新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1271 週休が取れない状況です
投稿者 匿名希望さん 投稿日時 2014. 3.24 PM 9:29
ゲンさん、ハカセさん、いつも業務の参考にさせていただいております。
中部地方の都市郊外の新聞店に専業として勤務しております。
昨年末から今日まで現在配達さんが5、6名欠員状態で専業が朝刊時は休みなく勤務しております。
この3ヶ月間でまるまる1日の休日は1回ありました。日曜、祝日の朝刊終了後と夕刊は週一回辛うじて休みが取れています。
配達さんの求人を出しても応募すら無い状態です。
当分この状態は続くものと覚悟はしておりますが、この状態が本社に知れると販売店へ何かしらの制裁が課せられることになると先輩専業が言っておりました。
この先輩、常日頃店主へ不満があるらしく、何かあればこれを本社に通報してやるなどと
言っておりますが、これがどういう意味だか業界3年目の私には全く判りません。
なにかよっぽど大変なことになるのでしょうか。また労基法的にも抵触することでしょうか。
本来の私の休日であった曜日に出勤した場合は休日割増、休日深夜割増の手当は当然支払っていただいております。
ゲンさんのわかる範囲での見解、お聞かせ願います。
また余談ですが、この時期一般企業では昇給とかベースアップとかが聞こえてまいりますが、これだけがんばって勤務してますし、当分続くので店主に昇給とかをお願いしたい気持ちがあるのですが、業界的にも増税とかじんわりと部数の減少とかでなかなか言いづらい面もあります。
こちらについても何かアドバイスいただければ有難いです。
よろしくお願いいたします。
回答者 ゲン
『配達さんの求人を出しても応募すら無い状態です』という話は最近、よく耳にするようになった。もともと、新聞配達員のなり手はあっても長続きするケースが少なく、業界として慢性的な人手不足ではあった。
今までは、新聞紙面の求人広告や就職情報雑誌、ネットの求人サイト、各販売店毎の折り込みチラシでの求人広告を入れていることで、何とか配達員の確保ができていた。
それが現在は、多くの新聞販売店が過去に類を見ないほどの求人難に喘いでいるという。
数年前のリーマン・ショックの頃は世の中全体に仕事がない、アルバイトの口がないというほどの不景気やったこともあり、新聞販売店にも求人が殺到していた時期もあった。
現在、業界全体で年々配達員が減少している状態で、ここ10年ほどの間に9万6千人余りも減っているという日本新聞協会販売委員会の調査データがある。
そのため、あんたの所のように『欠員状態で専業が朝刊時は休みなく勤務しております』という状況にある新聞販売店は多いと思う。
理由は、新聞業界は少子高齢化による人口の減少、長引く不景気、若者の新聞離れ傾向などによって新聞の部数が急激に落ち込んだため配達員そのものの求人が減ってきたことと、アルバイトの多様性が考えられる。
特にアルバイトは以前から主流やったコンビニや外食産業に加え、引っ越し業、服飾産業、家電量販店、建設工事などの求人募集が大幅に急増している。
働き口が多ければ、その分働き手は分散されるさかいな。加えて、新聞そのものが若者から嫌われているというのも大きいと思う。ネット上における新聞のイメージは恐ろしく悪いさかいな。
ワシらの若い頃、アルバイトと言えば新聞配達か牛乳配達が定番やったが、今の若者には選択肢の一つですらないようや。あっても最下位に近い。
先月、当メルマガ『第299回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店物語……その12 ある臨配配達員の憂鬱』で、臨配配達員すら確保し辛い状況にあるという話をした。
その部分を抜粋する。
臨配というのは、その名の示すとおり、臨時新聞配達人のことを指す。分かりやすく言えば新聞配達の派遣業務やな。臨配団は人材派遣会社ということになる。
一般的な販売店の構成は、経営者である所長(社長)、店長、主任、専業員、新聞奨学生、事務員、アルバイト配達員、集金請負人、店内雑務員などからなっている。
アルバイト配達員や集金請負人、店内雑務員らのパート契約者には原則として、新聞休刊日以外の休みはない。
しかし、店長、主任、専業員、新聞奨学生、事務員らといった従業員(社員)には、多くの場合1週間に1度の休みが与えられている。
通常、中小規模程度の新聞販売店では店長クラスの人間が、専業員の休日にその区間の代配をするケースが多い。
しかし、大規模販売店などの配達区域の多い所では、そうするのは物理的に無理やから、そのための代配専門員を置くか、外部の専門組織である臨配団に依頼するしかない。
急に配達員が辞めたことで穴が開いた場合も、次の配達員を確保するまでの間のつなぎとして臨配を依頼するケースも珍しくない。
中略。
新聞業界への人材は、世の中が不景気になればなるほど集まってくるという傾向にある。仕事が限定されるからや。
しかし、好景気になれば、その逆の現象が起きる。
ここ1年の間、アベノミクスとやらで景気の上昇が見込まれるようになって他の職種への求人が増え始めた。
それがより決定的になったのが、昨年9月に決定した2020年の東京オリンピック招致や。
ワシらが子供頃の1964年時もそうやったが、当時日本は空前の建設ラッシュを迎えた。俗に「オリンピック需要」と呼ばれるものや。
それが再び起きようとしている。
現在、建築関係の求人は半端やなく多い。各建築会社ではその人材の取り合いのため人件費が高騰しているという。
当然のことながら、そちらに流れる人材が多くなり、新聞配達員が今までにも増して減少しているという現実が浮き彫りになっている。
中略。
仕事の減った業界から人が逃げ出すのは世の常や。現在、『新聞販売店業界が、今までも増して人材難に喘いでいる』というのは、それや。
臨配団でも依頼してくる新聞販売店、すべてに人を回せないのが実情やという。
昔はできなかった販売店を選別するという行為が、今はできるようになったわけや。
中略。
一般の人は意外に思われるかも知れないが、新聞販売店にとって新聞配達というのは当たり前の仕事という感覚で、それほど重要視されてこなかった。
それもあり、専業員やアルバイトの配達員に対して、あまり労務費をかけてこなかったという歴史がある。
酷い販売店になると、労災保険や社会保険などの福利厚生に入ってないケースもあるし、事故を起こしても任意保険すら使わず、すべてを配達人の責任で負担させる場合もあると聞く。
と。
現在は、緊急時のための臨配人すら手配しにくい状態やという。
新聞配達員は使い捨てと考えているのか、大事にしたくても経営的にできないのかどうかは分からないが、就業状態はお世辞にもええとは言えん。
そして、その状況は、『当分この状態は続くものと覚悟はしております』と言われておられるとおりになりそうや。
ただ、『この状態が本社に知れると販売店へ何かしらの制裁が課せられることになると先輩専業が言っておりました』というのは、どういうことなのやろうか。
求人不足、人手不足なのは業界全体の現象で、販売店の責任やないから、それとは違うと思う。
労働基準法では、使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなあかんことになっとる。
その点で言えば『この3ヶ月間でまるまる1日の休日は1回ありました』というのは、労働基準法に抵触するが、『日曜、祝日の朝刊終了後と夕刊は週一回辛うじて休みが取れています』ということなら、少し微妙やな。
『夕刊は週一回辛うじて休み』というのが、朝刊配達後、翌日の朝刊開始時間まで何もしなくてもええというのなら、配達の準備時間と配達時間を差し引いた間は「休み」やと考えられる。その間は20時間程度というところかな。
丸1日の休みではないが、休みを与えていることには間違いない。
これについては労働基準法に変形労働時間制というのがある。
変形労働時間制とは、労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができるというものや。
つまり、この考え方でいけば、ある時は時間外が多くても全体として労働時間が少なければ考慮しようというものや。1週間全体の労働時間で考えようと。
その意味で言えば先のケースはセーフになる可能性が高いと思う。
また、現在ではフレックスタイム制というのが一般の企業でも定着しつつあるが、不定時間労働の多い新聞販売店では、昔からフレックスタイム制で仕事をしている業種とも言える。
このフレックスタイム制についても労働基準法の規定がある。
就業規則等により制度を導入することを定めた上で、労使協定により、一定期間(1ヶ月以内)を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合に、その範囲内で始業・終業時刻・労働者がそれぞれ自主的に決定することができるとされている。
加えて、時間外労働協定「36(サブロク)協定」というのがある。
労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められとる。
新聞販売店に労働組合があれば、それでええが、ない場合は『労働者の過半数を代表する者』との取り決めということになる。
新聞販売店と従業員との間で労働争議になった場合、『労働者の過半数を代表する者』として店長あたりがその任につくケースが多い。店長も雇われの身で、立派な労働者やさかいな。
もっとも、店長は中間管理職やから、労働者側の味方として経営者と交渉するかどうかという問題はあるがな。
ただ、『労働者の過半数を代表する者』として選任されれば、その任に就くことができるということや。もちろん、それは店長やなくても他の誰かでも構わんがな。
その「36(サブロク)協定」さえあれば、『本来の私の休日であった曜日に出勤した場合は休日割増、休日深夜割増の手当は当然支払っていただいております』ということで問題はないと思う。
法律的には『行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められる』ということやが、実際は『休日割増、休日深夜割増の手当』を貰っていて、それに異を唱えていなければ、労働者がそれで納得したということになり、実質上、「36(サブロク)協定」が成立しているものと考えられる。
厳密に言えば、行政官庁に届け出ていなければ法律違反になるが、その程度なら大したお咎めは受けんやろうということや。
余談やが、「36(サブロク)協定」というのは労働基準法第36条に、その定めがあることから、そう呼ばれている。
その新聞社が「36(サブロク)協定」を認めず、従業員には必ず週1日の休みを与えるようにとでも厳命していれば、その先輩専業が言うように『この状態が本社に知れると販売店へ何かしらの制裁が課せられることになる』ということも考えられなくもないが、まず、それはないやろうと思う。
新聞社と新聞販売店は組織的には別会社やさかい、内政干渉はしないというのが一般的な新聞社の姿勢になっとる。
内政干渉するのは、よほどの不法行為で新聞社の対面が傷つけられると感じた時くらいなものや。それ以外で販売店の仕事のやり方に口を挟むことは、まずない。
過去の事例からも、新聞社に新聞販売店の不満をぶつける従業員の方もおられたが、相手にされないケースが多かった。新聞社に職場の不満を言われても困ると。
新聞社や労働基準局に訴えても、その本人は必ず販売店に分かるから最終的には解雇されるか、辞めざるを得ない状況に追い込まれるかのいずれかになる。
その販売店によほどの悪質性でもない限り訴える側に益は少ない。
あんたの所属する販売店では『日曜、祝日の朝刊終了後と夕刊は週一回辛うじて休みが取れています』、『本来の私の休日であった曜日に出勤した場合は休日割増、休日深夜割増の手当は当然支払っていただいております』ということであれば、問題がないと判断される可能性が高いと思う。
裁判では絶対とは言えんが、あんたの言う程度なら、その販売店が敗訴することはないやろうと考える。
ベストの選択やないにしても、この厳しい状況で、やれる限りのことをしていると評価されると思うしな。従業員に対する配慮も十分に窺われると。
その先輩専業員とやらの他に、現状に不満を抱いているという人が大勢いるのならともかく、そうでなければ訴えても損をするのは、その先輩専業員やないかな。
もっとも、その休日出勤以外の問題で、決定的な不正行為の証拠を握っているというのなら話は別やがな。
たいていの場合、単なる憂さ晴らしとして言うてるだけのことで、実際には何もできんし、せんやろうと思う。
あんたも話を聞くくらいなら構わんが、ヘタに同調はせんことや。できれば、あまり関わり合いを持たんようにした方がええと言うとく。愚痴や不満ばかり並べ立てる者にロクな人間はいないと割り切って。
その手の人間は、ええ加減に返事をしたことで「あいつも同じように言っていた」と勝手に仲間に引き込もうとするさかいな。とばっちりを被るだけ損や。
『この時期一般企業では昇給とかベースアップとかが聞こえてまいります』というのは、一部の大企業についてのみの話で、日本の全企業の99.7%を占める中小企業で昇給する会社は少ないようやしな。
そういうのは新聞やテレビで大々的に報じられるから目立つだけの話でな。実際に昇給する会社など殆どないと考えて、まず間違いないと思う。
『これだけがんばって勤務してますし、当分続くので店主に昇給とかをお願いしたい気持ちがあるのですが』という気持ちはよく分かる。
ただ、『業界的にも増税とかじんわりと部数の減少とかでなかなか言いづらい面もあります』と考えておられるのなら、今は辛抱するしかないやろうな。
言うてもあかんことは言うだけ損、無駄やと考えて。
どの業界にも浮き沈み、好不調の波はあるもんやが、現在、新聞販売店は最悪の状態を迎えていると考えて、耐えるしかないやろうな。
世の中、何事においても悪い時もあれば良い時もある。常に悪い状態ばかりということはない。そのうち必ず好転する。そう信じることや。
ワシからのアドバイスなら、そうや。後は、あんたが、どう考えるかやな。
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