新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1181 余分な折り込みチラシについて


投稿者 投稿者 Sさん  投稿日時 2012.11. 1 PM 7:23


ハカセ様 ご無沙汰しています。

私が不審をもっているのは、折り込みチラシです。

販売店の実売部数より、中には1000枚も多く、チラシが来ていまして、これははっきり言うと詐欺ではないか、と考えています。

チラシを発注する企業などは、販売店を信じているわけで、1000枚の部分にも対価を払うわけですが、それは廃棄されています。

所長に忠告しても、従業員の生活があるから、といい逃れ、私は、告発するつもりなどありませんが加担しているのではないか、と考えています。

特に自治体などのチラシは税金から支払うわけで、必要悪とは思えません。

ハカセはどう考えられますか?


回答者 ハカセ


ハカセです。お久しぶりです。

『ハカセはどう考えられますか?』ということですので、私がお答えします。

『チラシを発注する企業などは、販売店を信じているわけで、1000枚の部分にも対価を払うわけですが、それは廃棄されています』というのは、Sさんの言われるように詐欺行為だと私も思います。

ただ、これについては多くの新聞販売店で行われていることで、当事者の方たちには詐欺行為という意識はあまりないようです。

それには昔から、どこの新聞販売店でもやっている事で、詐欺行為とはいっても現実に、それにより摘発された新聞販売店など皆無ですので、よけい罪の意識などないのだろうと思われます。

実際、チラシを発注する企業などからの訴えがない限り詐欺罪としての立件はできません。

そして外部からではSさんの言われる『販売店の実売部数より、中には1000枚も多く、チラシが来ていまして』といったことなど調べようがありませんので、チラシ発注企業からのそうした訴えは皆無です。

例え訴えられることがあったとしても、犯罪は基本的には訴える側に、その犯罪行為の立証責任がありますので、罪に問うのは限りなく難しいのではないかと思います。

その難しさについては、当メルマガ『第189回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■「押し紙」行為を暴くことは果たして可能なのか?』
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-189.html で詳しく話しています。もっとも、Sさんは熱心なメルマガ読者の方ですから、すでにご存知の事とは思いますが。

それは新聞社に対してのものでしたが、その話をするために、私は新聞社とクライアントとの間の広告掲載料の取り決め方について調べてみました。

すると、発行部数1部あたりの掲載料だということが分かりました。その契約のどこにも実売部数とは明記されていないのです。

新聞社の言う発行部数とはABC部数のことです。ABC部数とは、経済産業省認可の社団法人日本ABC協会という第三者機関が公表している新聞部数のことを指します。

但し、それは新聞販売店からの聞き取り調査が主ですから、実売部数というわけではありません。新聞販売店は当然のことながら新聞社から納入されている部数でしか日本ABC協会には報告しませんので。

つまり、ABC部数が広告掲載料の基準なら、法律上は詐欺行為にはならないし、不正行為とも言えないということになるわけです。

売れ残り、未配達の余剰紙がどれだけあったとしても、新聞をその分、発行しているのは事実ですからね。発行部数を基準にすれば合法になるということです。

それと同じ理屈で、新聞販売店がチラシ発注業者と1部につき幾らという取り決めだけをしていて、配達実部数に限るという取り決めがなければ言い逃れができます。

そして、たいていの場合、チラシ発注業者はそこまでの事は考えませんので、1部につき幾らという取り決めだけをしているのが普通です。

詭弁と言われるかも知れんが、法律上はそういうことになります。

但し、『1000枚の部分にも対価を払うわけですが、それは廃棄されています』という現場をチラシ発注業者が見つけた場合は違ってきます。

実際、新聞販売店が古紙回収業者にチラシの残紙を引き取らせるために積み込んでいるところを、たまたま販売店にやって来たチラシ発注業者に見つかってトラブルになったというケースを私は知っています。

その時には、さすがにその販売店はシラを切ることができず、平謝りに謝って結局、金銭で解決したとのことですが。

その時、そのチラシ発注業者が詐欺行為で訴えれば、あるいは詐欺罪が適用されていたかも知れません。今までのところ、それはありませんが。

『自治体などのチラシは税金から支払うわけで、必要悪とは思えません』というのも、自治体の関係者に依頼したチラシの残紙を押さえられ、詐欺行為との指摘を受けなければ、そのまま流される可能性が高いと思います。

すべてとまでは言いませんが、役所関係者の方は書類上の不備さえなければ、そんな調査などすることなど、まずありませんので発覚する可能性は少ないでしょう。

もちろん、Sさんが憤られるお気持ちは良く分かりますし、私も良くない事だと考えます。

ただ、『告発するつもりなどありません』ということなら、関わり合いにならない方がよろしいかと思います。

『加担しているのではないか』と心配されておられるのなら、その必要はないと申し上げておきます。

犯罪の荷担とは、その行為を一緒にして何らかの利益供与があることが条件になりますが、Sさんの場合は何もありません。

Sさんは単に正当な業務命令として新聞の配達や業務をしているだけですから、如何なる法律をもってしても罪に問うのは難しいと思います。

法律家の中には、詐欺行為と知って見逃すのは従犯に相当するという人もいますが、単に詐欺行為の可能性があると知っていただけでは、罪には問われることなどありません。

よほど悪質な場合は従犯の可能性があるかも知れませんが、新聞の折り込みチラシ程度の事で摘発に乗り出す警察など皆無でしょうから、それを考えるのは無理がありすぎます。

このケースは最悪の場合でも民事で損害賠償請求されるくらいなものです。ただ、1000枚程度ですと、その被害額は多く見積もって3,500円から4,000円くらいですので、そのために民事で損害賠償請求するというのも現実的ではありません。

それに民事の場合は刑法とは無関係ですから、詐欺の従犯などといった事とも無縁になります。

私が心配する必要はないという所以です。

最後に『所長に忠告しても、従業員の生活があるから、といい逃れ』ということですが、言っても聞かない人には何を言っても無駄です。

次からは何も言わず黙っておられた方がよろしいかと思います。ヘタをするとSさんの立場が悪くなるかも知れませんので。

私もSさんと同じく正義感に燃えるタイプだと自分でも思っています。不正は許せないという気持ちも強い男です。

しかし、この程度といっては語弊があるかも知れませんが、この行為で直接的に誰かが大きく被害を受けるとか、泣く困るということでもないと思いますので、怒りの対象としては弱すぎます。

微罪にまで一々正義感を発揮して怒っていては身が持ちませんからね。世の中には、それ以上の悪質な犯罪行為は山ほどありますから。

結論として、この程度の事なら、関わり合いを持たない、知らぬ存ぜぬでよろしいのではないでしょうか。『告発するつもりなどありませ』ということでしたら尚更です。

Sさんにとっては期待はずれな回答だったかも知れませんが、私の意見ということならそういうことです。


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