新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.215 クレーム・苦情についてゲンさんの考えを聞かせてください


投稿者 T.Y さん 元専業 投稿日時 2006.2.18 AM 2:06


新しい職場にも、街にもようやく慣れてきたところです。しかし、どうやら、大変な職場に押し込まれたようです。

それで、新しい職場で品質管理、品質保証の仕事をしていることから、お客様からのクレーム、苦情というものに真正面から取り組まないといけません。というよりは、それも仕事のひとつであるというのが本当のところであります。

新聞販売も立派なサービス業のひとつでありますから、不着や遅配といった苦情なんて日常的にあるものでしょうから、それらの処理というのは顧客満足といった観点からは、非常に重要なものであります。

ですから、苦情・クレームの受付窓口である電話番にどういう従業員を配置するかで、販売店の姿勢が見て取れる部分があります。クレームが起きると店長が逃げを打つ店なんて、推して知るべしでしょう。

そこで、ゲンさんが「クレーム・苦情」についてどのようなお考えでいらっしゃるのかをお聞かせいただきたいです。

クレーム・苦情の現象面だけをみれば、それは面倒くさいものであり、出来ることならば処理したくない、少なくとも自分が処理にあたりなくないことであります。

ですから、よくクレームの電話をすると、電話を受けた部署は自分の管轄ではないといって、ほかの部署へほかの部署へとたらいまわしにされたりしますよね。

責任が持てないから、担当(と思われる)の部署に廻しただけでしょうが、客側からすれば、時間の経過と徒労感であきらめさせるのが目的であると思ってしまいます。そうなるとお客様の取る行動は、「二度と買わない、利用しない」となります。

短絡的にそのときに面倒くさいからといって、処理を怠ることで失ってしまう顧客を取り戻すのにかかる手間は非常に大きいといえます。また顧客不満足というのは、非常に早く広く伝わるもので、新聞店というのは地域に根ざしている部分が大きいですから、致命的になりかねないこともあります。

実際問題としては、新聞販売店のイメージが決してよくないものであるという前提からすると、致命的なダメージを受けることは考えにくいんですけど。


回答者 ゲン


あんたは、ある事情で勤めておられた販売店を辞められ、新しい仕事を見つけされておられるとのこと、まずは、良かったのやないかと思う。

ハカセからも、そのときの経緯は、いろいろ聞いとる。あんたにとっては思い出したくもないことやと思うから、その事情については、敢えてここでは伏せとくことにする。

『ゲンさんが「クレーム・苦情」についてどのようなお考えでいらっしゃるのかをお聞かせいただきたいです』

と、いうことやけど、ワシにこのことを語らせたら、一冊の本ができるくらいある。と言うても、ここで、そのすべてを話すわけにもいかんから要点だけにする。

あんたが、今、携わっとる品質管理の仕事や新聞業界に限らず「クレーム・苦情」というのは、多くの職場で起こることや。これを避けて仕事をするというのは難しい。

『クレーム・苦情の現象面だけをみれば、それは面倒くさいものであり、出来ることならば処理したくない、少なくとも自分が処理にあたりなくないことであります』

と言うのは、良く分かる。というより、それが普通やな。その応対に直面すれば、例え自分が直接それに関わったことやなくても、クレーム客から聞かされる苦言や怒りの言葉に対して、まず、謝るということを強要される。

そこに、理不尽なものを感じるのは、それに対して心構えができてない人間にとっては仕方ないことやと思う。何で自分がそんなことまで言われなあかんねんと考えてしまうからな。

それが、ストレスとなる。人情としても、そういうストレスからは逃げたいと思う。勢い「担当者は不在でして」「その件に関しましては別の部署の管轄でして」と、逃げを打つ対応をする者が多くなる。

この電話を受ける人間は、新聞社のようにそれ専門にいとるという所なら、まだ、そこそこの対応はできる。ある程度の教育は受けとるからな。それでも、その対応に不満を持つ人間は多いがな。このQ&Aでも、そういうことを良く聞く。

ワシは、このクレーム処理とか苦情を聞くということは嫌いやない。と言うよりも好きや。そして、自信もある。

処理しきれんかったクレームというのは皆無やないが、たいていは収めることができた。自惚れやなしにな。

それには、経験が必要になる。ワシは、昔、建築屋におったとき、営業だけやなく現場監督として工事も担当してた。そのときに数多くの苦情処理もこなしてた。

ワシが勤めてた会社はお世辞にも、客にとってええ会社とは言えなんだ。最悪というほどでもなかったがな。

ここで、ワシは1000軒以上の、新築とリフォーム工事に携わった。その内の約半数は何らかのクレームがあり、その対処をした経験がある。

これだけを見ると、クレーム率はかなり高いように思うやろが、建築業界で顧客が100パーセントの満足をするというのは難しいから、これでも、まだましな方や。ええとは言えんがな。

特にリフォーム工事にそれが言えた。新築の家やったら、モデルハウスとかがあって、客もイメージと現実のできばえにそれほどの差を感じることはない。せやから、よほどの欠陥住宅やない限りクレームにはなりにくい。

しかし、リフォーム工事は、一軒毎に違うから、そのイメージとのギャップが起こる場合がある。こんなはずやなかったのにということや。

例えば、外壁塗装の場合、色彩の見本帳だけで色を選択しても、それが、その家にマッチしたもので、希望した感じになるかというのは、個人差によっても違う。

色彩というものは、見本帳に表示されとる3センチ角程度のものを見て想像するのと、実際、それが一面に拡がった場合では、受ける印象がかなり違うからや。

加えて、色彩は周りの環境にも影響する。特に、隣近所の家とのバランスが悪いとそれに違和感を感じることがある。せやけど、それは、感覚的なものやから仕方ない部分もある。ただ、どうしてもそれに理解を示せん人間もいとるわけや。

それには、工事代金として、数十万円から百数十万円以上も支払っとるということがある。ただ、気に入らんと言うても、その色の決定は、たいていはその客がする。

それについてのアドバイスはしても、色彩は個人の好みの問題もあるから、最終決定は任せるしかない。

そのこと自体には文句を言えん客でも、その気持ちがあると、できについては気に入らんわけやから、どうしても、その仕事に対して細かなところを指摘するようになる。重箱の隅をつつくというやつや。

それが、クレームとなる場合がある。さらに、業者により、明らかに手抜きと思える仕事もある。また、営業員の連絡ミスで客の意志が、現場に伝わってないこともある。クレームは、そういうときに起こる。そして、その対応を誤れば、トラブルに発展する。

ワシも、初期の頃は、うっとうしいことやと思うてた。処理も上手くはいかんことが多かった。それが、いつの頃からか、苦にならんようになった。

そうなってから、そのトラブルが簡単に処理できるようになった。それが、できるようになれば、面白いとさえ思えるようにもなる。

それには、クレームを知ることで仕事を覚えられるからというのがある。客が言うクレームには、それなりの理由がある。例え、それがどんな無茶なことを言うてると思えるものでもな。

クレーム処理の基本は、まず、そのクレームをしっかり聞くことや。クレーム客は怒っとる場合が大半や。

このとき、言い訳や言い逃れ、自分の立場の正当性なんかは主張せず、ただひたすら聞くことに徹することが肝心になる。言いたいことを吐き出させるわけや。

これだけで、クレーム客の半数以上は納得する。人間は、どんなに怒っていようと、言いたいことを言えば、たいていは落ち着く。

説得は、その頃合いを見てゆっくり始めたらええ。その場合も、相手の立場を尊重することを心がける。敵対する姿勢はなるべく見せん方がええ。

例え主張したいことがあっても「お客様の仰ることはその通りだと思います。このようなケースには……のようなことが起こる可能性があります。そして、……を……と勘違いされる場合も少なくありません」という具合やな。

当然、そのためには、知識を十分、蓄えておく必要がある。説得するには、やはりその裏付けは重要や。ワシは、そういうことは人一倍、勉強した。客も、相手が親身になり、そのことの知識も豊富やと思えば信頼もする。

そこまで行けば、ほとんどのクレームは解決できる。ただ、こちらが100パーセント悪いという施工ミスの場合は難しい。本当は簡単なんや。それをやり直すか、完全に補修、あるいは弁償すればええことやからな。

しかし、それが難しいのは、会社勤めしとると、往々にしてそれができんということが起きるからや。それには、金がかかるということがある。金をかけて解決するのなら、誰でもできると会社は言う。

特に、営業会社は、そういうことに金をかけるのを嫌がる。基本的に、そういうことに経費を割く発想がない場合がほとんどやからや。

次を考える業者は、そういうことはちゃんとする。再度、顧客になって貰うための出費と考える。あるいは、その地域での評判を高めたい、落としたくないということでな。

せやけど、その次を考えん業者には、それは無駄に映る。特に、住宅ローンでそれをする場合は、次回、その客が同じようなローンが組めるまで、早くて数年以上かかるということがある。そんな先のことまで、考えられんとなる。

つまり、そういう客は、一度だけという発想になるから、無駄な出費はできんということや。せやから、中には、納得せん顧客から、裁判に訴えられるということも起きてくる。

全部やないけど、建築屋で、そういう裁判沙汰を抱えとる所は多い。ワシは、そういう処理もかなり経験したから、自然と裁判や法律の知識も身についてきた。

余談やが、いつやったか、このサイトの法律顧問をして頂いている今村英治先生から『すみからすみまで 六法に照らし合わせて検証したわけではないですが、げんさんの法的理論はプロ顔負けですよ!センスの良さを感じます』と褒めて頂いたことがあった。

自分で言うのもなんやけど、そのときの経験があったからこそ、サイトの相談にも役立っとるのないかと思う。

一つのクレーム、トラブルでいろんなことを覚え、吸収もできる。そう考えれば、面白いのやないかと思う。少なくとも、ワシは、クレームやトラブルに遭遇すること自体はマイナスとは考えとらん。むしろ、プラスやと思うてる。

その考えは、拡張員となっても未だに続いとる。ただ、単にトラブルに首を突っ込みたがる物好きというわけでもないわけや。

しかし、ワシのこういう考え方は、一般的でもなければ、人に勧められることでもないのかも知れんという気はする。

一時期、会社勤めをしとるときに、さすがに一人で処理するには限界があり、そういうスペシャリストを養成しようと試みたことがあるけど、真剣にそれに取り組もうする者は誰もおらんかった。

どうしても、そういうことにはストレスを感じるのか、逃げ腰になる者ばかりやったからな。せやから、クレームやトラブルを楽しめと言うても、変な人間やくらいしか思われとらんかったのと違うかな。

あんたにしても、あまり参考にはならんかったのやないかと思う。ただ、ワシの考え方が知りたいということであれば、これがそうやと言うしかないがな。


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