新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1251 細かいことは分かりませんが
投稿者 AT さん 投稿日時 2013.10.13 AM 7:32
インターネットで読む人は読むで。新聞で読む人は読む。二つの読み方があって。不利かも知れないのが新聞。
それなら新聞+何かをしないとインターネットには勝てないと思います。
だってインターネットの時代だから。組織のルールとか新聞人のポリシーとか上下関係など。ありますが、まずはそれを知らないと攻略は難しいと思います。消費税で新聞代上がる。読者離れしてから色々分かる事もあると思います。
回答者 ハカセ
私どもへのご意見、ご感想、またご忠告と思われるアドバイス、まことにありがとうございます。
今回は特にゲンさんへの質問、相談ということではなさそうですので、私がお答えします。
ATさんのような見方をされている一般の方が世の中の大勢を占めているではないかと思います。
ただ、件名で『細かいことは分かりませんが』と言われておられるように、新聞業界の事情やインターネットの事情について、あまり多くを知られておられないとお見受けしましたので、その点について僭越ながら私から説明させて頂きます。
その上で、再度、ご意見を賜ればと思います。
まず、私についてですが、私は新聞業界とは縁もゆかりもない一般新聞読者です。その私が9年3ヶ月前の2004年7月3日に、友人で現役の新聞拡張員である「ゲンさん」をメイン・コメンテーターに迎え、当サイトを開設しました。
当初は、新聞の勧誘歴10年のゲンさんの経験と知識を頼りに始めましたが、今では日本全国の一般紙(全国紙、ブロック紙、地方紙の総称)の新聞社関係者、新聞販売店、新聞拡張団といった数多くの業界関係者の方から協力して頂いていますので、おそらく日本で最も新聞業界の情報量が多く集まるサイトではないかと自負しています。
「門前の小僧、習わぬ経を読む」ではありませんが、サイトの運営年数に比例して私の知識量が増えたということもあり、現在では日本で唯一の「新聞勧誘問題研究家」として雑誌等に寄稿させて貰っています。
また、ネット上の評価も早くからYahoo!JapanやGoogle日本といった大手ポータルサイトなどで格別の待遇を受けています。そのため、当サイトで掲載している多くのページが、それらの検索で上位表示されているということもあり、人気サイトとして一応の評価を得ています。
また、インターネットに関しては1995年頃から始めていますので、18年程度のキャリアがあります。
インターネットについて説明すると長くなりますので、今から5年前の2008年8月22日の当メルマガ『第11回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞とインターネットの関わり方について』を見て頂ければと思います。詳しく説明していますので。
上記のことは自慢したくて言っているわけではありません。単に長くやってきたことで得られた知識と結果にすぎませんので。
私が、これらのことで言いたかったのは、新聞業界とインターネットの両方にある程度、精通しているということです。つまり、両方の立場から冷静に見ることのできる人間だとお知らせしたかったのです。
『不利かも知れないのが新聞』とATさんが言われるのは、現時点でインターネットの方が、新聞より優勢と考えておられるからだと思いますが、果たしてそうでしょうか。
ネット上では新聞を擁護する意見より、批判的な論調の方が多く存在するのは確かです。
ブログなどでは圧倒的に後者の方が多いですからね。ネットだけを見ていると新聞離れが進み、新聞には未来がないと感じられるかも知れません。
インターネットの台頭により新聞離れが進んでいないとは言いません。しかし、それは一般の人が考えておられるより多くはありません。
インターネットの利用人口普及率は、総務省の統計によると、初期の頃の1997年が10%程度でしたが、2011年には79.1%まで伸びているというデータがあります。
それに対して新聞の発行部数は、1997年当時、約5365万部だったのが、2011年には約4835万部にまで減少しています。15年ほどで約530万部の減少、率にして約10%です。
これは新聞業界としては異常なペースの減少で、その意味ではインターネットの台頭が大きく影響しているのは間違いないと思われます。もっとも、それがすべての理由ではありませんが。
ただ、それでも新聞の普及率は、現在でも88%を維持していると新聞協会の発表にあります。1997年当時が93%でしたから、5%減ということになります。
もっとも、発行部数と実売部数は、予備紙、押し紙、積み紙などの残紙の関係で必ずしも一致しませんので、それ以下なのは確実ですが、最低でも約75%以上の純粋な普及率を確保しているのは間違いありません。
つまり、国民の4分の3以上は実際に新聞を購読しているということです。それが多いか少ないかは意見の別れるところではありますがね。
一般的には、業界に精通しているという業界関係者でも新聞社の発行部数と実売部数の比率など推定すらできないのですが、ひょんなことから、私にはそれが可能になりました。
先月の9月8日、東京国際フォーラムにて第1回「新聞拡張員ゲンさんの嘆き」オフサイト・セミナー というのを開催しました。
その日、出席を予定されていた新聞販売店関係者の方が数名、やむなく欠席されました。
それは、当日になって新聞各社が、早朝に決定した2020年の東京オリンピック招致の号外を配布することになったからでした。
通常の号外は駅前などで配布されるのですが、Y新聞に限って、全顧客宅へ号外を宅配することにしたのです。
そのため、本来ならその9月8日は新聞休刊日で新聞販売店の方は休みだったのですが、急遽、仕事をしなければいけないことになりセミナーを欠席されるしかなかったわけです。
その後の情報からY新聞では全国の新聞販売店を対象に、実に842万部もの号外を発行していたことが判明しました。号外に、予備紙、押し紙、積み紙などの残紙などは殆ど必要ありませんから、それがY新聞の実売部数に近い数字ではないかと推測できます。
なぜなら、号外はすべて新聞社の負担ですので余分に刷ることは考えにくいからです。購読客から、その号外分のお金を貰うわけにはいきませんからね。
Y新聞の公表発行部数が約994万部ですので、そのうちの約842万部が実売部数ということであれば、Y新聞全体として予備紙、押し紙、積み紙などの残紙は約152万部ほどあるという計算になります。
Y新聞社で発行する新聞の約84.7%に該当する部数が実際に購読者に届けられているということです。
業界でもY新聞は残紙の多い方だと言われていますので、それを他の新聞社にも適用すると仮定します。
その場合、新聞協会発表の普及率88%に、約84.7%をかけた約74.5%が実質的、もしくは最低ラインの新聞の普及率だと考えられます。
しかし、今回の号外はY新聞社と協力関係の薄い合配店や複合店、あるいは僻地や離島などの交通の便の悪い地域には配布されていないということですので、その分を約842万部の実売部数に加えなければいけません。ですので、実際には新聞普及率は、その数字より多くなるはずです。
ちなみに、合配店というのは、地方紙とすべての全国紙を取り扱っている新聞販売店のことで、立場的に新聞社よりも強いため新聞社の方針に従わないケースが多いとされています。複合店というのは2紙以上の一般紙を配達している新聞販売店で、合配店ほど強い立場はありませんが、新聞社の意向を拒否する場合もあると聞きます。
余談ですが、合配店はすべての新聞を扱っている手前、勧誘する必要性がないということで勧誘員は存在しません。複合店は、その販売店の都合により勧誘員が存在するケースもあるようです。
Y新聞社は、意向に従いそうにないそれらの合配店、複合店には、最初から号外の配布を依頼するようなことはしませんので、その分の部数は刷らないものと思われます。
その合配店、複合店の実数の確かな数字は把握できませんが、私どもに寄せられる情報から察するに、少なくとも日本全国に200店舗、部数にして30万部程度はあるものと考えられます。
それを加えて計算しなければいけませんので、私が『最低でも約75%以上の純粋な普及率は確保している』と言った意味が、それで分かって貰えるものと思います。
インターネットの利用人口普及率が79.1%で、新聞の実質普及率が最低でも75%あるということは、大多数の人がインターネットもすれば、新聞も購読しているものと考えられます。
この結果から、現時点では新聞とインターネットは「共存共栄」に近い状態だということが言えます。少なくとも負の相関関係にはなっていないと。
インターネットの台頭で新聞が衰退しているという見方をする人は多いですがね。
実は、数年前までは、私もそうでした。今は多くのデータを知ることができるようになっていますので、必ずしもそうではないと言えます。
『インターネットには勝てないと思います』と言われる人の多くは、いずれ新聞は消滅し、インターネットの世の中になると信じておられるようですが、その考えに私は懐疑的です。
確かに、このままでは新聞はジリ貧状態のように思えますが、私にはそれよりも先に、現在のインターネットの方が危うい状況に陥るのではないかと危惧しています。
その理由について、これから説明します。
まず勝ち負けについてですが、何を以て、そう判断すると言われるのでしょうか。
インターネットの利用人口普及率が79.1%というのは、限界に近く現時点の日本ではこれ以上の伸びは期待できないのではないかと思います。であるなら、今がピークということになります。
新聞の実質普及率が75%というのも、ここ数年ほどは新聞全体で毎年20万部前後の部数減になっているとはいえ、少子高齢化による人口減も、ここ2、3年は毎年25、6万人前後で推移していますので、自然減と考えて差し支えないかと思います。
当たり前ですが、新聞は人が読むものですから、人口が減れば、その分部数も減ります。
この先も人口減が続くのは間違いありませんので、その分、新聞の部数も減り続けるでしょう。
しかし、これはインターネットの台頭とは、あまり関係がありません。なぜなら、インターネットがなくても同じように新聞の部数は減っていたはずだからです。
インターネットの台頭による新聞部数の減少が証明されない限り、新聞がインターネットに負けたとは言えないのではないかと思います。もちろん、若い人の新聞離れを否定するわけではありませんが、それによる部数減は致命的なものではないということです。
現在、日本新聞協会と文部科学省の進める学校教教育の場で新聞紙面を導入した授業が導入されていますので、将来的にはネット依存中心の世代が少数派になることも考えられます。新聞紙面を導入した授業が導入されるということは、当然のことながら、試験勉強もそれに即したものにしなければならないということを意味しますからね。
昔、私たちは大人から「賢くなりたいなら、新聞くらい読めよ」と言われましたが、それと同じように、未来の年少者から新聞を読んでいないことでバカにされるかも知れないということです。これはご希望があれば説明しますが、データ的にも新聞を読んでいる人の方が学力が高いということがありますからね。
もっとも、新聞社にとって普及率約75%という数字は、とんでもない部数減かも知れませんがね。ただ、あらゆる世の中の商品と比較した場合、人口の75%強が毎日買っているというのは驚異的であるとさえ言えます。他にそんな商品など見当たりませんからね。
まあ、新聞社にすれば、ホンの10年ほど前までは実質普及率が90%を超えていたという意識が強いようですので、それからすれば激減ということになるのでしょうがね。
次に新聞、およびインターネットが社会に与える影響力について考えてみます。
これについて端的に表れたのが、昨年末の総選挙ではないかと思います。
当メルマガの『第236回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんの第46回衆議院選挙の傾向と予想』 の中でも触れていますが、新聞の多くが自民党圧勝の方向に世論を誘導していました。
それに対してネットは自民党圧勝に危惧する意見が多く存在していました。
その反動として、『Yahoo!みんなの政治』では、日本未来の党(現、生活の党)の支持率が30%でダントツの1位になっているというものまでありました。もっとも、同じネットでもニコニコ動画では自民圧勝でしたが。
はっきり言ってネット上の意見は割れていました。しかし、結果はご存知のように新聞、テレビの予想どおり自民党の圧勝に終わりました。
理由は投票率の低さにあったわけですが、新聞やテレビのマスメディアによる、選挙期間中の選挙報道がなぜか少なかったように思います。
確かに、選挙期間中に「笹子トンネル崩落事故」や「三陸沖を震源とするM7.3の地震」、「北朝鮮のミサイル発射」といった大きな事故、出来事が続いたということもありますが、それにしても選挙報道が少なすぎるように思えてなりませんでした。
穿った見方かも知れませんが、選挙報道をすればするほど自民党に不利な情報が出るのを新聞やテレビのマスメディアは恐れていたのではないかという気がします。
普通に考えれば、増税推進、原発推進、軍国右翼化傾向、憲法改正といったスローガンを掲げる党が圧勝することなど過去の例からしてあり得ないことでしたからね。
しかも、その3年前に国民から見放された政党が、それを主張しているわけですから、尚更だと言えます。
しかし、新聞、テレビのマスメディアが自民党圧勝を演出する狙いがあったとすれば、少なくとも私にはすべて納得できます。自民党に反対する勢力の考えを変えることはできなくても、選挙に行かせないようにすることで自民党を圧勝させることができると。
結果として、世論は新聞、テレビのマスメディアの思惑どおりになったと私は考えています。
事、この選挙に関して、あるいは今年の7月21日投開票された「第23回参議院選挙」については、ネット上の論調より、新聞、テレビのマスメディアの報道の方が勝っていたことは明白です。その予想どおりの結果になったわけですからね。
くしくも、そのいずれでも戦後最低ラインの低投票率になっています。
これを以て、新聞、テレビのマスメディアの勝ち、インターネットの負けとは断言できないかも知れませんが、影響力という点では、新聞やテレビのマスメディアに軍配が上がったのでないかと私は考えています。
もちろん、将来的には人口減がもっと進むということもあり、また現在の新聞のファン層と言われる高齢者が減少するということも相俟って新聞の衰退は避けられないでしょう。
しかし、その時はインターネットも一緒に衰退、もしくは収拾のつかない状態に陥る可能性があります。
ネット上では新聞やテレビのマスメディアに批判的な論調が数多くあります。私たちも過去、新聞社に対する苦言を数多く言ってきていますので、それについては同じです。欠点や直すべき点の多いことも承知しています。
ただ、それでも私は新聞をなくすべきではないと考えています。
インターネット上で話題にされている事件や事故、出来事の大半は新聞やテレビなどのマスメディアで報道されているものが大半を占めています。
もし、今の状態で新聞やテレビなどのマスメディアが消滅し、マスメディアから発信されていた報道がなくなった場合を想像してみてください。
現在、インターネット上の多くは、新聞やテレビなどのマスメディアを批判をしていますが、それで報じられている事件や事故、出来事を話題にすることで成り立っているのも事実です。
それがなくなれば、彼らは何をテーマに語るのでしょう。また、どのようにして語るべき情報を得るのでしょうか。間違いなく、狼狽え、困惑するはずです。
自ら問題を提起し、発信をしているネットメディア、およびサイトやブログは、ホンの一握りにしかすぎません。自慢するようで気が引けますが、当サイトもその一つです。
当サイトの場合、情報提供者の方が数多くおられますので発信することに事欠く心配は、おそらくないものと思います。
しかし、自ら情報源を持ち合わせない人には何も発信することができなくなるのです。つまり、新聞やテレビなどのマスメディアを批判しておられる方こそ、実はそれらの媒体がなくなると困るという矛盾を抱えていることになるわけです。
ネットメディアが、新聞に取って代われるほど力をつけていれば問題はないのですが、現在のように新聞やテレビメディアの後追い報道をしてコメントしているだけではどうしようもありません。
現時点でのネットメディアの成熟度は、新聞やテレビなどのマスメディアには遠くおよばないというのが正しい認識だと思います。
新聞に勝つ負けるを論じるためには、新聞の報道を必要としないネットメディアの確立が急務だと考えますが、現時点では限りなく難しいという外はないでしょう。
残念ながら、そうなるためには時間がまだまだかかるでしょうし、そのための組織を形成する必要があるというのが、私の考えです。現時点では、その芽すら感じられませんので、限りなく難しいという外はありません。
『消費税で新聞代上がる』と言われておられることについては、新聞に関しては消費税増税が適用されない可能性が高いと言えます。
それについての詳しいことは、2013年2月1日発行の『第243回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像その7……日本新聞協会の軽減税率を求める声明の矛盾とは』 で話しています。
政府高官たちへの働きかけだけではなく、現在は全国の自民党の地方議員へも、その訴えの輪を拡げているということもあり、日本新聞協会は相当真剣に取り組んでいるものと考えられます。
もっとも、私たちはその動きを評価していませんがね。ただ、『消費税で新聞代上がる』可能性が低いというのは、どうやら既定路線になりつつあるようですので、そのことはお知らせしておきます。
『読者離れしてから色々分かる事もあると思います』と言われるのは、まさにそのとおりだと考えますが、今以て、先に話したような事情からなのか新聞社には、あまり危機感がないようです。
ただ、現場の最先端で勧誘している新聞販売店や新聞拡張団の方々は、かなり危機感というか、焦燥感に囚われておられますがね。
この業界は、新聞社と現場の温度が違うということが多々あります。まあ、新聞社の人は、購読者と直接触れ合うことがありませんので、どうしてもそうなるのかも知れません。
ATさんから寄せられた、ご意見に対する『細かいこと』の説明は以上になります。尚、このことについて何かご質問があれば遠慮なく仰って頂ければ、またお答えします。
この業界の諸問題について、私たちは9年以上もかけて述べ2000ページ以上のスペースを割いて語り続けていますが、それでも未だに語り尽くせていないほど奥の深い問題です。
他にも知りたいことがあれば、またお知らせください。それでは、今後とも当サイトをよろしくお願い致します。
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