新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.230 すんなり行きそうでないタイプのお客さんの対処法を教えてください
投稿者 さといちさん 新聞販売店従業員 投稿日時 2006.3.13 PM 10:12
私はまだまだ新米ですが、所員として新聞販売店に勤めている者です。今日は質問があってメールさせてもらいました。
実は最近契約いただいたたお客さんの中にちょっとタチの悪そうなお客さんがいます(いわゆる、そのスジの人っぽいということなんですが・・・、ただそれっぽく見える人でもだいたいの人が気持ちよくスパッと購読料は支払ってもらえるのがほとんどなんですが)。
それで今月が集金の始まる最初の月だったのですが、案の定よくわからない理由をつけて「おにぃさーん、今金がないからちょっと待ってや」と言われました。
実は最初契約時に面談したのは奥さんの方で、ご主人と面談するのが今回が初めてだったのです。「まさかこんなタイプの人だとは思わなかった」と言った感じなのです。
今の所、今回が最初の集金なので本当にお客さんのいう通り「今持ち合わせがないので、近日中に必ず払うから待ってくれ」というという事であれば少しくらい集金日を変更されても問題ないので(また、お客さんの事をよく知らないうちに見かけだけで判断するのもよくないので)、少し待とう、と思うのですが、ただ何となくイヤな予感がするのです。
ようするに「調子の言い事は言うがすんなり行かないタイプ」のお客さんの様な気がするのです。幸か不幸か、こういったタイプのお客さんを直接自分が受け持つのは初めてで、今後仮に集金できなかったりした場合、どうやれば話をスムーズに進めれるのか、困ってます。
そこでげんさんに質問なのですが、そういったタイプの人とうまく付き合うコツといいますか、一般的ではないタイプのお客さんに対する心得というのが、げんさんなりにあれば教えていただきたいのです。よろしくお願い致します。
回答者 ゲン
今回のケースは、その客の言う通り、待つしかないのやないかな。普通の人間でも、たまたま、集金に来たとき持ち合わせがないということはあることや。
『実は最近契約いただいたたお客さんの中にちょっとタチの悪そうなお客さんがいます』ということやけど、あんたの話を聞く限りはそうは思えんけどな。
現時点では、完全にあんたの思い込みやと思う。『そのスジの人っぽい』というのも、単に、いかつい感じの人間というだけやないのかな。外見だけで判断したらあかん。しかも、その外見の判断も、それを裏付ける内容が少ない。
例えば、小指がないとか、入れ墨を入れとるとか、顔に刀傷でもあるとでもいうのなら、あるいは、その外見で推し量ることはできるかも知れんけど、それにしてもたちが悪いかどうかまでは分からん。
あんたの『ただそれっぽく見える人でもだいたいの人が気持ちよくスパッと購読料は支払ってもらえるのがほとんどなんですが』と言うように、ちゃんとしたヤクザ?なら、新聞代の不払い程度のことで、男を下げたないと考えるのが普通やから、払い渋るケースはほとんどないはずや。
ワシもそういう連中とは、子供の頃から腐るほど付き合うてきとるから良う分かる。ヤクザを擁護するわけやないけど、たちの悪い人間ばかりやないで。もっとも、どうしようもない者もおるがな。
心配せんでも、その客はたちの悪いヤクザなんかやない可能性の方が高いと思う。
あんたは、たちの悪い人間というのが、こういう場合、どういう出方をするか分からんやろと思うから、一例を挙げて教えとく。
たちの悪い奴は、こういう場合「こらっ、おのれ、集金だけはちゃんと来くさって、この前、新聞入っとらんかったやんけ。それでも、金だけは持って行くんかい」あるいは「昨日の雨で新聞、びしょ濡れやったやないか。お前んとこは、濡れた新聞を持ってきて金取るちゅうのんか」というような言いがかりをつけるのが多い。
今回のは、そういうのとは違う。あんたは、どう受け取ったか分からんが、これはお願い事やからな。少なくとも、そこに、たちの悪さは感じられん。
その客に関して言えば、そうやが、本当にたちの悪い人間との付き合いと対処の仕方を参考までに言うとく。これは、あくまでも、あんたの立場に立っての助言やと思うて聞いてほしい。
まず、今回のように「今は金が払えん」と言う場合は「分かりました。それでしたら、いつ、寄せて頂いたら、ご都合がよろしいのでしょうか」と聞くことや。
ちゃんとした人間なら、その日時を言う。ちょっと、疑問符がつくのは「できたらこっちから言う」というやつや。「来月、一緒に払う」というのは、そのとき支払うかどうかは五分五分。最悪なのは「そのうちな」と言う人間や。これは、来月も危ない。
いずれにしても、最初の1ヶ月の間は催促せん方がええと思う。そして、最初の時点で、あんたとしたら、そのことを店長あたりに報告しとくことや。
1ヶ月後、2ヶ月分一緒の集金も「待ってくれ」という客は、その先の集金も怪しいと考えなあかん。その場合も、その客には「分かりました」と言って、一旦、引き上げた方がええ。
その場で「それは、困ります」と言うてみても、払う気のない人間には、効果ないやろし、下手すると、その催促の仕方が気に入らんと言うて、揚げ足を取られることにもなりかねんからな。あんた一人が悪者にされるケースすら考えられる。
そのことを店長に伝える。そのリアクションを確かめるのも、あんたの立場では重要や。
店長が「何、眠たいこと言うてんねん。払うて貰うて来んかい」とでも言えば「では、そううちの店長が申しますので、と客に言ってもいいですね」と念を押す。「構わん」ということなら、相手にそう伝えるしかない。
あるいは「集金できんかったら、お前の給料から引く」「ペナルティがある」とでも言われれば「でしたら、その客から集金できない場合は、新聞の配達を断ってもいいですか。そうでないと、いつまでもその責任を被るのは嫌ですから」と言う。
「それも構わん」と言うのなら、そう客に伝える。
その場合、相手の客には、かなり申し訳ないという姿勢で「誠に申し上げにくいのですが、当店の店長が、新聞代を払って貰えないのなら、新聞の配達を中断しろとのことなんですが……」と、いかにも、自分としては不本意であることを強調しながら言う。
この場合の客の反応は、大きく二つ。一つは、そこまでになっとるのならすぐ払うと言うか、期日を決めて払うと、そう伝えてくる。
もう一つは、激怒する。ただ、それで、その客を激怒させてもあんた自身の責任は回避することができる。店に言うてくれで済むしな。
店長が「もうちょっと、待ってやれ」と言うのならそうすればええ。その場合は、あんたにペナルティがあるとは言いにくいはずや。
もう分かったと思うが、あんたの立場では、店長にうまく話を通しながら、なるべく客とはぶつからず、責任を回避する方向に持って行くことを考えることや。
間違うても、自分一人で、そういう客に対処しようとせん方がええ。下手に、処理しようとすれば窮地に立つだけや。
なぜなら、あんたには決定権がないんやからな。客との約束事が約束事にならん場合も考えられる。
『そういったタイプの人とうまく付き合うコツ』『一般的ではないタイプのお客さんに対する心得』というのも、今のあんたが考えることやないと思う。敢えて言えば、今言うた逃げの対応がその対処になる。
当たり前やが、たちの悪い人間とは関わり合いにならん方がええ。それをせなあかんのは、あんたが責任ある立場になったときや。そうなったときは、あんたの裁量でできることをしたらええ。
因みに、金払いの悪い客に対しては、販売各店は頭を悩ませとるもんや。強制的に取るとすれば、法律に訴えるしかないけど、たいていの販売店はそんなことはまではせん。
一番多いのが、払うてくれるまで待つというやつや。次が、あきらめて新聞配達中止。このときそこは拡張禁止になる。中には、何度も催促のために押し掛ける販売店もあるけど、相手がややこしい人間やと、さすがにそこまでする所は少ない。
良う勘違いされることに、ワシやったら、たちの悪い人間とも上手く付き合える、付き合うとると思うとる者が多いようやが、それは違う。
ワシは、たちが悪いと思うたら相手にせん方が多い。得になることはほとんどないさかいな。
ただ、相手にも普通の人間やないと思わせることはあるがな。ワシの知る限り、そういう人間と張り合うコツというものがあるとしたら、それしかないやろと思う。
このたちの悪いと言われる人間は、たいていの場合、相手を見る。相手次第で行動が変わるということがある。
分かりやすく言えば、どれだけ喝勧に長け、客を脅すことが得意なたちの悪い拡張員でも、その団の団長や幹部には、絶対服従というのが普通や。誰彼の区別なくそうしとるわけやない。
その構図は、ヤクザの組織内においても言える。つまり、相手がそれなりの人間やと思うたら、そういうたちの悪い人間の方から折れてくるということや。
ただ、これは、どうしたらそう思わせられるのかというのは上手く説明できんし、言えん。その状況、相手次第ということもある。何より、こちらをどう思うかというのは難しい問題や。
ワシの場合は拡張員やから、話し方次第では、勝手に相手が極道なんかと関係あると誤解することもある。
ワシは、普段は優しい「ゲンさん」やが、無茶なことをしたり言うたりする輩には、それなりの対応をするからな。それに、相手が例え、本物のヤクザであっても気持ちだけは負けん自信もある。もっとも、そんなのは、何の自慢にもならんがな。
ワシが言いたいのは、ある程度の揉め事というか修羅場を経験しとるのやったら、それも考えてもええかも知れんが、それにしたかて、それがいつも上手くいくとは限らん。一つ間違えば命取りにもなりかねん。
ましてや、あんたは販売店の従業員やから、相手もそれなりにしか見んやろし、体を張るまでのこともないやろと思う。
それに、店のために体を張る立場の人間に店長と所長がおるんやから、そういうややこしい相手は彼らに任せておけばええわけや。
あんたは、ただ、そういう事態を回避できるように、常に報告、相談ということをしとくことや。ワシが逃げを打てと言うたのは、そういう意味からや。
一つ、ええ教えがある。兵法三十六計の第三十六番目に、最も重要な兵法しとて上げられとるものに『走為上』というのがある。
直訳すれば「走(にぐ)るを上と為(な)す」となる。逃げるが勝ちというやつや。つまり、昔の兵法書ですら逃げることがもっとも、重要やとされとったわけや。
これは、無駄な戦いを戒めたものということになっとる。戦いにおいて玉砕するのは、格好はええけど、それで終いや。昔の中国では、そういうのは「匹夫の勇」と言うて、軽蔑されとった。
逃げるというのは格好は悪いかも知れんが、怪我をすることは少ない。そして、いつの日か「捲土重来」を期すことができる。勝つ可能性を残せるということや。
せやから、それを姑息なとか恥ずかしいとか思う必要はさらさらないわけや。逃げも立派な戦法であり、処世術やと考えればええ。
ただ、それは、無駄な争いを避けろということで、何でも逃げたらええということとは違うからな。
人間なら守るべきものは守らなあかんのは当然や。そんなのは、言わんでも分かるやろがな。