店との間には、絶対的な力の差がある。販売店は新聞社にその経営の生殺与奪を握られとる。

米国のように委託販売ではないわけや。その新聞が売れようが売れまいが、その新聞販売店に割り当てた部数を押しつける。文字通り押し紙ということになる。それが、新聞社の言う発行部数や。

せやから、日本では、現状の再販制度のままやと新聞の極端な発行減は起こり得ないということになる。売れへん部数は販売店が自腹で買い取るしかない仕組みになっとるからな。

そして、その押し紙の比率は販売店毎に違う。一律性というものがない。余計にその実態が掴みにくいというわけや。

それなら、その実態を明るみに出したらどうやという意見が起きるやろけど、新聞業界では表向きはそういうことは存在せんことになっとる。少なくとも新聞社サイドからすればな。

あくまでも、表向きの新聞部数の発注は販売店側からということやからや。新聞社は、その要望に応じとるだけやとなる。実状は全くその逆やけどな。

ある販売店がそのあまりの押し紙の負担に耐えかねて新聞社を相手どり裁判を起こしたことがあるが、結果は販売店側の敗訴や。

裁判所も最初から押し紙の存在そのものがないものとして判決を下しとる。その裁判官が例え2.3日でもええから、どこかの新聞販売店にお忍びで行って探れば、そういう実態はすぐ分かるんやが、日本の裁判所は書類でしか判決は下さんからそういうことになる。

不条理やが、それが日本の実状なわけや。何ぼワシらが、押し紙みたいなもの常識やんけ。どこでもやっとることやと言うてもしゃあないわけや。

ただ、ワシの、過去、百数十店舗の販売店に出入りした経験で言わせて貰えれば、間違いなく押し紙による水増し部数がそのすべての販売店で存在していたから、新聞社による販売部数の発表はあてには出来んと思うということや。

普通に考えたら、これだけインターネットの普及があれば、米国並みの年10パーセント減という新聞販売の異常な下げ幅はないとしても、確実に部数は落ち込んどるはずや。

しかし、不思議なことに日本では、そうなってない。そういう発表やないという現実があるということや。

ただ、あんたへの答えとしたら、それだけでは不十分やと思う。米国では新聞を買うことは、新聞を読むということに直結するやろうけど、その点でも日本は違う。

日本では、新聞は読まんけど買うてる人間というのが圧倒的に多い。これも、確かな数字を掴むことは出来んから、ワシの長年の感触ということでしか言えんが、新聞をまともに読んどる人間は、ええとこ1割から2割程度やないかと思う。

日本で一番多い購読者というのが、単なる惰性でというやつや。長いこと新聞を購読しとるから、それがなかったら寂しいというやつやな。単なる見栄や体裁というのもあるやろ。

次に多いのが、新聞本紙以外の情報、つまり地域のチラシ情報を欲しがる主婦連や。これも馬鹿にならん。

このチラシというのも、単に情報というだけやなしに、それをこまめに集めれば、結構な割引なんかの特典が得られる場合がある。

スーパーや百貨店なんかのチラシにはそういうのが含まれとるのが多い。それが、新聞を購読することで得られるということや。

そして、何と言うても、新聞の売り上げ部数を支えとるのは、ワシら拡張員の存在があるということや。

ここでも、米国と日本の違いがある。米国では必要でないものはまず買わん。しかし、日本では必要でない物でも買う人間がおる。そこには、ワシら拡張員の存在がある。

個人的なつながりが出来るとそれだけで、契約することがある。日本の営業員はそういう営業をする。特に新聞営業は、その売り込む新聞の善し悪しを全面に出しての営業はほとんどせん。

営業員である拡張員自身を売り込む。あんたやから契約するんやという客を掴むわけや。それが営業と思うとる。

そして、何よりワシら拡張員から新聞を購読すると得すると思うとる客も結構多いということもある。拡材と言うてサービスの景品を欲しがるわけや。これも、馬鹿にならん数いとる。おかげでワシらも仕事になり、めしが食えるわけやけどな。

更に、無読と呼ばれる新聞を全く読まん層がこれに続く。これはあんたの質問の『インターネットを使う人たち、米国ではジェネレーションXとよばれる人たちは、新聞を読まないと言われています。実際はどうなんですか?』ということに対する答えになるが、無読層の大半はインターネットをしとる。

ワシらへの断り文句のほとんどが「インターネットでニュースを見る」やからな。ただ、ワシの感触やと、まだまだ全体から言うと少数や。確実に増えては来とるがな。

逆にインターネットもするが、新聞も購読しとるという人間の方が多いのやないやろかと思う。

実際、日本のエリートサラリーマンほどそういう傾向にある。インターネットをしてN紙を読むというか、購読しとるということが、一つのステータスのように思うとるところがあるからな。

それら、すべてを含めて米国での考え方からすると、日本のそれは不合理この上ないことのように思うやろけど、そういう実態もあるということを知っておいて欲しい。

最後に、新聞の暗部の面ばかり強調したみたいやけど、当然ながらその社会的役割も大きいということを補足しとく。

日本の新聞社は、バックボーンの是非は別にしても、その組織力と経済力に裏打ちされた取材能力は、世界でも群を抜いとると思う。

当サイト発行のメールマガジン『新聞拡張員ゲンさんの裏話 第23回 取材で分かる新聞の良さ』でも話したが、インドネシアのスマトラ島沖地震による津波被害に遭遇した読者からのメールにその取材の重要さが強調されとった。

また同じくメールマガジン『新聞拡張員ゲンさんの裏話 第21回 年の終わりに』の中で新潟中越地震の復興にボランティアで参加されてた読者からのメールで、有事の際の新聞の重要性を認識させられたこともある。

それまで、ワシも新聞は時間の問題でいずれはインターネットにとって代わられると思うてた。しかし、このことで、あながちそうとばかりは言えんと思うようにもなったということや。

少なくても日本においてはまだ、新聞はあらゆる面からも必要なものやと思う。その暗部にはいくつかの問題があったとしてもな。
 
ワシの結論を言うと、日本においてはインターネットの普及によって新聞購読に影響を及ぼすことは現在の状況ではあまりないと思う。あっても少ない。

極端に言えば、いくらインターネットが普及しても、新聞の衰退はない。それは、共存共栄とは違う。日本では、新聞を支える土壌があるということや。ええ土壌かどうかは別にしてな。

日本で新聞の衰退が起こるとすれば、それは再販制度の廃止があり、米国と同じく委託販売制に移行した時やろと思う。


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