新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.1336 クーリングオフの書類に押す印鑑について


投稿者 ハテナさん  投稿日時 2015. 5.18 PM 6:29


18歳大学1年生です。5月18日の夕方、訪問販売でY新聞と今年10月からの6か月間契約をしてしまいました。

今すぐには答えられないから考えさせてほしいと言ったのですが、「もう大学生なんだから」「6か月で自動的に止まるから」と言われ、恥ずかしながら契約してしまいました。

セールスに一人で対応するのが初めてだったので、非常に怖かったのです。

そこで、契約書類の裏面にクーリングオフについて記載されていたので、これからクーリングオフをしようと思い、書面の書き方を調べていました。

そこでわいてきた疑問なのですが、最後に名前の横に印鑑を押すと思います。その印鑑は、いわゆる「シャチハタ」でも大丈夫でしょうか。

実印が実家にあるため、万一実印が必要なら8日以内のクーリングオフができません。どうしたらいいでしょうか。

また、契約後に「粗品がある」と言われて受け取ったので、返品したほうがいいと思うのですが、また顔を合わせてまともに話ができる気がしません。顔を合わすくらいなら返したくないのですが、どうしたらいいでしょう。教えてください。


回答者 ゲン


クーリング・オフの書面に押す印鑑については任意やから、捺印しなくても特に問題はないとされとる。

ただ、捺印して出す人が大半やから、それを決まり事のように思っている人は多いがな。

あんたはネットで『クーリングオフをしようと思い、書面の書き方を調べていました』ということで、その捺印の方法について書いているページが見つからんかったさかい不安になられたのやろうと思う。

どのページを見られたのかは分からんが、たいていはどこかの法律サイトやないかと考える。

法律家の間では『クーリング・オフの書面に押す印鑑については任意』というのは常識やから、敢えて触れるまでのことはないと考え、特にそれについての記述がなかったのやろうと思う。

または押さんより押した方がええという意識から、意図的にその説明を外していたとも考えられる。

ただ、いくら捺印は任意やと言うてもシャチハタを押すのは止めておいた方が無難やと言うとく。

これについても、はっきりダメといった法的根拠はないが、シャチハタは厳密に言うと印鑑としては認められていないから、捺印したことにはならんと判断されることもあるさかいな。

シャチハタは分類するとゴム製のスタンプになる。そのため押す力の強弱によって印影が変わってしまいやすく、使用されているインクが浸透性の「顔料インク」で印影に滲みや、時間経過によって薄くなるおそれがあるため、本来の印鑑としての機能を果たすことができんと見なされている。

それもあり、印鑑登録条例の第5条2項3で、『ゴム印その他の印鑑で変形しやすいもの』は実印登録としては無効だと決められているわけや。

もっとも、そんなことをわざわざ言われなくてもシャチハタを実印登録しようとする者なんかおらんとは思うがな。

印鑑でないものを押しても意味がないということや。それくらいなら捺印せずに出す方が、まだマシやと考える。

ただ、その書面を受け取る販売店に、その知識のない者がいると「印鑑が押してないから無効だ」と言い出して揉めるかも知れんがな。

その憂いをなくす意味で、百円均一で売っている朱肉をつけて押す認め印なら、印鑑として認められているから、それを買って押すという方法もある。実印を押す必要は、さらさらないがな。

あんたの名前が、よほど珍しく特殊なものでないのなら、百円ショップで探せば見つかるのやないかと思う。

あんたは、まだ『18歳大学1年生』ということで、今のところ宅配物や郵便物を受け取る際に押す程度やからシャチハタだけでもええやろうが、これから大人になっていくにつれ公的な書類に印鑑を押すことも増えるさかい、その場合、シャチハタやと捺印自体を拒否、認められないことも多いので、この際、認め印くらいは持っていてもええのやないかと考えるがな。

ただ、クーリング・オフの書面に関しては、たいていの場合、本人による直筆で書かかれているため、特に印鑑を押してなくても構わんわけや。サインしているのと同じになるさかいな。任意ということになっている理由や。

せやさかい、百円ショップにあんたの名前の認め印が置いてなければナシで出せばええ。法律的には、それで通る。

『契約後に「粗品がある」と言われて受け取ったので、返品したほうがいいと思うのですが、また顔を合わせてまともに話ができる気がしません。顔を合わすくらいなら返したくないのですが、どうしたらいいでしょう』と言われていることについてやが、一般的には、その販売店の従業員がその粗品を受け取りに来るケースが多い。

ここで問題になるのが、訪問販売で新聞勧誘に来た人間が、拡張員やったのか、その販売店の従業員やったのかという点や。

拡張員というのは、新聞勧誘専門の営業会社である、俗に『新聞拡張団』に所属している社員のことや。

勧誘に来た人間が、その拡張員やった場合、粗品を返すためだけに、同じ拡張員が再訪してくる可能性はかなり低い。

しかし、同じ拡張員が絶対に来ないという保証もできない。状況として少ない、ゼロではないと言える程度や。

あんたがクーリング・オフの手続きをJP(日本郵便)でしたとして、それが相手方の販売店に届くのは翌日ないし、2日後あたりやと思う。

一般的な新聞拡張員は、月に数店舗から数十店舗の新聞販売店に出入りするのが普通やから、確率的には1週間で2度同じ販売店に入店して営業することは殆どない。

ただ、これも絶対にないとは断言できん。新聞社や地域、各新聞拡張団、各新聞販売店毎の事情で違うてくるさかいな。

『また顔を合わせてまともに話ができる気がしません』というのが、その拡張員に脅されるとか、再度勧誘されるかも知れんと考えてのことなら、そんな心配はせんでもええやろうとは思うがな。

万が一、そんなことがあれば、その拡張員にとっても、その販売店にとっても大変なことになるから、まずそんなことはないはずや。

ヘタに、クーリング・オフをした後に、あんたに対して威嚇したり脅したりすれば警察に逮捕されかねんさかいな。

『特定商取引に関する法律』の第6条第3項に、


販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。


とある。

簡単に言うと、契約した客がクーリング・オフを申し出ているのに、それを防ぐため脅したり威圧して困らせるような行為は禁止されているということや。

これに違反すると、2年以下の懲役・300万以下の罰金という厳しい罰則規定が設けられている。

実際、この罪が適用され逮捕された新聞販売店従業員もおる。その事件は、テレビでも放映され、その販売店従業員の名前まで全国に晒された。業界でも有名な事件や。

それから以降、表立って、そんな真似をする新聞販売店の人間や拡張員は極端に少なくなったと聞く。

特に新聞販売店にとっては、命取りにもなりかねんことやさかい、そんな危険のある拡張員に再訪させるケースは、まずないやろうと思う。

実は、クーリング・オフをする利点には問答無用で確実に契約が解除できるのと、直後の再勧誘が禁止されているということがあるわけや。

あんたの心配が単に、その拡張員の顔を見るのが嫌だからとか無言の圧力があるのではないかということなら、気持ちは分からんではないが、例え僅かな確率であってもゼロではないから、そうなった時は辛抱して貰うしかない。

それでも『顔を合わすくらいなら返したくない』と言われるのであれば、直接、クーリング・オフの文書が届いたと思われる翌日あたりに、その新聞販売店に粗品を返しに行けば、訪問した人間が拡張員やった場合、出会す確率は殆どないやろうと思う。

特に、午前9時から午前11時頃の間は、まだその販売店にやって来ていない確率が高く、午後5時から午後7時くらいの間は勧誘営業で忙しいと考えられるさかい、例えその拡張員が入店していたとしても会うことは殆どないものと考える。

ただ、勧誘に来た人間が、その販売店の従業員やった場合は同じ人間と出会すこともあるやろうと思う。

その場合を懸念するのなら、友人か知人に同行して貰うという手もある。なるべく複数の人間のいる前で、その粗品を返すことや。

そうすれば、例えその場に、同じ人間がいたとしてもクーリング・オフをした人には何も言えんというのは業界の常識やさかい、あんたがとやかく言われることは、まずないはずや。それで終わる確率が高い。

それでも『顔を合わすくらいなら返したくない』のなら、クーリング・オフ自体をあきらめて、その契約に従うという選択肢もあるがな。

民法第545条に『原状回復義務』というのがある。これは契約を解除する場合は、業者、契約者双方を契約以前の状態に戻すというものや。

この法律に照らせば、その契約をすることを条件に貰ったものは返すべきとなっているわけや。

まあ、法律以前にクーリング・オフをしてまで、その契約を拒否しているわけやから、契約のために貰った粗品を返さんというのは一般常識からしてもおかしな話やわな。

もっとも、その粗品の程度によっては返す必要はないと考えられているものもあるがな。

2013年11月21日。日本新聞協会、および新聞公正取引協議会によって「新聞購読契約ガイドライン」というのが発表された。

その中に『解約に応じるべき』事項として、


長期や数か月先の契約を抑制するため、公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならない。


というのがある。

『公正競争規約の上限』とは新聞に適用される景品表示法『6・8ルール』のことで、『景品付与の上限を『取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲』と決められている』というものや。

6ヶ月以上の長期契約に適用されるのは『6ヶ月分の購読料金の8%』で、一般的な朝夕セット版の新聞購読料金を例にすると、6ヶ月以上の契約の場合に渡せる景品額の上限は、
4037円×6ヶ月×8%=1938円ということになる。

あんたが貰った粗品とやらが、どんなものかは分からんが、明らかに1938円以上の物やと認められるケースやと『公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合』ということになり、解約時に今まで当たり前とされていた「渡した景品類の返還要求」をしてはならないということになるわけや。

今までは、例え『6・8ルール』に違反していたとしても民法545条の原状回復義務に照らせば、契約を全うすることを条件として貰った景品類は返還せなあかんと考えられてきたが、「新聞購読契約ガイドライン」が発表されたことで、それができんようになった。

事、新聞業界の場合、一般の法律よりも業界の決め事、公式な通達の方が重視されるということでな。

法律上、契約者に対する「渡した景品類の返還要求」に問題がなくても日本新聞協会、および新聞公正取引協議会がNOと言えば、それに従うしかない。業界にとっては法律以上の重みのある決定事項やさかいな。

理屈の上では、そうでも実際の現場では揉めることも多いと聞く。まあ、新聞販売店にとっては客のためにサービスしすぎたから、返還の必要がないというのでは、あまりにも理不尽やと考えて抵抗したい気も分からんではないさかいな。

しかし、業界の決まり事は何よりも優先される。それを理由に貰った粗品を返さないという選択肢もあるが、それは、あんたの場合、勧められん。

そもそも、その勧誘員と『顔を会わせたくない』というのは揉めたくないからやと思うので、わざわざ揉め事に発展するかも知れん事を自ら招き寄せるのも、どうかという気がするさかいな。

それもあり、『顔を合わすくらいなら返したくない』と言われるのであれば、クーリング・オフ自体をあきらめて、その契約に従うという選択肢もあると言うたわけや。

最後に、あんたに苦言を呈するようやが、一言言わせて頂く。

あんたには、嫌なことは嫌、できない事はできないと、はっきり相手に伝えられるような毅然とした大人になって欲しいと思う。

男には絶対に引き下がったらあかん局面というのが、必ず起きる。子供で済む時代なら逃げていても構わんかったが、大人になれば、それでは許されん場合がある。

将来、結婚して子供もできるやろうから、その分守るべき人も増える。そんな時、逃げとったら、男としても、人間としても情けないのと違うかな。

今回の場合は、クーリング・オフ後には、ほぼ何もされないということが分かっとるわけやから、あんたにとってはきついかも知れんが、勇気を示す第一歩やと考えて、その粗品を返すことを勧める。

人は最初の壁さえ乗り越えれば自信がつくもんや。その自信が必ず、あんたを成長させる。そう信じて貰えんやろうか。

もっとも、それはワシの勝手な思い込み、よけいな押しつけかも知れんがな。そう受け取られるのなら聞き流して貰って構わん。

ワシの言うてるのは単なる助言、アドバイスで、それに囚われ従う義理はないさかいな。

いずれにしても、どのような結論を出されようと、あんた自身の判断に任せるというのがワシらのスタンスや。

それによって何か困ったことが生じるようなら、また相談されたらええ。いつでも相談に乗るさかい。


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