新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1265 拡張員のカード料が変更されるようですが
投稿者 Kさん 投稿日時 2014. 1.18 AM 1:33
拡張員のカード料についてです。
2014年2月or3月から拡張員のカード料が変更されるようですが・・。
変更されるのは、三ヶ月のカード料のみ(当月料もなし)で六ヶ月以上のカード料は変更なしのようです。
三ヶ月のカード料は約半額になるようですが、この話はY新聞の東京管轄の話です。
Y新聞の話は、今月中旬に拡張団団長が本社に集められて、説明されたので確実です。
三ヶ月のカード料が半額になり、当月料もなしというのは、拡張員としては死活問題になります。
他の新聞・管轄でもこのような話は出ているのでしょうか?
回答者 ゲン
『他の新聞・管轄でもこのような話は出ているのでしょうか?』 というのは、今のところ『Y新聞の東京管轄』だけやないのかな。少なくともワシらには、まだそういった情報は届いていないさかいな。
『三ヶ月のカード料が半額になり、当月料もなし』というのは、拡張員にとっては確かに『死活問題』やわな。
Y新聞の東京本社は、なぜそんな決定を下したのか。それについて考えてみたいと思う。
新聞の軽減税率が見送られたことで、今年の4月からは嫌でも「消費税分8%」を上乗せせなあかんようになった。
正確には「3%の増税分」で、予想される価格転嫁分の値上げは宅配で1ヶ月120円前後。コンビニ、駅売りで1部5円〜10円程度と見込まれている。
これにより多くの新聞社では契約部数の減少を予想している状況で、その歯止め対策に四苦八苦しとるのが実情や。
ワシらは、新聞代の値下げをすることで乗り切ったらどうかと提案しとるが、新聞業界には、そうするつもりはないようや。議論にすらなっていない。それをすると、新聞社の経営自体が立ち行かんようになるという理由でな。
2000年くらいまでなら、新聞社もまだ紙面広告収入が比較的多かったから、少々の消費税分くらいは、それでカバーできていて、さほど深刻に考えることもなかった。
実際、新聞業界は消費税が初めて導入された1989年(税率3%)時はおろか、税率が5%に引き上げられた1997年でさえ消費税増税分の値上げはしていない。
その当時、新聞社により多少変動もあるが、平均すると新聞業界全体としては購読収入の約6割に対して紙面広告収入は約4割あった。
具体的には、業界全体の2000年の購読収入は12,839億円で紙面広告収入は9,012億円の計2,1851億円あったという計算になる。
それが毎年のように新聞の紙面広告収入の減少傾向に歯止めがかからん状況になってきたさかい、そうも言うてられんようになったわけや。
2011年には、購読収入11,643億円に対して、紙面広告収入は実に半分以下の4,403億円で、計1,6046億円と、金額にして約5800億円も落ち込んでいる。これでは新聞各社の経営が悪化せん方が、おかしいわな。
その後の2年で、状況はさらに悪化しているのは間違いないと思われる。最早、危機的状況、デッドラインに達したと言えるほどに新聞各社の経営状態は悪い。もちろん、業界最大手のY新聞も例外やない。
そのため、新聞業界は今回の消費税増税に対して、初めて『軽減税率を求める』 姿勢を示し、一大キャンペーンを張って、自民党の国会議員207名、および多数の自民党地方議員を味方につけ運動してきたが、政府が「すべての軽減税率を見送る」という方針を発表をしたために、それが叶わず窮地に立たされている状態や。
少なくともY新聞の東京本社では、その危機感から、経費削減策で乗り切ろうということなのやろうと思う。
『三ヶ月のカード料が半額になり、当月料もなし』とすれば、新聞社が、新聞販売店や新聞拡張団に対して支払っている「拡張補助費」の削減につながると考えて。
Y新聞の東京管轄では、その3ヶ月カード料に対しての「拡張補助費」も他の地域とは比較にならんほど多いということもあるようやしな。
経費削減で経営を立て直そうという発想は新聞業界だけやなく、広く日本の企業に蔓延しているが、それにより一時的には持ち堪えられることができても、いずれはジリ貧状態に陥って倒産の憂き目を見るケースが多い。そんな企業は山ほどあるさかいな。
特に、営業面で経費削減をするようになった企業に救いはない。たいていは潰れとる。
当たり前やが、営業には攻めの姿勢がなかったらあかん。それに水を差すようなやり方をして上手くいくわけがないわな。それに気づく企業は少ないが。
何でも、そうやが経費削減は、やりやすいところから始めるものと相場が決まっとる。一番弱いところが真っ先にそのしわ寄せを被るということや。新聞業界で言えば、末端の拡張員と新聞販売店の専業員たちの収入源が、それになる。
それを真っ先に実行に移したのは、もともとY新聞社では3ヶ月カードに対して、あまりええ印象を持ってなかったということもあるやろうと思う。
ワシが昔所属していたY新聞の拡張団では、3ヶ月契約の契約獲得に対して条件が厳しかった。3ヶ月カードは総契約数の30%以内にするよう厳命してたさかいな。
それからすると、冒頭で『今のところY新聞の東京管轄だけやないのかな』とは言うたが、そのうちY新聞の大阪本社や西部本社に波及するかも知れんな。
しかし、そうすれば、よけい契約が取れにくくなるさかい、さらなる悪循環に陥るだけやと思うがな。
古典的な勧誘手法に「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」というのがある。
これは、最初に拒否すると思われるような要請をして、一度断らせるように仕向ける。あるいは、断られてもええくらいの要望を出す。
その後に、それよりも負担の軽い要請をすると、それが受け入れられやすくなるという心理を利用したものや。
例えば「○○新聞を1年取ってくれませんか」「1年はとても無理です」「なら、3ヶ月でも結構ですので」という具合やな。
この「1年はとても無理です」と言わせるのがポイントで、これを言わせることで「3ヶ月ならええやろ」という理屈につなげるわけや。
後の要請が主たる目的で、最初に言うたのはこの効果を狙うたものということなる。
これは、提示した要請を勧誘員が譲歩することにより、客も譲歩せなあかんのかなという気持ちにさせるという効果がある。
これを、心理学では「譲歩の返報性」という。相手が一歩譲ってくれたんやから、こっちも一歩譲らなあかんかなという心理にさせるわけや。
こういうやり方をしている拡張員は多い。
『三ヶ月のカード料が半額』ということになれば、必然的に、その手法は使い辛くなるわな。
それとは反対に「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」というのがある。
直訳すると、「玄関ドアに足を挟み込み中に入る技術」という意味になる。
これは玄関にドアを挟むと気の弱い住人はそのドアを閉めることができ辛くなり、仕方ないから話くらい聞こうかとなったところに営業をかけるというやり方や。
転じて、最初は小さな承諾から始まり、その積み重ねで最終的に目的の承諾を引き出すというやり方のことをそう呼ぶようになった。
具体的には「一週間の試読でも」から始まり「せめて3ヶ月だけでも」となり最終的には「1年契約でお願いします」と、徐々にその要求を引き上げる手法のことを言う。
ただ、これは、よほど上手くやらないとトラブルになりやすいという欠点がある。
Y新聞の東京管轄に3ヶ月カードの比率が最も多いということは、その契約をする購読者が一番多いということを意味するわけや。
新聞購読者には変化を嫌う人が多い。3ヶ月契約でずっときている人は、この先も3ヶ月契約のままにしたいというのが普通や。
それをいきなり新聞社の意向で3ヶ月契約は難しくなったので、6ヶ月契約や1年契約にして欲しいと言うて、どれだけの人が納得してくれるというのやろうか。
これが、6ヶ月契約や1年契約の方が、はるかにサービス面で得するというのなら考える購読者もおられるかも知れんが、現在、それもできにくい状況にある。
それには当メルマガ『第286回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読契約ガイドライン決定……今後のQ&Aでの影響について』 でも話したが、日本新聞協会が決めた『新聞購読契約ガイドライン』というのがあるからや。
その中に『公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならないと定めた』という文言がある。
『公正競争規約の上限』とは新聞に適用される景品表示法『6・8ルール』のことで、『景品付与の上限を『取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲』と決められている』というものや。
長期契約になると、必然的にその分、景品の量が増えるのは業界では常識や。『6・8ルール』に反した景品付与も多い。
しかし、それをすると『解約に当たって景品の返還を求めてはならない』ということになり、それまでは法的にも適法とされていた景品の返還請求ができんわけや。
景品サービスが多ければ多いほど、解約時にはリスクもその分大きくなるさかい、必然的に過剰な景品サービスはしにくいということやな。
しかも『新聞購読契約ガイドライン』では、『読者から都合により解約したいとの申し出があった場合も、契約事項を振りかざして解約を一方的に断ってはならない』と決められているさかい、よけいやわな。
さらに『過大な解約条件(損害賠償や違約金の請求など)請求してはならない』と厳命されているというのもある。
そこへ持ってきて『三ヶ月のカード料が半額で当月料もなくなる』というのでは、やってられんという気にもなるわな。
しかし、拡張員は上が決めたことには従うしかない。決められたルールの中でしか勧誘できんのやさかいな。
あんたができることと言えば、できるだけ3ヶ月契約は少なくするというくらいやな。
幸いゼロにしろと言うてるのやないから、「禁止」とは違う。その辺をどう考えるかやな。
3ヶ月契約の顧客には、「業界の決まりなので、まことに申し訳ありませんが、6ヶ月契約にして頂けませんか」と一応頼んでみる。
3ヶ月契約の客というても、客が好んでそうして欲しいというのもあるやろうが、それ以上に、勧誘員の方が勝手に「3ヶ月でないと契約して貰えない」と考え、3ヶ月契約ばかりを取っているケースも多い。
そういう人の場合は、考えておられるより簡単に6ヶ月契約に応じて貰えるのやないかと思う。
3ヶ月契約の交代読者にしても同じように6ヶ月契約の交代読者になって貰うことは可能やないかと考える。
ただ、これからの営業は拡材を頼りにすることができんさかい、景品サービスでの誘導は難しい。それ以外の勧誘方法で活路を見出すしかないやろうな。
それについては『第109回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞営業でオンリーワンと言われるための心得』 や『第88回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その3 相手(客)に喜ばれる営業とは』 、『第94回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その4 工夫は拡材に勝る』 などが参考になるのやないかと思う。
それらを見て頂ければ分かると思うが、どんな状況になっても方法はいくらでもあるということや。
『三ヶ月のカード料が半額になり、当月料もなしというのは、拡張員としては死活問題になります』と言われるのは、よく分かるが、嘆いてばかりいても仕方ない。この仕事を続けていく限りは何とかするしかないさかいな。
人は、目の前に壁が現れた場合、それを乗り越えられるものと考えられるか、それを行き止まりと捉えるかによって、その後の人生が大きく変わると思う。
もっとも、壁を越えた結果の展望が開けているとも保証できんし、行き止まりに気づいて回り道することが悪いとも限らんさかい、どちらを選べとも言えんがな。
どうされるかは、あんたの判断次第ということになる。
ただ、どうすればええのか分からんようになった場合、また相談してくれたらええ。ワシらなりに、ない知恵を振り絞ってアドバイスしたいと思うので。
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