新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1223 配達中の物損事故、修理負担について


投稿者 Jさん  投稿日時 2013. 4.29 PM 7:12


アドバイスを頂けたらと思いメールを送らせていただきます。

長男が、A新聞販売店で正社員として無事故で配達と集金業務をしてきましたが、事故をおこしました。

幸い本人に怪我は無く、民家のブロック塀とガードレール、乗っていたバイクが全損の物損事故です。

事故後、社長から物損の保険は入っていないので修理の費用は負担してもらいますと話があったそうです。

実際、給料で本来の手取りが23万だった所、3万円のみの現金しか支給されず、20万円を天引きされてしまいました。

社長から、配達の車は対人と車両の保険には加入、対物は保険の掛け金が高いので入れていない。今回の事故でバイクが60万。ブロックとガードレールの修理で40万の支払いが発生したので、社長個人? 店の経費? から20万出すので、半分の20万は事故を起こした人が負担して下さいと説明されたとの事。

入った時、そんな説明あった? と聞けばいままで、他の従業員が事故を起こした時も同様に負担してきているとの事。

雇用契約書はと聞いても、手元にもらっていない?(身元保証人に夫が署名した記憶はあるのですが)初めから無いのかもと思っています。

新聞配達に事故は付き物? 今回はこの程度の事故で済みましたがもっと大きな事故だったらと、今後の事を考えると不安です。

また、本人があいまいな返事をしたので、一度に20万円を差し引いたのかと思いますが家族の生活は厳しい状況です。

新聞配達に事故は付き物? どんなに経費がかかろうが保険に入ってなければ今回のように事故が起きてしまい修理費を支払う。結果、支出として計上のはず、安心して働ける環境を整えるべきなのに、と思うのですが、これは労基署関係の相談窓口に話してもどうにもなりませんか?

よろしくお願い致します。


回答者 ゲン


『新聞配達に事故は付き物?』というのは、そのとおりや。新聞販売店業務において事故は起きる可能性の高いものと考えておく必要がある。

対人に関しては、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)で死亡や怪我などをした被害者の救済は、ある程度できるとされている。

例え、この自賠責保険に加入していなくとも、自賠責法で政府が自賠責保険に準じた給付を行うことが定められとるさかいな。

ちなみに、ひき逃げなどで相手が不明の場合でもそれが摘要される。また、被害者に故意の過失がない限り救済されるとある。被害者の故意の過失とは、詐欺目的の当たり屋や自殺目的で自動車の前に飛び込むケースなんかのことや。

つまり、交通事故であれば、一部の例外を除いて、すべて摘要され救済されるということになる。但し、自賠責保険の救済には限度がある。

怪我などの傷害の場合は、治療関係費、休業損害、慰謝料などを含めて上限が120万円。死亡事故については、葬儀費、逸失利益、慰謝料などを含めて3000万円が上限。後遺障害の場合は、逸失利益、慰謝料などを含めて4000万円までとなっている。

その範囲で収まるものなら、事、人身事故を起こした場合であれば『今後の事を考えると不安』というのは、ある程度、解消されるものと思う。また『配達の車は対人』というように任意保険に加入しているのなら、その任意保険の上限額まで保障される。

『車両の保険には加入、対物は保険の掛け金が高いので入れていない』というのは、一般的には逆やないかな。対物には加入しているが車両保険は高いので加入していないというケースの方が多いはずや。

念のため、その販売店が加入しているという任意保険の内容を確かめておく事を勧める。

一般的な新聞販売店が加入している任意保険なら、『ブロックとガードレールの修理で40万の支払いが発生した』程度であれば、その任意保険の対物保険から支払われるはずや。負担はその保険で規定されている免責分だけとなる。

もし、任意保険から何も支払われていないということであれば、その販売店は対人を含めて任意保険そのものに加入していない可能性が考えられる。

ただ、任意保険の加入者としては、なるべくならそれを使わないで済むのならそうしたいというのもある。任意保険の仕組みとして、事故回数が多いほど、その保険料が高くなるさかいな。

せやから、その任意保険に加入していても使いたがらないというケースもあるということや。今回、その販売店が『車両の保険には加入、対物は保険の掛け金が高いので入れていない』という妙な説明をしとるのは、そのためやないかと考える。

しかし、その場合は、任意保険の加入者の勝手な判断やさかい、息子さんの事故の場合は販売店側が全額負担するのが筋やと思うがな。従業員に、そのしわ寄せをさせようとするのはおかしい。

そもそも任意保険への加入というのは、万が一の事故が起きた場合に備えるもので、その事故が実際に起きているのに使わないというでは、任意保険に加入している意味がないわな。

『今回の事故でバイクが60万』の損害額というのは嘘臭い。新聞販売店の使っているバイクの大半が原付50tで、大きなバイクでも90t程度のものやと思う。

そのバイクが例え新車やったとしても日本のメーカーのものなら最大でも20万円程度までで買える。一度でも登録して使えば中古車になるから、もっと安い。

使用年数が多くなれば、なるほどその価値は下がるから損害額も少なくなるのが普通や。

どこをどう考えても『今回の事故でバイクが60万』の損害額というのはあり得ん。ワシが嘘臭いと言う所以や。

まあ、バイクの修理代については請求されていないようやから今回は関係のない話かも知れんが、その販売店の信用度ということに関しては疑わしいと言う外はないな。

そうであるなら、『ブロックとガードレールの修理で40万の支払いが発生した』というのも、一応、疑ってかかった方が良さそうや。

『民家のブロック塀』の修理の場合は、その民家の住人が新聞販売店に対して請求した請求書があり、『ガードレールの修理』は、その道路を管理している地方自治体からの請求書あるはずや。

息子さんは、それらの修理請求書を確認されたのやろうか。まだなら、その販売店にそれらの請求書を見せて貰うことを勧める。

当然やが、損害の負担をする限りは見せて貰う必要があるさかいな。万が一、それを拒否した場合は、その販売店の言うてることは嘘の可能性が高いと判断してええと思う。

その事故の内容を詳しく知らんので、あまり軽々なことは言えんが、あんたの話を聞く限りでは『今回の事故でバイクが60万の損害額だ』という明らかな嘘をつく販売店で信用できんと考えるさかい、それらの修理請求書が存在するのか怪しいという気がする。

『4月の給料で本来の手取りが23万だった所、3万円のみの現金しか支給されず、20万円を天引きされてしまいました』というのは、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則に反するので、違法になる。

これに関しては『労基署関係の相談窓口』に相談すれば改善して貰える可能性が高い。具体的には、一旦、天引きしたという給料全額を返して貰い、新に息子さんの責任分の支払いをするというものや。

その販売店が対物の任意保険に加入していない場合、息子さんのケースは業務遂行上の事故ということになり、「損害の公平な分担」という法律の観点から、故意または重大な過失がない限り全額賠償する必要はないとされている。

『故意または重大な過失』ついての確かな認定は、その事案毎で裁判所の判断を仰ぐしかないが、普通は故意にその事故を起こしたとか、飲酒運転や危険運転をしていたというのではない限り『故意または重大な過失』に該当することはないと思う。

「損害の公平な分担」というのは、その事故の内容次第で違うてくるさかい、一概には言えんが、参考になりそうな事案がある。

ある会社員が居眠り運転で事故を起こして相手方に損害を与えたケースで、会社とその社員がその「損害の公平な分担」を巡って争った裁判では、過重労働や会社が任意保険に入っていかなったなどの事情を考慮し、損害賠償額が4分の1になったという判例がある。

社員である加害者の過失があった場合でも業務遂行上の事故であれば、使用者である会社側の負担の方が大きいというのが、一般的なようや。

その点から言えば『社長個人? 店の経費? から20万出すので、半分の20万は事故を起こした人が負担して下さいと説明された』というのは、おかしな言い分やと思う。

それに対して異議を唱えれば、一般的な新聞販売店の業務形態は有給休暇すら満足に取れない、拘束時間が長いということなどを理由にすれば『過重労働』と認定されやすい。

加えて『会社が任意保険に入っていかなった』というのも判例にあるとおり考慮されるはずやさかい、息子さんの場合なら多くても4分の1に当たる10万円以下の負担額というのが妥当な線になるものと思う。

但し、当事者同士が、それで納得した場合は、示談成立ということで済むがな。法律の介入する余地はない。また『今回はこの程度の事故で済みました』ということで、争わないという判断をされたのなら、それはそれで一つの方法や。

ちょっと前までは、事故は自己負担という考えが業界の中には支配的やった。もっとも、今はそれは通用せんがな。

現在、あんたのようなケースで裁判沙汰になって、新聞社にその事実が知れると、その販売店は拙い立場に立たされるのやないかと思う。

ただ、法律やシステム的には、あかんことになっている事案でも、現実にそれを糾弾することのリスクを恐れる配達員も多く、それで泣き寝入りするケースがある。

今回のあんたと息子さんのようにな。

理解のない販売店のトップに異論を唱えると、確実に軋轢が生じる。それにより「クビや」と言い出す経営者もおると聞く。

例え、そうはならんでも、そこでは働きにくくなり、いずれは辞めなあかんようになるのは避けられんのやないかと思う。

雇用者が経営者に例え正論であろうと文句を言う場合は、常にそのリスクがつきまとうさかい、そうする場合はその覚悟が必要になるということや。

ただ、『もっと大きな事故だったらと、今後の事を考えると不安です』ということで、とんでもない賠償額を負担せなあかんようになったら、経営者に逆らうリスク云々などと言うてる場合やないケースも考えられるがな。

このままなら、そうなった場合でも、今回と同じように、その販売店は従業員である息子さんに負担の要求するのは、ほぼ確実やと思う。

あんたの話の流れどおりなら、任意保険の有無の確認、請求書の類の確認をした上で、業務遂行上の事故である点の考慮などを要求して、負担額の軽減交渉をすることになる。

仕事上の事故であれば、その任意保険を使うよう要求できるものと考えるし、加入者である新聞販売店が、その任意保険を使わないと言うのなら、損害額の全額を新聞販売店に支払って貰うよう交渉する必要があるということや。

それに応じないようであれば、『労基署関係の相談窓口』に相談されるのも手やし、その負担額次第では弁護士を通じて交渉して貰うという方法もある。

もちろん、どうされるかは、そちらの判断次第ということになるがな。

『結果、支出として計上のはず』というのは、会社の業務遂行に関連する事故で、かつ、故意または重過失がない場合は、支出した損害賠償金は給与以外の損金の額に算入されることを言うておられるのやないかと思う。

つまり、その分、販売店の税金の納税額が減少するということやな。

普通の販売店であれば、あんたの言うように『安心して働ける環境を整える』ためにも、大半は任意保険をかけておいて従業員の負担を軽減するように配慮しているもんやが、その販売店は、そうやないということになる。

『他の従業員が事故を起こした時も同様に負担してきているとの事』というのが、それを証明しとる。

そのあたりのことも息子さんに話して置かれた方がええと思う。その販売店のやっていることは業界でも最悪の部類に属すると。

今回は、それで良しとしても、「転ばぬ先の杖」を考えて、最悪の事態に備え、事前に対処しておくのは大切やと思う。その意味では、ここに相談されたのは正解や。

ワシからのアドバイスは以上やが、何度も言うが、どうされるかは、そちらで判断して欲しいと思う。アドバイスは参考にするもので、従うものやないさかいな。


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