新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1312 専業の苦悩について


投稿者 Hさん  投稿日時 2014.12.24 PM 4:05


はじめまして。新聞業界に携わる私にとって、いつも興味深く拝見させて頂いております。

新聞販売店の専業になり、3年が過ぎましたが、つい先日お世話になった代表が改廃になりました。

代表としての資質はともかくとして、本社の販売店縮小に伴う、何か作為的なものを感じました。

私は、以前からこの業界を離れ、自営でやりたいことがあり、この機会に退職する事となりました。

現在、かなりの大所帯となり、若いスタッフや年配のスタッフに囲まれ退職日までの引き継ぎ作業に追われる毎日ですが、人材募集をかけているにもかかわらず全く連絡すらありません。

地元で有力なフリーペーパーに相当な金額を注ぎ込んでいますが、このままだと配達ですらままならない状況です。

アベノミクスが謳われるようになった頃から、配達、集金募集を出してもパッたり来なくなり、今まで騙し騙しやって来ましたが、流石に限界が近づいています。

本社は、事情を知ってか知らないか分かりませんが、情開メイトや拡張団の日程が目白押しで、ひと月に15日程度の案内をし、また、案内をする為の地図作りや、案内する場所の選定を考えたりしなければいけません。

また、集金人不足から、沢山の集金を抱え、毎日奔走しています。

配達にしても、専業スタッフは常配化し、誰かが休むと2、3区域の配達となり疲労困ぱいで、いつ事故をしてもおかしくない状態です。

他業種に至っては、人がいないので出店が出来なかったり、深夜営業を止めたりせざるを得ない所や…。いよいよ少子化や偏った景気回復に伴う人材難が深刻な問題になって来ました。

私は、無能な新聞社に言いたいです。『紙を増やせ』と言うのも大事かもしれませんが、現場あっての事ですと。

販売店の代表は、未だに改廃されるのが怖くて言いたい事も言えない有様で、私は鬼気迫る勢いで代表に現状を訴えて来ましたが、分かってはいるが、どうしようもない感じです。

私は、去り行く人間ですからどうでもいいと言えばそうなのですが、この狂気の世界で残って仕事をする仲間たちを思うと、気掛かりな気持ちにもなります。

この状況が新聞本社まで火の粉が降りかからないと、何も変わらないのだとすると、何だか虚しいです。

長文となってしまいましたが、ゲンさんなりのご意見を賜りたくメールさせて頂きました。

よろしくお願い致します。


回答者 ゲン


現在、新聞業界は相当に厳しい状態に置かれている。ただでさえ、毎年のように数十万部もの部数減が続いているところに持ってきて、今年は消費税増税が追い打ちをかけた格好になっている。

消費税増税は完全に景気を冷え込ませた。新聞業界は景気に左右されやすい業種やさかい、その影響には計り知れないものがある。

数十年前の高度成長期やその後のバブル経済期の頃は右肩上がりに部数が伸び続けていたが、バブル崩壊後、長引く不景気に突入したことで部数は下降線の一途を辿っていることでも分かると思う。

高度成長期と呼ばれた1955〜73(昭和30〜48)年の20年近くの間、日本経済は成長率が年平均10%を超える成長を続け、国民総生産(GNP)は、資本主義国ではアメリカにつぐ第2位の規模(1968年)にまで達した。

それと時をほぼ同じくして、昭和30年頃の新聞の発行部数は2,300万部程度やったが、昭和50年頃には4,000万部に到達している。

それが、バブル全盛時の昭和60年頃から平成10年頃にかけて5,300万部にまでなった。この頃が新聞業界の最盛期やった。

その間、バブルの崩壊が始まって、しばらくは横這い状態が続いたが、それには「押し紙」という禁じ手を使って発行部数を維持していたということがあった。

実際の実売部数は、その頃から下降線の一途を辿っていたわけやがな。

現在は、その押し紙を含めてさえ、4,800万部程度に減少しとるという。最も良かった平成10年頃に比べて、実に500万部以上もの発行部数が減少している。年平均、30万部以上の減少になる計算や。

それにしても高度経済成長期より格段にええのやが、上り調子の時の数字と下落一辺倒時のそれとでは受けるイメージが、まったく違うがな。

2013年度の発表だけでも、前年の2012年に比べて、朝刊で約54万部、夕刊で約48万部もの大幅な部数減に陥っているということや。

今年の数字はまだ出ていないが、それよりも、もっと悪いと予測できる。おそらく過去最悪やろうと。

当メルマガの『第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは』でA新聞の不祥事問題について話したが、その問題が起きて数ヶ月が経った今、当初の見込みをはるかに超えた事態に新聞業界は置かれている。

ワシらは、過去、新聞社が引き起こしてきた不祥事と同じように時が経てば、また元のようになるものと考えていた。悪くても、その時だけのことやと。

しかし、今の現実はA新聞だけを見てもサイトに届けられる情報から、ここ2、3月の間に少なくとも10万部程度の部数が減少していることが分かった。

いつもなら、その分は他紙に流れるのが普通やが、今回に限り他紙に流れた部数は、それほど多くはなかったとのことや。

不祥事が発覚した当初は好調やったという他紙の販売店も今は、そうでもないという報告が多い。

新聞業界全体で見れば、むしろマイナスが加速していると言える状態になっている。A新聞だけやなく新聞業界全体のイメージが悪くなっとるわけや。

『配達、集金募集を出してもパッたり来なくなり』というのも、確かにアベノミクスに喧伝されいるほどの効果がないということもあるが、今回のA新聞の不祥事による影響も大きいと考える。

普通に考えて、悪い噂のある業界で仕事をしたいとは誰も考えんさかいな。

『他業種に至っては、人がいないので出店が出来なかったり、深夜営業を止めたりせざるを得ない所や…』というのも同じことやと思う。

それらの企業は、俗にブラック企業と呼ばれているが、残念ながら新聞業界もそれらのブラック企業と比べて大差ない。同じような見方をされている。

あんたも、あまりの仕事の過酷さ故に『疲労困ぱいで、いつ事故をしてもおかしくない状態です』と言われておられるところからすると、そう感じておられるのやないかと思う。

加えて、あんたが言われるように『いよいよ少子化や偏った景気回復に伴う人材難が深刻な問題になって来ました』というのもある。

働き手の絶対数が少ないわけやさかい、すべての業種に人手が行き届くことはない。そんな状況でブラック企業と呼ばれてしまえば誰もそんなところで仕事をしたいとは思わんわな。

『この状況が新聞本社まで火の粉が降りかからないと、何も変わらないのだとすると、何だか虚しいです』と言われておられるが、新聞社はその状況を十分認識しとると思う。

そのための自己防衛の手段として『本社の販売店縮小に伴う、何か作為的なもの』があるのやと考えるがな。

ここでは、まだはっきりと断言できるだけの情報と根拠を得ているわけやないから軽々なことは言えんが、現在、新聞社は販売店が極端に少なくなっても生き残れる方法を模索しとるとのことや。

新聞社が『何も変わらない』のではなく見えないところで大きく変わりつつあるというのが実情やと思う。

もっとも、それを画策しとるのは新聞社の一部の上層部だけで、それに異を唱える人たちも新聞社内部には多いさかい、最終的に、どうなるかは、まだ分からんがな。

いずれにしても新聞販売店は新聞社に頼らない独自の生き残りを真剣に考えなあかん時期に来ているのは間違いないと思う。

新聞社任せにしていては生き残りは覚束ないと知るべきやと。

『この狂気の世界で残って仕事をする仲間たちを思うと、気掛かりな気持ちにもなります』と憂う心情はワシらも同じで、このQ&Aやメルマガで、そのための方法を幾度となくアドバイスしとるわけやけどな。

どんなことがあっても方法は必ずある。それがワシらの考えであり信条や。せやから、困ったことがあれば遠慮なく相談して欲しい。絶対に上手くいくという保証はできんが、それでもそれぞれの状況に合わせたアドバイスはできるはずやさかい。

そう、あんたからも残った仲間の人たちに知らせてあげて頂ければと思う。

以上が、ワシなりの意見、考えということになる。分かって貰えたやろうか。


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