新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.1311 拡張における押しの強さとはどういう事だと考えますか?
投稿者 Nさん 投稿日時 2014.12.16 PM 6:18
数ヶ月前にY新聞の専業から、訳あって拡張員に転向しました。
最初の数週間はボウズで帰る事が多かったのですが、最近は1日フリーで回って1〜2枚上がるようになってきました。
ゲンさんに相談なのですが‥いわゆる拡張における押しの強さとはどういう事だと考えますか?
僕は班長に言わせると押しが弱いみたいなのです。
例えば露骨に嫌がるお客様に、無理に押し付けるような事なら僕には無理だと思います。
同じ契約をいただくなら、納得されてハンコをいただく方が僕としても気持ちがいいです。
僕のこの考え方は間違っているでしょうか?
回答者 ゲン
『僕のこの考え方は間違っているでしょうか?』ということやが、あんたの考え方自体は間違っていない。正しい。
『露骨に嫌がるお客様に、無理に押し付けるような事』はするべきやないし、『同じ契約をいただくなら、納得されてハンコをいただく』というのが本来の拡張のあるべき姿や。
あんたは、その考えのもと『最近は1日フリーで回って1〜2枚上がるようになってきました』と言われておられるのやから、特に問題はないと思う。
というより、現在の拡張を取り巻く厳しい状況にありながら、専業の経験があるとはいえ、拡張の仕事を始められて間もないことを考えれば、よく健闘されておられる方やと考えるがな。
しかも『露骨に嫌がるお客様に、無理に押し付けるような事なら僕には無理だと思います』と言われておられるところからすると、喝勧や置き勧、てんぷら(架空契約)、ヒッカケといった不正の類もしていないやろうと思うさかい、よけいや。
その班長が、あんたのどの部分を指して『押しが弱い』と言うとるのかが、もう一つ良う分からんが、『強引な営業イコール押しが強い』と勘違いしている人間もいとるから、そのつもりで言っていると感じておられるのなら気にする必要はない。
拡張に限らず営業の仕事に、こうすれば絶対に契約が取れるという便利な方法はない。しかし、言えることが一つある。それは結果の出ているやり方、考え方が正しいということや。もちろん不正なしでな。
その意味で言えば、あんたはそこそこ結果も出ているし、これからも期待できそうやから、今のままのやり方、考え方で問題はないと思う。
ただ、せっかく『ゲンさんに相談なのですが‥いわゆる拡張における押しの強さとはどういう事だと考えますか?』と質問されておられるのやから、ワシなりの考えをいくつか話しておく。
押しが強い拡張員と言われるための条件
1.客を見分ける目を持つこと。
当たり前やが、勧誘したすべての人間が契約をするわけやない。通常は数十人、数百人と叩いた(訪問)うちの数人程度が話を聞いてくれ、さらにその中の何人かと契約ができれば御の字なわけや。
裏を返せば、最初から契約してくれそうな客を見つけることができれば、ええということになる。
叩いた(訪問)人の中には、訪問営業自体が嫌いな人、新聞に対して嫌悪感を持っている人たちがいる。当然やが、そんな人たちにいくら勧誘をしても無駄や。
拡張の営業とは難しい客を落とすのではなく、自分にとって簡単な客を見つけることやとワシは考えとる。
経験を積めば嗅覚として、その意味が分かるようになるが、最初のうちは自分と訪問先の相手との相性がええか、どうかを判断して勧誘することや。
分かりやすく言えば、あんたにとって話しやすい相手か、どうかということやな。相性とか波長というのは不思議なもので、合う人間同士やと一方が好感を持って接すれば他方も、それに惹かれやすいということが起きるもんなんや。
そういう人を見つけて重点的に勧誘すれば成約率も自ずと高まるわな。また、そういう人に対して熱心に勧誘できる。その姿を傍で見ていれば「押しが強い」と言われるようになるということや。
例え、そういった人が見つけられないとしても、そう心に留めておくだけでも大きく違うさかい心しといて損はない。
2.丸い客を探す。
比較的、勧誘できそうな人を丸い客と言う。その人自体が温厚そうなという意味もあるが、それ以上に勧誘営業に弱く断り切れない人のことを指す言い方でもある。
建築関係の営業員がそういった人を見つけると○印をつけていたところから、そう呼ばれ始めたと言われている。その時あかんかっても日参すれば必ず落ちるという目印をノートにつけていたわけやな。
そういう人たちの特徴として一般的には、おだてやお世辞に弱い、見栄を張る、家や車、持ち物に凝る、頼まれたら断れない性格の人たちというのがある。
そういう丸い客を探せば、自ずと積極的な勧誘ができるようになり、自然に押しの強い拡張員になれると思う。
3.出会って3分以内を成約の目安とする。
よく押しの強い営業は粘ることだと言われるが、必ずしもそうやない。誰がどうやっても梃子でも契約に応じないという人はいくらでもいる。
そんな人にいくら時間をかけても無駄やわな。契約する人は、比較的簡単に契約するもんや。あんたにもそんな経験があるはずやと思う。
出会って3分以内に相手を自分のペースに引き込む。この時に肝心なのが、その相手を見切るということや。あんたの話に乗ってきそうな人なら、持って行き方次第で、成約になるやろうし、ファイトも湧くやろうと思う。
そのファイトが強いと言われる押しを生むわけや。
逆に、この相手は自分には合わないなと見切ったら、早々に立ち去る方がええ。拡張の仕事は時間との勝負やから、嫌がる客を説得しても時間の無駄に終わるケースの方が多い。
それよりも一人でも多く、あんたと波長の合いそうな客を探す方が懸命やと思う。
4.転換率のええ客を掴めば押しが強いと言われる。
あんたは専業をされておられたということやから、転換率というのは、ご存知やと思う。
拡張員の取ってきた契約が、どのくらいその店に定着するのかという割合を示した数字やな。普通は10%程度でまあまあ、20%を超えれば優秀な方やと判断される。
販売店の立場からすれば、長期優良読者を作るきっかけ作りになるような客から契約を上げて欲しいと考えるもんや。
そういう契約を数多く上げられる者が本当に強い拡張員だと、販売店から評価される場合が多い。
5.サービスに固執した勧誘はしない。
拡張員として最も認められるのは、一軒家の他紙固定読者の契約を販売店が許容する範囲内での拡材であげることや。それが強い拡張員という評価につながる。
もちろん、それが口で言うほど簡単なことやないというのは百も承知している。
しかし、出入りの販売店、および所属の団から信用を得ようとするのなら、それを避けていたんではあかん。
一軒家の他紙固定読者というのは、拡材の多寡でなびくケースは少ない。そんなものでなびくくらいなら、とっくに他の拡張員に落とされとるさかいな。
サービス以外の方法で落とす方法を考える。そのための情報なら『第84回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その2 拡材について』 の中に『金をかけずに済む拡材サービス方法のあれこれ』というのが参考になるのやないかと思う。
また『第94回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その4 工夫は拡材に勝る』 に『工夫することで、拡材以上の効果的なサービスができる方法』というのもある。
考えれば、いろいろあるということや。
6.客の気分を良くする。
一般的に固定読者というのは読み慣れた新聞を変えたがらない。それを変えなあかんのやが、そう簡単にはいかない。
最も効果があるのは、その客に気に入られることやと思う。ここで問題になるのが、その客とあんたの相性が合うか、どうかという点や。
合えば「あんたには負けた」、「あんたやから契約するんや」と言わせることができる。
そのためには、お世辞やヨイショを駆使して客の気分を良くさせるというのが、最も効果的や。
見え透いたお世辞やヨイショでも、他人から持ち上げられたり褒められたりすると、どんな人も悪い気はしない。
営業の世界ではこれを抜きには語れないほど重要なものやと思う。お世辞の一つも言えんというのでは営業すること自体難しい。
お世辞やヨイショを言う裏には、相手を喜ばせたいという思い、気に入られたいという気持ちが必ずある。
悪い気がしないというのは言われた方も、それを敏感に感じ取るからやと思う。
営業でこの心理を利用せん手はない。というより営業的な考えから、お世辞が生まれたとも言える。
営業は物を売り込むより、自分を売り込むことが肝心やというのが、ワシの持論や。
自分を売り込むことが営業。そう思えば誰でも自然にその売り込む相手にお世辞の一つも言えるはずや。
ただ、お世辞やヨイショがなかなか言えないという人が多いのも確かやけどな。
特に日本人は、お世辞やヨイショすることに対して、良くは思われないのやないかと考えるから、よけいや。それで迷って躊躇する。
そういう風に難しく考えると何でもそうなる。特に実直な人にそういう傾向が強い。
それはそれで悪くはない。実直な人間を好む客も多いからな。そのキャラクターは大事にした方がええと思う。
実直な人は「奥さんみたいな美しい人には会ったことがない」とか「ご主人はただ者じゃありませんね、何をなさっている方ですか」と言うような、取ってつけたようなお世辞は言いにくい。
そんな人は、さりげなく褒めるということを考えたらええ。
お世辞というのは、何もその相手を直接褒めておだてる必要はない。
玄関一つとっても、下駄箱の上の花瓶や花、置物、壁に掛けられた絵など、その対象はいくらでもあるはずや。
玄関は、その家の顔でたいていの人は気を使う場所や。そこにあるものを、さりげなく褒めるという癖をつけといて損はない。
ワシの経験でも、何気なく褒めた花瓶の花が、実はその家の人にとっては思い出深いもんやというケースがあった。
そんな場合、その人はその話をしたがってる場合が多いから、こちらは黙ってその客の話を聞くようにするだけでええ。
話すばかりが営業やない。客の話を聞くのも立派な営業やさかいな。
その他にも、壁の絵がその家の家人の作であったり、有名人から貰ったものやったり、そこそこ高価な物やという場合も結構ある。
置物のような飾り物にしても同じことが言える。
そういう場合、それをさりげなく褒められたら誰でも悪い気はせんはずや。それだけで話もしやすくなると思う。
お世辞を言うためには何事も注意深く観察する必要があるということや。
それに、そういったお世辞を繰り返すことで、自然といろいろな物に対しての造詣も深まる。
ちょっとした物知りやな。そうなれば、お世辞を言うにも磨きがかかってくる。
慣れれば、自分でも不思議やなと思えるくらい、お世辞が言えてるもんや。
お世辞の具体的な事例については、当メルマガ『第107回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その6 お世辞トーク集』の中の『新聞営業における、お世辞トーク集』でいろいろと例を挙げているので、紹介しとく。
新聞営業における、お世辞トーク集
1.主婦に受けやすいお世辞トーク
【ステキなお住まいですね】
新築、および比較的新しい一戸建ての住宅の場合、こう言っておけば嫌がられることはまずない。
比較的古そうな家なら、【味わいのあるお宅ですね】と言うておけばええ。
他にも大きい家なら【立派なお宅ですね】。
庭が広ければ【お手入れが行き届いていますね】。
玄関を褒めるのなら【落ち着いた玄関ですね】、【綺麗な玄関ですね】。
花壇や植木があれば、【美しいお花ですね】、【立派な植木ですね】。
他にも気づくことがあれば、どんなことでもええから、それについても褒(ほ)めておく。
特に、外壁塗装して日が経っていない、カーポートを新設したばかり、屋根瓦を取り替えた、といったことが分かるような家の場合、それについて褒めるのは効果的やと知ってほしい。
そういう家の主は、ほとんどが住宅リフォームの営業員に勧誘されてとか、見栄っぱりな性格というのが多く、お世辞トークに弱いという傾向にあると。
あるいは、多少、周りとの調和が取れていない「奇抜な感じの家」の場合も、この【ステキなお住まいですね】というトークは結構活きる。
人から、そう言うてほしいがために、敢えて、その選択をしとるというケースが多いさかいな。
要は目立ちたがりなわけや。目立ちたがりな人間は「おだて」、「お世辞」に弱い。
【いい香りがしますね】
その家の玄関に入る、もしくは覗ける位置で応対して貰うたら、こう言うとく。もちろん、【いい匂いがしますね】でもええ。
たいていの家では、玄関口とトイレの臭いには気を使っている所が多いから、このトークは結構活きる。相手が主婦なら尚更や。
他にも下駄箱の上の花瓶やその中の花、置物、壁の絵などのように褒められる物はなんでも褒める。
玄関口は、その家の顔で気を使う場所や。そこにあるものを、さりげなく誉めるという癖をつけといて損はないと思う。
ワシの経験でも、何気なく誉めた花が、実はその家の人にとっては思い出深いもんやということがあった。
そんな場合、その人はその話をしたがってる場合が多いから、こちらは黙ってその客の話を聞くようにしたらええ。
話すばかりが営業やない。客の話を聞くのも立派な営業やさかいな。
その他にも、壁の絵がその家の家人の作品やったり、有名人から貰ったものやったり、高価なものだったりという場合も結構ある。
置物のような飾り物にしても同じことが言える。
そういう場合、それをさりげなく誉められたら誰でも悪い気はせんはずや。
というか、それに気づいてほしいという心理が込められとる場合が結構多い。
【かわいい、お子さんですね】
3歳くらいまでの小さな子供がいれば、こう言っておけば間違いはない。
人の親であれば、誰でも自分の子供を褒められて悪い気はせんさかいな。
他にも【お人形さんみたいですね】、【今が一番かわいいときですね】と言うのもええ。
これが幼稚園児くらいになると、例え小憎たらしい子供であっても【とても元気のいい活発なお子さんですね】と言うておけば間違いない。
大人しい、人見知りのする子供なら、【礼儀正しいお子さんですね】など、と言うておけば無難やと思う。
また、主婦だけやなく、その祖父母が出て来た場合には、【おじいさま(おばあさま)によく似ておられますね】と付け加えるのも効果的や。必ず喜ばれる。
【魅力的ですね】
こんな歯の浮いたような台詞(せりふ)でも喜ばれるケースが多い。
これが独身で容姿に自信を持っていれば、そう言い寄る男も多いやろうが、家庭に引きこもった主婦は、そう言われることが少ないから、インパクトとしては結構強いわけや。
十人並みに見える女性は、ほぼ間違いなく、過去、自身にそれなりの自信を持っていた人が多い。
そういう主婦は容姿をさりげなく褒められると弱い。
他にも【品がおありですね】、【笑顔がとてもステキですね】などが効果的な褒め言葉になる。
顔立ち、手足、スタイルなど褒めやすいところは、すかさず褒めとく。
その訪問先が二度め以上の場合で、その主婦の容姿を褒めるのなら必ず【いつも】というフレーズを付け加えておくのを忘れんことや。
【いつも魅力的な方ですね】、【いつも品がおありですね】、【いつもお若いですね】、【いつも笑顔がとてもステキですね】といった具合に。
これを【今日はとても魅力的ですね】と言うた場合、本人は褒めたつもりでも、「今日は例外的に魅力的なのか」という、ひねくれた受け取り方をする主婦もいとるさかいな。
褒め言葉と言えども、細心の注意が必要になる。
2.旦那に受けやすいお世辞トーク
【それは、すごいですね】
ワシは、拡張する際には必ず雑談から入るわけやが、そのポイントとしては、なるべく、相手の意見を引き出させやすい話題を振るようにしとる。
それもなるべく旬な話題の方が効果が高いと考えてそうする。
年輩の旦那なら「相撲協会の野球賭博をどう思われます?」と水を向ければ、「とんでもないことや」と、憤りを見せ、それについて批判めいたことを言うケースが多い。
たいていは、新聞やテレビの受け売りを、そのまま言うてるだけなんやが、そういう場合は、それと分かっていても反論せず、うなずき納得したという素振りで【なるほど、いやー、ご主人の見識はすごいですね】と感心して見せる。
ついでに、【ご主人と同じようなことを、本日の当社の新聞紙面で解説委員も言ってましたが、ご主人の見識は、まさにプロ級ですね】とでも言えば、その新聞を勧誘する糸口にもなる。
これが、比較的若い旦那なら、現在、開催中のサッカーのワールドカップに因んだ話題を振るのでもええ。
「今回の南アフリカ大会は有力チームが苦戦していますね。特に前回の優勝チームのイタリアや準優勝チームのフランスなどは予選で敗退しましたからね」と向ける。
すると、ちょっと興味のある人間なら、「イタリアはともかく、フランスの場合、あれだけ、監督やコーチおよび選手間の亀裂が激しくてチームワークが崩壊してたら当然だ。しかも、その選手のバックには、あの有名なジダンが選手側についていたというから、選手は誰も監督やコーチの言うことなんか聞かないよ」と言うケースも考えられる。
これも報道の受け売りなんやが、【へえー、そうなんですか。よくご存知で、すごいですね】と、何も知らん素振りで感心して見せる。
「まったく知りませんでした」、「驚きました」と。
さらに、参議院選挙が公示されたという話題を向けた場合、選挙に関心の高い旦那さんなら、熱弁を振るうこともある。
そんな場合、どんな意見であっても、【なるほど、そうだったんですか。大変勉強になりました】と、そう迎合しとく。
「お世辞トーク」に反論は禁物やさかいな。営業の場では、すべてを是とせなあかん。自分の意見は殺す。それが絶対の条件になると心得とくことや。
中には有名人と会った、知り合いやと吹聴する者もいとる。
そんなときにも、この【へえー、そうなんですか。すごいですね】と大袈裟に驚いて見せ、その話をさせるように仕向ける。
会社の役員や重役など肩書きを自慢げに披露する人間も、そのお世辞トークには極端に弱いから、ただひたすら褒めちぎることや。
つまり、その旦那が自慢したいことは何でも褒めとけば間違いないということやな。
その際、【すごい】の他に、【さすが】、【見事なご意見です】、【素晴らしい】、【参りました】、【頭が下がります】などと、タイミングを見計らって褒め言葉、ヨイショのかけ声を変えるというのも手や。
【すごい、すごい】の連発だけやと、どこか白々しく小バカにしたようにも聞こえ、逆効果になりかねんさかいな。心しとくことや。
3.若者に受けやすいお世辞トーク
拡張で気をつけなあかんのが、「上から目線」というやつや。
特に若い人はこれを嫌う。
営業というのは、今更言うまでもなく物を売る仕事や。
「買ってください」とお願いするのに、「兄ちゃん取ったれや」というのは本来あり得ん、あってはならんことやが、この業界では、なぜかそうしたことが平然と行われてきた。
「学生や若い人間は脅すに限る」といったような言葉を公然と吐く者も珍しいことなかったさかいな。
拡張員、専業を問わず、そういうアホな認識を持っていた者もおったと。勘違いも甚(はなは)だしいと。
いくら相手が若くてもお客さんになって貰うことには変わりはない。拡張、勧誘というのは、そのための「お願い事」なわけや。
年長者が、若い人に対して優位、上から目線で話してもええのは、その若い人を教え導く立場にある、またはその若い人自身がそう願う場合くらいなものや。
単に長生きしとるから目上やと考えるのは愚の骨頂、アホとしか言いようがない。
お互いの立場というのは、お願いする方が下で、お願いされる側が上と相場が決まっとる。
特に営業の世界では、これは絶対的なことやと認識しとかなあかん。
その基本を心得ていたら、この若い人に対しても、先に言うた『2.旦那に受けやすいお世辞トーク』のケースと大差ないということが理解できると思う。
それが分かれば、後はその立場を褒めるようにすればええだけのことやと。
【頑張っておられますね】
学生さんであれ、仕事をしている若い人であれ、こう言うとけば、まず間違いない。
学生さんで有名大学校に通っていれば、【まさに、あなたは日本の頭脳ですよ】、【将来、さぞかし名の通った立派な人になられるんでしょうね】と、おだて上げる。
それほどでもない大学に通っていても、褒められる部分があれば、それを褒める。
褒めるべきことがなさそうでも、【あなたのような聡明な学生さんもおられるのですね】と言うておけばええ。特別なのやとアピールする。
その上で【そんなあたにこそ、当社の新聞を読まれるべきです。必ずお役に立てるはずですから】と勧誘する。
有名大学校の教授、講師の中には、未だに新聞紙面を使っての講義というのが多いと聞くさかい、その事実を調べて、そう説得すれば効果的やと思う。
また、就職活動をしている学生さんなら、一流企業の面接官が、その新聞紙面を参考に面接試験の内容を作成しとると言うてもええ。
これは間違いでもウソでもないさかいな。
大学の教授、講師にしても、一流企業の面接官にしても、新聞記事を引用する方が、いろんな面で手っ取り早く自分たちの手間も省けると考えて、そうするケースが多いというから、それを強調するわけや。
新聞がそういった試験の最も有効な参考書、資料になると。
4.高齢者に受けやすい、お世辞トーク
【何でもよくご存知ですね】
高齢者には、こう言って褒めておけば間違いは少ない。
勧誘する者と歳が離れていればいるほど、それが単なる「お世辞」にはならんようになる。
また、高齢者ほど、「昔は良かった」という話をしたがる傾向があるから、嫌な素振りを見せずに、【すごい経験をされてますね】、【さすが博識でいらっしゃる】、【そんなことはまったく知りませんでした】と感心して見せるのも手や。
高齢者に対しては無理に売り込もうとしなくても、話し相手になるだけで、かなり効果が上がる場合が多い。
特に今は独り暮らしの高齢者が多く、新聞の勧誘員というのは結構、身近な存在になっとるということもあるしな。
ただ、高齢者への勧誘は何かと批判の対象になりやすいさかい注意しとく必要はあるがな。
現在、悪質な訪問業者が高齢者を騙して多額の商品を売りつけるという事例や犯罪などが頻発しとるさかい、よけいや。
新聞勧誘にしても、耳の良く聞こえない高齢者、目の見えにくくなった高齢者への強引な勧誘が行われているケースもあると聞くしな。
嫌がっているにも関わらず、騙すようなやり方で契約をさせるという事案もあると。
サイトのQ&Aへの相談も時折、その類のものが寄せられてくることもある。
もっとも、悪質で違法性の高いと思われるケースに対しては積極的に、その対処方法をアドバイスしとるがな。
そういう輩は絶対に許せんさかいな。
しかし、中には、新聞を必要やないと考える息子さんや娘さんから、その高齢者である親御さんの意志とは別に、新聞そのものが勧誘されて困るという相談をされるケースもある。
そんな場合は、まずその親御さんの気持ち、意志を第一に考えてあげてほしいと言うてる。
そこには、世代間の価値観の違いというのがあるからと。
インターネットに比重を置いた人から見ると、金を出して新聞を講読するという行為が、何かとてつもない無駄のように思える。
しかし、新聞が近くにあって当たり前という時代を長く生きてきた高齢者にとっては、それを読む読まないに関係なく、ないと困るという人が多いということを知ってしてほしいと思う。
新聞が、そこにあるだけで落ち着くのやと。
その価値を決めるのは、あくまでもその本人で、例え身内といえども、その干渉はするべきやない。
どんなに傍(はた)から意味のないように思える物でも、その当人にとって大事な物は世の中にはいくらでもあるさかいな。
それと同じことやと理解してほしいと。
5.商店主、及び会社経営者、責任者に受けやすい、お世辞トーク
【さすが、お目が高い】
商店主、及び会社経営者、責任者というのは、ある意味、営業のプロでもあるから、通り一遍の褒め言葉で落とすのは難しい。
これでもか、これでもかというくらい徹底した方がええ。それには【さすが】と言うのがポイントになる。
この【さすが】というのは、相手の自尊心をくすぐるには格好の言葉やさかいな。
【さすが、目のつけどころが違いますね】、【さすがは社長さん】、【さすがに、ご賢明な判断をされますね】、【さすが、私どもとは偉い違いです】、【さすがは研究熱心ですね】など、いくらでも使うことができる。
また、その相手次第では【努力が結果になって表れていますね】、【すごい行動力ですね】、【フットワークが軽いですね】、【大変なご活躍ですね】などと言うのも効果的な場合がある。
以上や。
客を楽しい気分にさせ、笑いを誘うためにはユーモアやジョークを使うという手もある。
ただ、自分が面白いと思う事が他人も面白いとは限らんがな。逆に自分ではつまらんと思う事が受けて笑いを誘う場合もある。
無理に、何か面白いことを言おうと構えると空回り状態に陥りやすい。俗に「すべる」というやつや。
ユーモアやジョークは、ある程度、資質というかその人間のキャラクターによっても左右される。性格も含めてな。
その雰囲気を簡単に出せる者は、客と自然に会話も弾み笑いも取れる。
簡単やと考える者にとってはどうということはないが、難しいと捉える人には容易なことではない。
それが難しいと思う者でも、客の笑いを誘うことはできる。
誰にでも通じるウイットに富んだユーモアというのはそうはないが、簡単な挨拶に軽いユーモアを含ませることはそれほど難しいことやない。
例えば「今日は特別、寒いですね。私の頭は特に冷え性気味ですから、たまりませんわ」と自分の薄い頭髪をさりげなく話題にする。
自虐的な話はユーモアになりやすい。
初期段階では、話易い話題を自分で探した方がやりやすいやろうと思う。
流行や事件、事故などの話題もすべてそのための材料になる。何でも使い方次第でユーモアやジョークになるということや。
これについても『第68回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の勧誘ユーモア&ジョーク集 Part 1』というのがあるから参考にしてくれたらええ。
その中から、客に言って笑って貰えそうなものを幾つか紹介する。
【独自の営業法】
ある拡張員同士の会話。
「オレは独自の営業法を編み出して、それで拡張しとるんや」
「そうか、それはなかなかええ心がけや。自分の失敗を他人のせいにしたらあかんさかいな」
【警察に言う】
しつこい勧誘に嫌気が差した主婦の一言。
「いい加減にしてよ。あんまりしつこいと警察に言うわよ」
「それはいいですけど、警察へは別の人間が勧誘に行ってますから、私では対応できませんが」
【どっちの仕事の知り合い?】
二人の拡張員が、あるスナックにやって来た。
すると、カウンター席に座っていた派手な格好をした美人が、その内の一人を見て軽く会釈をした。
「おい、お前、あんな美人と知り合いなんか?」
「ああ、お客さんや」
「お前の? それともあっちの?」
【外は寒い】
冬の寒い日。ある駅の待合室でのこと。
一人の拡張員が入ってきて、入り口の扉を半開きにしたまま席に座った。
それを見ていた別の拡張員が一言。
「おい、扉はきちんと閉めろ。外は寒いんやから」
それを聞いた、その拡張員は憮然としながら、その扉を閉めて言い返した。
「これでええか。せやけどな、いくら扉をちゃんと閉めても外が寒いのは一緒やで」
【決定権者を見抜け】
拡張員は、その夫婦のいずれに決定権があるか見抜いて勧誘する必要がある。
その見分け方。
「奥さん頼みますよ」と迫る、やり手の拡張員。
「でも、主人が嫌と言うと思うし……、申し訳ありませんけど、主人には逆らえませんからお断りします」
「それでしたら大丈夫ですよ。奥さんが、お留守のときにお宅に伺った折、ご主人は奥さんさえ良ければ別に構わないと仰ってましたので」
「何ですって!! うちの主人がそんなバカなことを言ってたの?
【断れない一言】
勧誘していて、中年の女性が出てきた場合の一言。
「えっ、ここは黒木瞳さんのお宅だったんですか?」と、大袈裟に驚く。
自分に自信のある中年女性は、そう言われると契約する確率が高い。
反対に自信のない中年女性は、ただのお世辞と見抜き契約しない。
その話をする。
すると、見栄っ張りな中年女性は断ることができない。
【上手いお世辞】
ある主婦が訪れた勧誘員に向かって言った。
「あら、あなた、前にも来たことがなかったかしら?」
「いえ、今回が初めてですが」
「そんなことはないわ。確かに前に会ってるわよ。そのときに上手いこと言われて騙された記憶があるもの」
「そんなはずはありません。奥さんのような美人の方なら一目見れば絶対に忘れることなどありませんから」
それを聞いた主婦は、にっこり笑って言った。
「そうね。私の記憶違いだったわ」
他にもまだあるので、暇な時にでもゆっくり見て頂けたらと思う。
7.雑談で客の懐に飛び込む。
『3.出会って3分以内を成約の目安とする』で言うた事と相反するようやが、これはという客には雑談で客の懐に飛び込むというのも手や。
ワシは客とは仕事だけの話はしない。ワシが営業の仕事が好きなのは、この雑談を誰とでも交わすことができるからやと言うてもええ。
雑談というのは、営業において、特にワシの推奨する人間関係構築ということに関してはなくてはならんものやと思う。
上手く雑談が交わせる相手とは成約率はそれだけ高くなるからな。
加えて、知識も増える。当然やけど、客もそれぞれの固有の人生があるから、ワシの知らん事を知っているケースも多い。
本来なら知り得ん事も、雑談を交わして知ることができるわけや。何となく得した気分になれる。
昔は、この雑談というのを、営業のためだけに考えていた時期があった。
今日の客には、どんな話のネタがええかというようなことを、毎日、必死で考えとったもんや。
そのためには、いろんな情報を仕入れておく必要がある。
新聞を読むのは当然として、テレビ、ラジオ、本、今やったらネットも調べておかなあかん。
あらゆる情報がその雑談のネタになるさかいな。
雑談の基本は面白いということや。この面白いと言うのは、相手にとってやで。
いくら自分だけがこの話は面白いと思うても、相手が興味を示せへんかったら、ただの迷惑な話にしかならんさかいな。
せやから、話す雑談のネタは相手と状況を見て使い分けな効果がないということや。
相手が興味を惹きそうな話題で、その相手よりちょっとだけ有意義な情報を知っていれば、たいていの人は話に食いついてくる。
そのちょっとの差を埋めるためには常にアンテナを張り巡らし、情報を入手するようにしとかなあかんということや。
もっとも、あまり難しく考えてもあかんがな。所詮、雑談は雑談なんやから。
秘訣というほどでもないが、最初のうちは、自分の得意分野の話を中心にするようにしたらええ。話しやすいネタだけに絞るんや。
そのうち経験と場数を踏めば自然にネタも増えて話すことにも慣れてくる。
「好きこそものの上手なれ」という「ことわざ」もあるように、雑談が好きになれば自然に上達するもんや。
営業の仕事は、話すことが第一やから、少なくとも自分を話好きにせなあかん。そのためには、雑談が最も有効な手段やと思う。
この雑談についても、メルマガ『第13回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんの勧誘実践Part 1 雑談から』 、『第188回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんの話し方教室 その3 雑談の切り出し方について』、
さらには『第127回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その8 雑談ネタの集め方』などでいろいろと話しているので参考にして欲しいと思う。
最後に、真に営業が強い拡張員とは、単に契約数だけが多いというのではなく、新聞販売店や団に認められる契約を上げられ、尚かつ、拡材に頼らない営業で実績を残せる者のことを指すのやと言うとく。
サイトにいつも協力して頂いている、ある業界関係者の方から、
もう一枚もう一枚と、店に戻る上がり時間まで一分一秒も無駄にしないで一心不乱に最後まで叩き続ける必死の姿勢で挑んだ者にしか、真の強さは与えられないのがこの仕事です。
したがってセールスを見る目も、本物を身に付けた者にしか本物を見ることができないのです。
大変残念なのですが、こんな事を言っても結局はそれを理解してくれる人が極めて少ないのがこの世界です。
ゲンさんを通じて「本物のセールスとは何か」を、もっともっと問いかけて頂ければと思います。
というメールを頂いた。
この方は、業界でもひとかどの実績を残された方やから、その言葉には、それなりの重みがある。
ワシの話が、その方の期待に応えられているか、どうかは分からんが、あんたの『拡張における押しの強さとはどういう事だと考えますか?』という質問の答えなら、そういうことやと理解して頂ければと思う。
白塚博士の有料メルマガ長編小説選集
月額 210円 登録当月無料 毎週土曜日発行 初回発行日 2012.12. 1
ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート1
2011.4.28 販売開始 販売価格350円
書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』好評販売中