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NO.1162 病気の両親の契約解除が出来ずに困っています
投稿者 MYさん 投稿日時 2012. 8.30 AM 7:53
初めまして。新聞の解約についてご相談に乗っていただきたくメールいたしました。
実家の父が契約者で同居しているのは母です。
契約書は紛失してしまっています。
現在10年先まで2社の新聞購読契約をしている状態です。
契約したのは2007年でその時分から父は軽くボケが始まっていたようでお恥ずかしながらその時は家族は気づけず、販売員さんと話をするのが楽しかったのか言われるままに契約をしていってこの年数になったと思われます。
クーリングオフ期間は過ぎていましたし契約について新聞社にお尋ねしたときも「解約出来ませんから」とおっしゃられました。
契約時に父が認知症だったという証明も出来ないので解約出来ないのは仕方ないかと諦めました。
しかし父はもう施設に入所しまして現在、自宅には母1人の状態で病気で入退院を繰り返すことが多くなって新聞の購読が難しくなってきました。
こちらの自己理由で解約をお願いするので発生する違約金とサービス分を支払うと新聞社にお伝えしたのですが「解約できない」の一点張りでサービス分も最初に伺った量とはどんどん違ってきてどうしたらいいか分かりません。
どうかアドバイスを頂けませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。
回答者 ゲン
ワシは、相談者が親御さんの新聞購読契約を解除したいという相談に対して必ず確認することがある。
それは、その親御さんの意思がどうかという点や。それ次第では回答が大きく違うてくるさかいな。
お父さんは施設に入所されておられるということやから、残されたお母さんがどうされたいのかということが重要になる。
お母さんが、新聞を読み続けたいと言われるのなら、その意志は尊重してあげることやと、こういった回答ではいつも言うとる。
あんたの話から、親御さんはかなりの高齢者のように思われる。高齢者にとって新聞とは特別な物、そこにあるのが当たり前の物という感覚の方が大半を占める。
それには新聞を読む事が普通、当たり前と考えられていた時代を長く生きてきているためで、新聞の存在そのものが生活の一部になっているからや。
朝起きて新聞がポストに入っていることに安心し、その新聞を取り出して初めて、その日1日が始まる。それが数十年の長きに渡り、日々繰り返されてきた日常でもある。
その事実は高齢者の方にとっては重い。
例え読まなくても、そこにあるだけで安心する物。無用の有の最たる物。高齢者にとっての新聞とは、そういう存在やということを理解して欲しいと思う。
そうは言うても、新聞は読むための物、読まないと価値のない物と考えておられる若い人には、とてもそういう考えは理解できんやろうがな。
読みもしない物に金を払うのは、まったくの無駄やないかと。何の意味もないと。
その考え、思いが間違っているとは言わん。
しかし、物の価値を決めるのは、その本人だけにしかできんというのも、また正しいと思う。
他人から見れば実にくだらない無駄な物に金をかけている人は世の中にはいくらでもいる。
それでも、それはその人の趣味、嗜好の範疇にあるもので、その人が納得して欲している物であれば、例え身内であっても勝手に止めろと指図したり、判断したりするべきやない。
その理屈は分かって頂けるものと思う。
いつも思うのやが、この手の相談には、その当人である親御さんの意思が欠落しているケースがあまりにも多い。
もちろん、親御さんのためを思ってのことやとは思うが、肝心の親御さんの意思が欠落していたのでは正直言うて、ワシはどう回答すればええのか迷う。
お母さんが、その新聞購読を続けたいと言われるのであれば、続ける上でベストの方法をアドバイスするし、解約したいというのであれば、その方法もいろいろあると言える。
これから、その両方のケースについて話すので、くれぐれもお母さんの意思を尊重した上で、どうされるかを考えてあげて欲しいと言うとく。
お母さんが、その新聞購読を続けたいと言われる場合。
そうは言われても『自宅には母1人の状態で病気で入退院を繰り返すことが多くなって新聞の購読が難しくなってきました』という状態なら、することは一つ。
病気で入退院を繰り返されておられるのであれば、入院される都度、その2軒あるという新聞販売店に「休止依頼」をすればええだけの話や。
「休止依頼」であれば、「解約」するのとは違うから、新聞販売店は拒否することはできん。無人の家に新聞を配達されると困ると言われれば、新聞販売店としては受け入れるしかないけや。
入院が長引けば、その分、休止期間が長引くのは仕方がない。そして、その間の新聞代も当然やが請求されることはない。
その際、新聞販売店によっては「取り置きにしますか?」と聞いてくる、あるいは勝手に「取り置き」扱いにして、退院された時、その分の新聞代をまとめて請求するケースもあると聞くから、必ず「留守のため休止にします。休止分の新聞は必要ありません」と伝えることや。
お母さんには、「退院したら、また販売店に連絡すれば配達してくれるから」と言えば納得されるはずや。
お母さんに新聞を解約する意思が明確にある場合。
一見、このケースは解約するのは難しそうに思えるが、持って行き方次第では、いくらでも方法はある。
『実家の父が契約者で同居しているのは母です』という場合、契約者が不在というだけでは解約理由にはならない。
お母さんのケースは、民法第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)の、
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責に任ずる。
に該当する可能性が高い。俗に「夫婦日常家事代理権」と呼ばれとるものや。
厳密に言えば、新聞の購読契約については判例に「夫婦日常家事代理権」を認めたものが今以てないさかい、争うことはできるが、多くの法律家が「新聞の購読契約は夫婦日常の家事範囲」と認めているため、争っても勝てないと考えられている。
これが、お母さん以外の身内の方やったら、お父さんが契約者の場合、「契約者不在」を理由に解約することは可能やがな。
『契約書は紛失してしまっています』ということなら、それぞれの新聞販売店に「契約書を見せて欲しい」、「契約書のコピーが欲しい」と要求すればええ。
『現在10年先まで2社の新聞購読契約をしている状態です』ということなら、複数枚の契約書があるはずや。それらすべてを確認することや。
業者には、その契約期間内の契約書は保管する義務があるさかい、「契約書は見せられない」とは言えない。コピーに関しては、法律には何も規定されとらんので、その販売店次第ということにはなるが、断るケースは殆どない。
またコピーを渡すのを断ったとしても今やったら、その契約書を持ってきた時に、デジカメや携帯電話のカメラで撮影すればええ。またバソコンのプリンターなどのコピー機能を使ってコピーを取ることもできる。
万が一、販売店が「契約書は見せられない」と言うようであれば紛失したものとして、その契約を解除することができる。契約書の保管義務を怠ったことになるさかいな。
信じられんような話やが、販売店の中には、「契約書の内容はパソコンに記録しているので間違いないから契約書はなくても良い」と、当たり前のように言うアホな者が実際にいとる。
法律にそんな言い分は通らない。当たり前やが、契約社会において、契約書のない契約が認められることなどないさかいな。
友人知人同士などで口約束を交わした場合、その内容次第では「契約」と認められることもあるが、業者と個人間で契約書のない契約が認められるケースは殆どない。
唯一、それが認められるとしたら、契約者である、お父さんが「その契約をしたのは間違いない」と言うた場合くらいなものやが、現在、そのお父さんは認知症で施設に入所されておられるのやから、それは考えられんわな。
今となってはご本人の口から確かめることすらできない。
販売店が「契約書は見せられない」と言う場合、『契約したのは2007年でその時分から父は軽くボケが始まっていたようで』という状況なら、契約書の氏名や住所欄の記載がお父さんの直筆ではない可能性が考えられる。
こういう場合、販売店の人間が「代筆」と称して勝手に書き込むケースが良くある。
もっと言えば『販売員さんと話をするのが楽しかったのか言われるままに契約をして』というのが日常化していれば、「お父さん、私が書いておきますね」と販売店員が言って実際に書き込む場合が往々にしてある。
あるいは、それすら言わず、勝手に契約書を次々に作り上げるというケースまであると聞く。そうしても契約者は何も異論を唱えて来なかったということで。
契約書の署名欄は本人の直筆が原則で、代筆したものは正規の契約書とは認められない。
当たり前の話で、そんなものが認められるのやったら、新聞販売店は契約書の作り放題になるさかいな。勧誘すらする必要はないわけや。そこらの住民の名前を契約書に勝手に書けばええわけやさかいな。そんなアホなことは絶対にない。
いずれにしても、それらの実態は、その契約書を確認することで、ある程度、分かるものと思う。
『サービス分も最初に伺った量とはどんどん違ってきて』というのも、その契約書に記載されとるはずで、契約書に記載されていないサービス分は法的には存在しないことになる。
もっと言えば、「契約書に記されていないサービス」は、契約とは関係のない無料サービスと解されても仕方がないということや。
当たり前やが、契約時のサービスは契約書に記載されてこそ、その契約を全うするための条件としてのサービス分やという証明ができるわけやさかいな。
そのサービス分については普遍なもので、聞く度に『どんどん違ってきて』ということなど本来あり得んはずや。
それについても契約書を見れば分かるものと思う。
『クーリングオフ期間は過ぎていましたし契約について新聞社にお尋ねしたときも「解約出来ませんから」とおっしゃられました』ということやが、新聞社は個人間との直接の契約には一切タッチしないというのが公の立場やから、「解約できない」とは絶対に言わんはずやがな。
普通は、「解約については販売店とご相談してください」と言う程度や。これは、ハカセが過去、新聞社に直接何度も確かめとるさかい、まず間違いはない。
ただ、「クーリングオフを過ぎておられる場合は契約解除はできません」と言う場合はあるが、それをそのように聞き違いされたのやないかな。
もっとも、新聞社の苦情受け付け係にも、いろんな人間がいて、中には新聞に関する法律はクーリングオフくらいしか知らん者もいとるということやから、そういうこともあるかも知れんがな。
それには新聞社の苦情受け付け係をしているのは新聞社の社員ばかりでなく、新聞社によれば外部の苦情受け付け専門会社に委託しているケースもあるからや。
その担当者の中にはアルバイトで雇われている者もいとるという話やから無理もないと、ワシらには分かっているが、一般の人はそうとは受け取れんわな。
新聞社に電話して、「解約出来ませんから」と言われたら、それが新聞社の正式なコメントやと考えてしまう。それが普通や。
もし、このページを新聞社の上層部の人間が見ていたとしたら、そんな返答をした苦情係の担当者に激怒しとるのやないかと思う。
もう一度言う。新聞社の苦情受け付け係は「クーリングオフを過ぎておられる場合は契約解除はできません」とは言うても、「その契約は解約出来ません」と言うことはまずないと。
新聞社の苦情受け付け係にとって、新聞の購読契約など何の関係もない事やからや。例え解約されたとしてもその担当者は痛痒など何も感じず、困る事もない。せやから、どこか他人事のように対応されていると感じる人が多い。実際、他人事にわけやけどな。
相談者の中には、その対応に怒って「お前ところの新聞とは解約や」と言う人もおられるというが、それを言うたところで何の意味もないし、どうしようもないわけや。
カエルの面に小便。馬の耳に念仏、程度にしかならん。新聞社には何も伝わらない。
購読者の中には、新聞の購読契約は新聞社と交わしているもんやと考えておられる方が多い。そして、新聞社と新聞販売店は同一の企業体やと。
しかし、それは違う。正確には新聞社と新聞販売店は業務委託関係にある会社同士にすぎない。一般で言えば、製造メーカーとその専属販売店のようなものである。いくら密接な関係にあっても法律的には別会社なわけや。
新聞購読契約とは、その新聞販売店と契約者個人との間でしか有効とはならんものや。
新聞社に解約の件で苦情を言われる方は多いが、上記のような理由で新聞社は「お門違い」と考えとるさかい、適当にあしらうか、「解約については販売店とご相談してください」と言うて逃げるくらいが関の山ということになる。
参考までに、新聞社に苦情を言う場合は、その販売店や勧誘員に不正行為、違法行為があった時に限定した方がええと言うとく。販売店や勧誘員の不正行為、違法行為に対して、新聞社は監督する義務を負っているさかい、ほっとくことはできん。
せやから、販売店や勧誘員に明らかな不正行為、違法行為があるので、どうにかして欲しいという苦情なら積極的に動く可能性が高い。
『こちらの自己理由で解約をお願いするので発生する違約金とサービス分を支払うと新聞社にお伝えした』というのは新聞社ではなく、それぞれの販売店に言わなあかん。
販売店にそう通告すれば、心情的には「解約できない」と言うやろうが、法律的にはペナルティ覚悟の契約解除を通告した場合には、解約に向けた話し合いのテーブルにつかんとあかんことになっとる。
それを知らん販売店は多いがな。
それを分からせるためには、「解約に向けた話し合いをして頂けないのでしたら、今後の新聞代のお支払いを拒否します」と言うて、実際にその新聞代金を払わなければ折れて話し合いに応じる可能性は高い。
ただ、これには問題がある。
法律上は、料金を支払わないという契約者に対しては裁判を起こして、その料金を徴収するしかないのやが、新聞販売店がそうしたというケースは過去にもない。
裁判を起こさない代わりに「新聞代を払ってくれ」と日参するケースが多い。その行為自体は正当な集金行為やから非はない。
しかし、病弱なお母さんにとっては耐えられん事やわな。
その集金行為を止めさせるには弁護士などの法律家を入れるしかないが、それやとヘタすると解約違約金以上の費用がかかるさかい、費用対効果の面で言えばマイナスにしかならん。
その方法は金銭とは関係がなく心情的に拗れた場合にしか使わん方がええやろうな。
このケースで難しいのは、解約に応じない以上は、ある程度、強引な姿勢に出るしかないということや。そうするには、それ相応の心構えと強い気持ちが必要になる。
病弱なお母さんがそれに耐えられなければ、お身体への負担が増し、よけい病状を悪化させることにもなりかねんという危惧も生じる。
一番ええのは、その販売店が何らかの不正行為をしていたという事実を掴むことや。そうなれば法的にも契約解除は可能で、新聞社や消費者センターを動かすこともできるさかい、結局はその販売店も解約に応じるしかないと考えるものと思う。
そのためにも、まず、お父さんが交わしたという契約書のすべてを、それらの新聞販売店に言うて見せて貰うか、写真を撮る、コピーを取って、その契約書の真偽を確かめられることや。
そこから始めないと難しいやろうな。ちなみに、その契約書の内容が分かれば教えて欲しい。その内容次第では他の作戦も考えられるさかいな。
最後にもう一度。
お母さんの意思を再度、良く確かめて、どうされるか決めて欲しいと言うとく。
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