新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.258 解約したいので……


投稿者 S さん 投稿日時 2006.2.27 PM 7:00


今、A新聞を購読中ですが、生活が苦しくなってきたので止めようと思います。

A新聞はいいのですが、2年前にB新聞と契約(今年の8月から4年間)していましたので連絡をしたところ、挨拶品として「お米」を2年前に渡しているので契約解除には応じられないとのことです。

但し、契約書には「途中解約は挨拶品を返す」とあります。お米を返せばいいと思うのですが?

2年前の契約で、まだ購読(8月から)時ではありませんが、「途中」だと思うのですが?


回答者 ゲン


『生活が苦しくなってきたので止めようと思います』というのは、自己事由ということになる。正当な解約理由とはならん。

あんたの場合、そのB新聞販売店の理解ないし、了解がないと自己事由での一方的な契約解除はできんということになる。

あんたの話からは、その契約の締結には、B新聞販売店側の不法性、不当性はないものと思われる。正当な営業行為で交わされた契約は法律で保護される。まず、そのことを認識しておいてほしいと思う。

一般家庭では生活が苦しくなってきた場合、真っ先に新聞代というのは始末の対象とされる傾向にあるようや。もちろん、それはそれでええ。自由や。

しかし、それは、契約前に考えることで、契約後にそれを理由にしても、時すでに遅しの観がある。

すでに交わしてしまった契約は、契約者としてそれなりの責任を取らなあかん。それが、契約社会での決まり事ということになる。今さら言うまでもないが、約束や契約は守ること、それが世の中のルールや。

それから言えば、今回、そのB新聞販売店の対応には何の問題もないことになる。正当な反応であり、対応ということや。

『但し、契約書には「途中解約は挨拶品を返す」とあります。お米を返せばいいと思うのですが?』

これについて、あんたは誤解しとるようや。あんたは、契約途中の場合、契約時に貰うた物を返せばそれで契約解除ができると思うとるようやが、それは違う。

その契約書がこちらの手元にないから、確かなことは言えんが、おそらくそれは転居による契約解除について記載しとるのやろと思う。

新聞購読契約書において、それ以外での契約解除の項目は、クーリング・オフくらいしかないはずや。もっとも、勧誘員が手書きで明記しとるというのなら別やがな。

転居理由にせよ、クーリング・オフにせよ、それで契約解除をした場合の特記事項として「途中解約は挨拶品を返す」と記されとると考えられる。

契約解除になった場合、民法545条に原状回復義務というのがあり、各当事者は、契約が解除されると、契約は締結した時に遡って消滅し、各当事者は互いに相手方を原状に復せしむる義務(受領した物を相手方に返還する義務)を負うというのがある。

つまり、契約以前の状態に戻すということや。せやから、あんたの場合で言えば、契約解除になった場合の但し書きとして、契約時に貰うた米を返すという意味になるということや。そうするからと言うて、それで、契約解除が成立するというわけやない。

これも、ちょっと考えたら分かることやけど、それで、契約解除が成立するのやったら、契約書自体が必要なくなるわけや。いつでも、契約解除ができると言うてるのに等しいことになるからな。

そんな契約書は、日本全国どこを探しても存在せんと断言できる。もともと、契約書の書面は、事業者が作成をするのが一般的や。新聞購読契約書は100%それやからな。

その事業者が、自ら不利になるような項目を掲げた契約書なんか作成するはずがない。どちらかと言えば、契約者に不利になるようなものになりやすいのが普通や。もっとも、それを防ぐ意味もあり、消費者契約法という法律があるのやがな。

結論から言うと、あんたの場合は、そのB新聞販売店との話し合いによってしか、契約解除ということにはならんということや。

こういう契約解除での話し合いは、解約違約金を支払ってということになるケースが一般的や。このQ&Aへの相談にもそういうのは多い。

この解約違約金の額については、その販売店とあんたの側の都合もあり、それぞれや。一律に決まった額というものはない。

あんたのためにアドバイスするとしたら、そのB新聞販売店に理解を求めるように持っていくということに尽きると思う。

間違うても「途中解約になるから挨拶品を返したらええやろ」というような高飛車な態度はせん方がええ。あんたの文面からは多少、そういうニュアンスが感じられるからな。

「誠に申し訳ありませんが……」という姿勢を全面に出し、あんたの窮状を訴えることや。そうすれば、販売店もそれを考慮して、あんたの有利なように処理してくれるということもあると思う。この業界、情にもろい経営者も多いさかいな。

もっとも、その保証はできんけどな。逆に、そんなことは知ったこっちゃないという考えの所も中にはある。しかし、少なくとも、強気で交渉するよりかは、結果としてましになるはずや。

ただ、何でそこまで卑屈にならなあかんのやと思うのやったら、ワシのアドバイスは無視してくれたらええ。

今回のケースはどう考えても、そのB新聞販売店には、何の落ち度もないのは明らかや。非ということになれば、あんたの側にある。残念ながら、それだけは確かやと思う。

あんたにしてみれば、生活が苦しいのやから仕方ないということかも知れんが、B新聞販売店にしても、それを言い出せば同じことやと言うかも知れん。

あんたが契約解除することで、その販売店も少なからず、損害を受けるはずや。それは、一つの契約を得るためにそれ相当の営業経費の出費をしとるケースがあるからな。

特に、ワシらのような拡張員が獲得した契約に対して販売店が支払う金額は、相当なものになる。これをカード料と言うのやが、それぞれの地域や条件でも違うから参考程度ということで、あんたの場合を当て嵌めて考察してみる。

4年契約ということなら、販売店が拡張団に支払うカード料は15000円〜20000円くらいの間が全国的な平均値やろうと思う。当然やが、ワシら拡張員はもう少し少なくてその6,7割程度になる。

これが、販売店の従業員が勧誘したということになると、営業経費はその半分程度かそれ以下になる。

ただ、いずれにしても、販売店は営業経費をかけて一つの契約を確保しとるわけや。せやから、販売店が解約違約金を請求するのは、その補填的な意味合いがある。単に、景品分の負担をしとるわけやないわけや。

その販売店の営業経費の出所は、当然やけど、売り上げ利益の中からや。もちろん、営業経費に限らず、従業員、配達員の給料もそこから出る。

あんたの解約申し出が、単に貰った物で済んだとした場合、その損害のしわ寄せは、他の購読者から得る売り上げ利益から補填せなあかんようになる。

そして、あんたのような人が増え、そうすることが当然やということにでもなれば、販売店の経営すら圧迫しかねんことになるわけや。

最悪、倒産ということまで考えなあかんようになる。そうなれば、経営者のみならず、そこで働く者にも害の及ぶことにもなりかねん。

何を大袈裟なと思われるかも知れんが、経営というものはそこまで考えなあかんものなんや。遊びや慈善事業でやってるわけやないからな。

少なくとも、そう考える経営者もおるということを知っておいてほしいと思う。苦しいのは何もあんただけやないということや。

あんたが、その契約を履行するのであれば、何の問題もないが、一方的に解除するというのであれば、販売店としては、せめて、その損失分は解約違約金として貰いたいと考えるということになる。

対等の条件での契約解除の交渉をするのなら、販売店の示す解約違約金をベースに話し合いをすることやし、それに支払う金銭がないということで、どうしても契約を解除して貰いたいということなら、情に訴えてでも頼むという方法を選ばざるを得んということや。

いずれを選ぶかは、あんた次第やけどな。

ワシとすれば、それ以外の方法は考え辛いし、アドバイスできんというのが正直な答えということになる。

最後に言うとく。

こういう交渉事は自分の立場だけを主張したら、成るものもならん。相手の立場も考慮し、そして、お互い泣く、損をするということを前提に話し合えば、必ず落としどころというのは見つかるはずやと思う。


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