新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1249 新品の電動自転車を返さなければS新聞との解約はできないのでしょうか?


投稿者 HSさん  奈良県在住  投稿日時 2013.10. 6 PM 8:06


3年ほど前に近所の知り合いの方から、S新聞の拡張員の方が店を持つために新聞を取ってくれる人を探しているという事で条件は7年間新聞を取る契約をしてくるなら電動自転車(パナソニック製)と7年間の新聞代金を全て無料(その方が支払ったお金を返金してくれる)という甘い誘いにのり、契約内容は内密ということで契約しました。電動自転車は1ケ月ほどで到着しました。

3ケ月ほどは近所の紹介してくれた人が支払った新聞代金を預かっていると届けてくれましたが、その後は皆無。

その方の話によると拡張員は逃げて指名手配ということで、新聞契約はそのままでした。

違う地方新聞に変えたくて契約解除をS新聞の配達所にいうと、契約書があるので解約するなら電動自転車を新品で返却してもらわなければ出来ないと言われました。

当初の契約の事を話すと我々も被害者でその拡張員は警察につかまっているからといわれました。新品の電動自転車を返さなければS新聞との解約はできないのでしょうか?

契約書のコピーには購入申し込み期間に7年間の日にちと下に電動自転車とだけ記載されています。

宜しくお願いいたします。


回答者 ゲン


あんたの相談内容を聞く限り、いろいろと問題がありそうやな。

その拡張員はもちろんやが、あんたとその新聞販売店、および『近所の知り合いの方』のすべてに責任があると思われる。

『3年ほど前』と言われておられるが、その3年前に『3ケ月ほどは近所の紹介してくれた人が支払った新聞代金を預かっていると届けてくれましたが、その後は皆無』ということは、それ以降は約束が守られていなかったということになる。

その最初の時点で「約束が違うから契約は無効。したがって新聞代の支払いは拒否する」と強硬に主張していれば、少なくともその契約を容認していないとして争うことができたかも知れん。

しかし、あんたからそういう話がないところをみると、その後はその新聞代を支払い続けたのやと思う。そうであるなら、あんたは『条件は7年間新聞を取る契約をしてくるなら電動自転車(パナソニック製)』というのを認めたと解される。

一般論として、当事者同士が認めてしまえば、それは立派な契約として成立する可能性が高い。あんたが例え、しぶしぶそうしたとしても新聞代を支払い続けたという事実が、その契約を認めてしまったという状況証拠になり得る。

あんたの場合、その期間が3年近くも経ってから「その契約は違法やから、やはり解約したい」と言うておられるわけや。

法律上、この今の時点で一方的な解約に持っていくのは難しいと言うしかない。法律云々を別にしても今更な話やわな。何で、今頃になってそれを言い出されたのかは知らんが、遅きに逸した感が強い。

『当初の契約の事』というのは、『7年間の新聞代金を全て無料(その方が支払ったお金を返金してくれる)』で『契約内容は内密』のことやと思うが、そうであるなら、あんたとの契約に関してはその新聞販売店に落ち度はなさそうや。

それどころか、その販売店に対して『契約内容は内密』にしていたという事実で、逃げた拡張員と共謀して騙していたと受け取られても仕方ないことやと思う。その『近所の知り合いの方』も含めて。

ただ、『我々も被害者でその拡張員は警察につかまっているからといわれました』というその新聞販売店の言い訳には首を傾げたくなるがな。

『7年間の新聞代金を全て無料(その方が支払ったお金を返金してくれる)』と言いながら約束を守らずトンズラした拡張員なら腐るほどおる。このQ&Aにも、そんな事例は多い。

しかし、そういう行動を取った事を理由として拡張員が警察に逮捕された事案は皆無やと思う。少なくともワシらは知らん。

その販売店が、拡張員の口車に乗って契約した人の新聞代を、その後も無料にし続けたというのなら損害を受けたとして、その拡張員を訴えることがあるかも知れんが、その後は契約者が新聞代を払い続けたということになると、結果としてその契約は生きた契約ということになり、損失を受けていないと考えられる。

そうであるなら、新聞代を支払って貰い利益を出しているわけやから、その販売店が当該の拡張員を訴える理由と根拠がなくなる。

『その拡張員は警察につかまっている』というのが事実なら、あんたの事案やなく他の事でやと思う。

ありがちなのが「てんぶら(架空契約)」をして景品類と報酬金をその販売店から騙し取ったというものや。それくらいしか考えられん。

もし、そうなら、あんたの事案とは無関係やから、それを理由にするのはおかしいわな。ワシが、その新聞販売店の言い訳に首を傾げたくなるというのは、そういう事や。

あんたが、その拡張員に「騙された」と主張されるのなら、まだ分かるがな。

ただ、それにしても『条件は7年間新聞を取る契約をしてくるなら電動自転車(パナソニック製)と7年間の新聞代金を全て無料(その方が支払ったお金を返金してくれる)』という約束をして騙された事が、どうなのかという疑問は残るがな。

そんな美味い話などあり得ないと考えるのが普通や。まあ、あんたも『甘い誘いにのり、契約内容は内密ということで契約しました』と悔やんでおられるようやから、それは承知されておられるものと思う。

今回の件で、実質的な損害をあんたが受けていると実証されるのは難しいさかい、例えあんたの側からの訴えであっても刑事事件にはなりにくいと考える。

あんたにとっては「騙された契約で支払わされた新聞代が被害に当たる」と感じられかも知れんが、新聞という商品そのものは正当なもので、購読すればその代金を支払うのは当然やと認定される可能性が高いから、あんたの主張が認められることはまずないやろうと思う。

それらの事を考え併せると、今回のケースは契約の揉め事として民事事案ということになる。民事で警察に逮捕されることはないということや。

その新聞販売店が、『契約書があるので解約するなら電動自転車を新品で返却してもらわなければ出来ないと言われました』というのは、契約の条件が『7年間新聞を取る契約をしてくるなら電動自転車(パナソニック製)』やったと認めとるわけやから、それについては景品表示法に違反しとると考えられる。

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)というのは、独占禁止法の補完法という位置づけで公正取引委員会および消費者庁の管轄になっているので、この違反の摘発はそれらの機関でしかできない。

この法律に関しては通常の犯罪のように警察に逮捕されることもなければ、裁判にもならんということや。したがって一般国民からの訴えもできん仕組みになっとる。また適用されるのは、新聞業界の場合、新聞販売店のみで、個人がこの罪で摘発されることはない。

この景品表示法により新聞に適用されるのは、俗に言う「6・8ルール」で、景品付与の上限を『取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲』と決められているというものや。

これを分かりやすく言うと、6ヶ月以上の契約はどんなに長期であっても6ヶ月分の購読料金の8%以下の景品しか渡すことを認めないというものや。ちなみに金額にして2000円弱程度にしかならん。

計算するまでもなく『条件は7年間新聞を取る契約をしてくるなら電動自転車(パナソニック製)』ということになれば、違法性が高いのは明白やわな。

ワシが、その新聞販売店にも落ち度があると言うてるのは、そういうことや。景品表示法に違反している可能性が高いと。

もっとも、その新聞販売店の行為が公正取引委員会および消費者庁に知れたとして、景品表示法の「6・8ルール」で摘発されるかどうかは何とも言えんがな。可能性は低いのやないかと思う。

「景品表示法」での「6・8ルール」がありながら、2003年以降の10年間、ただの1件も摘発事例がないというのが、その根拠や。

あんたのケースは業界でも異常な景品付与に当たる部類やから何とも言えんと言うてるわけやが、単に「6・8ルール」の違反行為をしている販売店ならいくらでもある。当然、公正取引委員会および消費者庁でも、その実態を掴んで把握しとるはずや。

それにもかかわらず摘発事例が、ここ10年間ゼロなわけや。容認とまでは言い切れんかも知れんが、それに近い状態なのは間違いないと思う。

事、新聞業界の「6・8ルール」に関しては有名無実に限りなく近い法律やと。

ネット上の論調で、よく景品表示法に触れた違法な行為やから、それに違反する景品の返還などする必要がないと言う者がいとるようやが、それは違う。

法律は私的制裁を一切認めていない。何人たりとも契約することを条件に貰った物を返さななくて良いということなど法律は認めてないということや。

『新品の自転車を返さなければS新聞との解約はできないのでしょうか?』という質問の答えなら、そうせな解約はできんとしか答えようがない。

『契約書があるので解約するなら電動自転車を新品で返却してもらわなければ出来ない』というのは、それで解約に応じると言うてるわけやから、法律に照らしても妥当な線ということになる。事、あんたのケースでは無茶でも何でもない。

契約を解除した場合、貰った景品分の返還は民法545条の原状回復義務に規定されとるから、如何なる理由での契約解除であっても法律上は、その契約の条件として受け取った景品類は返還せなあかんことになっとるわけや。

契約を解除した場合の原状回復義務とは、双方、契約をする前の状態に戻して「何もなかったことにしよう」ということやさかいな。

高額な景品を受け取れば受け取るほど、返還の際のリスクも高まるということや。

もっとも、あんたは、騙されて受け取ってしまったという認識やとは思うが、そう主張できるのは、それがウソやったと発覚した当初に限られる。

発覚した当初であれば、2〜3ヶ月程度の使用歴やったということもあり、新聞販売店が送り込んで来た拡張員の不法行為を理由に、その電動自転車をそのまま返せば、それで済んでいた可能性が高かったと思う。

少なくとも、その時点でこのQ&Aに相談されていたら、その方向でアドバイスさせて貰っていたはずや。

それを3年近く使ったというのは、その間「得をした」、「利益を得た」ということになる。

契約を解除した場合の原状回復義務が、双方、契約をする前の「何もなかったこと」にするという前提がある以上、使用したことで得られた利益分も含めて返還する必要があるということや。

この場合、貰った状態の電動自転車、もしくはそれと同等の対価を支払う必要があると考えられる。

残念ながら、あんたの場合は、時を逸したという外はないと思う。

あんたは、『近所の知り合いの方』から紹介されて、その方の言葉に納得されて契約したという風に聞こえるが、そのあたりの事情はどうなのやろうか。

その『近所の知り合いの方』が普通の感覚の持ち主なら、『条件は7年間新聞を取る契約をしてくるなら電動自転車(パナソニック製)と7年間の新聞代金を全て無料(その方が支払ったお金を返金してくれる)という甘い誘いにのり、契約内容は内密』というのが、おかしなことや分かるはずや。

それにもかかわらず、あんたに紹介したというのは裏に何かあると考えるのが自然やろうと思う。そうすることで、その拡張員は、『近所の知り合いの方』に何らかの見返りを約束していた可能性がある。

具体的には、謝礼金か、景品類を渡したというケースが多い。ワシも紹介してくれた客には必ず何らかのサービスをするさかい、良う分かる。何もナシというのは考えにくい。

それでなければ『3ケ月ほどは近所の紹介してくれた人が支払った新聞代金を預かっていると届けてくれました』という面倒なことなどするはずがないと思う。

その何らかの見返りというのは当事者同士にしか分からんやろうけどな。また、見返りなど何もないと否定されたら、当事者の一方がおらん状態では、証明できんさかいどうしようもないがな。

ワシの印象では限りなくクロに近く、その『近所の知り合いの方』にも少なからず責任があるとはと思うが、推測の域を出ない状況では如何とも、し難いと言うしかない。

美味しい話には落とし穴が待っているという典型的な出来事として、今後の教訓にするしかないやろうな。

結論として、今の段階で解約したいと言われるのであれば、『解約するなら電動自転車を新品で返却してもらわなければ出来ない』というその販売店の要求に応じるか、それが嫌ならこのまま契約を続行するしかないやろうと思う。


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