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NO.1206 解約違約金の是非について


投稿者 K.Kさん  投稿日時 2013. 2. 2 PM 10:11


はじめまして。いつも勉強させてもらっています。

某新聞販売店で専業をしている者です。先日、お客様が途中解約を希望されるため、「どうしても解約するのなら解約違約金をいただきます」と言ったら、そのお客様から「契約書に記載のない解約違約金を取るのは違法だから支払わない」と言われました。

ゲンさんは、よく途中解約する場合には解約違約金を請求できると仰っていますが、それについての具体的な事例とか法的根拠はあるのでしょうか。

そのお客様は法律に関して詳しいということですので、きちんと説明できる根拠を知りたいのです。

宜しくお願いします。


回答者 ゲン


『契約書に記載のない解約違約金を取るのは違法だから支払わない』というのが、どんな根拠で言うてるのか良う分からんが、契約解除の条文が記されている民法545条の第3項に、『解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない』というのがある。

『解除権の行使』は、販売店側が『どうしても解約するのなら解約違約金をいただきます』と言った時点で認められたことになり、解約できると考えられる。

但し、『解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない』とあるとおり、『解約するのなら解約違約金をいただきます』という部分が『損害賠償の請求』ということになり、法的にも正当な請求と判断されるものと思う。

なぜなら、本来の契約期間満了時に新聞販売店が得られるはずの利益が、途中解約されることで失うことになるための損害賠償請求をしたという理屈になるからや。

契約期間の定めのある契約は無条件には解約できんことになっとる。当たり前やが、いつでも無条件に解約できる契約は、すでに契約ですらないさかいな。

契約とは、「お互いが取り決めた期間は契約書に記載された条件に従って守ります」という文書を交わした約束事になる。

約束は守らなあかん。そして、その約束が守れないのなら、その相手方が納得するペナルティが必要になるという考え方やな。

「特定商取引に関する法律」の第9条に、「訪問販売における契約の申込みの撤回等」というのがある。これが、俗に「クーリング・オフ」と言われているものや。

新聞購読契約の場合、訪問営業を受けて契約をした日から8日間以内であれば無条件で契約解除ができるという特別法でもある。

何でこんな特別法ができたのかと言えば、通常では契約の解除は難しいからや。契約は一旦交わされると法律で保護される。それを解除するには、それなりのペナルティが必要やと法律は言うてるわけや。無条件には解約できんと。

『契約書に記載のない解約違約金』については、どうか。

携帯電話会社との契約などでは違約金額が契約書に明示されているため、契約書に解約違約金を明記するのが当たり前と思っておられる一般の方が多いようやが、それは違う。

解約違約金についての取り決めは、あくまでも当事者同士の合意のもとでするというのが法律の趣旨でもあるから、決まった金額や形式の記載がないことに対しては違法性はないものと考えられる。違約金というのは、あくまでも当事者間の交渉次第で決まることやからな。

解約違約金の記載があれば、逆に消費者側の不利益事項と認定されるおそれがある。下手をすれば、その契約自体が無効と判断されかねん。

現実に、それにより法律の専門家集団と携帯電話会社との間で訴訟問題が数件、起きとる。一審の段階では、その判断が分かれていたが、高裁では解約違約金の記載条項を有効と認め、最高裁でもその決定が下される可能性が高いという。

その記事を紹介する。


朝日新聞朝刊(2012年12月8日)からの引用。

携帯解約金、高裁で「有効」


「携帯電話の割引プランを途中で解約すると、9975円がかかる契約条項の是非が争われた訴訟の控訴審判決が7日、大阪高裁であった。

 渡辺安一裁判長は、NTTドコモの条項を有効とした3月の一審・京都地裁判決を支持。条項を使わせないよう求めた原告側控訴を棄却した。この問題での高裁レベルでの司法判断は初めて。

 原告は弁護士らでつくるNPO法人「京都消費者契約ネットワーク」。

 同じ解約金のKDDI(au)とソフトバンクモバイル(SB)についても京都地裁に提訴していた。auへの判決(7月)は条項を一部無効として差し止めを命じたが、SBへの判決(11月)では請求を棄却し、判断が分かれていた。

 ドコモで争われたのは割引プラン「ひとりでも割50」と「ファミ割MAX50」。

 原告は「一律の中途解約金は、消費者の利益を一方的に害する」と、条項の使用差し止めを求めた。

 渡辺裁判長は、会社の損害を超える違約金を定めた条項は無効とする消費者契約法に基づき、中途解約で生じるドコモの損害額を検討。

 一審判決と同じく、2年間の継続利用を条件に基本使用料が半額になる割引プランを踏まえ、中途解約までの割引総額がドコモの損害にあたると認定した。

 そのうえで、2011年度の割引プラン加入者の月ごとの平均割引額1837円に、中途解約までの平均月数13.5カ月をかけた2万4799円を損害と算定。

「解約金9975円は損害を下回っており、割引に見合った合理的な対価といえる」と結論づけた。

 原告側は「条項は携帯電話会社を変更する自由を侵害し、不当に囲い込むものだ」とも主張したが、判決は「消費者は、割引プランか通常の契約かを自由に選べる。2年の契約期間が社会通念上、不当に長いとは言えない」と退けた。

 原告側は「上告を検討する」、ドコモ広報部は「当社の料金制度は問題ないと理解いただけた」との談話を出した。

■「2年縛り」への苦情増える

 中途解約による会社の「損害」をどう算出するか。

 一連の訴訟では3社横並びの解約金9975円が、会社の損害額を上回れば条項は無効、下回れば有効との判断が導かれた。

 au訴訟では、解約されなければ得られるはずだった「逸失利益」を損害とした。月ごとの平均的な通信料収入から経費などを除くと4千円。これに満期までの残月数を乗じた。満期まで2カ月なら8千円、1カ月なら4千円で解約金を下回るため、「最後の2カ月に限り無効」とした。SB訴訟も逸失利益を損害とした。

 算出方法は異なり、割引プランの加入者による月ごとの平均的な基本使用料などに、中途解約から満期までの平均月数を乗じ、1契約あたり1万2964円と算出。これが解約金を上回るとして、「条項は有効」と結論づけた。

 携帯電話業界では、番号を変えずに会社を乗り換えられる「番号ポータビリティー制度」が導入された2006年10月以降、競争が激化。「2年縛り」とも呼ばれる割引プランを、各社が相次いで導入した。

 国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた携帯電話の中途解約金に関する苦情・相談件数は07年度に1千件を超え、昨年度は2162件に達した。今年度も7日現在で1779件に上る。

 業界に詳しい木暮祐一・武蔵野学院大准教授(モバイル社会論)は「日本の携帯電話の料金体系は複雑で、世界と比べまだ高い」と指摘。

「今回は敗訴したが、原告が消費者を代表し、その不透明さを問題提起した意義は大きい。これを機に、各社が利用者の目線で料金体系やサービスを改善することに期待したい」と話す。」


この記事にも『原告は「一律の中途解約金は、消費者の利益を一方的に害する」と、条項の使用差し止めを求めた』とあるとおり、中途解約金を記載することの方が、法律家にとっては違法性が高いと映るわけや。

幸い、新聞業界では、こういう問題で裁判沙汰にはなっていないが、それには中途解約金の記載がないからやと思う。

新聞購読契約の解約違約金というのは、その販売店次第で大きく違う。解約違約金がまったく必要ないという販売店もあれば、かなり吹っかけ気味の解約違約金を請求するケースがある。携帯電話各社のそれとは大違いや。

但し、「違約金の記載」は『損害額を下回る』というのが条件になっているさかい、それは心しといた方がええと言うとく。吹っかけ気味の解約違約金を請求すると、それ自体が違法と判断されやすいから、取れるものも取れんようになるかも知れんさかいな。

解約違約金の請求として無難な線は、残りの契約月数×50%以下というところやないかな。残りの月数の新聞代金を解約違約金として寄越せというのはあかん。

それやと損害どころか利益が出てしまうから、違法性が高いと認定されてしまいかねんさかいな。一般的な販売店の新聞の仕入れ代金は50%程度やから、それ以下なら問題はないやろうということや。

もっとも、それにしても1年を超える長期契約をそのまま当て嵌めるのはまずいとは思うがな。高額すぎる解約違約金も問題にされる可能性が高いし、何よりそれで納得する人は少ないわな。

こうした違いは販売組織の相違からくるものと思われる。携帯電話会社のショップは、個人客との契約については携帯会社本社の意向、方針が大きく影響するが、新聞購読契約の場合は新聞社は一般読者との契約について一切タッチしない、できないということになっていて、新聞販売店毎にその決定権があるからや。

携帯電話会社は一律に解約違約金額の設定ができるが、全国2万店舗もある独立した会社組織である新聞販売店にはそれはできんさかいな。

また解約に関した法律は他にもあり、例えば民法618条では、「中途解約を認める特約」がある場合には、違約金付きの解約が認められるというのがある。裏を返せば、「中途解約を認める特約がなく違約金付きの条項がない契約」の場合は、違約金の請求は認められないとも解釈できるわけや。

実際、法律家の中には、その論理を主張する人もおられる。違約金の記載をしといた方がええと。もちろん、それとは違う反対の見解の方もおられるがな。

『法律に関して詳しい』という客が、その部分だけを引用して『契約書に記載のない解約違約金を取るのは違法』やと思い込んで、そう言うとる可能性がある。

事ほどさように法律の解釈には、専門家ですら、いろいろ意見の分かれるケースが多いということや。それぞれのケース毎で解釈が違ってくると。その決着をつけるために裁判があると言うてもええ。今回、例に挙げた携帯電話の解約裁判がそのええ見本やと思う。

あんたのケースでは、「契約書に解約違約金の記載がある方が違法性が高いのですよ」、「解約違約金は双方の合意で決めるものですので」と、その客に説明し、納得して貰い、解約に向けた話し合いに入る方が得策やろうと思う。

ただ、『法律に関して詳しい』という客が、それで納得するかどうかは未知数やがな。そういう人はなかなか自分の説を曲げようとはせんさかいな。思い込みの強い人が多い。

納得して貰えなければ「解約には応じられない」として、あくまでも新聞の投函を続け、その代金を支払って貰えない場合、損害賠償請求を起こすしか方法はなくなるかも知れんな。

『きちんと説明』することが、そのまま納得して貰えるとは限らん難しさがあるということや。まあ、たいていの人は「この条件でなければ解約には応じかねます」と言えば、それで折れて諦めて話し合いに応じるとは思うがな。

こういうことは、あんたの一存で決められるものやないから、販売店の経営者に相談して、その意向どおりにするしかないのと違うかな。また、その結論は、販売店の経営者に委ねるようにした方がええと言うとく。


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