新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.277 ちょっと気になったことがあります


投稿者 NONさん 23歳 男性 千葉県在住 投稿日時 2006.7.13 PM 0:39


こんにちは。人情的な文面に惹かれて、いつも拝見しています。

NO.273で、ちょっと気になったことがあります。新聞公正取引協議会の見解にゲンさんは納得されていないようですが、私は協議会の理論にも、それなりに法的根拠があると思うのです。

民法90条に、公序良俗に違反する契約は無効とする規定があります。

法律の解説本によくある事例ですと「人を殺してくれたら金を払う」という契約や「賭けマージャンで負けたら金を払う」というような契約は、いくら双方が納得した上での契約でも、殺人や賭博といった内容は公序良俗違反なので無効になります。

新聞公正取引協議会の「新聞契約を『金品等により』契約した場合は契約にあらず」という見解は、ここから来ているのではないでしょうか?違法に景品を受け渡しするという契約は、公序良俗違反だから無効だと。

で、契約が無効になった場合、通常は、ゲンさんの言われるとおり、民法545条により原状回復しなければなりませんが、民法708条に不法原因給付の規定があります。これは、不法な原因で給付してしまった物は、返還請求できないという規定です。

つまり法律上は、賭けマージャンで勝っても、相手に支払わせることはできないし、逆に、負けていったん支払ってしまった後では、返してもらうこともできません。不法行為上のやりとりについて、法は手を貸さないということです。

新聞公正取引協議会も、この理論を適用して、「返還に応じる必要は無い」としているのではないでしょうか? 


回答者 ゲン


まずは、こういう疑問を投げかけてくれたことに感謝する。ものの見方というのはいろいろある。ワシも、自分の意見や考えが最高やとは思うてない。

ここでは、契約という関係上、法律に触れとる部分も多いが、その判断が怪しいこともあるかも知れん。あんたの疑問、質問は、それを見つめ直すええ機会になると思う。

ワシも、法を守るということには異論はない。ただ、法がすべてやとも考えてない。それには、法律の条文は、絶対とは言い切れん部分があまりにも多いと思うからや。

その条文の捉え方次第で、幾通りもの解釈を導き出せる。つまり、どうとでも受け取ることのできる記述になっとるのが、法律の条文やと思う。ハカセに言わせたら、あれだけ難解で意味不明な悪文は他にないということや。

テレビの法律番組を見るまでもなく、その法の解釈について弁護士という専門家の間でも、その見解が別れるというのは珍しいことやない。そうなっても不思議やないと言えるのが、法律の条文の解釈ということになる。

ある法律家の先生が「法律を拡大解釈したり類推することで、恐らくこれはこうだろうと予想して、みんなあーだこーだ言うてるだけ。法律なんて、所詮、言ったもん勝ちという要素が強い」と言うておられたが、それが、正直なところやろと思う。

ただ、判例主義というて、同じ事案で裁判所の判例があれば、それが、法的根拠になるというのがある。実際のところ、判決を下すのは、裁判所だけやから、そこで決定されたことが優先されるわけや。

せやから、法律専門のサイトやと、その解釈の根拠の説明として、必ずその判例を引用して持論を展開しとる。それが一番、無難やさかいな。

本当は、ワシもできたらそうしたい。しかし、残念ながら、新聞契約に関した判例は、今までサイトに協力して頂いている法律家の先生方に調べて貰うても、皆無なわけや。どこにも存在せん。少なくとも、ワシらには分からん。

かろうじて新聞販売店関連であるのは、押し紙裁判と販売店と従業員との間の労働争議くらいのものやったからな。新聞トラブルで一番多いのが、勧誘する側と購読者との間のものやが、その裁判争いの判例がない。

せやから、判例のないものは、法律の条文を類推する以外にないということになる。そして、それは、絶対的なものやなく、幾通りにも解釈できるものやいうことを理解してほしいと思う。

それを踏まえて貰うた上で、あんたの質問に答えることにする。

『新聞公正取引協議会の「新聞契約を『金品等により』契約した場合は契約にあらず」という見解は、ここから来ているのではないでしょうか? 違法に景品を受け渡しするという契約は、公序良俗違反だから無効だと』というのは、あまりにも飛躍しすぎた論法やと思う。

また『新聞公正取引協議会も、この理論を適用して、「返還に応じる必要は無い」としているのではないでしょうか?』というのも、その発言者に直接、聞くしかないが、もし、そうなら認識不足やと答えるしかない。

民法90条というのは、公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。ということや。

それから言うと、確かに、あんたの言う「殺人契約」や「賭博行為」は、それに当たると考えられる。

しかし、それと「新聞契約を『金品等により』契約した場合」というのを、同列に扱うことは、あまりにも無理がありすぎると思う。まったく次元の違うことや。

「殺人契約」や「賭博行為」というのは、それ自体が最初から違法行為や。それに比べ、新聞契約の景品付与自体は合法やというのは間違いないことやからな。

ただ、今回、問題になっとる「1年契約に対し、商品券5000円を渡すという行為」が、景品表示法の景品付与の上限に抵触する畏れがあるというだけのことや。

景品表示法の違反行為ということには異論はないが、それを公序良俗違反やと断定するには無理があると思う。

例えば、車の運転をしていて、スピード違反や駐車違反などは、違反行為となり、減点、罰金の対象となるが、言えばそれで終わる。普通、それを公序良俗違反とまでは言わん。

法的にも「殺人契約」や「賭博行為」はそれで摘発されれば前科のつく犯罪となるが、景品表示法の違反行為で前科に問われることはない。景品表示法は、個人を罰する法律やなく、適用されるのは業者、この場合は新聞販売店だけがその対象となる。

「殺人契約」や「賭博行為」は、個人の犯罪という要素が強い。それからしても、同列になりようがない。まったく異質のものなわけや。

したがって、今回のことは、民法90条には該当せんことやと自信を持って言える。

今回の販売店の行為も、業界で言えば、スピード違反や駐車違反に相当する程度のものや。

そのスピード違反や駐車違反の方が、事故につながり人に迷惑を及ぼす可能性が高いから、より悪質やと言える。

対して、景品付与は、それを違反したからと言うて、誰かが困り、迷惑を被るという類のものやない。ただ、違反行為としての決まりがあるというだけのことや。悪質さは限りなくゼロに近いと個人的には思う。

そして、今回、問題になっとる新聞公正取引協議会には、その該当する販売店について、その程度により、その違反に対して罰金を科すことができるとされとる。

しかも、これは、民間団体としての新聞公正取引協議会が販売店に科すもので、法律の類とは違う。言えば、制裁や。それからすれば、新聞公正取引協議会は、新聞販売店のみにしか発言権はないと考える。

せやから、今回の新聞公正取引協議会の担当者は、そういう対応をするべきで、購読者に「新聞契約を『金品等により』契約した場合は契約にあらず」と断言したのは間違いやったと言うしかない。

自己の裁量を著しく逸脱した言動やから、ワシは、敢えて「暴言というしかないと思う」と言うたわけや。

もちろん、これはワシだけの意見やない。ハカセもサイトに協力して頂いている法律家の先生方も同じ意見や。

人は立場を弁えた分相応の発言をせなあかんと思う。これが、一般人の発言やと言うのなら、ああそうかで済まされるが、新聞公正取引協議会の担当者という立場で、一般購読者に対して許される発言やない。彼には、それを言う資格も権利もないと考えるからな。

それを裏付けることとして『NO.273 こんなことでいいのでしょうか?』の中でも言うてるが、もう一度その部分を抜粋しとく。


因みに、この件に関して、名称で混同されやすい公正取引委員会に同じ質問をすると「当方では、契約にあらず、商品券の返還に応じる必要は無いというような判断をする立場にはない」また「民法の現状回復義務についても、言及する立場にない」という回答が返ってきた。

同じ質問に対して、公的機関である公正取引委員会は、そういう返答は一切できんという立場や。つまり、このケースのようなことは言わんということやな。

念のため、あんたの所とは違う『新聞公正取引協議会』の他の支部に問い合わせたら「当会は、あくまでもそれが違法かどうか判断するだけで、購読客に、それを返せ、返さなくてもいいと決める所でも、助言する所でもない。その販売店に指導するだけだから」とのことやった。

これが、正常な受け答えやろと思う。


つまり、新聞公正取引協議会の担当者という立場で、こういう発言はしたらあかんと言いたかったわけや。

実際、他の新聞公正取引協議会に問い合わせて聞いても、そういう発言はせんと明言しとったからな。

もっとも、この相談をされた販売店の方にしても、それは、その購読客からの又聞きなわけで、そういう発言を本当にしたのかどうかも定かやないがな。

そうは言うても、このサイトは、その真偽を詮索する所やないから、相談者の内容に添ったアドバイスや回答をすることしかできんのやけどな。

せやから、ここでは、その新聞公正取引協議会の担当者が、そう発言したという仮定で、ワシもそう言うしかないわけや。

ただ、この状況を推理すると、その購読者が、その新聞公正取引協議会の担当者の発言を部分的に都合よく脚色したとも考えられるということや。その購読者が、その商品券の返還をしたぁないがための作り話としてな。

穿った見方をすれば、最初から、引っ越しするのを承知で契約し、一度もその購読をすることなく、解約することで、その商品券を猫ばばしようと企んだと考えられんでもないからな。購読客の中にも、そういうことを考えるえぐい者は何ぼでもいとるということや。

実際に、こういう悪辣な輩には、ワシは何度も煮え湯を飲まされた経験があるから骨身に染みとる。これは、ワシだけやなく、拡張員を長く続けとると多かれ少なかれ経験しとることやと思う。

当メルマガ『第16回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ここで遭ったが何年め?』や『第32回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■拡張員泣かせの人々 Part1 引っ越し取り込み』の中でも言うてるから、暇があれば、見といてほしい。

『民法708条に不法原因給付の規定があります。これは、不法な原因で給付してしまった物は、返還請求できないという規定です』ということについても、ほぼ同じことが言える。

この民法708条には、確かにあんたの言うようなことが書かれとるが、その後に『ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない』と続く。

その購読者が、商品券を騙す目的で契約したと解釈すれば、それは、正しく『不法な原因が受益者についてのみ存した』ということになり、除外されると考えられる。

これには、あんたは異論を挟まれるかも知れんが、結果だけを見る限り、その購読者は受益者であり、景品の商品券だけを何の対価も支払わず不当に取得したという見方も成立するわけや。

もっとも、この民法708条に不法原因給付の規定というのも、民法90条の公序良俗に違反する契約と同じく、今回の新聞購読契約には該当せんと考える。景品付与を不法行為と決めつけとるいう前提があるから、そういう解釈なんやろうがな。

法律論には法律論でということになると、本当は際限なく続いていくもんなんや。あんたの言うように、拡大解釈で、すべてを公序良俗に違反すると言うのも可能やし、別の解釈でそれを否定することもできるさかいな。

少なくとも、判例の一つもないものについては法律論での決着は難しいやろと思う。本当の決着は、裁判することでしか分からんのやからな。

他サイトでは、新聞の景品は、プレゼントと解したらええから、返還の必要はないという論法を展開しとる所もある。

ただの譲渡やったら、返せと言うても、相手がそれに応じんかったらそれまでやとなる。これを根拠に、景品は返す必要がないと言う人間がいとるのも確かや。

それについても、条件付き付帯契約やから、プレゼントには当たらんと反論もできる。しかし、それを言うても不毛な言い争いにしかならんやろけどな。

後は、個々の判断に委ねるしかないということになる。法廷争い以外やったら、当事者同士の話し合いによる決着しか解決の方法はないということや。

ワシが、このQ&Aの相談者の方々に、このケースのように契約解除になったら、貰うた景品は返すべきやとアドバイスしとるのは、ワシなりの確固たる理由があってのことや。

今回の引っ越しのケースやと、契約解除自体は販売店も仕方ないと認めとる。この場合、その契約が履行されんことで、その販売店は損害を被ることになるが、契約不履行となるからそれについて何も言えんわけや。

それなら、せめて、その契約時に、その条件として渡したものくらいは返還してほしいというのは、自然なことやと思う。

それをこの購読者は拒否しとる。それのどこに正義があると言えるのやろか。その購読者は、その商品券を返すことで、何の不利益も損もないはずや。

もともと、その商品券は、その人間のものやないのやさかいな。逆に、返さんかったら得して儲かる。それで、よしということなのやろか。

普通の感覚やったら、引っ越しすることで、契約が守れないとなれば「済まんな、悪い、申し訳ない」と考えるのが普通やないやろうか。それを貰うたもんは貰うたもんやと言える神経を疑う。

良う考えてほしいけど、その景品には金がかかっとるわけや。販売店も、客が購読すると約束し、契約してくれたという前提があるから渡しとるもんで、金が余ってということやない。ましてや、捨て材以外の景品をプレゼントやという感覚で渡しとる販売店は皆無やと断言できる。

例え、5000円と言えども、販売店がその分の利益を上げるためには、相当の苦労を強いられるわけや。商売は遊んでて、儲かるもんやない。今回のことは、販売店にとっては、ある意味、死活問題ともなりうるものや。軽い問題やない。

もっとも、ワシが、ここでどれだけ、それを訴えたところで、実際に、こういうケースで客がごねた場合、それを返還して貰うというのは難しいようや。

たいていは、今回の販売店と同じくあきらめとるケースが多い。販売店としたら、そういう客と遭遇した不運を嘆くしかないわけや。中には、それでも粘り強く返還を求める販売店もあると聞くがな。

ただ、このサイトに相談に訪れた人で、契約が解除になった場合に景品を返さんと言うたのは今まで誰もおられんかったと記憶しとる。

また、そう思うてた人でも、ワシの説明で、皆さん気持ちよく、景品の返還に応じておられる。それが、普通の反応やと考えるけどな。

NO.273でも言うたが、返還に応じんようやと間違いなく人間が腐っていくと思う。そういう人間は自分だけ得をすればそれでええと思い込む。その得をすることで、誰かが損をする、被害を被るとは考えんわけや。

言うとくけど、それこそが、その人間にとっては一番の損失やと思う。その考えが染みついてしまえば、当然のように、それのどこが悪いのやと考える。

人がどう思うおうと関係ないとなる。そして、そういう性質の人間は、あらゆる場面でその考えを必ず覗かせることになる。

そんな人間を見てどう思うやろか? そんな人間が信用できるやろか? 他人からそう思われて、その人間は、果たして本当に得をしたと言えるのやろかということや。

しかも、損をした販売店の中には、当然のように、その人間に対してええ気持ちは持たんから、恨みに思うこともあるやろ。少なくとも、その人間が困っていると知っても助けるようなことはないはずや。

その購読者は、たった5000円を得るために、多くのものを失っとることになるわけや。

このサイトに訪れる相談者の方には、そういう人にはなって貰いたくない。せやから、これからも、ワシは、この姿勢を変えるつもりは一切ないし、一貫したアドバイスを続けるつもりや。

ただ、この相談者である販売店の方にも言うたことやが、違反は違反や。摘発の畏れのある違反行為はやはりするべきやないと思う。今回のように、違反したことを楯にとられる畏れが十分あるからな。

それを承知されたのか、以後、その販売店では、商品券のサービスは止めるとのことやった。実際、現在では全国的にも、商品券、ビール券などの金券を景品にするというのは、自重される傾向にあるようや。

今回、あんたの指摘について、反発したような回答になったが、他意があるわけやない。冒頭でも言うた通り、疑問を投げかけてくれたことには本当に感謝しとるからな。

どんな意見、考え方も見る方向、立場により違ってくるのは当然や。単に、これが、ワシのスタンスやと言うだけのことやからな。

さらに言えば、ワシは、相談者には、そうアドバイスするが、過去において、ただの一度も、ワシの考えを強制したことはない。そして、これからもそうするつもりはない。

ワシの役目は、こういう情報があり、こういう考え方があることを伝えることやと思うとる。最終的には、相談者が、どうするかの判断を決めるしかないことやからな。

その意味では、ワシのアドバイスは、あくまでも参考意見として考えて貰うたらええということや。

せやから、これに懲りずに、疑問や意見、指摘があれば、どんどん言うてほしいと思う。聞く耳だけはあるつもりや。

そして、納得できる意見には、従う度量もあるつもりやし、間違いを訂正するのもやぶさかやないからな。


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