新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1250 他の新聞社さんはどのような増税対策をとっているのでしょうか?
投稿者 みっちゃんさん 某新聞販売店勤務 投稿日時 2013.10. 9 AM 8:32
ご無沙汰しております。
いよいよ消費税が上がることになりました。
うちの新聞社も、増税対策という事で3本柱の取り組み「全戸面接訪問」「おすすめ記事」「著名人講演会」を展開しております。
読者を(A)他紙拡張員が営業に来たら連絡をくれる人、(B)担当が勤めている間は購読をやめない、(C)挨拶が出来た。
の3パターンにふるい分け、報告書をつくり《近所の新聞屋サン》的な関係を構築しようという作戦です。
店主も「新聞やめんとってよー」と廻っております。社長が「消費税が上がるけど辞めんとってー」ってどう思われます?
陣頭指揮を執っている方からは「読者は新聞全体の20パーセントしか読んでいない!記事のすばらしさをお伝えするんだ」と販売店ごとに専業主任・店主・店主の奥さんで話し合い、毎日おすすめ記事シートを作るよう指導が入ります。
日本新聞協会でも講演された著名人の公演では申し込み人数を下回り、ある会場ではそのうち半分が関係者でした。
新聞販売店のスタッフが、講演会に誘ってくれば「購読させられる」といった不信感で逆効果になると思うのですが、未読の招待何名…、現読の招待何名…と報告書が送られてきます。
こうなれば、専業さんの無理がきくサクラばかりの講演会になってしまいます。
私もまだ2年の未熟者で、誰にもこんな事言えませんので、げんさんとはかせさんに打ち明ければ、ちょっと気持ちが楽になると思い思わず書いてしまいました。
乱文ですが最後までお付き合いいただいてありがとうございます。
他の新聞社さんはどのような対策をとっているのでしょうか?
回答者 ゲン
『いよいよ消費税が上がることになりました』ということで、あんたのところの新聞社では新聞代にも消費税が加算されることを前提にされておられるようやが、今年の初め頃から、日本新聞協会の軽減税率を求める動きが活発になっていて、大勢としては新聞に消費増税は適用されない方向にあると聞くが、そのことは考慮されていないのやろうか。
それについての詳しいことは、2013年2月1日発行の『第243回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像その7……日本新聞協会の軽減税率を求める声明の矛盾とは』 を見て貰えれば分かると思う。
過去、新聞業界は、2006年の新聞特殊指定の見直し問題、で同様の働きかけをし、事なきを得ているという実績もある。
今回も早くから、新聞の軽減税率、つまり現状の消費税率5%のまま据え置くという方向で政府と話ができているのか、それを求めるためなのかは定かやないが、新聞各社は消費増税そのものに対する反対はしていない。
新聞各社の紙面を見る限り、消費増税賛成、または容認という論調で占められているのが、その証拠になると思う。
ワシらは、日本新聞協会の求める軽減税率が適用され、新聞代金が据え置かれる可能性が高いと見とるが、あんたのところの新聞社では、そうとは考えていないということなのやろうか。
まあ、万が一、軽減税率が適用されんかった時のために手を打っておくのは悪いとは思わんが、それにしても購読客に対して『店主も「新聞やめんとってよー」と廻っております。社長が「消費税が上がるけど辞めんとってー」ってどう思われます?』というのは早計すぎると思うがな。
まだ、どうなるかも決まっていない段階で、そんなことを言えば、「来年、消費税が上がって新聞代が高くなるのなら、契約切れと同時に止めようか」と考える顧客も出てくるのやないかな。
その新聞社が、やっているのは「転ばぬ先の杖」やなく、「寝た子を起こす」ことにしかならんと考えるがな。
逆に、軽減税率が適用されて値上げする必要がなかったときは、その購読客たちにどう言うつもりなのやろうか。
「新聞代金は関係なくなりましたから安心してください」とでも言うしかないやろうが、それなら、消費増税により新聞代の値上げが本決まりになってからでも遅くはないと思う。
それとも、あんたのところの新聞社が、新聞の軽減税率が適用されないという確かな根拠、情報を持っているのなら別やがな。
『陣頭指揮を執っている方からは「読者は新聞全体の20パーセントしか読んでいない!記事のすばらしさをお伝えするんだ」と販売店ごとに専業主任・店主・店主の奥さんで話し合い、毎日おすすめ記事シートを作るよう指導が入ります』というのは、如何にも芸のない発想やと思う。
そんなものは、ワシからすれば単なるかけ声でしかないと思う。「さあ、今日も頑張って新聞を売り込もう」と同レベルのかけ声やと。
『新聞全体の20パーセントしか読んでいない!』のは、ほぼそのとおりやが、残りの80%の人たちに新聞記事のすばらしさを伝えてどうにかなると考えているのやとしたら、おめでたいと言うしかない。
新聞を読まないという人たちは、すばらしい記事があるからとか、ないからということとは関係がないと思う。
しかも、そう言う相手が新聞販売店の人間というのでは、単なる宣伝文句にしか聞こえんわな。
何かの特集記事やコラムなどで人気を博しているものでもあれば、それを推すのは悪くないが、例えそうしたところで心を動かされる人は少ない。
『日本新聞協会でも講演された著名人の公演』というのも企画する側は多くの人にウケると考えがちやが、一般読者にとっては、そんなものに誘われること自体が迷惑な話でしかないと思う。
しかも、その講演会には購読者ではない人を呼び込むことが目的のようやから、よけいや。
あんたが、『新聞販売店のスタッフが、講演会に誘ってくれば「購読させられる」といった不信感で逆効果になる』と言われるとおりにしかならんとワシも考える。
それでも無理に人を集めれば、当然の帰結として『こうなれば、専業さんの無理がきくサクラばかりの講演会になってしまいます』ということにならざるを得ない。茶番や。
新聞を最も読まないという理由の多くは、読む習慣がついていないということに尽きると思う。それでも購読しているという人の多くは、新聞がそこにあるだけで安心するからや。
何かの大事件、大事故でも起きたときに新聞がそこにありさえすればええと。実際、新聞が必要とされるのは、そういうときで、その大事件、大事故がいつ起こるか分からんさかい、何もない平時でも新聞を購読しとるのやと思う。
それ以外では、昔からの慣習で、読む読まないにかかわらず、新聞そのものがそこになければ精神的に落ち着かん、不安になるという人が多いということがある。
新聞があるのが当たり前という時代を生きて来られた人ほど、そういう気持ちになりやすい。
今の若い人たちには、理解できんという声が多いが、簡単に理解できる方法がある。それは携帯電話を取り上げられると想像するだけでええ。
今の若い人に携帯電話のない生活が考えられんのと同じくらい、新聞があるのが当たり前という時代を生きて来られた人にとっては新聞がないことなどあり得ないのやと。
そういう人たちが新聞の購読層を支えていると言っても過言やないと思う。
そうでなければ、新聞社の人間が『読者は新聞全体の20パーセントしか読んでいない』と自信を持って言うてるのに、残り80%の人たちが、その新聞を購読している理由がないわな。
それに、『記事のすばらしさをお伝えするんだ』と考えなあかんのは、その『陣頭指揮を執っている方』やなく、記事を書いている記者、および編集者たちやと思うがな。
本当にすばらしい記事が書いてあれば多くの人が見るし、話題にもなるはずや。わざわざ読者に知らせるまでのことはない。
とはいえ、あんたの立場で公然とその『陣頭指揮を執っている方』に異を唱えるわけにもいかんやろうから、適当に「分かりました。頑張ります」と答えておいて聞き流しておけばええと思う。
『陣頭指揮を執っている方』の言葉どおりにしても疲れるだけで、大した成果など上げられんと思うしな。
それよりも、消費増税により新聞代の値上げが本決まりになったときに、販売店で、その値上げ分程度のサービスをするという方向で考えた方が、よほど実務的やと思うがな。
あんたのところの新聞は、その地域でシェアが80〜90%と高い水準にあるから、例え新聞代を値上げしたとしても致命的な打撃を受けるほどの顧客の減少はないやろうと思う。
その理由を説明する。
現在の購読料は、朝夕セット版で新聞本体価格3738円、消費税分187円で計3925円。朝刊のみの場合は、新聞本体価格2864円、消費税分143円で3007円になっている。
これが消費税8%になると、朝夕セット版で新聞本体価格3738円、消費税分299円で、計4037円。朝刊のみの場合は、新聞本体価格2864円、消費税分229円で、計3093円になる。
それぞれの増税分の差額は、朝夕セット版で112円。朝刊のみの場合は、86円になる。
これを値上げしたと捉えるかどうかという問題がある。一般的には、消費増税はすべての商品に適用されるわけやから、値上げとは思わんのやないかな。購読者もそれくらいは理解しているはずや。仕方ないと。
朝夕セット版やと、「朝夕1部につき3.7円程度です」、朝刊のみやと「1部2.9円ほどです」と言えば、「何や、そんなものか」と思うて貰えるのやないかと考える。
それでも、消費増税分の値上げをした当初は、ある程度の反発があるやろうから、その時には、集金時にでもゴミ袋などの捨て材を中心に余分にサービスを渡すということをすれば、その矛先を躱すことができると考えるがな。
ワシの印象では、あんたのところの新聞社は現時点では、考えすぎ、慌てすぎやと思う。
『他の新聞社さんはどのような対策をとっているのでしょうか?』というのは、今のところ、どこからもそんな声は聞こえてこんがな。
現状では、皆さん『日本新聞協会の働きかけによる軽減税率』に期待されておられるようや。
もっとも、実際には消費増税による景気の冷え込みの方が、新聞代の値上げ以上に大きな打撃になると思うので、そのことを先取りされておられるのなら、そちらの取り組みにも、それなりに意味があるかも知れんがな。
いろいろと批判がましいことを並べたが『《近所の新聞屋サン》的な関係を構築しようという作戦です』という考えはええと思う。
最後に生き残れるのは、購読者に愛された新聞販売店だけやさかいな。新聞社や新聞販売店のためにやなく、どうすれば購読者のためになり、喜ばれるかを考えた方がええと。
『私もまだ2年の未熟者で、誰にもこんな事言えませんので、げんさんとはかせさんに打ち明ければ、ちょっと気持ちが楽になると思い思わず書いてしまいました』というのは、ワシらに話すことで楽になるのなら、いくらでも聞くさかい、また何かあれば、いつでも言うてこられたらええ。
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