新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1293 今回のA新聞の報道で拡張員はどう対応すれば良いと思いますか?
投稿者 Aさん 投稿日時 2014. 9.13
今回のA新聞の報道で拡張員はどう対応すれば良いと思いますか?
この報道があってから販売店からは営業自粛してください。と言う販売店もありまして・・・
なかなか営業活動がうまく進んでいません。
営業なんかに行くと前はいりません!とか言われてたんですが・・・
最近はなかなか大変やねぇ!みたいな言葉にかわりました。
そこで新聞の購読をお願いするようなムードではないしお願いしても断られます。
これから先のA新聞の部数はどのようになっていきますか?
また、少しすればほとぼりがさめて前と同じようにとは言えませんが戻ってくるのでしょうか?
この際、A朝日新聞の拡張員を止めてY新聞の拡張員になる方がいいのでしょうか?
今回のこともそうですが・・・A新聞に対して信頼が薄れてきてしまいました。
これからの対応をご教授ください!
よろしくお願いします。
回答者 ゲン
『今回のA新聞の報道』については、次回9月19日発行予定のメルマガ『第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書報道の是非について(仮題)』で詳しく話すつもりにしていた。
詳しい内容は、その時に話すつもりなので、申し訳ないが、それまで待って頂きたい。
ここで、その事について語り出すと長くなり、混乱されるかも知れんので、なるべく簡潔に話す。
『今回のA新聞の報道』のどこが問題なのかということやが、このことをしっかりと把握している一般の人は少ないように思う。
最も多い一般の人の反応は、A新聞の社長が謝罪会見をするくらいだから、また不祥事を起こしたのだろうという程度のことや。
それについて、他の新聞や週刊誌が盛んに叩いている、あるいはネットで批判が集中しているということで、A新聞は最悪な新聞というムードが作られている。
『今回のA新聞の報道』は、一言で言ってしまえば『誤報』から端を発し、その対処のまずさも加わって、ついには謝罪せな収まらんような事態にまでなったということや。
それが二つも重なった。それが、『吉田証言』と『吉田調書』というものや。名前が似ているため混同されがちやが、この二つは、まったく違う別のものや。
まず『吉田証言』。
これは1983年にフィクション作家、故吉田清治著の『私の戦争犯罪・朝鮮人連行強制記録』(三一書房刊)に書かれていた「昭和18年(1943年)に日本軍の命令で韓国の済州島で女性を強制連行して慰安婦にした」という体験談とされている部分のことだとされている。
この『吉田証言』が、現在の「従軍慰安婦問題」の発端になったと言われている。
これを当時のA新聞は真実として報道した。
しかし、その後、故吉田清治氏の「体験談」は当時の拓殖大学教授らの調査により嘘であることが判明し、吉田清治氏本人も一部がフィクションであることを認め、A新聞も「確認できない」という事実上の訂正記事を出している。
ただ、A新聞は「確認できない」とはしたものの依然として「済州島で女性を強制連行して慰安婦にした」というのは事実の可能性が高いといった趣旨の記事を、その後も掲載し続けた。
それが、今年の2014年8月5日になって、A新聞は独自検証の結果、『吉田証言』の証拠が見つからないことを理由に虚偽と認定し、それまでの記事をすべて撤回すると発表した。
この時になって初めて誤報と認めたわけである。
これを以て「従軍慰安婦問題」自体が存在しなかったと誤解している一般の人が多いようやが、A新聞が認めたのは、あくまでも故吉田清治氏の体験談であって、「従軍慰安婦問題」そのものが誤報だと言っているわけではない。
従軍慰安婦が存在したという証拠は確認されている。それが『吉田証言』にあるように強制的に連行されたか、どうかということが問題やと思う。
当時、日本もやが韓国にも貧しい人たちは多く、食べるために娘を女衒に売り飛ばすというのは普通にあった。当時の遊郭で働いていた女性の大半がそうやったというさかいな。
それと同じように金で買われた女性たち、および金のために自ら従軍慰安婦として働いていた女性たちもいた可能性が高い。つまり、売春やな。
「従軍慰安婦問題」が、女性もしくは、その家族が望まないのに強制的に拉致し、対価もえず拘束して従軍慰安婦にしたというのなら、これは大きな人権問題やと思う。
しかし、例え嫌々であれ、泣く泣くであったとしても家族の生活のために自ら進んで、あるいは納得して従軍慰安婦になったというのなら、当時の社会情勢や生活環境、法律の面からは問題にはならんやろうと考える。
それは、そういった歴史があったということで終わる。気の毒な話ではあるがな。
これは、あくまでもワシの私見やが、『吉田証言』にあるように強制的に連行されたケースもあったやろうし、金で買われた女性たちが従軍慰安婦として働いていたことも事実やったろうと思う。
また、金を得たいために自ら進んで従軍慰安婦になった女性も少なからずいたはずや。
世の中すべてのことについて言えることやが、そこに人が介在している限り、様々な人間の思惑が働くもんや。あこぎなことをする輩もいれば、そうでない人もいる。
それは、新聞拡張員が悪質だというレッテルを貼られていることにも共通する問題やと思う。
確かに悪質な拡張員も存在するが、良心的に勧誘する拡張員がいるのも紛れもない事実なわけや。
物事は、どの角度、どの立場で見るかによって、その見え方が違うてくるさかいな。
つまり、一概に、こうやとは決めつけられんのやないかということや。いろいろあったと見た方が、ワシは自然やと考えるがな。
人は一事を万事と考えがちやが、人間の社会は、それほど単純なものやないと思う。
ここでワシが言いたいのは、『吉田証言』については誤報やったということで、ええのやないかということや。
もともと氏はフィクション作家と言うてるわけやし、その書籍に創作があったとしても、おかしくはないと考えるがな。
もっとも、それを事実として報道した新聞社の責任は大きいがな。ただ、それも誤報と分かった時点で謝罪したわけやから、本来なら、それで済む話やったと思う。
この問題を、ここまで拗らせ社会問題化したのはA新聞社の対応のまずさにあったと言える。
それは、この問題についてA新聞に対して批判的な記事を掲載しようとしていた週刊誌への新聞紙面での広告の掲載を拒否したこと。拒否しないまでも広告の一部を黒塗りにして掲載したこと。
さらに高名なジャーナリスト池上彰氏がA新聞での連載コラムに「従軍慰安婦問題」を取り上げ「A新聞社は謝罪せよ」との記述があったため、そのコラムを不掲載にしようとしたこと、などがそうや。
これでは、意図的な言論封じだと受け取られても仕方がない。
どんな理屈をつけようが、そうすることの正当性は微塵もなく、言論を守るべき立場にある新聞社としては絶対にしたらあかんことやったと思う。
結果的には、激怒された池上彰氏が今後A新聞にはコラム記事を書かないと申し入れたことにより、A新聞社はそうしたことの愚に気がつき、慌てて池上彰氏に謝罪した。
しかし、それにより失った信用、マイナスイメージは最悪の状態になってしまった。
これだけでも大きな失点やが、さらに『吉田調書』が、それに追い打ちをかけた。
福島第一原発事故後のA新聞に、「震災四日後には所長命令を無視し、福島第一原発の所員の九割が逃げ出した」と報じていた記事があった。
当時、ワシらはその記事を信用し、「なんちゅう連中や」と思うたもんやが、実際には、そんな事実は、その後、公開された政府事故調査・検証委員会による故吉田昌郎氏(元東京電力福島第1原子力発電所所長)の『吉田調書』でなかったことが確認された。
事実は、安全のため福島第二原発に一時的に避難、移動していただけで逃げたわけでも撤退(これはA新聞の記事の表現)したわけでもなかった。
これも完全な誤報である。これについてもA新聞社の社長は、誤報と認めて謝罪している。
ただ、いずれの場合も遅きに逸したという外はない。
『吉田証言』は31年も経ってからやし、「震災四日後には所長命令を無視し、福島第一原発の所員の九割が逃げ出した」というのも3年以上すぎた今頃になって、他からの指摘や突き上げで、誤報やったと認めたという感が強い。
普通なら、誤報はそれと認めて謝罪すれば問題はないと思う。誤報の多くは単なるミス、勘違いによるものやさかいな。
人に間違いやミスは、つきものであるということを考えれば、新聞社としてはやってはならない誤報だったとしても、あり得ることだと個人的には思う。
しかし、それを謝ったくらいでは、なかなか許されないケースがあるのも、また事実や。
日本の社会は、良くも悪くもムードや風潮に流される傾向が強い。多くの人が悪い、けしからんと言えば、その理由と経緯はどうであれ、批判の対象にされてしまいやすい。
その意味で言えば、『この報道があってから販売店からは営業自粛してください。と言う販売店もありまして』というのも、ある意味、仕方のないことやと思う。
『また、少しすればほとぼりがさめて前と同じようにとは言えませんが戻ってくるのでしょうか?』というのは、どうやろうか。
少なくともワシは、そう考えとるが、必ずそうなるという保証はできん。
その新聞販売店では、ある程度の時が経てば、この問題も収まって、また元に戻ると考えとるのやろうがな。その時まで勧誘するのは辛抱してくれと。
こういった新聞の不祥事が起きる度に、いつも言うてることやが、そのケツを拭かされるのは現場の人間と相場が決まっている。
中には、直接、新聞社に苦情を言い立てる人もいるかも知れんが、たいていは身近にある新聞販売店か勧誘に来た拡張員に文句を言うケースが多い。
その文句も辛辣を極め、挙げ句の果てには「そんな新聞なんかいらん。解約する」と言われてしまうことも、それほど珍しくはない。
勧誘することで、ヤブヘビになる場合もある。そのために勧誘を自粛してくれと言うてるのやと思う。
しかし、新聞拡張員は、どんな状況であれ、契約をあげんことには収入の道が閉ざされるから、勧誘をせんわけにはいかん。
勧誘を自粛する期間の収入の保証をしてくれるのなら話は別やが、過去において、そういったことをした新聞社も販売店も存在しない。
その辛抱は勧誘員がするしかない。『ケツを拭かされるのは現場の人間と相場が決まっている』というのは、そういうことや。
今までのように一過性の問題なら、まだ救われるが、今回の問題は今後もA新聞の汚点として長く残るやろうと思う。
それに輪をかけるようなニュースが、この回答を書いている時に飛び込んで来た。
『A新聞に新たな不祥事 任天堂・岩田聡社長インタビューを捏造していた!』 というのが、それや。
これは、A新聞の記者が、任天堂の岩田聡社長にインタビューを断られたので、任天堂公式HP上で岩田社長が語ったコメントなどを勝手につなぎあわせ、インタビューに仕立て上げてしまったというものや。
これはいわゆる創作記事で、新聞記者が絶対にやってはいけないことだとされている。ある意味、誤報よりタチが悪い。
誤報は多くの場合、ミスや勘違いが原因やが、これは完全に意図した確信犯やさかいな。
インタビューが取れなくて仕方なく『任天堂公式HP上で岩田社長が語ったコメント』を引用するのなら、はっきりそれと示しておけば、まだマシやが、それでは記者のプライドが許さないということなのやろうな。
最近、ネットを駆使する新聞記者が増えたせいか、これによく似た事案は結構ある。普段やったら、またかで済まされるような事案であっても、時期が悪い。
A新聞を叩きたい人間にとっては、格好の材料になるやろうな。しかも、これは反論が一切できないから、それによるダメージも大きい。
『これから先のA新聞の部数はどのようになっていきますか?』というのは、多少の部数減は起きるやろうが、長期的に見れば、それほどでもないと見る。
それは、これらの問題が大したことがないからと言うのではない。問題としては過去のどんな不祥事より大きいくらいや。
大幅な部数減になってもおかしくはないと考えるのが普通やが、A新聞に限らず現在の新聞の多くが、すでに大幅な部数減に陥っているから、これ以上の部数減は考えにくいということで言うてるにすぎん。
新聞業界は、ネットによる新聞離れ、長引く不況、少子高齢化による人口減、ネットのできない高齢者の自然死などで、すでに部数は大幅に落ち込んでいるさかいな。
それに追い打ちをかけるように、今年の4月から実施された消費税増税の影響による部数減も少なくない。
ネットを活用する世代で新聞を購読しているケースは少ないやろうし、ネットに興味のない人たち、および高齢者などは、今回の騒ぎには割合無頓着だと思う。
唯一、テレビでの報道の影響が考えられなくもないが、そのテレビで謝罪会見をしていれば、そういったものが多い昨今では「またか」と思う程度で、A新聞の購読を止めようとまでは考えんのと違うかな。
そういう人たちが『なかなか大変やねぇ!』と言ってくれるのやと思うよ。
つまり、幸か不幸か、これ以上の部数減は起きにくい状況になっているということや。
それに、今回の問題を収束させるには近い将来、社長、および一部の経営陣が退陣せな収まらんやろうから、必ずそういう事態になるはずや。
そうなれば、「みそぎ」の好きな日本人は納得するし、沈静化するものと思う。
それに、何があってもA新聞が好きだという潜在的なファンの数はバカにはできんくらい多いということもある。
ワシは常にピンチはチャンスに変えられると言っているが、そのピンチの度合いが大きいほど、それに倍するチャンスになる場合もあると考えている。
もっとも、A新聞のトップ連中がどう考えているかによっても違うてくるがな。
『この際、A新聞の拡張員を止めてY新聞の拡張員になる方がいいのでしょうか?』というのは、好きにされたらええとしか答えようがない。
悪いが、ワシにはどうしろとは言えんさかいな。
どうするかを考える材料や情報は示したと思うので、後はあんた次第や。良う考えて決められたらええ。
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