新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1246 ゲンさんの対応について教えてください


投稿者 ATさん  投稿日時 2013. 9.22 PM 7:27


この度、拡張員を辞める事になりました。理由の1つは成績が上げれず、思うようにお金が稼げなかったからです。

もう1つは、やはり否定に否定される仕事には馴れませんでした。

30件訪問して1件くらい話を聞いてくれて50件に1件ぐらい契約を取れる仕事ならば続けていけたと思いますが、1日200件前後訪問しても契約0の日等が続きました。

入社して最初の頃はテンションも高いので、留守でも断られても次々と叩けていたのですが、次第に在宅率の良い夕方〜夜にしか叩かなくなり、最後の方は夜も過去読だけピンポイントで行くようになり、このまま続けていても会社の為にも自分の為にも良くないと思い、この業界を去る事になりました。

そこで私が拡張中に遭遇した『ゲンさんならどのような対応を取るのだろう?』と言う場面について4つ程、質問させて頂きます。

1・子供がインターフォンに出て私が『お母さんか、お父さんいますか?』と尋ねると『はーい』と言って中からは明らかに母親らしき声が聞こえます。

暫くすると、又、子供がインターフォンに出てきて『お母さんはいません』と言いました。

子供は親に言われたから仕方なく、その対応を取ったのでしょうけど、その瞬間、私はイラッとしてしまい『チッ』と舌打ちしてしまいました。

その後に自分本位の考えで拡張しているからイラッとするのだろうなぁ〜と自己分析をしたのですが、ゲンさんは、このような時どのような態度を取り、どのように気持ちを沈めますか?

似たような場面で、明らかに部屋の中の物音がするにも関わらず、完全に居留守を使われた時も何か自分を否定された気分になり何だか、やりきれない気持ちになりました。

ゲンさんの感情コントロール術等が有れば教えて下さい。

2・断り文句で『今、忙しい』とか『来客中』とか『電話してる』とか、ほぼ100%否定に近い言葉を多く掛けられました。

その時に私は本心では断り文句とわかっていても『では、後で来させてもらいます』と言う事もありました。

そうすると『いや、先も後も来ないで良いから』とか言われ、その時も『わかってるけど断るなら最初からハッキリ断れよ』と思い、インターフォン越しに舌打ちをしてしまいました。

ゲンさんは、このような『忙しい』等否定系の対応をされた時に『後で来ます』とか言いますか?

それとも諦めますか?

それとも『断るならハッキリ断って下さい』等何か言い返したりしますか?

3・この仕事をしていて一番辛い断り文句が『あんた、こんな仕事よく出来るなぁ』、『こんな仕事変えた方が良いで』等の自分のしている職業を否定される言葉でした。

その時には『不景気ですから仕事が無くて…』とか『良い仕事紹介して下さいよ〜』等言ったり本当に低い自分の給料明細を見せたりして同情をかってもらい契約に結びつけた事もありましたが、自分が働いてる仕事を否定されるのはスゴく辛かったです。

ゲンさんが言われて一番嫌な断り文句は何ですか?

4・拡張中に全身刺青をしたオジサンが出てきて『何の用や?』と言われました。私はいつも通り『○○新聞なんですけど、夏の挨拶で粗品配ってます』等と取り繕っていたのですが内心『ややこしい客やと嫌やから早くその場を退きたい』と思っておりました。

ゲンさんは、そういう時でも『立派な刺青ですね』等とヨイショし雑談をして契約に持って行けますか?

訪問販売は訪問される方も怖いと思うかもしれませんが、訪問する側も怖い事あるよなぁ〜と実感した日でした(苦笑)

5・これはハカセ様への質問なのですが、私は仕事の都合上セミナーに行けなかったのですけどセミナーの模様のDVD等を発売する予定は無いのでしょうか?

メルマガに書かれておられましたが、当日は2020年の東京五輪開催が決まった事も有り、当日になって行かれない方もいたでしょうし、また私のような地方に住んでいて当日仕事の都合等で行けなかった人も多数いると思うのですが、動画配信やDVD発売についての見解を教えて下さい。


回答者 ゲン


ワシならどうするのかということが知りたい言われておられるので、そのつもりで順番に答えさせて頂く。

『1・子供がインターフォンに出て……』の質問についてやが、暫くすると、又、子供がインターフォンに出てきて『お母さんはいません』というのは、ありがちなことやと思う。

その家が、初めての訪問先なら「そうですか。分かりました。お母さんには、ゲンさんがまた来ますとよろしく伝えといてください」と、その子供には丁寧かつ優しく言って、その場を立ち去る。

『どのように気持ちを沈めますか?』というようなことなんか考えん。そもそも、その程度でイラつくことは絶対にないしな。

『その瞬間、私はイラッとしてしまい『チッ』と舌打ちしてしまいました』という態度を、その子供に示したのは間違っている。

もっとも、その程度のことは、あんたも『その後に自分本位の考えで拡張しているからイラッとするのだろうなぁ〜と自己分析をした』と言われてるから良う分かっておられるとは思うがな。

あんたは、相手が子供を使って、そう言わせたということに腹を立て、しかも子供相手やからということで、そういう態度を取ったのかも知れんが、それでは営業員、勧誘員としては失格や。

当たり前やが、その子供の後ろには母親がいとるわけで、その子供が、あんたが舌打ちをしたということに気づいていたら、当然、そのことを母親に伝えとると思う。

「今のおじさん、チェッって言ってたよ」と。それを聞いた母親は、「ああ、やっぱり出なくて良かったわ」と思うはずや。

その母親が、そのことに対して反発することもある。行動力のある人やったら、「今、近所にタチの悪い新聞勧誘員が訪問しているわよ」と、同じ主婦に触れ回ることすら考えられる。実際に、そういう例もあるさかいな。

その結果、どうなるかは分かるわな。行く先々で断られるということも十分にあり得る。

『1日200件前後訪問しても契約0の日等が続きました』という中には、そういうケースが含まれているかも知れんわけや。

あんたが訪問した先で取った行動に対して、その家の人間が気を悪くするだけやなく、それが瞬時にその辺りで広まることもあるということや。今やと、携帯メールというのがあるさかい、そういうのを広めようと思えば一瞬やさかいな。

また、その子供には嫌な記憶として刷り込まれるから、あんたが、もし二度目にその家に行って同じように『お母さんか、お父さんいますか?』と言うても、その子供は、あんたの声を覚えている可能性が高いということもあり、その場で即座に『お母さんはいません』と言う確率が高いやろうと思う。

子供の記憶をバカにしたらあかん。あんたも子供の頃、大人から嫌なことを言われたり、されたりした記憶があれば分かるはずや。子供は、そういうのは絶対に忘れんさかいな。

あんたは、そういう態度を取る毎に、あんた自身の行動範囲を狭めていたことに気づいてなかったようや。例え、その態度を常に取っていなくても、そういう気持ちで相手に接すれば、相手は敏感にそれと察知する。

そんな人間を相手にしたいとは誰も思わんわな。

反対に、その子供に対してワシの『丁寧かつ優しく言って』という態度で接した場合はどうやろ?

「今のおじさん、優しい人だったよ。よろしくて言ってた」ということも子供はそのまま伝えるから、その母親も「悪いことをしちゃったかしら」と考えるかも知れん。そうでなくても悪い印象を持たれずに済むはずや。

営業中、この悪い印象を持たれないというのは、契約の正否にも関わる大事なことや。営業の場では、常に笑顔で接することやと、サイトで事ある毎に言うとるが、それを自ら失うようなことをして契約など上げられるはずがない。

少なくともワシは、そう思う。

ワシは無類の子供好きということもあるが、その気持ちが相手のその子供にも伝わることが多い。すると『ゲンさん』というフレーズがなぜか子供の頭に残るわけや。

ワシが二度目以降に、その家に行くと、その子供が「ゲンさんが来たよ」と母親に言うこともある。すると、母親は「誰?」と思いながらも応対に出て来る。子供が警戒していないということが、母親をそうさせるわけやな。

営業中は、例え相手が子供であろうと、誰であろうと、すべてはお客様という意識を持たなあかん。これは営業する上での基本中の基本やと言うとく。

あんたは『拡張員を辞める事になりました』ということで、この業界を離れられるようやが、今後、営業の仕事に就かれることがあるのなら、ワシの言葉を覚えておいて欲しいと思う。

営業の場では、「タカが子供」という考えは絶対にしたらあかんと。

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」という諺にもあるとおり、狙いの客を落とすには、からめ手から攻めることが最良の方策と昔から言われとる。

この場合、子供を味方につけることが、それになる。子供に弱い親は多いさかい、子供を手なずけられれば営業がしやすいということや。逆に子供に嫌われたら、いくら親がその気になっていても辛い営業を強いられることになる。

これは新聞勧誘だけやなく、すべての営業に言えることや。そのため外食産業、百貨店やスーパーマーケット、家電業界、住宅販売、自動車販売など、あらゆる業種で子供を味方につける工夫がされとるわけや。訪問販売も例外やない。

『似たような場面で、明らかに部屋の中の物音がするにも関わらず、完全に居留守を使われた時も何か自分を否定された気分になり何だか、やりきれない気持ちになりました』というのは、ワシなら、そういうこともあると割り切る。

勧誘員やと察知されて出るのが嫌という客を相手にしても仕方ない。そういう客を表に引っ張り出しても、絶対に断ろうという姿勢でいとるやろうから、どれだけ勧誘の手練手管を駆使しようと成約まで持っていくのは難しい。

時間の無駄、徒労に終わるケースの方が圧倒的に多い。

ベテランなら、どんなに難しい客でも落とせると考えとる人が多いようやが、それは違う。

できると言われている者ほど、自分にとって落としやすい客、簡単な客をどれだけ見つけられるか、探す術を持っているということに腐心する。

はっきり言うが難しい客を落とすことが勧誘営業とは違う。どれだけ難しい客の契約であろうと、簡単な客であろうと1本の契約は1本の契約ですらないさかいな。値打ちと実入りに変わりはない。

ワシなら、『明らかに部屋の中の物音がするにも関わらず、完全に居留守を使われた時』の方が、無駄な時間を割かずに済んだ分、良かったと考えるようにしとる。

さっさと次に行けるさかいな。新聞勧誘は、ある意味、時間との闘いやから、無駄な時間は極力避けるようにするべきやと考えとる。

また、意図して居留守を使っていなくても、家事や用事などで手を取られて応対に出られんケースもあるし、タイミングが悪ければトイレで気張っている場合もある。

話し好きの主婦なら長電話中というのもある。今ならスマホやパソコンの画面に集中しすぎて、インターホンの鳴った音にすら気がつかんというウソみたいなケースもあるとのことや。

客が応対に出て来ない理由にはいろいろあるということやな。それを理解しといた方がええ。

そういう場合は、なるべく触らず、次回を期すためにも客には嫌な印象を与えないように注意して、その場を離れる。

そして、何より考えてなあかんことがある。それは新聞勧誘というのは、ワシら勧誘員の一方的な押し売りにより相手の時間を奪う仕事やさかい、相手の客がそれに対応せなあかん義務がないということを認識しとかなあかんということや。

ワシら勧誘員が一方的に勧誘訪問することが法律で認められているように、客側も応対するかしないかの選択権を有しているのやと。

勧誘員の中には「せっかく来たんやから返事くらいしろよ」と考える者がおるとのことやが、そういう気持ちを持っていたんでは相手に誠意など伝わるはずがない。

誠意の伝わらん営業が報われることなど絶対にないと断言する。もっとも、この仕事はそれでも契約が上がることもあるが、それが長続きすることはない。

それを理解していれば、どんな態度をされても仕方ないと我慢できるはずや。

『ゲンさんの感情コントロール術等が有れば教えて下さい』というのは、勧誘中に居留守を使われて感情が乱れることなどは殆どないから、特に感情をコントロールする必要はない。

敢えて言えば、何があっても受け容れるということくらいかな。そう考えれば何を言われようが、断られようがアリやと思える。腹も立たん。

『2・断り文句で……』についてやが、『ゲンさんは、このような『忙しい』等否定系の対応をされた時に『後で来ます』とか言いますか?』というのはないな。

ワシなら『後で来ます』やなく、『それでしたら、お暇なときにでも寄せて貰います』と言う。

『後で来ます』やと、ニュアンス的に今日中にまた来るのかと思われやすいから『いや、先も後も来ないで良いから』と、わざわざ否定した言い方をするわけや。

『お暇なときにでも寄せて貰います』やと、いつ来るか分からんから、敢えて「もう来るな」とは言いにくい。それを言うのなら先に言うてる。

勧誘は言葉でするものやから、こう言えば相手が、こう反応するというところまで予測して言わなあかん。相手に否定の言葉を言いやすくさせるような物言いをすると、本当に否定することしか考えんようになる。それは極力避けなあかん。

『お暇なときにでも寄せて貰います』と言うておけば、自分の都合でその日のうちに来ても1ヶ月後に来ても構わんわけやからな。行動の幅が広がる。

『それとも諦めますか?』というのは、客にそう言われたからやなく、その時々の状況で判断する。客にもいろいろいてて、嫌がっているだけやなくて景品などをつり上げる目的で駆け引きしているケースもあるさかいな。

そのあたりのところを見極める。

『それとも『断るならハッキリ断って下さい』等何か言い返したりしますか?』というようなことは絶対に言わん。

営業員が、それを言うてどうなる? そんなことを言うても、その客から契約など上がらんわな。気分を害させ、挙げ句に口論になって終いや。

あんたが『断るならハッキリ断って下さい』と思うとるのと同じくらい、相手の客も断り文句として『今、忙しい』、『来客中』、『電話してる』と言うてることで『嫌がっていることくらい察しろよ』と考えとるわけや。

それが分かっていれば『後で来ます』とは言えんわな。ワシの『お暇なときにでも寄せて貰います』の方が無難な返答やと分かるやろうと思う。

『3・この仕事をしていて一番辛い断り文句が『あんた、こんな仕事よく出来るなぁ』、『こんな仕事変えた方が良いで』等の自分のしている職業を否定される言葉でした』と言いたい気持ちは分からんではないが、客の言葉に一々反応してたら身が持たんで。

ワシなら『あんた、こんな仕事よく出来るなぁ』には、「ええ、人にはできない仕事をするのが好きでして」と言うし、『こんな仕事変えた方が良いで』と言われると「私も他に何か良い仕事でもあれば、そうしたいんですが。この不景気では……」と切り返してこちらのペースに引き込むようにする。

具体的には、その会話を突破口に雑談に持ち込むわけや。

「この仕事は面白いですよ。お客にもいろいろな方がおられますし……」、あるいは「こんな不景気なときに儲かる仕事なんかあるんでしょうかね……」といった具合に話を膨らませていくことができる。

その点で言えば『その時には『不景気ですから仕事が無くて…』とか『良い仕事紹介して下さいよ〜』等言ったり本当に低い自分の給料明細を見せたりして同情をかってもらい契約に結びつけた事もありました』というのもアリやと思う。

人は勧誘されているのやなく、世間話をしていると感じると話が弾むもんや。そして、その雑談を続けているうちに、相手次第という側面はあるが、お互いに理解が深まり、連帯感のようなものが芽生えてくることがある。

ワシは、これを「人間関係を作る」と言うてるわけやけど、そうした関係が出来上がってしまうと、話を戻して勧誘しても、今度はなかなか断りにくくなる。そこを突く。

あんたが契約できたのも、その人間関係が出来上がったからやと思う。そうでなければ、人はそれほど簡単に同情して契約しようなどとは思わんさかいな。

『自分が働いてる仕事を否定されるのはスゴく辛かったです』 という気持ちは分からんではないが、この勧誘の仕事は「契約を貰ってナンボ」なわけや。

どんな形であれ契約して貰えれば「勝ち」ということになる。ワシなら、そのための一つの方法やったと割り切る。

あんたは何でも真っ正直に言われた言葉を、そのまま鵜呑みにする傾向が強いようやが、客はあんたが受け取っているほど真剣な気持ちで、それらの言葉を言うてるわけやないよ。

それどころか、大半の人が、あんたのことなど、どうでもええという軽い気持ちで言うてるケースの方が多い。あんたが感じられたように、『職業を否定される言葉』に間違いないとワシも思う。その客もそのつもりで言うてるはずや。

人の職業を否定したりバカにしたりするのは良うないというのは誰にでも分かるわな。その誰にでも分かることを平気で言える者は、所詮、そこまでの人間やと考え、逆に「かわいそうな人やな」と思えばええ。もちろん口に出したらあかんがな。

ワシは、どんなにきつい言葉を投げかけられても、それが相手をバカにしたものなら「そんな程度のことしか言えん気の毒な人やな」と考えるさかい、『ゲンさんが言われて一番嫌な断り文句は何ですか?』というのは特にない。

『4・拡張中に全身刺青をしたオジサンが出てきて……』というのもありがちなことやわな。

まあ、ワシは子供の頃からヤクザな連中を間近で見ることが多かったから刺青を見ても、どうということはないがな。

ヤクザというのは、扱い方さえ誤らなんだら、気のええ男が多い。やっこさんらは、金払いは比較的綺麗やから、新聞代の不払いなんかをすることもないはずや。

販売店はそれと知ると嫌がる所もあるが、ワシの知る限り優良読者が多い。

もっとも、ヤクザな相手と関わり合いを持って、えらい目に遭うたことはあるがな。『第34回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■拡張員泣かせの人々 Part3 ノミ屋』にその話がある。

訪問した先の男は競馬のノミ屋やった。ノミ屋というのは、私設公営ギャンブル投票券売を目的とした業者のことや。

競馬、競輪、競艇、オートレースなどの公営ギャンブルがその主な対象になる。ヤクザのノミ屋というと胡散臭い代表のように感じられるやろうが、意外に金銭面に関しては綺麗やし、客に対しては紳士的や。下手な営業員より腰も低い。

不思議に思うかも知れんが、信用第一にこれほど神経を遣う仕事? も珍しいやろうと思う。ほとんどのノミ屋は客からの信用がなかったら、やっていけんからな。

システム的にも公営ギャンブルより1割安く買えるから、お得感がある。

客に利益が出た場合は、レース開催終了日の翌日に各顧客へ直接、勝ち金を届ける。負けた場合は一週間遅れの集金となる。

客の中には、金もないのに熱くなって買うケースも多い。そんな人間の支払いのための猶予期間というわけやな。

しかも、買うのはすべて電話1本で済む。そのギャンブルがしたくても仕事で、その場に行けないようなサラリーマンとか商店主などは便利がええ。

つまり、ノミ屋は、公営ギャンブルがせんようなサービスを徹底してやるわけや。せやから、人気も表には出にくいが高い。

市場は正に闇の中やが、一説には公営のそれより遙かに多く、数倍にも及ぶ売り上げがあると言われている。

もちろん、これは日本では違法行為や。多くの外国ではブックメーカーと言うて、この私設公営ギャンブル投票券売所というのは合法的な場合が多いがな。

日本では、賭博罪としてノミ行為は5年以下の懲役又は500万円以下の罰金という規定がある。犯罪や。

ワシは、勧誘時の行きがかりから、そのノミ行為に関わってしまい、結果的に警察署に呼び出され長時間の取り調べを受けたことがある。捜査四課、通称「丸暴」と呼ばれているヤクザ専門の取り締まりをしとる部署や。

結局、証拠不十分で無罪放免となったが、このとき、つくづくヤクザ者とは関わらん方がええと思うたもんや。

そうは言うても、ワシらの仕事は叩いて(訪問)みないことには、相手の正体なんか分からん仕事やさかい、避けたくても避けられんことの方が多いがな。運が悪かったとあきらめるしかない。

『ゲンさんは、そういう時でも『立派な刺青ですね』等とヨイショし雑談をして契約に持って行けますか?』というのは、その相手次第と状況によるな。

過去には、それに近いケースもあった。

ヤクザは入れ墨のことを「彫り物」「刺青」と呼ぶ。「彫り物」というのはそのままやが、「刺青」と呼ぶ理由は分かりにくいと思う。

これには文学的な理由がある。こう呼ばれ始めたのは、文豪、谷崎潤一郎が1910年に「刺青」という短編小説のタイトルを発表して以降やというからな。

「刺青」は正しくは「しせい」と言うが、今では「いれずみ」と読むのが一般的とされ定着しとる。

入れ墨の起源には諸説あって、単純なものやったら紀元前5000年頃からあったとされる。

歴史の文献でそれとはっきり登場するのは、中国、殷の時代で、今から約3600年ほども昔ということになる。

その頃は、入れ墨のことを「文身」と言い、主に犯罪者に対しての見せしめとして顔や身体の一部に刑罰で入れられていたという。

その刑罰としての入れ墨は日本にも伝来したが、江戸時代の頃になるとその様子に変化が見られるようになった。

特に元禄時代とよばれる江戸時代の華やかな頃にその流行のピークが訪れる。

その流行は、博徒(ヤクザの別称)以外やと、火消し、鳶、飛脚など肌を露出することの多い職人らにまでおよび、彫り物がなかったらむしろ恥やと見なされるほどやったらしい。

その入れ墨の絵柄も華やかさを極めた。龍などに代表される神獣、神仙、神仏、あるいは花鳥風月などの独特の絵柄は、この頃からの伝統やという。

それ自体は、客観的に見て芸術性の高いものやと思う。

ただ、背負うとる人間にヤクザが多いということで、一般にはあまり評価されとらんがな。

入れ墨を入れとるのはヤクザだけとは限らんと言うたが、現代でも大工や鳶という職人たちの一部などに見られるのも、その頃からの影響が色濃く残っているためと思われる。

ヤクザが入れ墨を入れるには、歴史的な背景以外にも、それなりに結構いろんな意味がある。

ヤクザは入れ墨のことを「根性」とも「我慢」ともいう。

針を使い手彫りで全身、入れ墨を入れるのは、相当な苦痛を生じるから、それを我慢するという意味もあるが、それ以上に金がかかるということの方が大きいと聞く。

彫り師の腕や格、図柄、施す範囲などによっても違うが、高額なものになると数百万円もするという。

ヤクザにとって、それを払いきることができるかどうかという「根性」や「我慢」も試される。

単に、痛さの我慢比べなら、ヤクザを志そうという人間にはどうということはないが、金の問題になると、なかなか思いどおりにはいかんからな。ヤクザが見栄を張るのも、それなりに難しいということや。

もっとも、そんな心理はワシには理解できんがな。

「親に貰った大事な身体に傷をつけて」というような説教じみたことを言うつもりはないが、人間の皮膚の下に一生取れんような異物を混入させて、身体にええことはないやろうというくらいは分かる。

実際、ヤクザで長く入れ墨をしとる人間の多くは、肝臓などの内蔵疾患に苦しめられとると聞くさかいな。医学的にもその関連が実証されとると聞く。

もっとも、健康に気を遣う人間が、明日の命も知れんヤクザになることもないやろうから、余計なお世話かも知れんがな。

ただ、入れ墨を入れる行為自体が確実に寿命を縮めとるのは間違いないと思う。しかも多額の金をかけて。

そこまでのことをして、入れ墨を入れとるのやから、ヤクザもそれなりに拘りが強い。

それを承知で褒めてヨイショするのなら、効果的や。殆どの者が喜ぶさかいな。まあ、もともと見栄で入れ墨を入れとるわけやから無理もないがな。

しかし、それとは違い、ごく稀に、その入れ墨に触れられるのを嫌がる人間もいる。元ヤクザで現在は足を洗って普通の仕事をしている人にそういうのが多い。その過去を恥じている人やな。

その場合は入れ墨を褒めることが逆効果になる。ワシが『その相手次第と状況によるな』と言うたのは、そのためや。

『訪問販売は訪問される方も怖いと思うかもしれませんが、訪問する側も怖い事あるよなぁ〜と実感した日でした(苦笑)』と言われるのは、まったく以て、そのとおりやと思う。

ワシはヤクザ者やない一般人から、冬の雪の降る寒い日に、「新聞屋ですが」と言うただけで頭から風呂の水をバケツでぶっかけられたことがあるし、ノックして出てきた住人が、いきなり木刀で襲うてきたこともあった。

何があるか分からんということで言えば、これほど怖い仕事も他にないやろうと思う。もっとも、それ以上に面白い経験と人間に出会える仕事でもあるわけやけどな。

特にハカセとは、ワシが拡張していたからこそ知り合えた男で、そうやなかったら、おそらく一生接点などなかったと思う。

そう考えれば拡張の仕事も、まんざら捨てたもんやないと思えるんやけどな。

以上が、あんたのワシに対する質問の答えやが、これでええかな。


回答者 ハカセ


『5・これはハカセ様への質問なのですが』ということですので、私がお答えします。

『セミナーの模様のDVD等を発売する予定は無いのでしょうか?』ということですが、当初はその方向で考えていました。

しかし、セミナーでの「HP上では言えないここだけの話」には、本当に公にできない話が含まれていますので、敢えてDVDの作成はしないことにしました。

もちろん、その部分に関しては、サイトやメルマガで今後話すこともないでしょう。

参加して頂いた方々の胸のうちにしまって頂ければ、それで十分だと思っています。こんな情報も寄せられてくるのだということで。

それくらい、危うい内容でした。世の中には例え事実であっても公にしない方が良いということがありますので、そうご理解ください。

他の読者の方からもDVDを作成して販売して欲しいという要望が届いています。DVDの販売をすれば、ある程度は売れるだろうとは思います。

しかし、それと同時に信用も失います。

「HP上では言えないここだけの話」では特定の個人情報などは、例によって一切洩らしてはいませんが、日本のマスコミの大多数すら知らない、未報道の情報ですので場合によれば大きな反響を招きかねません。

すでに過去の出来事で、情報提供者の方には時効により法的にも罪に問われないということもあり、セミナーの場で話ましたが、それをDVDにして作成するとなるとサイトで公表するのと同じ事になります。

それではセミナーで公示していた「HP上では言えないここだけの話」にはなりませんからね。ここだけの話は、やはりここだけの話にしなくてはいけません。

私としては、今回のセミナーで話した「ここだけの話」は今後、どこにおいてもするつもりはありません。その話は一度きりで終わりにしたいと思っていますので。

したがって、まことに申し訳ありませんが、今回に関しては動画配信やDVD発売についてはする予定がありませんので、そうご理解ください。

但し、次回以降のセミナーについては、そういった危ない話は避けて動画配信やDVD販売まで考えて開催したいと思っています。

よく考えれば、誰にも知らない「HP上では言えないここだけの話」なら、後の親睦会あたりで個人的にすれば良いだけのことでもありますしね。

当事者の企業や個人の情報さえ漏らさなければ「こういう話がある」という程度の雑談をする分には構わないと思いますので。

単なる噂話の域を出ない話として。

『メルマガに書かれておられましたが、当日は2020年の東京五輪開催が決まった事も有り、当日になって行かれない方もいたでしょう』というのは、正直申しまして、セミナーを開催する側としては痛かったですね。かなり空席が目立ちましたから。

メルマガ『第275回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■第1回「新聞拡張員ゲンさんの嘆き」オフサイト・セミナーこぼれ話あれこれ』(注2.巻末参考ページ参照)の中で、『Y新聞が約700万部もの大量の号外を、その午後に配布する決定を下す』と記載したのは、ある業界関係者の方から、その当日知らされたアバウトな情報でしたが、後日、その正確な数字は842万2705部だったと知りました。

ちなみに、その号外は、その他の全国紙でA新聞26万7970部、M新聞49万9800部、S新聞7万部とのことです。

Y新聞に関しては、ほぼ全国の系列販売店が関わっていたことになります。

その号外配布に関わられた方の参加が難しかったというのは無理もないと考えます。

このようなことは滅多にないでしょうが、『私は仕事の都合上セミナーに行けなかった』、『私のような地方に住んでいて当日仕事の都合等で行けなかった人も多数いる』というのは、実際、事前にそういったご連絡をして頂いた方々が多数おられますので、その方々のためにも今後は動画配信やDVD発売についても、しっかり対応していきたいと考えています。

ただ、今回は、まことに申し訳ありませんが、そういった事情で、DVDの販売はできませんので、ご理解頂けたらと思います。

その代わりと言っては何ですが、「HP上では言えないここだけの話」の公に話せない部分を除いてメルマガ誌上で、今後、何度かに別けて話したいと考えています。

また、読者から寄せて頂いたサイトでは言えない話については、現在『白塚博士の有料メルマガ長編小説選集』 というのを執筆中ですので、今後の作品の中にネタとして挿入していきたいと考えています。

このまま埋もれさせるにはあまりにも勿体ない情報が多くありますので。

過去の作品にも、当然、そういうのはあります。どの部分とは言えませんが。小説として発表する分には、そういう情報をネタとして取り入れても、とやかく言われることはありませんからね。

小説は創作ということになります。それを実際にあった内容の話として受け取られるか、創作物として読まれるかは、あくまでも読者次第ですので。

宣伝になりますが、それらのコアな情報を楽しみにされるのでしたら『白塚博士の有料メルマガ長編小説選集』 をご購読して頂けたらと思います。

今週から第3作『大津坂本人情街道秘話』というのが始まります。

その有料メルマガに乗せた予告宣伝文です。


■次作 第3話 大津坂本人情街道秘話 の予告


 『第2話 我ら、やもめ団ここにあり』は今回で終了しました。長期に渡るご購読、まことにありがとうございました。

 引き続いて次週から始まる『第3話 大津坂本人情街道秘話』の作品紹介をさせて頂きます。

 これは前2作の新聞業界を扱った推理サスペンス、アクション活劇とは趣きがかなり違います。

 ファンタジーと奇妙な物語の両方の要素を持ち、古紙回収業者の悲哀と心温まるエピソードにより人の優しさ、素晴らしさを描いています。また痛烈な社会批判も加えています。

 尚、この話に登場する「時空を超えた状況」は、過去のSF映画やテレビドラマの設定にはなかったものだと自負しています。

 話は全7回と前2作に比べ短いですが、面白さにおいて引けは取らないと思いますので、引き続き、ご購読ほどよろしくお願い致します。


どさくさ紛れに宣伝して、まことに申し訳ありませんでしたが、次作の『第3話 大津坂本人情街道秘話』での「ファンタジーと奇妙な物語の両方の要素」を持つ話の中にも、読者から寄せられたコアな情報も挿入していることをお知らせしておきたかったので、そうご理解頂ければと思います。

以上が、私からの回答ということになります。


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月額 210円 登録当月無料 毎週土曜日発行 初回発行日 2012.12. 1

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