新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1270 もう新聞業界はダメなんでしょうか?


投稿者 Rさん 某新聞販売店専業  投稿日時 2014. 3.23 PM 6:06


始めまして、販売店で専業をしている者です。

会社から店力強化をモットーに新勧を上げろと言われ、日々区域を叩いているのですが最近全くカードが上がりません。

件数を叩いても、トークを変えてもダメです…

上司からは詰められるし、ノイローゼになりそうです。

もう新聞業界はダメなんでしょうか?


回答者 ゲン


『もう新聞業界はダメなんでしょうか?』と言われておられるが、厳しい状況にあるのは間違いない。

14年前の2000年では新聞社全体の購読収入は1兆2,839億円で紙面広告収入9,012億円の計2兆1,851億円あった。

それが毎年のように新聞の部数減が続き、紙面広告収入の減少傾向に歯止めがかからん状況になってきたことで、それが大幅に減ってきている。

2011年には、購読収入1兆1,643億円に対して、紙面広告収入は実に半分以下の4,403億円で、計1兆6,046億円と、金額にして10年余りで約5,800億円も落ち込んでいる。

これでは新聞各社の経営が悪化せん方が、おかしいわな。事実、殆どの新聞社が赤字を計上している。

日本ABC協会の発表では2013年の新聞の発行部数が、前年の2012年に比べて、朝刊で約54万部、夕刊で約48万部と過去に類を見ないほどの大幅な減少になっているというから、状況は更に悪化しているのは間違いない。

また、日本新聞協会販売委員会の調べによると、10年前の2003年には21,405店舗あった全国の新聞販売店が、2013年には18,022店舗にまで減少しているとのことや。

実に10年間で3,383店舗も消えている計算になる。

それに伴い、2003年の452,284人から2013年には356,186人と、96,090人にも上る新聞販売店の従業員が減っている。

新聞拡張団は、もともと情報を公開することがないから、確かなデータは昔から把握することはできんが、サイトに届けられる関係者からの情報を精査すると少なくとも10年前と比べて6、7割程度まで落ち込んでいるものと予想される。

数にして3、400社程度が廃業しているはずや。人員にして3,000名以上は減っているものと思われる。

今のところはまだ関東だけのようやが、ある新聞社では今年の3月から拡張員のカード料が下がったという情報もある。

このままやと、他の新聞、地域にそれが波及する恐れもあり、新聞拡張団と拡張員の更なる減少に拍車がかかるのは避けられそうにない状況にある。

まだある。

来月からの消費税増税に対し、新聞業界は自民党の国会議員207人や多くの自民党地方議員を動員してまで新聞の軽減税率を得ようと画策していた。

しかし、政府の閣議決定により、新聞業界に限らず、すべての業種で軽減税率が見送られることになって、新聞にも消費税税率8%がかけられると正式に決まった。

そのことにより、多くの販売店が深刻な部数減に陥るのではないかと不安になっている。

ただでさえ、新聞業界は少子高齢化による人口の減少、長引く不景気、若者の新聞離れ傾向などによって厳しい状況にある上に、それらが複合的に重なり合って、事態は悪化の一途を辿っているのが現状やと思う。

加えて、現在は刑法、民法、消費者契約法、クーリング・オフの規定がある特定商取引に関する法律、拡材を制限している景品表示法、勧誘地域の自治体毎の迷惑防止条例などで勧誘の方法が厳しく制限されている。

特に、2009年12月1日に施行された『特定商取引に関する法律』の改正法』というのが大きく響いている。

この中の第3条ノ2第1項「勧誘の意志の確認」で、


販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手側に対し、勧誘を受ける意志があることを確認するよう努めなければならない。


と規定された。

これにより、「新聞の勧誘をさせて頂きますけど、よろしいでしょうか」と確認してからでないと勧誘したらあかんということになったわけや。

この「勧誘の意志の確認」の中には勧誘員の素姓を明らかにしてということも含まれるから、それに外れたことをする者にとっては、ただでさえ厳しい拡張がさらに辛くなったと言える。

それまでは「ヒッカケ」のような身元を偽る営業手法そのものを直接規制する法律がなかったから、「感心せんやり方やな」で済んでいた部分もかなりあった。

業界全体で大目に見られていたということもあり、一つの営業手法だと誤解している勧誘員も多かった。

単に客を玄関口に出すための口実、テクニックとして考えられていた「宅急便です」、「近所の引っ越しの挨拶に来ました」、「古紙回収の者です」、あるいは「町内会の者です」と騙って客を引っ張り出して勧誘することが、その法律で禁じられたわけや。

また、第3条ノ2第2項の「再勧誘の制限」というのも大きい。


販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意志を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。


分かりやすく言えば、一度断った客には次から勧誘したらあかんということやな。

それまででも『特定商取引に関する法律』の第17条で、すでに電話勧誘販売について導入されていた事項やが、それを他のすべての訪問販売業者にも摘要することにしたわけや。

これは基本的には口頭で伝えてもええということになっとる。勧誘する者にとっては辛いと思う。

新聞の勧誘というのは断わられるのが当たり前で、断られてから、どれだけ粘れて押せるかが勝負という部分がある。

最初から「新聞の勧誘です」「そうですか、お話を聞きましょう」という奇特な客は皆無やないにしても、殆どおらんさかいな。

そして、決定的やったのが、2013年11月21日、日本新聞協会、および新聞公正取引協議会が発表した「新聞購読契約ガイドライン」やと思う。その全文を引用する。


購読契約ガイドライン発表 新聞協会・公取協、解約トラブル防ぐ


 新聞協会と新聞公正取引協議会は11月21日、読者から解約の申し出があった場合の対応の指針となる「新聞購読契約に関するガイドライン」を発表した。

 新聞公正競争規約のほか、特定商取引法、新聞訪問販売自主規制規約を順守し、解約に関してもガイドラインを設けることで、読者とのトラブルを防いで公正な販売活動を目指す。

 ガイドラインは、長期契約をめぐる高齢者からの苦情が目立つとして国民生活センターから改善要望が寄せられたことを踏まえ、策定した。

 解約に応じるべき場合と、丁寧に話し合って解決すべき場合に分け、具体的な事例を列挙している。

 長期や数か月先の契約を抑制するため、公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならないと定めた。

 また、クーリングオフ期間中の書面による申し出や規約違反、相手の判断力不足、購読が困難になる病気・入院・転居、購読者の死亡、未成年者との契約などを、解約に応じるべき場合として挙げた。

 これらに該当しない読者から都合により解約したいとの申し出があった場合も、丁寧に話し合い、双方が納得できる解決を図らなければならないとしている。

 消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する。


というものや。

これについての詳しいことは『第286回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読契約ガイドライン決定……今後のQ&Aでの影響について』 を見て貰えれば分かると思う。

簡単に言えば、『景品表示法「6・8ルール」の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならない』、『契約者の判断力不足につけ込んだ契約は無効、解除になる』、『購読が困難になる病気・入院の場合は解約を認める』、『購読者が死亡した場合は契約解除できる』、『本人や配偶者以外の名前で契約した時も解約できる』といったことなどが決められた。

新聞販売店が、解約したいと言ってきた顧客に対して『丁寧に話し合って解決すべき場合
』というのを設定し、『契約事項を振りかざして解約を一方的に断ってはならない』、『過大な解約条件(損害賠償や違約金の請求など)請求してはならない』、『購読期間の変更など、お互いが納得できる解決を図らなければならない』ということにした。

どれをとってみても顧客側に有利で新聞販売店側にとって不利な条件が課せられている。

これだけ勧誘に対して手枷足枷されている状況で、昔のように契約を上げろと言われても難しいわな。新聞販売店や新聞拡張団の従業員が減っていくのも無理はないと思う。

勧誘員が減れば獲得部数が減る。部数が減れば販売店が減る。販売店が減れば勧誘員が減る。現在、新聞業界はその負のスパイラルから抜け出せない状況にあると言える。

しかし、どんなに厳しく困難な状況になろうと事態を打開する方法、あるいは生き残る術は必ずある。少なくともワシは、そう信じとる。

但し、今までのように『会社から店力強化をモットーに新勧を上げろ』と勧誘員の尻を叩くだけではあかん。契約を上げろと言われて上げられる時代は終わったと認識するしかない。

ワシも今までは勧誘員自身の考え方を変え、個人の能力を向上させ、やり方を変えることで十分やっていけると考えていた。

『件数を叩いても、トークを変えてもダメです…』というのが、どういった方法、トークなのか分からんさかい確かなことは言えんが、勧誘についての根本的な考え方を知りたいのなら、『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座』や『第109回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞営業でオンリーワンと言われるための心得』 、または『第83回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その1 拡張の心得について』 を見られることを勧める。

それらには『拡張は営業だと認識すること』、『拡張時の姿勢に気をつけること』、『相手(客)の立場に立って考えること』、『第一印象を重要視すること』、『常に笑いを絶やさないこと』、『人間関係の構築と継続に留意すること』、『勧誘員としての覚悟を決めること』、『不法行為には手を染めないこと』などがあり、それについての方法論を事細かく説明している。

ただ、それらの事をすべて承知していて、尚かつ実行しているにもかかわらず、それでも契約が上げられんというのなら、もう一歩先の方法を取り入れるしかない。

それについては、最近のメルマガ『第301回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞復活への試み……その1 マラソンドリルとシニアサポートについて』 や『第302回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■拡張の群像 その13 主婦拡張員、キョウコの憂鬱』 が、そのええ参考になるやろうと思う。

『マラソンドリル』というのは、酒井勇介氏という人が『新聞で子供の学力を上げよう』というコンセプトのもとに作られたものや。

具体的には新聞紙面に、学校や学習塾でありがちな国語や算数、社会、理科の問題ドリルと同じようなものを載せて勉強させる仕組みになっているとのことや。

昔から「勉強するなら新聞を読め」とは、ワシらの子供の頃からよく言われていたことで、それはある意味正しい。

そのことを教育熱心な保護者を対象に営業トークしていくことで新聞の契約を確保しようというものや。これはやり方次第では効果があると思う。

拡張の現場で使えそうな新聞による子供の学力向上トークとして、『新聞を読むことで確実に、お子さんの成績が良くなりますよ』、『他のお子さんとの差別化ができますよ』、『新聞は、あらゆる教科の役に立ちますよ』、『新聞の切り抜き(スクラップ)記事を作ることで洞察力、および観察力が格段に向上しますよ』、『新聞記事を読むだけで文章力がつき、読解力が格段に良くなりますよ』、『教科書に新聞が教材として採用されています』といったものがある。

それらについての根拠と詳細なデータを示して、顧客を納得させるような説明をしているつもりやから見て参考にして欲しい。

『シニアサポート』というのは、要するに現在の新聞販売店顧客の約7割を占める高齢者層に特化したサービスをしようというものや。

『おばあちゃんから仕事のお手伝いの依頼があれば、「はい喜んで」と飛んで行く』というコンセプトのもと、電球交換から始めるサービスを徹底させることやという。

その効果についても、それらのメルマガで詳しく話しているので目を通して欲しいと思う。

但し、それらは個人の頑張りだけでは無理や。あんたの所属する新聞販売店が積極的に取り組まん限りはな。

ただ、何度も言うが、どんなに厳しい状況であっても手はあるということや。また他が厳しいからこそ、却ってチャンスになるということもある。

人より秀でる方法は、人のしていない事をいち早く取り入れて実行していくことやさかいな。

また、上記のような方法だけやなく、様々なやり方を考えることで道を切り拓くというのは昔から先人たちが行ってきたことや。

何事も「あかん」とあきらめたら、そこで終わる。逆にあきらめさえせえへんかったら、道は必ず見えてくる。ワシは、そう信じとる。

せやから、あんたも、「あかん」とあきらめる前に、もう一踏ん張りされたらどうかと思う。


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