新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1269 うちの所長の年収はザックリどのくらいになると考えられますか?


投稿者 ブライキングボスさん  投稿日時 2014. 3. 7 AM 0:56


ご無沙汰しております。

今回はうちの所長の年収が気になったので質問させていただきます。

当販売所は新聞社から送られてくる部数が約3,500部。店は株式会社で人件費はザックリ考えて所員、配達、集金員合わせて月に200万円ちょっとくらい。

チラシの収入が少ない月で350万円、多い月で400万円ちょっとだそうです。

新聞代は公式には朝夕刊セット3,925円ですが、朝刊のみの読者が約2,000名いて、その代金が3,260円です。

うちは押し紙はないそうです。約200部近く残紙があります。

拡張員は基本的頼まない方針です。店舗は賃貸ですが、賃料は分かりません。

新規に契約したお客には多くても千円程度までの景品しか渡していません。

大体、こんな感じですが、この様なケースでは一般的にザックリどのくらいの年収になると考えられますか?

宜しくお願いします。


回答者 ゲン


『うちの所長の年収が気になった』と言われる販売店の従業員の方がたまにおられるが、それを知ってどうされるのかな。

まあ、『ザックリどのくらいの年収』ということで良ければ、あんたところの販売店としての粗利くらいは想像できそうやが、所長さんの年収については、その販売店が株式会社になっとるということもあり、粗利とイコールにはならんと思う。

実際の販売店の収益と税務署に申告している所長個人の収入が違うというケースは多いさかい、良うわからんというのが正しい答になるが、ここでは販売店としての利益が所長の収入ということにして、おおまかな計算をすることにする。

まず、1ヶ月の総売り上げ。

入り紙3,500部−残紙200部=実売部数3,300部。この内、朝夕セット購読者が、1,300名。朝刊のみが2,000名。

朝夕セット購読者が、1,300名×3,925円=5,102,500円。
朝刊のみ2,000名×3,260円=6,520,000円。
5,102,500円+6,520,000円=1ヶ月の新聞総売り上げ11,622,500円。

これにチラシの収入が少ない月で350万円、多い月で400万円ということやから、アバウトに3,500,000円+4,000,000円÷2=1ヶ月のチラシの平均総売り上げ3,750,000円とする。

11,622,500円+3,750,000円=販売店の1ヶ月の総売り上げは15,372,500円になる。

次に1ヶ月の支出。

新聞社に納める新聞代金の比率は、その新聞社、販売店毎で違うので正確な数字は分からんが、一般的には50%前後とされとるから、それで計算する。

朝夕セット3,925円−朝刊のみ3,260円=1ヶ月の夕刊代665円という計算になる。また残紙200部は朝夕セット代金としての支払いで計算する。

(朝夕セット購読1,300部+残紙200部)×3,925円÷2=2,943,750円。

朝刊のみ3,260円×2,000部÷2=3,260,000円

2,943,750円+3,260,000円=新聞社に支払う1ヶ月の新聞代金は6,203,750円。

1ヶ月の人件費が2,000,000円ということやから、それで計算するが、あんたから教えて貰うた正社員とアルバイトの人数(店の特定を避けるため非公開)やと少なすぎるという気がする。最大で4,000,000円くらいは必要やないのかと考えるが、そのへんはどうなのやろうか。

それによってかなりの違いが出るので1ヶ月の人件費4,000,000円でも計算し、最小から最大までの範囲を示すことにする。

『店舗は賃貸ですが、賃料は分かりません』ということやが、その地域でその規模の新聞販売店やと月20万円程度の賃料が相場やと思うので、それで計算する。

1ヶ月間の新規、継続の部数がどのくらいなのか分からんさかい、全国的には月4%程度やから、3,300部×0.04=1ヶ月132部が景品の対象とする。

景品代金千円×132部=1ヶ月の景品代を132,000円と見積もる。

これに、車、バイク、自転車などの乗り物価格、保険代金、ガソリン代、光熱費、チラシ折り込み丁合機の償却、維持費などの雑費が加わることになるが、これについては、それぞれの販売店により事情が異なるさかい、画一的にこうやとは言えん。

例えば、バイクなど一切なく、自転車だけで配達している販売店もあれば、バイクだけというところもある。もちろん両方使っている販売店も多い。

あるいはマンションなどの「置き配」や駅の売店、コンビニ、ホテル、病院、大企業、官公庁などまとまった部数の配達には車を使うケースが多い。

自転車だけで配達している場合、新聞販売店が使っている業務用自転車は新車で1台5万円〜6万円程度。その耐久年数はそれぞれの配達状況、使用する者の乗り方次第で違うてくるが、平均的な耐久年数を5年とした場合、

35台÷5年×1台50,000円÷12ヶ月=1ヶ月の自転車償却費約3万円。

これに本来は保険加入しておくべきなのやが、自転車にはその義務がないということで加入していない販売店が多いようやから、ここではその経費はないものとする。

業務用バイクの場合50CCの新車で20万円程度。こちらも平均的な耐久年数を5年とする。実際には、それ以上使っているケースが多いようやが安全に乗れる期間ということで、そうする。

35台÷5年×1台200,000円÷12ヶ月=1ヶ月のバイク償却費約12万円。

こちらは保険加入が義務つけられていて、自賠償保険で、

35台×原付バイク1年の自賠償保険料7,280円÷12ヶ月=1ヶ月の自賠償保険料約21,230円。

任意保険に加入している場合は、その保険代金が加算される。

車に関しては所有する台数や車種により本体価格の値段が大きく違うし、保険料も違うが、最大で1台につき月10万円程度と見込む。

ガソリン代については、バイクの燃費や地域により走行距離が違うので何とも言えんが、バイク10台の販売店で支払っているガソリン代が月5万円弱程度という報告があるので、それを基準に考える。

光熱費についても、その規模の店舗の場合、月5万円〜10万円程度と見る。

チラシ折り込み丁合機の本体価格の平均は300万円くらいで、償却、メンテナンス維持費として1台につき月10万円と見積もる。

ただ、これについても本体価格と耐久年数に違いが出るので正確な試算は難しい。それぞれの販売店で違うということや。

その他の雑費も同様に月10万円〜30万円の範囲で考える。この雑費の中にはビニール包装機の償却費、事務所コピー機の償却費、およびそれらの機器のメンテナンス費などを含んでいる。

これらを総合すると、総支出の概算は最小で

新聞社に支払う1ヶ月の新聞代金6,203,750円+1ヶ月の人件費が2,000,000円+店舗賃料月200,000円+1ヶ月の景品代132,000円+自転車だけで配達している販売店の場合、1ヶ月の自転車償却費約30.000万円+自賠責保険0円+ガソリン代0円+光熱費月50,000円+チラシ折り込み丁合機の償却、メンテナンス維持費1台につき月100,000万円+雑費月100,000万円=8,615,750円という計算になる。

最大で、

新聞社に支払う1ヶ月の新聞代金6,203,750円+1ヶ月の人件費が4,000,000円+店舗賃料月200,000円+1ヶ月の景品代132,000円+1ヶ月のバイク償却費約120,000万円+自賠責保険21,230円+ガソリン代35台で165,000円+光熱費月100,000円+チラシ折り込み丁合機の償却、メンテナンス維持費1台につき月100,000万円+雑費月100,000万円=12,301,980円。

この最小と最大値を販売店の1ヶ月の総売り上げ15,372,500円から差し引くと、

3,070,520円〜6,756,750円が1ヶ月の粗利ということになる。

かなり幅が広いが、これは人件費の計算とバイクの有無、およびそのガソリン代が大きく影響している。

これを1年間の粗利にすると、36,846,240円〜81,081,000円という計算になる。

この利益分から株式会社の法人税30%+事業税9.6%が差し引かれるので純粋な概算収益としては、

36,846,240円×0.3+36,846,240円×0.096=14,591,111円。

36,846,240円−14,591,111円=22,255,129円。

81,081,000円×0.3+81,081,000円×0.096=32,108,076円。

81,081,000円−32,108,076円=48,972,924円。

つまり概算で2,225万円〜4,897万円の間が、その販売店の収益と考えられるということや。

もっとも、事業をしていると銀行融資による金利の支払いや設備投資、従業員への住宅設備などの経費がかかるが、これにはそれらは計算に入れていないから、実際はもう少し低いかも知れんがな。

いずれにしても上記の内容と、あんたの所の販売店との内容に違う点があれば、その部分を上の数式に当て嵌めて計算し直せば、より実態に近い数字が得られるやろうと思う。

所長の年収は、税務署に申告している個人収入から所得税、住民税が差し引かれた額になる。当然やが、その比率は収入に比例して上がる。

今回計算して示した収益は、この業界として優秀な方やと考えられる。

それには『押し紙がない』、『拡張員は基本的頼まない』ため営業経費がゼロで済む、『新規に契約したお客には多くても千円程度までの景品しか渡していない』ということが大きいと思う。

たいていの新聞販売店では、それらの出費が多いため新聞社からの補助金に頼っているのが普通やからな。中には赤字が続いて廃業していく販売店も多い。

日本新聞協会販売委員会の調べによると、10年前の2003年には21,405店舗あったのが、2013年には18、022店舗にまで減少しているという。実に10年間で3,383店舗も消えていると。

毎年、新に開業する販売店や経営者だけ変わる販売店も相当数あるはずやから、それを考えれば廃業する経営者はその数をはるかに超えるものと推察される。

販売店の総従業員数も、ここ10年で10万人以上の減少になっている。

その理由は、新聞の読者減によって業界全体が冷え切っているためや。

たいてい、こういう質問をされて来られる方は、新聞販売店の経営者を羨ましがってというケースが多いが、この業界でそれだけの利益を上げられているのは、相当な手腕の持ち主か、かなり恵まれた環境で販売店を経営しているかのどちらかになる。

いずれにしても、それなりの苦労と努力をされた結果やと考えるがな。

やり方次第では、まだまだ、この業界で儲けることが可能やというのが、あんたの質問で良う分かったのが、ワシらにとっては収穫やったと思う。


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