新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1106 死んだら仕方ない、で終わらされた契約に憤りを感じています


投稿者 Mさん 大阪在住 某新聞販売店経営者  投稿日時 2012.2.10 PM 6:01


自分は大阪で販売店主をやらせてもらってます。

時折、「ゲンさんの嘆き」を拝見させていただき、たくさん学ばせてもらってます。

今回、初めて質問させていただくのですが、先日お客様よりこういった旨の電話がきました。

「主人が死んで、引越しするから24年1月末で止めて欲しい」と。

なので、こちらとしては「転宅先で取ってもらえませんか? もし無理ならサービスした分の残り契約分を返していただいてキャンセルとさせていただきます」と言った内容でお話ししました。

このお客様は「平成22年10月から5年間、最初の6ヶ月が無料でビールと米20`という内容です。

さらに止め押しで、平成27年10月から5年間、最初の6ヶ月無料でしょうゆ、調味料、サラダ油という内容の契約もあり、どちらもご主人のサインです。

24年2月から止めるとなると残り契約が44ヶ月になり、73パーセントの率になります。

22年から半年サービスした分(3925×6=23550)と平成27年からのギフト分(12000)を足して73%が25950円になり、この金額が解約金になりますとお伝えしたところ「息子と相談してまた連絡します」とのことでした。

そして2月に入っても連絡が無いのでそのまま新聞は配達し続けました。結局引越しはせず2月から別の新聞と契約してはりました。

つい先ほど、お客様から電話があり、「その契約書の字は主人の字じゃない!なんで2万も払わないといけないのか!!おたくらはヤクザか!!」と言った内容の罵詈雑言を浴びせられ、しまいに「消費者センターに電話する!!」と言って電話を切りました。

そして、しばらくしてすごく落ち着いた声で「主人が死んだら無条件に解約出来ると言ってたので、明日から止めて欲しい」という電話がお客様からかかってきました。

自分は「一度こちらでも確認したいので電話先と担当者の名前を教えてください」と言い聞いた電話番号にかけると「新聞公正取引協議会事務局」に繋がりました。

担当の人に話を聞くと「契約者が死んだ場合、新聞に関しては無効になる。御宅の本社の偉いさん方もそれを認めていますよ」との回答でした。

こちらのQ&AのNo.1078に書かれていた「民法第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)に、

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責に任ずる。

という規定がある。一般的に、新聞の購読契約は『日常の家事』に当たると考えられるから、この法律が適用される可能性が高いものと思われる。」という内容を元に、「こういう法律もありますよね?」と僕が聞くと「新聞に関しては適用外」だと言われました。

長々と読みづらい文面でほんまに申し訳ないですが、ゲンさんはこの内容をどう思われますか?

結局翌日から新聞を止めることになります。結果云々もありますが、嘘をつかれボロクソ言われた挙句死んだらしゃーない、で終わらされた事に憤りを感じています。

契約で縛る、というのも限界が来ているんじゃないかとも思い始めてます。

ご指導、よろしくお願いします。


回答者 ゲン


『嘘をつかれボロクソ言われた挙句死んだらしゃーない、で終わらされた事に憤りを感じています』という気持ちは分からんではないが、その相談内容を客観的に分析すると、最初のあんたの説明が相手にはよく伝わっておらず、ボタンの掛け違いが起きたのやと思う。

そのために客の気持ちを逆なでした可能性が高いと思われる。

『転宅先で取ってもらえませんか?』と打診するのはええ。その場合は、まずその意向を先に確かめることや。

その結果、「そのつもりはありません」という答えを貰ってから、次の段階に移る。

『無理ならサービスした分の残り契約分を返していただいてキャンセルとさせていただきます』、『22年から半年サービスした分(3925×6=23550)と平成27年からのギフト分(12000)を足して73%が25950円になり、この金額が解約金になります』というのは、内容的には、あんたとしては十分に相手に配慮したものやと考えるから、それでええのやが、最後に言うた、『この金額が解約金になります』というのが、よけいやった。

あんたの説明の仕方やと、「その契約を解除するには、その解約金が必要ですよ」という風に聞こえる。

それは違う。その説明では相手を硬化させる恐れが高い。

後に『「なんで2万も払わないといけないのか!!おたくらはヤクザか!!」と言った内容の罵詈雑言を浴びせられ』たというのは、そのためやろうと思う。

『引越しするから24年1月末で止めて欲しい』というのは、あんたの店の営業エリア外に引っ越しする場合、顧客としては正当な言い分、権利になる。

あんたに説明するまでもないとは思うが、新聞販売店には宅配制度というものがあるから、それ以外の地域には新聞は配達できんわけや。そういう状態では、その契約を全うすることができないから、「契約不履行」ということになる。

新聞の購読契約は、新聞販売店と契約者のみの間でしか効力のないものやさかいな。

「契約不履行」ということになれば、その契約は自動的に契約解除になる。

問題はここや。『自動的に契約解除になる』ものを『その契約を解除するには、その解約金が必要ですよ』というのはおかしな言い分になるわけや。

この場合、どう言えば良かったのか。それを言う。

「分かりました。引っ越しされるのでしたら、その契約は解除になります」と、まずそのことを認める。そうすると、相手もその事実では争えなくなる。

そして、「但し、その場合は、契約時にお渡しした当方のサービス品をお返し願わなくてはなりません。これは契約が解除になったすべての場合に民法545条の原状回復義務で、そう決められていますので」と言う。

つまり、契約が解除された場合は、それがいかなる理由であれ、双方が契約する以前の状態に戻って、双方に利益享受のない状態にするという法律の趣旨があると説明するわけや。

具体的には、「そちらが引っ越し先で契約の延長をされないというのでしたら、仕方ありません。それでしたら、その契約は解除になりますので、契約前にこちらで先にお渡ししたサービス分は返して頂かなくてはなりません。なぜなら、そのサービス品は、その契約を全うされることを条件にお渡ししたものですから、そちらのご意志で、それができないということでしたら返して頂くのが筋ではありませんか」と言う。

その上で、『22年から半年サービスした分(3925×6=23550)と平成27年からのギフト分(12000)を足して73%が25950円』という説明をすれば、たいていの人はなるほどと思って貰える。配慮もしてくれているのやなと。

それでも返還しないということであれば、本来、その客が得られるはずのない「利益供与」を不当に取得しているということになるさかいな。

ただ、こういったケースで、客の中には「そんなサービスは、そっちが勝手にしたことやないか。何で、そんなものを返す必要があるんや」と言う者もいる。単に、貰った物を返すのが勿体ないということでな。

しかし、法律も含めて、約束が守れないのなら、その約束を全うすることで渡した物は返して欲しいというのは、正当な要求、言い分になる。それを拒否する方がおかしいというのは、誰が考えても分かることやと思う。

契約が解除になるということと、過分な利益供与分の返還は別のことやと。

「引っ越し先で継続して頂けるのでしたら、その必要はありませんが」と言い添えていれば完璧になる。「お好きな方を選んでください」と。

そこまで説明せなあかんのかと言われれば、今回のような揉め事を起こしたくないのなら、そうやと答えるしかない。

それを基本に置いて対処すれば、すべてが、あんたの思うようになったと思う。

『その契約書の字は主人の字じゃない!』というのが、例えそうだとしても、その事実は、契約者が「契約を解除する権利」を得られるというだけのことにしかならん。

『主人が死んだら無条件に解約出来る』というのも、ある意味正しいし、ワシもそのスタンスで相談者には助言することが多い。

それは、先にも言うたように、新聞の購読契約は、新聞販売店と契約者のみの間でしか効力のないものという前提があるからや。

新聞販売店は、新聞は個人にではなく、家に配達しているという意識が強いから、例えその契約者が亡くなろうと、その家人がいる限りは、その契約は生きるものと考えがちやが、法律的には、それは通らないということや。

せやから、『担当の人に話を聞くと「契約者が死んだ場合、新聞に関しては無効になる。御宅の本社の偉いさん方もそれを認めていますよ」との回答でした』と言った新聞公正取引協議会事務局の担当者の言い分は、間違いではないわけや。

この点についてはハカセも確認済みで、以前はいざ知らず、現在ではその方向にシフトされとると考えていた方がええと思う。

『「民法第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)』について、新聞公正取引協議会事務局の担当者が『「新聞に関しては適用外」だと言われました』というのは、単にその人間の認識不足やとは思うが、『契約者が死んだ場合、新聞に関しては無効になる』という前提に立って、そう答えたとも考えられる。

契約者が死亡した場合は、そんな法律を持ち出しても論外やという意味で。

ちなみに『「民法第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)』については、新聞購読契約の場合は、残念ながらその判例が今のところない。判例のない事案は、どちらか一方だけを採ろうと思えば採れる。実際、法律家の間でも、新聞に関しては意見が分かれるケースもあるさかいな。

しかし、日本ABC協会でも公認されているように新聞の購読率が9割以上あるということからすれば、除外事項の『不動産、アクセサリー類、妻の高級外出服などの贅沢品』には新聞は該当しないと考えられるから、裁判になれば民法第761条が認められる可能性は高いと思う。

そのスタンスに立って、このQ&Aでも、そう言うてるケースが多い。

もちろん、それは当方にご協力して頂いている法律家の先生の助言があってのことやがな。

法律上は、それを言うて押し切れる可能性はあるが、新聞公正取引協議会事務局の担当者や新聞社の上層部が『契約者が死んだ場合、新聞に関しては無効になる』という認識に立っている限りは、新聞販売店としては従わざるを得ないやろうと思う。

新聞販売店にとって、それらの意志は、ある意味、法律以上の重みがあるさかいな。

ただ、それらから導き出される答は単に「契約が解除できる」というだけの事で、「すでに渡したサービス品が、それによりタダ取りできる」という事とは違うわけや。

そして、それは例え新聞販売店側にどれだけ落ち度があろうと、不法行為があろうと、その返還請求だけは正当なものと認められる。

なぜなら、契約者が得られる権利は最高でも「契約を解除する権利」でしかないからや。それ以上のペナルティを科すことは一切、法律では認められていない。

それを押さえていれば、今回のようなことにはならんかったはずやと思う。

ちなみに、サービス分の返還請求に関しては、どこの新聞社であっても、新聞公正取引協議会であっても認めざるを得ないと思う。民法545条の原状回復義務の規定がある以上は、それを否定することはできん。それを否定したという話も聞かん。

また、契約者の中に、その返還を拒む者があれば、裁判で損害賠償請求でも起こせば、先渡ししたサービス分は容易に取り返すことができるはずやと思う。まあ、そうする新聞販売店は今のところないがな。

『契約で縛る、というのも限界が来ているんじゃないかとも思い始めてます』というのは、長期契約に関しては、契約者が死亡するというリスクは常に考えておく必要があると思う。

契約者が死亡した場合は、そこでその契約も終わると。それを考えとれば長期契約は危険やということが分かるはずや。

長期契約には、その分多くのサービスが必要になるから、いくら法律で返還義務があると説いたところで、使ってしまってないとか、返すのが勿体ないという意識が働く者が現れる可能性が高い。

それを普段から考えていないから、こういう問題が起きた時に対処を誤ることになるのやと思う。

余談やが、ワシの店では勧誘員には6ヶ月契約を基本に取らせるようしとる。1年契約を取る場合でも、6ヶ月契約をそれぞれ別個に2契約に別けるわけや。

こうして置けば、景品表示法などの違法性の問題も回避しやすいし、今回のようなケースになっても、サービスもそれほど多くはないはずやから返還分も少なくて済む。返す方も返しやすいし、請求する方も請求しやすいということや。

また、契約者が亡くなったということで、それを返して貰えなくても諦めやすいということもある。実際、契約者が亡くなられて、その方の通夜とか葬式に出席した後、そんな話はしづらいしな。

もっとも、通夜とか葬式に出席していたら、滅多に解約すると言われることはないがな。

それはあくまでも参考にして貰えたらええと思う。どうされるかは、あんたの営業方針もあるやろうから押しつけるつもりは毛頭ない。あんたの考えるようにされたらええ。

何でもそうやが、最初にボタンを掛け違うと、正当な言い分でも、相手はそれこそ、ヤクザな言いがかりをつけられたと思うようになるケースもある。

ワシらも長くこのQ&Aをやっているが、揉め事になるのは言葉の行き違いで気分を害したためというのが圧倒的に多い。そんな言われ方をしたから腹が立つといった類のものやな。

あんたも大阪の人やから良う分かると思うが、新聞販売店も立派な商店やから、客に対しては、あくまでも「お客さん」という態度で接することや。商売人が横柄な態度をしても得になることは何もないさかいな。

『そして2月に入っても連絡が無いのでそのまま新聞は配達し続けました。結局引越しはせず2月から別の新聞と契約してはりました』というのは、その契約者もどうかとは思うが、それも怒らせた結果やと考えれば理解することもできるのやないかな。

また物は考えようで、そういう節操のない嘘をつく客を抱えとっても仕方ないと割り切る手もある。

いずれにしろ、今回のケースは、そこまで拗れてしもうたら、もう元には戻らんやろうと思う。

最後に一言。

契約は「縛る」ものではなく、気持ちよく「して頂くもの」やということも考えといて欲しい。

新聞販売店の強みは、お客と直に接することができるという点で、客は心でつなぎ止めるということを考えるべきやないかな。契約しているのやから取れと言うだけでは、これからの営業は厳しいと思う。その後のことを考えるのならな。


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