新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.113  集金業務に疑問があります


匿名希望 新聞販売店勤務 投稿日時 2005.6.13 AM11:59


ご相談をしたいのは、集金業務で集金出来ない相手の新聞代を、「自腹を切って払う」というのは、法的にどうなるのだろうか?という事です。

辞めた前任者が、ほとんど集金をしていない地域を今月から集金しろと言われました。その分をいきなり私に振られて「その集金が出来なければ、自腹で払え!」と言われては、納得いたしかねる次第です。

まだ、そんな風に言われては、いませんが、他の人がそういう状況になっていたので、集金出来なければ確実にそう言われると思っています。

事業の考え方なら、損金扱いにすれば、いいだけなのに最悪強制的に「自腹を切って払え!」と言われた時に法的根拠で持って、店と対応したいと考えています。それで、店とこじれて辞めることになっても仕方ないと考えています。

例えば、強制的に給料からその分を差し引かれるなどをしたら、どうしたらいいのでしょうか。よろしくお願いします。


回答者 ゲン


「集金が出来なければ、自腹で払え」と言うのは、いかにも無茶な話や。こういうことは社会的にも法律的にも通用することやない。常識的にも論外なことや。

せやけど、その論外なことがこの業界の一部では往々にしてあるというのも事実や。ワシもそういう話は今まで何度も聞いたことはある。

そのことが理不尽やと思うあんたの気持ちも当然やし、良う分かる。あんたが、辞めてもええとまで腹をくくっとるのなら、方法はある。

但し、あんたが店と事を構えてまでもという考え方は得策やないと思う。はっきり言うが、こういうことを言い出す販売店はろくな所やない。

まず、従業員のことなんかは考えとらん。嫌なら辞めろ式の店のはずや。あんたが辞めようが何を言おうが屁とも思わんやろ。

代わりは何ぼでもおると考える。実際、今は従業員の募集をすればすぐ集まる確率が高い。せやから、こういう所の経営者は、従業員を使い捨てという感覚になっとる。

こういう所とは、最後の瞬間までは直接的な対決姿勢は見せん方がええ。あんたが、何を言おうがそれで良うなることはまずないし、聞き入れても貰えん。話し合いにもならん。

それよりも、話を聞いて貰えて店にもそれなりの圧力をかけられる所へ相談するのが、一番ええ。そのためには、いろいろと準備も必要やがな。

例によって、当HP法務顧問の 行政書士・社会保険労務士 今村英治先生に法的なことに関してメールであんたの質問をそのまま聞いてみた。その回答を伝える。


こんにちは。ひどいケースですよね。

給料と相殺する規定は以下の通りです。

労働基準法 第17条
使用者は、前借金その他労働する事を条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

仮に適法な前借があったとしても、従業員からの申し出がない限り経営者が勝手に相殺してはダメなんです。
但し ご相談のケースは前借金にすら相当しません。

次に減給についての規定です。

労働基準法 第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

前任者から引き継いだ購読料の未払い分を、自腹で負担するなど言語道断。証拠を押さえて、すぐに労働基準監督署に通報すべきでしょう。
劣悪な労働条件ですから、雇用保険法上の特定受給者にも該当します。
ただし、販売店がまともに労働保険の手続をしている場合に限りますが・・・

まずは労働基準監督署にて労働相談をなさってはいかがでしょうか?
タイムカードやら雇用契約書など何も証拠書類はなかったとしても退職も辞さない覚悟なら役所の力を借りて指示を仰ぐべきでしょう。


ワシも今村先生の意見に従う方がええと思う。この場合は労働基準監督署への相談というのが、一番効果的や。これは『全国343労働基準監督署の管轄案内』 で調べれば、あんたの所の管轄はすぐ分かるはずや。

上手く行けば、今村先生も言うておられた雇用保険法上の特定受給者と認定されるかも知れん。この雇用保険法上の特定受給者というのは、本来、倒産や解雇などにより、突然、収入の道が閉ざされた人に対する失業保険の給付を優先しようというためのもんや。

詳しいことは『特定受給者の範囲』というページがあるから確認して貰うたらええ。

但し、それにあんたが該当するかどうかは分からんから、そのことも含めて相談したらええと思う。相談する場合はやはり、それなりの資料があった方がええやろと思う。

雇用契約書、タイムカード、勤務実態(集金、営業時間を含む)、集金の立て替えの具体的証拠(それが記されている給料明細や領収書など)やが、ない場合は、その時の具体的なやり取りをテープに保存しとくか、文書で作成しとく。日時も忘れずにな。

そして、これは重要なことやが、他の従業員に、今回のことと辞めるということは言うたらあかん。その瞬間まで黙ってた方がええ。

同じような従業員同士やと、つい心を許して思わずそういうことを口走ることもあるかも知れんけど、それは、経営者の耳に入る可能性があることも考えとかなあかん。

同じ愚痴のこぼし会いをしとるうちはまだええが、辞めるということを知られると中には手のひらを返す人間もおるからな。その人間にしたら、どうせ辞めるあんたとは他人やと思い、それなら、経営者に取り入った方が得やと考える。

拡張員の仲間うちでもこういうことはある。いつもは、親しくしとるからつい心を許すとそういうことになる。信用してすべてを話すと裏切られるわけや。

もちろん、それをバラす人間にも問題はあるやろうけど、バラされる方も思慮が足らんということになる。

仕事仲間というのは、同じ職場で仕事をしとってこそ、その意識を持つということや。辞めれば何の関係もない、あかの他人になる。そういう考えの者も世の中にはおるということを心しといた方がええ。

事は密なるをもって成る。という教えがある。

謀(はかりごと)は、極力、秘密裏に行うに限る。一人で出来ることなら、自分の胸の内だけに秘めることや。

もし、あんたがすでに、それらしいことを誰かに洩らしとるのなら、その人間に今からでもええから「やはり、考え直して頑張ることにした。どこに行っても一緒だから」とでも、言い換えとくことやな。その方が無難や。

そして、労働基準監督署への相談も、次の職場を見つけるか、せめて住める場所を確保してからの方がええと思う。

経営者がどういうリアクションをしてくるか分からん。販売所の専業の多くは、店所有の住居に住んどると思うから、最悪、すぐにでも追い出されるかも知れんからな。

老婆心かも知れんけど『店とこじれて辞めることになっても仕方ないと考えています』ということを考えとるというのが気になる。

何でもそうやけど、ただ感情に任せてそうしても損するだけや。事を起こすには、何でもそれなりの準備をしてからするもんやと思うからな。


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