新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.217 苦情聞き取り法について


投稿者 やまちゃん 男性 36歳 新聞販売店従業員 投稿日時 2006.2.19 PM 9:06


いつも参考にさせて頂いております。
新聞勧誘・拡張ショート・ショート・短編集 第3話 命の笑い」の章で苦情聞取りの営業方法が載っていますがもう少しその方法を詳しくお聞きしたいのですが。

やはり新聞の訪問営業についてのクレームが多いのですか?
漠然とした質問ですみません。


回答者 ゲン


その話というのは、今から12年ほど前のことになる。その頃、ワシは京都におって、評判の悪い団におった。

また、京都のその頃の拡張員というのも、あまり程度のええもんでもなかった。喝勧、てんぷら、置き勧、騙しの何でもありの酷い状態やったからな。

ワシは、その拡張員をする前は、建築関係の仕事を長年やってて、そこで苦情処理は慣れとったという経験から、この方法を思いついた。

『やはり新聞の訪問営業についてのクレームが多いのですか?』ということやけど、それだけやなく、配達や販売店への苦情も結構あったな。

Q&A 『NO.215 クレーム・苦情についてゲンさんの考えを聞かせてください』でも言うたことやけど、基本的には客の苦情をただ聞くだけや。

これは、当時の京都のような評判の悪い所やから、その威力を発揮したということもある。周りが、えげつない連中ばっかりやったからな。当然のことやが、その不満の多い所でやらな意味がない。

その頃は、新聞社から派遣されて、苦情の実態を探っとると言えば、そこそこ情報は集まったが、現在もそれが通じるかというのは保証できん。

同じことをしても、人間により違うからな。下手すれば胡散臭く思われる。それには、客から、いかにも、それらしく見え、尚かつ安心感を抱かれるようなキャラクターにならなあかんと思う。

まず、最初にしたことは、そこの販売店で、揉めに揉めたという客をピックアップすることからやった。

初めの頃は、販売店に良う言われたもんや。「ゲンさん、そんな所へ行ったかて絶対カードになんかならんで」とな。

例を挙げる。その客は、拡張員を見るとへどが出そうなくらい嫌うてた。当然、それには訳があった。あるとき、その客は拡張員と新聞を取る取らんで揉めたことがあった。

それだけなら良う聞く話や。しかし、拡張員は、帰り際に風呂場の窓ガラスを石を投げて割って逃げたという。しかも、その拡張員というのは、ワシと同じA紙の拡張員やった。団は違うがな。

その客は、販売店まで怒鳴り込んで来て、そこの店長もかなり難儀したということや。ワシは、こういう話を聞くと、おいしいと思う。喜んでそこに行く。

「ごめんください。A新聞ですが……」

「新聞ならいらん、帰ってんか」

「いえ、今日は、以前、こちらにご迷惑をおかけしたと聞き、お伺いにきました。勧誘ではありませんので」

「何を今さら、お前ん所の糞拡張員が何したのか知っとるのか」

「はい、一応、店長の兼田の方から……」

「それやったら、その腐れ拡張員を連れて謝りに来んかい」

「それが、うちの人間らしいということまでは分かってるんですが、誰かまでは分かりませんので、それで、お話をと……。私らも、そういう連中には困っとるんですよ」

文章の会話だけでは、その雰囲気とニュアンスは伝わりにくいかも知れんけど、ここで、この男に「こいつはどうも普通の拡張員と違うな」と思わせるようやないと難しい。

こういう客は、安心して苦情を言えると思うと、それこそ、堰(せき)を切ったように話出す。それを、時折「ごっとも」「申し訳ありません」「何ということを」という類の相づちを交えて、客にとことん喋らせる。

すると、こういう不満を持っとる人間ほど、それを話終えると、すっきりした表情になる。そして、辛辣(しんらつ)な言葉や怒鳴り散らしたような客に限り、それをじっと聞いていた人間に対して、何か悪いことしたという気持ちになりやすい。

それが、親近感に変わってくる。そうなれば、後は、ちょっとした心遣いで簡単に落とせる。

この客の場合は、すかさず「ところで、お風呂のガラス代、いくら支払われました?」と聞いて、実際にその金額の負担を申し入れる。そして、それを受け取るような人間は、ほぼ間違いなく成約できる。

因みに、それでこの客も成約になった。風呂場のガラス代に関しては、後で、その販売店から貰うた。

絶対に客にならんという人間を落とし、その怒りまでなくしたというのは、どんな販売店でも評価するからな。それが、カラス代の出費だけで済むなら安いもんや。

何件か、そういうのを処理して成約すれば、当然のように販売店の見る目も変わる。そうなれば、何かと有利になる。

こんな言い方をすると、ひんしゅくを買うかも知れんが、新聞購読契約や勧誘程度の揉め事は楽なもんやと思うとる。少なくとも、その自信がワシにはある。

それには、やはり、契約金額が低いということがある。客側も、必死になるほどの負担やないからな。ただ、気分的な要素だけを払拭させられれば、それほど問題はないと考えとる。

但し、それでも、聞いたすべての苦情を解決できるわけやない。無理なケースもある。それは、その客が明らかに異常な考え方やと判断した場合と、相性のようなもののためやないかと思う。

無茶なことを言う人間は論外やし、相性に至っては、当たり前やけど、どんな人間も、すべてから好感を持って貰えるということは、まず、あり得ん。好き嫌い、虫が好く好かんというのがあり、こればっかりはどうしようもない。

これについては、自分自身の眼力に頼るしかない。この客やったら、苦情を聞けばいけるはずやという見極めやな。

これは、具体的には説明しずらい。敢えて言えば、何もない普通の状態で出会ったと仮定して、気が合いそうな人間やと思える相手ということくらいかな。

ただ、この苦情聞き取り法に限らず、すべてで言えることやけど、表面的な体裁だけ真似て、それをしても、まず、効果はないとだけは言うとく。

どういうことかと言うと、この苦情聞き取り法が、自分でもできると思うて実行するとしよう。

この場合、本当に、苦情を聞くことがその客のためにもなり、また自分の勉強にもなると考えるのと、単に、最終的にカードにしようとだけ考えるのとでは、偉い違いになるということを分かってなあかん。

前者は理想的な形やが、後者やとどうしても、気持ちの中はカードにすることしか考えとらんから、何とかその方向へ持って行こうと急いで焦る。

しかし、そういうのは、簡単に客に見透かされることになる。そうなったら、却って、胡散臭く見られ、成約にはほど遠くなる。

そして、何よりこの苦情聞き取り法が難しいのは、果たして、いくらカードのためとは言え、どこまで、苦情に耐えられるかというのがあるからや。中には、本当にえげつないことを平気で言う人間もいとるからな。

但し、これは、考え方次第では、どうということはない。簡単に割り切れるし、その言われる苦情が苦にならん。というか、それすらプラスにできるとワシは思うとるからな。

苦情、クレームというのは、単に聞いて知ることだけでも勉強になる。それが、例え、成約にならんとしてもや。そう考えることができるようやと、望みはある。

ただ、ワシの知る限り、これができたのは、死んだワシの師匠、善さんくらいのものやった。後、何人かは乞われて教えたことはあるが、皆、あかんかった。ほとんどは客と喧嘩しとったからな。

せやけど、あんたが、それにチャレンジするというのなら止めん。何事もやってみな分からんからな。

最後にこれだけは覚えておいた方がええというのを教えとく。それは、どんなに良さそうなやり方に思えても、人の真似だけやと絶対に上手く行かんということや。

理由は簡単や。あんたとワシは、まったく違う人間なんやからな。

せやから、それをマスターしようと思えば、ええと思えることだけを取り入れて、自分なりのやり方を考え出さな、ものにするのは難しいやろなと思う。


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