新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.154 どうしてこういう勧誘ばかりが多いのでしょうか
投稿者 ジャンクさん 男性 20歳 学生 投稿日時 2005.10.8 AM3:23
僕の住んでるアパートにはよく勧誘員の人が来ます。1年ほど前に3ヶ月だけとったら二度と他の勧誘も来させないからという怖そうな雰囲気の勧誘員を信用してとったことがあるのですが、その後も全然変わりなく来ます。
いつも夕方くらいが多いのでその時間の訪問には出ないようにしています。宅配便ですとか古紙回収ですとかというのは、ほとんどが勧誘ですから。
でも、この前は昼過ぎに「ハンコお願いします」と郵便屋をよそおって来たので開けるとそこに、にやにやした勧誘員がいました。
しまったと思い、すぐドアを閉めようとしたら、ドアに強引に足を突っ込んで来ました。仕方なく話を聞いていると、また同じように「3ヶ月だけでいいから」みたいな話をしてきました。
僕は「以前に同じようなことを言われてだまされたからいらない」と断ると「それは、どこのどいつだ。オレがシメてやるから、そいつの名前を教えろ」とか「オレがそいつと同じように見えるか」と言われ、結局また3ヶ月とるはめになりました。
今度もこれは嘘なのでしょうね?ゲンさんのHPを見ていたら、いろいろな勧誘方法をされているようですが、うちに来るのはこんなのばっかりです。
質問なのですが、どうしてこういう勧誘ばかりが多いのでしょうか。何か意味でもあるのでしょうか。あれば教えてください。
回答者 ゲン
あんたの所に来た勧誘のやり方というのは、ある種、古典的なものや。これは、昔からこの業界は疎か、訪問販売全般にあることや。俗に言う、押し売りというのにこういうのが多い。
特にドアに足を挟むというのが、その基本とされとるくらいポビュラーなもんや。これは昔から「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれとる手法にこういうのがある。
直訳すれば「足をドア内に入れる技術」やが、これは、心理学で言う「段階的要請法」で「承諾」を得るためのテクニックということになる。
足をドアに挟むことにより、仕方ないので、話くらいは聞くかという妥協を相手から引き出すということになる。小さな承諾というやつや。
ここから、なし崩しに玄関内に入る。「足を挟む」という行為を承諾している形になっているから、玄関内に入るのも咎めにくくなっとるわけや。
「おじゃまします」とでもその勧誘員が言えば、さらなる承諾、容認につながるということになる。人は一つ妥協すると、次も容易に妥協しやすいということがある。この手法は、その心理を利用するわけや。
相手をこういう心理状態にした上で「3ヶ月でもいいから」という要請をするように発展させる。徐々に小さな承諾を積み重ねられると、その結果としての大きな要請が断りにくくなる。
加えて、相手の要望も聞くという姿勢も示す。それが実行可能なことかどうかは関係ない。あんたがおそらくそう希望したのやとは思うが「3ヶ月だけとったら二度と他の勧誘も来させない」ということを飲むと伝える。あんたが、その要望を伝えた段階で、この契約は断れんようになる。
『今度もこれは嘘なのでしょうね?』と、あんたが言う通り大嘘や。そんなことは一勧誘員には不可能なことやからな。それは、その勧誘員も百も承知やから、そういう努力すらすることもないはずや。
もし、それができるとしたら、その新聞販売店のトップだけしかおらん。しかも、それはその地域のすべての販売店が歩調を合わせんことには、あんたの所だけを勧誘員全員から勧誘禁止なんかにはできん。
それが実現可能かどうかは、ちょっと、考えたら分かることやとは思うが、小さな承諾を重ねられると、そういうことにも気付かんようになるということや。
参考までに、この反対に「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」というのがある。
これは、最初に拒否すると思われるような要請をして、一度断らせるように仕向ける。あるいは、断られてもええくらいの要望を出す。
その後に、それよりも負担の軽い要請をすると、それが受け入れられやすくなるという心理を利用したものや。
例えば「○○新聞、1年取ってくれへんか」「1年はとても無理です」「なら、3ヶ月でええわ」という具合やな。
この「1年はとても無理です」と言わせるのがポイントで、これを言えば「3ヶ月ならええのやろ」という理屈につなげるわけや。
後の要請が主たる目的で、最初に言うたのはこの効果を狙うたもんやということなる。これは、提示した要請を勧誘員が譲歩することにより、客も譲歩せなあかんのかなという気分にさせるという目的のためにそうする。
これを、心理学では「譲歩の返報性」という。相手が一歩譲ってくれたんやから、こっちも一歩譲らなあかんかなという心理にさせるということや。
実は、これらの心理は昔からヤクザの世界では広く知られとることや。ヤクザにはこういう手法を使う場面が多いからな。
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」の場合なら、最初に小さな頼み事をしていって最終的には大きな要請を飲ませるということをする。
例えば、金を借りるのでも「千円貸してくれ」と言われれば、普通は断りにくい。それが、2千円になり、5千円、1万円、10万円とエスカレートしていくという寸法や。
「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」の場合は、頭から脅迫じみた威嚇から入り、後に譲歩したという印象を相手に与える。
これも、借金を例に挙げれば「100万円貸してくれ」と言われて断る者でも「10万円でもええから」と言えば、応じやすいということになる場合が多いということや。
それは、ここまでこっちが譲歩したんやからという理屈で、相手にも譲歩を迫ることになるからや。本来はそれが主やから、譲歩に見せかけて目的が達せられるということになる。
なぜ、この新聞勧誘にそういうヤクザ的手法が根強く残っとるのかと言うのは、勧誘組織である拡張団が、その発足時には、ヤクザ組織が多かったということが大きな理由やろと思う。
それには、数十年の歴史があるから、未だにそれから脱却できてない所もあるのやろけどな。あんたの所にそういう勧誘が多いというのは、その歴史が根強いということも考えられる。
しかし、その歴史があるからというだけで、それがいつまでも通用するという理屈にはならんがな。事実、この業界で頭打ちになっとるのは、そうした連中が多いようやからな。
営業で、人の心理効果を狙うのは間違いやないと思う。営業の基本は、人との人間関係にあるというのが、ワシの持論でもあるしな。それには、心理効果というのは大きな要素になる。
言うとくけど、明らかな脅迫とか嘘や騙しは、その範疇には入れんといてほしい。そんなものは、どれだけ心理効果があろうが営業やない。
もっとも、新聞の勧誘はこんなもんやと勘違いしとる者はまだ多いようやがな。そういう連中があんたの所に来とるわけや。
最後にあんたに言うとくけど、本当にいらんものとか断りたいといういうものは、最初に毅然とそう言うとけば、ほとんど問題ない。
良く、すぐ断ると揉めそうで怖いというのがあるが、それは逆で、長引く方が揉めることになりやすく、相手に付け入る隙も与えやすいということを知っておいてほしい。
これは、新聞の購読契約のことだけやなく、何事にも躊躇するというのは、ヤクザの例を出すまでもないが、簡単につけ込まれて騙されるということになりかねんということや。心しといた方がええと思う。