新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1163 何故拡張員のカードは高いのか?
投稿者 Nさん 新聞販売店専業員 投稿日時 2012. 9. 1 AM 5:47
ゲンさんに質問です。
何故拡張員のカードは高いのか? です。
3箇月新聞を取ると9000円〜12000円。6箇月ならその倍です。
しかしながらそのカードを上げてきた拡張員の会社に払う金額は15000〜30000円。もっとするところもあります。
3箇月や6ヶ月新聞をとって販売店に払う購読料を遥かに越える金額を払う、この矛盾こそ新聞産業の最大のおかしな点(の一つ)だと思うんです。
予想しうる反論に反論しておきます。
「最初の3箇月は我々(拡張員が)契約をもらいましたが、3箇月配達して新聞の良さを分かってもらって是非次回は区域担当者の方が契約をもらってください」というのが建前。
実際には「この次も僕が来ますので僕とだけ契約をしてください」と言う拡張員が多い。
こんな拡張員は死ねよ、と思ってます。
「モノの値段は需要と供給のバランスで成り立っているので現在拡張員の会社に払う金額が高いのか安いのかは必要とする販売店やセールス団の実力で決まるものなので」について。
?(クエスチョン・マーク)はつくもものの、なるほどそのとおり。
だけど例えば車の新車を一台240万円で売ったら携わったセールスマン(の会社)が400万円の成果報酬がもらえるでしょうか?
そんなことはどんな業界でも有り得ません。
「何故ありえるのか?」
それは単純に新聞の値段が高いからです。新聞の値段を下げる。拡張員の会社に支払う金額を大幅に減らす。
新聞業界をよくするための色々な提言は様々な角度からあると思います。
僕は専業の視点で、このように思うものであります。
回答者 ゲン
『何故拡張員のカードは高いのか?』ということについてやが、あんたの言われておられるような『3箇月新聞を取ると9000円〜12000円。6箇月ならその倍です』という拡張報酬は、ワシも異常やと思う。高すぎる。
『そのカードを上げてきた拡張員の会社に払う金額は15000〜30000円。もっとするところもあります』というに至っては論外極まりない話や。
その前提やと、あんたがボヤかれとるのは無理もないことやと思う。
『例えば車の新車を一台240万円で売ったら携わったセールスマン(の会社)が400万円の成果報酬がもらえるでしょうか?』といった突飛な例を持ち出したい気持ちも良く分かる。
ただ、あんたの方では、それが一般的なのかも知れんが、全国レベルで見れば、そんなに貰っているケースは殆どない。希少なケースと言える。
日本各地からサイトに寄せられる情報を総合的に判断すれば、拡張員が手にする拡張報酬は3ヶ月契約で4000円、6ヶ月契約で6000円、1年契約8000円というのが最も多い。
それについては、昔からそれぞれの頭の数字(4、6、8)をとってヨーロッパと呼ばれ業界用語になっている。まあ、こういう呼び名が全国的に定着していること自体が一般的だという証しになるのやないかと思う。
ただ、一般的とは言うても、当然やけど、すべての新聞拡張団に、それが当て嵌まるわけやない。あんたの店のように異常に高いケースもあれば、ヨーロッパよりはるかに低い拡張料しか貰っていない拡張員もいる。
最も低いカード単価になると、1年契約で4800円程度しか貰っていないという報告もあった。当然やが、3ヶ月契約、6ヶ月契約もそれに比例して少ない。
この業界は、それこそ千差万別、いろいろあるというのが正しい見方になる。一概にこうやとは決めつけられない。
フルコミ制で拡張料とそれに付随するプレミアしか収入のない拡張団もあれば、固定給制が導入されていて、ある一定のノルマ以上で歩合が多くなるシステムの拡張団もあるさかい、それぞれで報酬単価が違うてくるということもある。
新聞社や地域によってもかなり違いが出る。また、拡張団それぞれのトップの考え方でも違いが大きい。
『3箇月や6ヶ月新聞をとって販売店に払う購読料を遥かに越える金額を払う、この矛盾こそ新聞産業の最大のおかしな点(の一つ)だと思うんです』というのは、あんたの販売店、もしくは、その報酬形態の地域限定では、特別そうなる。
もっとも、ヨーロッパと呼ばれている地域でも、よくよく検証すれば怪しい部分も多いがな。
一般的に拡張員が貰える拡張報酬とは別に、「即入」、「まとめ料」などのプレミヤと呼ばれる余禄報酬や年4回ボーナスが支給される新聞拡張団もある。
新聞拡張団のボーナスは一般の会社とは違って、ボーナス支給日から次のボーナス支給日までの3ヶ月間で上げた契約数に応じて1契約あたりいくらと査定されて支払われる。
そのシステムは各新聞拡張団毎で違うから、一概にこうやとは言えん。いろいろある。ただそういうシステムの新聞拡張団が多いのだけは確かやがな。
それらを総合的に判断すると、平均で1本あたり約1000円程度のプレミヤがつくと考えられている。
それで計算すれば、実質的な報酬額は3ヶ月5000円、6ヶ月7000円、1年9000円ということになる。
但し、これはあくまでも拡張員個人に渡るもので、新聞販売店が拡張団に支払う額は、それに1.5倍したものが一般的やとされとる。
3ヶ月契約で7500円。6ヶ月契約で10500円。1年契約で13500円かかると。
これに加えて、客に渡す景品分も必要になる。基本的に景品は、販売店が負担するというのが全国的な決まりになっている場合が多い。中には景品を拡張員が負担するというケースもあるとは聞くがな。
この景品分に関しては、どの程度が全国的に平均なのかというのは、かなり難しい問題やと思う。
それこそ、新聞社の方針や地域、販売店次第でもそれぞれやし、季節や日によってすら違うことも珍しいことやない。
さらに、同じ販売店でも、その契約者個人の違いで渡す景品の多い少ないというのも普通にある世界やさかいな。
しかし、それでは基準が示せんから、ここでは、6・8ルールぎりぎりの線で計算する。3ヶ月契約で1000円以内、6ヶ月と1年契約は2000円以内という具合や。
ちなみに、6・8ルールでの景品付与の上限は6ヶ月分の新聞代の8%までとされとるから、6ヶ月以上の契約は、すべて同じになる。
現在は、「正常化の流れ」とやらで客に対するサービスは以前と比べると激減しとるというから、現実的にも一番近い線やないかと思う。
3ヶ月分の新聞代が朝夕セット版地域で12000円弱。一般的な新聞販売店が新聞社から仕入れる代金は約6000円。拡張経費が総額で8500円かかるから2500円のマイナス。
6ヶ月契約の場合は、新聞代約24000円弱で仕入れが約12000円。拡張経費が総額で約12500円やから僅かにマイナス。
1年契約で新聞代約48000円弱。仕入れが約24000円。拡張経費が総額で約15500円かかり、こちらは粗利で8500円のプラス。
そのため、ワシが所属していた、関西、東海の拡張団では6ヶ月、1年契約の比率を上げるよう言われ、3ヶ月契約は全体の3割以内に抑えろと厳命されていた。それを守っていた拡張員は少なかったがな。
1年契約にしたところで、月にすれば708円ほどのプラスにしかならず、配達員に支払う1部の配達料400円〜500円を差し引けば販売店には殆ど残らない。
拡張員を入れることで、新聞社から某かの拡張補助費というのが出る販売店もあるとは聞くが、それにしても一律に決められているわけやないから、アテにできるものではない。特に、最近はその額も減ってきているということでもあるしな。
つまり、拡張員を使っての部数確保は新聞販売店にとっては、あまり旨みのないものやということになる。その拡張料が高すぎるために。
あんたの言われるとおり、これほど高い利率の営業報酬を支払っている業界は他にはないやろうと思う。
販売店独自で採算性を考えれば、拡張員の入店を拒否して自店の従業員で部数を増やした方がええとなるのは自然や。無理もない。
実際、そうしている販売店もあるが、大半の販売店にはそうできない事情が、この新聞販売業界にはある。
この業界は、たった1部でも増紙するのとマイナスになるのとでは、大きな違いになる。
そう思い込んでいる業界関係者は多い。
新聞社には、部数至上主義というのがあって、そのために「増紙」という言葉はあっても、「減紙」という言葉は存在しないとまで言われている。
部数がプラスになったという事実だけで優良と判断され、マイナスに転落するとその能力が疑われる。
マイナスの販売店は、新聞社から業務委託契約の解除を突きつけられることも珍しいことやない。これを業界では「改廃」と呼び、実質的には潰されることを意味する。
新聞社からの業務委託契約解除というのは、要するに「あんたの経営する店には新聞を売りませんよ」と一方的に通告されるさかい、新聞販売店にはどうしようもない。
その改廃怖さに高コストと承知していながら、新聞拡張団に勧誘営業を依頼している新聞販売店が圧倒的に多いのが実情なわけや。それには新聞社からの強要もあるからやけどな。
利益を上げる、健全な経営状態を語る以前に、店が存続できるかどうかという問題、プレッシャーが新聞販売店の店主たちには日々重くのしかかっている。
あんたが販売店の立場から、『それは単純に新聞の値段が高いからです。新聞の値段を下げる。拡張員の会社に支払う金額を大幅に減らす』と言われる気持ちは良く分かる。
しかし、現実には『新聞の値段を下げる』ことは、現在、赤字決算が大半の新聞社がそうすることは、まず考えにくい。
材料である紙やインク代、工場の燃料費、運送費などの殆どの経費が、新聞代が据え置かれた1994年当時と比べて大幅に値上げされとる。
本来なら新聞代の値上げに踏み切りたいのやが、そうすると新聞が売れなくなるという怖さがあるため、それができないでいるのやと思う。
現在、唯一のアピールが消費税増税された際、新聞には軽減税率が適用されるから、値段は現状のままやということくらいや。淋しすぎる話やけどな。
『拡張員の会社に支払う金額を大幅に減らす』については、できることならそうしたいというのが多くの新聞販売店の望みやろうと思う。
しかし、例えそうなったところで何も解決しない。よけいに業界全体が悪化することが考えられるがな。
残念ながら、現在の拡張員を排除しようという風潮では、拡張員のみならず、新聞販売店、引いては新聞業界全体の衰退は避けられんようになると言うとく。
すべてが共倒れになると。
現在、既存の新聞拡張団は、その評判の悪さを嫌って拡張経験者を排除する方向にあり、新規に雇い入れないという。実際、そのために実数は定かやないが、新聞拡張団自体激減していて、それに伴って拡張員も大幅に減っている。
関東や関西などの人口密集地では、まだそれほどでもないようやが、地方都市では拡張員の顔を見なくなって久しいという一般読者からの報告も数多く寄せられてくる。
何より、このQ&Aでも以前は相談のトップやった勧誘時のトラブル事案が、ここ2、3年、めっきり減ってきているのが実情や。悪質な拡張員に悩まされているという話もあまり聞かんようになった。
この事実一つを取っても拡張員が減ってきていると推測できるのやないかと思う。
既存の新聞拡張団、新聞拡張員の減少傾向は今後も続くものと考えられる。
その結果、どうなっているか。
すべての新聞の部数が落ち込んでいるのが現実や。
新聞の部数が減少する理由については、少子高齢化による人口減、長引く不況、若者を中心としたネット嗜好による新聞離れなど、いろいろあるが、一番大きな理由になっているのは「勧誘員が減ったこと」やとワシは考えている。
新聞は売り込まない限り絶対に売れない。黙っていて売れる商品やない。これは厳然たる事実や。
その新聞を売り込むための営業員が激減すれば、新聞の部数が落ち込むのは当たり前の話やわな。
このまま新聞の部数が落ち込み続けていけば、確実に新聞が衰退するのは間違いない。
現在、拡張員が激減している理由は、新聞社や新聞販売店から除外される傾向にあるということに加え、拡張そのものに旨みがなくなった。稼げなくなったということが大きいと考える。
あんたは新聞販売店側の視点で、バカ高い拡張料を支払うのは勿体ないと考えておられるのやろうが、それでないと稼げない、拡張員が離れていくから、その拡張料になっているという側面もあるのやないかと思う。
まあ、それにしても、あんたのところの拡張料は異常に高すぎるがな。
『モノの値段は需要と供給のバランスで成り立っている』ということもあるが、それ以上にその仕事に携わる人間の収入が確保されるかどうかも大きな要素になる。
当たり前やが、メシが食えんような仕事を続けていくのは無理やさかいな。
もっとも、仕事のしづらい環境を作ったのは他でもない悪質な新聞拡張員たちやさかい、ある意味、自業自得と言えんでもないがな。
そうは言うても、真面目な拡張員も多いから、その人たちにとっては、ええ迷惑やわな。
あんたの店に出入りしている拡張員たちのことは良う分からんから何とも言えんが、現在、この仕事で生計を立てるのが難しい状況に置かれている者が多いのは確かやと思う。
あんたが、『実際には「この次も僕が来ますので僕とだけ契約をしてください」と言う拡張員が多い』というのはワシも良く知っている。
ワシが元新聞拡張団におったからかも知れんが、それについて批判する気には、とてもなれない。
業界のシステム上、拡張員は自分で上げたカードがすべてやさかい、固定客になるなと考えたら、そういう風に持っていくのは、ある意味、やむを得ないのやないのかという思いがある。
拡張員ほど孤独な仕事はない。
拡張員にとっては、新聞社がどれだけ儲かろうが、新聞拡張団がどれだけ潤ろうが、出入りの販売店がどれだけ繁盛しようが関係ない。自身のカードを上げんことには何の恩恵も得られないし、評価もされないのが現実なわけや。
他の仕事なら、チームワークを良くする事や、他人の仕事のサポート、アシストをする事で認められるが、拡張員はそんな事をしても評価の対象にはならない。
そんなことで誰かにカードを取られたら、「アホな奴やな」と言われて終いや。
評価されるのはカードを上げた人間のみという事実しかない。カードが上げられないと1円の収入を得ることもできんわけや。それどころか能力のない人間というレッテルすら貼られる。
そう考えると、敵は自分以外のすべての勧誘員ということになる。そのために他紙拡張員はもとより、自社の拡張員、出入りの販売店の従業員ですら出し抜くことを懸命になって考える。
それでしか収入が得られんさかい、メシを食っていく術がないと考えるわけや。
その結果が『この次も僕が来ますので僕とだけ契約をしてください』ということになるのやと思う。
ワシ自身は、客にそんなことを言うたことはないが、「ゲンさんやから契約するんや」と客に言われると、やはり嬉しいもんや。そういう客は自然に大事にするようになる。
ワシの推奨する勧誘営業は、人間関係を作ることや。
新聞の良さよりも、己自身を売り込めと言うてる。それが一番ええ方法やと。
あんたが、『新聞業界をよくするための色々な提言は様々な角度からあると思います』と言われるとおり、その方法はいくらでも考えられると思う。
ただ、拡張員が今後も減少していくようでは何度も言うが、新聞業界全体が滅びの道を突き進むのは間違いない。
昔、新聞が全盛期だった頃は、やはり拡張員の数も相当に多かった。
新聞の部数を増やそうと思えば優秀な勧誘員を数多く育てるしかない。そのためには排除よりも増やすことや。
現在、また大規模なリストラが敢行されようとしている社会情勢になっとるが、リストラで人員を削減した会社は遅かれ速かれ必ず倒産の憂き目を見ている。
後退思考に生き残る術などない。末期癌と同じで、延命処置にしかならない。それの分からん人間があまりにも多いがな。
ただ、優秀な勧誘員を数多く育てるしかないとは言うても、現状のシステムでは限界にきとるさかい、何か新しい画期的な方法を考えるしかないやろうとは思う。
あんたは、いろいろとアイデアの沸くお人やから、また何かあれば知らせて欲しい。
ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート1
2011.4.28 販売開始 販売価格350円
書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』好評販売中