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NO.1355 地元紙専売所の経営について


投稿者 Mさん  投降日時 2015. 9. 2 PM 1:25


地元紙専売所で事務員として働いてます。

ここのお店は夫婦で個人経営されており、お店自体は新聞社の建物だと言ってました。借りてると言われてました。

所長の年収ってどのくらいなのかなぁと、ちょっと気になり、こちらで教えてもらえればと思いメールさせてもらいました。

詳細を書きます。

新聞販売部数 3000部
従業員 25人弱(全員アルバイト)
拡張員 4人?程
配達用バイク 9台 配達用自転車 3台
営業用軽自動車 1台

チラシ仕分け作業やチラシを新聞へ折り込む作業は全て機械でやってます。

新聞契約者には全員に景品をつけていて、1年契約なら4000円、2年なら4000円×2です。チラシは土曜日以外は平均20枚程度。土曜日は50枚ぐらい入るようです。

こんな感じのお店ですが、所長の年収ってどのくらいってわかりますか?

できれば、収入と支出の内訳を知りたいです。経営の事は知識がなく、よくわからないので・・・


回答者 ゲン


あんたは事務員さんということやが、『所長の年収ってどのくらいなのかなぁと、ちょっと気になり、こちらで教えてもらえればと思いメールさせてもらいました』と言うておられるところからすると、収入面に関する経理には、あまりタッチしていないようやな。

その販売店が「株式会社」または「有限会社」の場合であれば、税務署に届けている所長としての役員報酬ということになるから、その所長の年収を推測するのは無理や。役員報酬というのは、その会社毎で違うさかいな。

しかし、あんたの言う所長の年収というのが、その販売店の利益ということなら、ある程度の推測ができるとは思う。

ただ、これも新聞社とその販売店との関係、販売店の経営状態など様々な要因で、かなり違いが出てくるから、どこまで、あんたのところの販売店の実態に近づけるかは保証の限りではないがな。

まず収入の面からや。

新聞販売店は新聞社から新聞を買って購読者に売るというのが基本的な収入になる。

これには、それぞれの新聞社と販売店の関係によって違いがあり、たいていは、新聞購読料の半額程度が、販売店の仕入れ価格になっているケースが多い。

新聞は大きく分けて全国紙と地方紙(ブロック紙含む)があり、両者の購読者総数は、ほぼ拮抗していて、新聞購読料に関してもそれぞれで違いがある。

全国紙には、朝夕セット版と統合版(朝刊のみ)の2種類があり、販売価格は、それぞれ大きく違う。

一般的な朝夕セット版価格は月4,037円(税込み)で、統合版(朝刊のみ)価格は月3,093円(税込み)となっている。

ただ、一部の地域の全国紙には月5,192円〜6,526円という高額なものもあるが、それはここでは省く。ただ、あんたのところの販売店が、それに該当するのなら、それに合わせた計算が必要にはなるがな。

ここでは、一般的な朝夕セット版価格月4,037円(税込み)と統合版(朝刊のみ)価格月3,093円(税込み)の2種類で計算することにする。

『新聞購読料の半額程度が、販売店の仕入れ価格になっている』として、一般的な朝夕セット版価格月4,037円(税込み)の半分、約2,000円が仕入れ価格になるから、『新聞販売部数 3000部』の場合、

2,000円×3,000部=6,000,000円(1ヶ月の購読料収入) となる。

統合版(朝刊のみ)価格月3,093円(税込み)の場合、半分の約1,500円が仕入れ価格として、

1,500円×3,000部=4,500,000円(1ヶ月の購読料収入)になる。

折り込みチラシ代金も販売店にとっては重要な収入源になる。

ただ、折り込みチラシ代金に関しては、新聞社の介入の程度、中間仲介業者の存在、直接依頼、折り込みチラシのサイズの違いなどの状況によって大きく変わる。

そのためケース・バイ・ケースという側面が強いので、確かなことは言えんが、全国紙の場合、一枚につき2.5円 というケースが多いと聞くさかい、ここでは、便宜的にそれで計算する。

『チラシは土曜日以外は平均20枚程度。土曜日は50枚ぐらい入るようです』ということは、今月の9月を対象にした場合、土曜日が4回で200枚、平均20枚程度が残り26日で520枚やから、720枚になる。

ただ、折り込みチラシは通常余分に納入されるのが普通やから、実際は、もっと多くなる。

新聞販売店には、新聞社から納入される「公売部数」というのと、実際に配達している「実売部数」の二通りの部数がある。

商品を余分に仕入れるというのは、すべての業種では当然のことで、新聞でも、それは例外やない。業界では、それを「余剰紙」と言うてるのやが、「押し紙」と断じる部外者もいる。

その説明をすると長くなるので、ここでは「公売部数」でチラシを納入するものと考えて貰いたい。そして、全国紙の場合、平均して「実売部数」の2割増しが「公売部数」やと言われている。

事務員のあんたが『新聞販売部数 3000部』と言うておられるところからすると、それは実売部数のことやと思うので、チラシの納入部数は3,600部とすると、

2.5円×720枚(1ヶ月の折り込みチラシ総数)×3,600部=6,480,000円が1ヶ月の折り込みチラシ収入ということになる。

これに、新聞社からの補助金などが加算されるケースもあるが、それに関しては新聞社と新聞販売店との個別の事情による取り決めやから、あるなしを含めて当事者以外には分からんやろうと思う。

ワシに言えるのは、「押し紙」を含む「余剰紙」が多いほど、新聞社からの補助金が多いということくらいやな。

もちろん、「余剰紙」が殆どないため補助金の類が一切ないというケースもある。せやから、ここでは補助金は度外視して話を進める。

つまり、一般的な朝夕セット版価格月4,037円(税込み)の販売店の場合、1ヶ月の収入は、

6,000,000円(1ヶ月の購読料収入)+6,480,000円(1ヶ月の折り込みチラシ収入)=12,480,000円ということになる。

統合版(朝刊のみ)価格月3,093円(税込み)の場合の1ヶ月の販売店の収入は、

4,500,000円(1ヶ月の購読料収入)+6,480,000円(1ヶ月の折り込みチラシ収入)=10,980,000円になる。

支出に移る。

まず人件費。『従業員 25人弱(全員アルバイト)』については、事務員のあんたなら、正確な額が分かるものと思う。

『拡張員 4人?程』という意味が分かり辛いが、その販売店で営業専属の拡張員(専拡)を雇っているのなら、彼らも従業員ということになり、その人件費も支出になる。

出入りの拡張員が4人程度という場合は、販売店の人件費負担はないが、その拡張員があげた契約については拡張報酬が発生する。当然、それも販売店の支出になる。

ワシには、あんたの店での詳しい人件費が分からんさかい何とも言えんが、一般的なケースで言えば従業員が30名程度の販売店の場合、1ヶ月500万円〜700万円が人件費になっている。ここでは、その中間の600万円を人件費とする。

新聞販売店の多くは外部の新聞拡張団に拡張営業の委託をしているケースが多いさかい、そのつもりで計算する。

その地域の事情によっても違うが、通常、『新聞販売部数 3000部』の場合、継続契約を除いた約2割ほどが、新聞拡張団による1年間の新規契約分(過去の契約者も含む)になるさかい、年600部に対して拡張報酬が発生するものとする。月にすると、50部になる。

1部の拡張報酬は、地域、新聞社、新聞拡張団、新聞販売店毎の取り決めによって大きく違うが、最も多い例で言うと、1年契約で新聞販売店が新聞拡張団に支払う拡張報酬は、1部当たり15,000円〜20,000円になる。ここでは多い方を採って、20,000円で計算する。

それからすると、20,000円×50部=1,000,000円が、新聞販売店が新聞拡張団に支払う1ヶ月の拡張報酬ということになる。

『新聞契約者には全員に景品をつけていて、1年契約なら4000円』ということであれば『新聞販売部数 3000部』だと1年で、4000円×3000部=12,000,000円ということになる。1ヶ月にして、1,000,000円。

ここまでのところ、1ヶ月の経費は、

600万円(人件費)+100万円(拡張報酬)+100万円(景品代)=800万円ということになる。

朝夕セット版の場合、1ヶ月の収入、1,248万円から800万円を差し引くと448万円。統合版(朝刊のみ)の場合は、1,098万円から800万円を差し引くと298万円残る計算になる。

先に折り込みチラシ収入の時に、余剰紙を600部として計算したが、余剰紙のすべては新聞販売店が負担することになっている。

それからすると、朝夕セット版の場合、余剰紙600部×2000円(新聞仕入れ価格)=120万円引かなあかんことになるから、448万円−120万円=328万円になり、

統合版(朝刊のみ)の場合は、余剰紙600部×1500円=90万円を差し引くことになるさかい、298万円−90万円=208万円残る計算や。

ここから『お店自体は新聞社の建物だと言ってました。借りてると言われてました』ということであれば、その賃料。

さらに、『配達用バイク 9台 配達用自転車 3台 営業用軽自動車 1台』および『チラシ仕分け作業やチラシを新聞へ折り込む作業は全て機械』についての減価償却費、維持費などが加わる。

また、「事業税」や「消費税」などの税金関連、電気、ガスといった事務所にかかる「光熱費」、「燃料費(ガソリン代)」などを含めた「諸経費」といったものも必要になる。

ただ、「諸経費」に関しては、それこそ、その販売店毎で違うさかい、ここでは推測することもできん。

それについては事務員である、あんたには分かるはずやと思うので、ここでの言及は控える。あんたの方で調べて貰うたらええ。

朝夕セット版の場合、残った328万円×12ヶ月=3,936万円から、あんたが調べた「諸経費」を差し引いたものが、その販売店の1年間の利益になる。

統合版(朝刊のみ)の場合は、残った208万円×12ヶ月=2,496万円から、同じくあんたが調べた「諸経費」を差し引いたものが、その販売店の1年間の利益になるということや。

しかし、これは、あくまで平均とか一般的な例をもとにしたもので、あんたの店が、それらの条件と違っていれば、違っている分、利益も大きく違うてくる。

例えば、新聞社からの新聞の仕入れ値を半分と見積もったが、新聞社と新聞販売店の関係次第では、5割以下のケースもあれば5割以下という場合もある。その違いが収入にも大きく影響するということや。

さらに、今回の場合は「余剰紙」を2割の600部と計算したが、それ以上多い場合も少ないケースもある。その場合、その数字に合わせた計算のし直しが必要になる。

その他の「人件費」や「景品代」、「賃料」、「減価償却費」、「税金」、「諸経費」の類にも、すべて同じことが言える。推測と違う分は収入に即、反映するさかいな。

一般的には全国紙の場合、『新聞販売部数 3000部』が、この業界で儲けられるか否かの分岐点とされていて、それ以上であれば利益率も良く、それ以下だと利益率が悪いと言われている。

その意味では、あんたのところの販売店はぎりぎりの経営状態にあると言えなくもない。そのため『夫婦で個人経営』で『従業員全員アルバイト』なのかも知れん。

もっとも、単に利益を多く出したいがために、そうしているというケースもあるがな。その経営者の考え、姿勢次第でも大きな違いが出るということや。

ここでは、計算に入れんかったが、その経営者が初期投資をした場合、自己資金だけなら、それほど問題はないが、銀行などから借り入れをしていれば、それに対する金利も必要になると言い添えとく。

さらに、集金不能金や各種トラブル、事故処理金というのも別途必要になるが、その額については、それぞれの事情で違うさかい、予測するのは難しい。ただ、その準備金が必要になるケースがあることについては考慮しとかなあかんがな。

これが地方紙になると、さらにややこしくなる。

地方紙は全国に100以上あり、1ヶ月の購読料が1,890円〜6,730円と幅が広く、それに伴い新聞社と新聞販売店との関係や諸事情が、それぞれで大きく違うてくる。そのため全国紙のような計算は難しいやろうと思う。それに近い推測はできるかも知れんが。

あんたが『所長の年収ってどのくらいなのかなぁと、ちょっと気になり』というのは、その販売店が儲けているのか、儲かっていないのか知りたいということやとは思うが、それに関しては、世間一般の会社が、そうであるように同じ業種であっても利益を出している経営者もいれば青息吐息の経営者もいるということで納得して頂くしかない。

多くの場合、新聞販売店やから儲かるのやなく、その経営者次第で決まるのやと。

以上が、ワシの推測する販売店の利益に対する見方や。あんたの店が、それとは違うというのであれば、その内情を教えて欲しい。できる限り、それに即した回答をさせて貰うさかい。


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