新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1264 この場合、違約金はどうしても払う必要があるものなのですか?


投稿者 Hさん  投稿日時 2014.1. 8日 PM 2:09


はじめまして。

今から6年前にS新聞と7年間の契約をしました。その時に液晶テレビをもらいました。
その間に2回ほど引っ越しをしましたが、継続でしていました。

今から1年半前に現在住んでいる所に引っ越ししまして、そこから不配達が目立つようになりました。

私の家族は朝はバタバタしており夕方に新聞を取り見ているので、気が付いたときに配達している所の会社に電話しても繋がりません。

集金に来た時に再三注意しましたが、先月も2回入れ忘れています。

もう購読をやめようと昨日配達する会社に電話しましたが、「テレビをあげているのでそれは無理です」

「違約金を払うことになります。違約金はテレビが9,000円で違約金が15,000円の合計24,000円です」と言われました。

テレビ分の9,000円は支払うつもりですが、違約金の15,000円はどうしても払う必要があるものなのですか?

ご意見を聞かせてください。


回答者 ゲン


あんたの場合は、『不配達が目立つようになりました』、『集金に来た時に再三注意しましたが、先月も2回入れ忘れています』ということを理由に解約することができる。

新聞販売店には、遅配なく新聞を配達する義務がある。それを怠れば、契約不履行に問える。

それも一度だけというのなら、ともかく再三に渡り注意していたにもかかわらず、不配を繰り返すようでは弁明のしようがない。

今後も不配を繰り返す可能性が高いと思われる。おそらく同じ配達員なのやろうな。

あんたと同じようなケースに『NO.1025 不配が続いたことを理由に解約できるのでしょうか』 というのがある。

そこで、


新聞購読契約とは、新聞販売店は遅滞なく新聞を宅配する責務を負い、契約者はその代金を支払う義務があるとされとるものや。

どちらか一方が、それを怠れば、「契約不履行」と見なされる可能性が高い。「契約不履行」となれば、当然やが正当な解約理由になる。

一般的な販売店では、こういうケースで客が「解約する」と言われれば、それに抗することが難しくなるということで、配達員からその保険として「不配」した場合、罰金を徴収するケースが多い。

また、それが度重なった配達員をクビ(解雇)にするということもある。

これらの事実は、販売店がその不配行為に対して厳しい姿勢にならざるを得んからしとることや。その背景には、購読客から契約解除されても仕方がないという思いがあるということやな。

せやから、あんたがどうしても契約解除を望むのなら、「そちらの契約不履行により、約束どおり、解約しますので、もう新聞は入れないでください」と言えばええ。


と言うとるが、あんたの場合も「契約不履行」に問える。その場合は、その販売店の不法行為ということになり、解約違約金の請求はできんものとされとる。

というか、不配が原因の解約トラブルで、解約違約金を請求する販売店の方がおかしいわな。そんな話は聞いたこともない。

この場合、あんたの方には何の落ち度もない。不配が続いていて直らないから「解約する」と言うのは、当然のことやさかいな。

『NO.1025』のケースも同じS新聞やったが、その非を認め解約にも素直に応じとる。もちろん解約違約金などナシでな。

その後に、


但し、ここで問題が一つある。

不配による契約不履行を理由に契約解除することは可能やが、そうなると、その契約時に貰った景品、およびサービス分の現物またはその代金分を返還せなあかんということになる。

これは、民法545条の規定に「原状回復義務」というものがあるためや。

いかなる契約も、その当事者が契約解除を通告する場合、その契約を全うすることを条件に貰ったものは返すべきという法律の考え方がある。

よく、「販売店が悪いのに、何で貰った物を返す必要があるんや 」と言われる人がおられるが、契約不履行などの相手方の落ち度による契約解除権とは、文字どおりその契約を解除できる権利が得られただけにしかならんということや。

せやから、契約を解除する分には何の問題もない。しかし、それと貰った景品、サービス分は別にして考えなあかんということや。

それに納得できん人も多いがな。

契約を解除するということは、その契約をなかったものとすることや。つまり契約以前の状態に戻すという意味やから、必然的にそうなるというのが法律の考え方なわけや。

法律では、例え相手方のミスにより受けた損害であっても法的手続きをすることなく、勝手にペナルティとして代理弁済させる、または強制徴収することはできんことになっとるさかいな。

その販売店にとっては、契約解除されるというだけで、今後の利益が得られんようになった分、制裁を受けることになるわけや。法律にはそれで十分という考え方がある。


と続いているが、これは今までサイトのQ&Aで繰り返し言うてきたことでもある。

それがここにきて、事、新聞業界に限っては当て嵌まらんようになった。

『テレビ分の9,000円』も支払う必要がなくなっていると考えられるというのが、そ
れや。

それについては、『第286回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読契約ガイドライン決定……今後のQ&Aでの影響について』 で詳しく解説しているので見て頂ければ分かるとは思うが、簡単に説明しとく。

2013年11月21日。日本新聞協会、および新聞公正取引協議会が「新聞購読契約ガイドライン」を発表した。

まずは、そのガイドラインの内容を知らせる。


http://www.pressnet.or.jp/news/headline/131121_3380.html より引用


購読契約ガイドライン発表 新聞協会・公取協、解約トラブル防ぐ


 新聞協会と新聞公正取引協議会は11月21日、読者から解約の申し出があった場合の対応の指針となる「新聞購読契約に関するガイドライン」を発表した。

 新聞公正競争規約のほか、特定商取引法、新聞訪問販売自主規制規約を順守し、解約に関してもガイドラインを設けることで、読者とのトラブルを防いで公正な販売活動を目指す。

 ガイドラインは、長期契約をめぐる高齢者からの苦情が目立つとして国民生活センターから改善要望が寄せられたことを踏まえ、策定した。

 解約に応じるべき場合と、丁寧に話し合って解決すべき場合に分け、具体的な事例を列挙している。

 長期や数か月先の契約を抑制するため、公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならないと定めた。

 また、クーリングオフ期間中の書面による申し出や規約違反、相手の判断力不足、購読が困難になる病気・入院・転居、購読者の死亡、未成年者との契約などを、解約に応じるべき場合として挙げた。

 これらに該当しない読者から都合により解約したいとの申し出があった場合も、丁寧に話し合い、双方が納得できる解決を図らなければならないとしている。

 消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する。


というものや。

この中に『公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならないと定めた』という文言がある。

『公正競争規約の上限を超える景品提供』とは、新聞に適用される景品表示法『6・8ルール』のことで、『景品付与の上限を『取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲』と決められている』というものや。

6ヶ月以上の長期契約に適用されるのは『6ヶ月分の購読料金の8%』で、一般的な朝夕セット版の新聞購読料金を例にすると、6ヶ月以上の契約の場合に渡せる景品額の上限は、3925円×6ヶ月×8%=1884円というのが上限ということになる。

但し、新聞協会では1920円を上限としている。これは新聞購読料金が新聞社により違うため、便宜的に1ヶ月の購読料を4000円にすると統一しているからや。

1ヶ月分の新聞購読料金4000円の8%は320円になるさかい、その6ヶ月分で1920円になるという計算やな。

いずれにしても、最大でも2000円弱程度までしか景品提供したらあかんと新聞協会が決めたわけや。そのため、それを超えた景品サービスをした場合、解約に際して景品の返還を求めたらあかんことになった。

それからすると、『テレビ分の9,000円』というのは『6・8ルール』を完全にオーバーするさかい、返還の必要はないということになる。

ワシが、『テレビ分の9,000円』も支払う必要がなくなっていると考えられると言うてるのは、そのためや。

もっとも、あんたが『テレビ分の9,000円は支払うつもりです』と言うておられるのを止めろとは言わんがな。それは、あんたの自由にしたらええと思う。

それに法律的には先にも言うたように、契約を解約した場合は民法545条の規定の「原状回復義務」が適用され、契約することを条件に受け取った物は、その契約の解除に伴って返還する義務があるさかいな。

しかし、新聞業界に限っては、その法律より新聞協会の取り決めの方が優先されるから、『公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならない』という方を新聞販売店は厳守せなあかんわけや。

つまり、新聞業界にとって「新聞購読契約に関するガイドライン」というのは法律以上の重みがあるということや。

結論として、あんたの場合は不配による契約不履行を理由に解約できるから、解約違約金など支払う必要はないと考えられる。貰った液晶テレビの代金も返還する必要がない。

ただ、その販売店にそう言うても、「新聞購読契約に関するガイドライン」が決まったのは、つい最近やから、それが浸透していないということもあり異を唱えて揉める可能性がある。

揉めても、あんたが負ける、あるいは折れる必要はないとは思うが、面倒なら「テレビ分の9,000円は払うが、それ以外の解約金は払わない」と言えばええ。

その販売店に「新聞購読契約に関するガイドライン」で決まっていることやと言えば、それで引き下がるかも知れん。

あるいは最後通告として、「再三に渡る不配をなくしてくれるのなら、考え直してもええ」と言うのでもええ。その具体策を示してくれと。

不配の原因は担当の配達員にあると思うので、その配達員を変えると言うのであれば不配がなくなる可能性はある。

ただ、あんたの方から、それを要求せん方がええ。配達員を変えても100%不配がなくなるという保証はないし、当の配達員に恨まれてもつまらんしな。

その販売店に任せればええ。その販売店の返事次第で、あんたが納得できるのであれば、そうするのも手や。それが揉め事にならん最良の方法やとも思うしな。

もっとも、最終的にどう決断されるかは、あんた次第や。あんたの判断に任せる。

ただ、こういった取り決めがされたばかりの過渡期には、「そんなことはない」と言う販売店もあるさかい、この件で揉めて困るようなら、また相談してくれたらええ。


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