新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.281 警察と新聞の癒着はどの程度あるのでしょうか


投稿者 HSさん 関西在住 投稿日時 2006.7.22 PM 1:58


HP楽しませて頂いております。

新たな質問なのですが、新聞社と警察は、癒着があるようで新聞社絡みの事件などは、警察は積極的に動かないとの事をある書物で読んだ記憶があります。

配達員の早朝の、信号無視などはほぼ摘発しないとか、警察は不祥事があった場合などに備え、ある程度割り引いて記事にしてもらうので、常日頃マスコミ関係には弱腰だと思っています。

警察と新聞の癒着はどの程度あるのでしょうか。やくざさんとの癒着も適当にあるようですが。いわゆる、貸し借りとの通常社会のことなのですが。


回答者 ゲン


はっきり言うて、ワシには、新聞社と警察の癒着があるかどうかというのは知らん。確かに、それに近い噂は耳にすることはあるが、確かな情報やない。あくまでも、噂、憶測の域を出んものばかりやからな。

個人的な会話なら、そういうことを面白おかしく言うのもええやろうけど、ここでの回答でそんな無責任な話はできん。

ワシがここの回答で、時折「……ということや」「……と聞く」「……という」「……という話や」という類の言い回しで話すことがあるが、あれはたいてい、ワシらなりに裏付けの取れとることや。または、信用するに足る情報やと思うてるから言うてることでもある。

それも濁すことで、情報提供者、関係者に迷惑がかからんようにという配慮もあって、そういう言い回しをしとるわけや。

それから言うても、今回の質問には答えられるだけの材料がワシにはない。

ただ、新聞社と警察の癒着という大きな話やなく、地域の警察署と販売店ということなら、そんな話も具体的に聞くことはある。信憑性は何とも言えんがな。ただ、そういうこともあるやろうなというのは分かる。

例えば、当メルマガ『第93回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ある新聞販売店での出来事 前編』『第94回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ある新聞販売店での出来事 後編』 の中にも、それを裏付ける内容のものがある。

販売店主が、従業員同士の揉め事で警察沙汰になった、このケースように、地元警察との関係で穏便に済ませて貰えるような働きかけをし、その配慮があったのではないかというものや。

実際、この事件は、一般でのことやったら、少なくとも傷害未遂事件として刑事処分されるはずやが、この販売店の店主の働きかけが功を奏したのか、ただの喧嘩沙汰として処理され、大したお咎めはないということや。

そして、これは、公な事件にもならず人知れず終わっとる。この事実に言及しとるのは、当メルマガだけやろと思う。

さらに、言えば、この手のことは過去においても、業界では良くあることや。他にも、類似した話ならいくらでもある。そのメルマガ掲載後、実際にそういう話もいくつか寄せられとるしな。

しかし、癒着ということに言及するのなら、具体的な証拠がない限りそうと決めつけるわけにはいかん。いくら状況証拠がそれを物語っとるとしてもな。

『新聞社絡みの事件などは、警察は積極的に動かないとの事をある書物で読んだ記憶があります』

どんな本を読まれたのかは知らんが、確かに元警察官という人たちの暴露本が出回っていて、それをワシも見たことはある。当事者の話として信用するのなら、その本の内容の方が、ワシに聞くよりも確かやという気はするがな。

もっとも、そう言うてしもうては、せっかく質問して来られても拍子抜けやろうから、そのことについて、ワシよりもはるかに詳しいと思われる人に、今回の回答をお願いすることにした。

この方は、10年以上、新聞記者をされておられた方で、事件現場の取材で警察関係各所に詰めておられた経験から、その辺の事情には詳しい方や。

しかも、現在は辞めておられる。せやから、ある程度、中立の立場で話ができると思われるので、ご意見の信憑性はかなり高いはずや。

今回は、ダブル回答ということになるが、この方の回答の方がメインやと思うて貰うた方がええ。

後で、ワシから少しだけ補足のコメントもあるが、先に、この方の回答の方を聞いて頂いた方が、それも分かりやすいと思う。


回答者 BEGINさん


お尋ねの件ですが…

『新聞社絡みの事件などは、警察は積極的に動かないとの事をある書物で読んだ記憶があります。警察は不祥事があった場合などに備え、ある程度割り引いて記事にしてもらうので』

趣旨としては、「警察がマスコミに貸しをつくっておく」ということかもしれませんが、マスコミ側としては、「マスコミ絡みの事件で手を抜いてもらっている」という感覚は全くありませんし、「警察に借りがある」などと考えることも毛頭ありません。

仮に何らかの形で、警察が勝手に貸しを作ったということがあったとしても、不祥事があれば絶対に手を抜くことはないと思います。

なので、警察が新聞社に貸しを作るために『配達員の早朝の、信号無視などはほぼ摘発しない』ということがあったとしても、記事とは無関係といわざるを得ません。

そもそも販売と編集は完全に分断され、しかも販売店は全く別の会社ですので、編集の人間は、配達員にお目こぼしがあっても、「借り」とは思わないような気もします。

ちなみにこれは事実なのでしょうか?

事実だとすれば、新聞販売店の従業員だからではなく、「早朝の配達員」だからであって、配達する物は「牛乳」でもいいのではないでしょうかね?

仮に「牛乳」は切符が切られて、「新聞」がセーフなら、「当該販売店」と「管轄警察署」に「癒着」があるかもしれませんが…。

「警察組織」と「新聞業界」の「癒着」でセーフになるのなら、私が新聞記者時代に切られた複数の切符もナシにしてほしいのですが(笑)。

まぁ、交通違反に限られず刑事事件一般に関しても警察側が「貸し」を作るためにマスコミ関連事件で手を抜くというのは考えにくいと思います。

マスコミ側が「借り」とは思っていない(そもそも手を抜いているかどうかわからない)のですから、警察が捜査に手を抜いて得られるリターンはありません。

一方、事件化に当たって不平等な処理をするというのは捜査機関として決して許されない行為ですから、事実が露見して批判に晒されるリスクはかなりのものだと思います。

そう考えると、「貸しをつくるため」というのは、ちょっと無理があると考えます。

ちなみに、マスコミとひとくくりにされがちですが、新聞、テレビ、通信社、ラジオ、雑誌とさまざまな業種があり、さらにその中に多数の企業が、それぞれの立場で取材・編集活動を行っていますから、 業界全体に貸しを作って、業界全体からその見返りを得るのは不可能なような気もします。

もちろん特定の企業に「貸し」を与える可能性はあるでしょうが、その企業だけの記事が割り引かれることにどれだけのメリットがあるのか分かりませんし、どちらかというと業界の問題というより、その会社の責任が問われる問題でしょう。

補足しますが、「マスコミが警察を監視する」という機能から、警察がマスコミ関連の捜査をしにくいという面はあるかもしれません。

マスコミは、警察が何か悪いことをしていないか、国民の目として監視するのが任務であり、そのために情報源を作り出し、警察が公表してほしくない情報を獲得することを主な業務としています。

ですから、警察が何かの事件にかこつけて、例えば新聞社を家宅捜索して取材メモなどを片っ端から押収し、新聞社の手の内(情報源や取材方法)を知ろうとする危険は、常に意識しておかなければなりません。

そういう意味で、警察としてもマスコミ関連事件に関して慎重さが求められていることは事実だと思います。

『常日頃マスコミ関係には弱腰だと思っています。 警察と新聞の癒着はどの程度あるのでしょうか。やくざさんとの癒着も適当にあるようですが。 いわゆる、貸し借りとの通常社会のことなのですが』

「警察の監視」という面から考えれば、警察は公的機関である以上、国民の目に晒されることを甘受しなければなりません。

そういう意味では、警察はマスコミに「弱腰?」なのかもしれません。また、「ペンの力」の影響力は大きいですから、当然に警察も注意を払います

しかし、一方で「情報の獲得」という面から考えれば、マスコミは警察から捜査情報を得ようと、あの手この手で警察に近づき、その情報を一括管理しているのは警察なのですから、情報獲得過程で主導権を握るのは警察であって、「弱腰?」なのはむしろマスコミ側かもしれません。

警察とマスコミの関係は一言で言い表すことができない複雑なものなのです。

情報獲得に関しては、当然に警察と記者との接触があります。記者といっても営業マンと一緒で、基本は警察官個人と人的関係を作り上げることにあります。これが「癒着」になるのか、人それぞれ見解があると思います。

商品の売り買いの場合、営業マンは商品の対価として金を受け取ることで利益を上げ、買い手は、金を支払い、その価値に見合う商品を受け取ることで利益を得ます。普通はこれを「癒着」とは捉えないと思います。

これを記者と警察の関係に当てはめるとどうなるでしょうか。記者は、無料で情報を得て利益を上げます。これは分かりやすいでしょう。

では、警察(or警察官)は情報を渡して、何の利益を得るのでしょうか?

犯人の似顔絵を公表するなど、幅広く情報提供を受けたいという分かりやすい場合もありますが、捜査情報の多くは(捜査状況によりますが)公表してほしくない情報です。

情報が漏れて犯人が逃げる、証拠が隠滅される、裁判に悪影響を与えるなど、様々なリスクを考えれば、犯人を逮捕起訴して有罪に持ち込む任務を最大限尊重するためにはマスコミに与える情報は必要最小限にするのがいいに決まっています。

事実は裁判で明らかにすればいい話なわけです。テレビドラマのように、捜査情報を次々と漏らす刑事には残念ながらお目にかかったことはありません。

このリスクに勝るリターンは何なのか?

ここが実に分かりにくいので、「癒着」という疑念を生むような気がします。

情報を流すことによる警察の利益は、個別事情に応じて複雑多岐にわたります。

例えば、捜査や裁判に影響を与えない範囲で、国民に提供しなければならない最低限の情報だから?

自分が大きな仕事をしたと、社会に、そして警察内部にアピールして評価を得たいから?

積極的に公表したくはないが、影響は大きくないから、記者との人的関係で教えてあげた?

警察が把握していない記者の情報と引換えに捜査情報を渡した?

あえて情報をリークすることで、世論を誘導操作し、事実上今後の裁判を有利に進めたいから?

内部告発のように不祥事を黙って見過ごすことはできないという正義感から?

などなど、いろいろな要素が絡み合っているのだと思います。「将来の不祥事を穏便に報道してもらいたいから」「監視の目を緩めてもらいたいから」というのは現実的にはありえません。

どこをどう捉えて「癒着」というのか。非常に難しい問題です。厳密に言えば、癒着相手は「警察組織」なのか、「警察官個人」なのか判然としないこともあるでしょう。

県警本部に記者室を置く事自体が「癒着だ」という人もいるかもしれません。マスコミも警察も、お互いの目的や意図をよく理解しながら人的関係を築きますから、 私の個人的な実感としては「癒着」というより、ほとんどは「狸の化かし合い」なんですが…。

ただ一つ、「貸し借り」ということに関していえるのは、例えば警察で何か不祥事があり、記事にはするけれど、その扱い方は微妙という問題が浮上したとき、「今後、他社を出し抜いて情報を取るには何がベストなのか」という考慮によって、結果的に扱いが控えめになるということはあり得る話だと思います。

この辺りは批判があるかもしれませんね。

ちなみに、以前の『第94回 新聞拡張員ゲンさんの裏話』 で、取り上げられた私のコメントの中で『「新聞販売店だから記事になりにくい」要素も否定はしません』というのは、事件になった後の記事の扱いの話であって、警察との癒着がどうこうという話ではありません。

単に内部の不祥事は積極的には公表したくないという、企業心理を指しています。例え他社の販売店でも、自分のところの販売店が将来、同じような事件を起こす可能性は十分にあるわけで、そのことを考えれば、あえて大きく扱うこともないか−という心理が働くことは事実だと思います。


コメント ゲン


聞いていてなるほどなと思う。新聞社と警察という大きな枠で考えれば、癒着による情報操作はあり得んし、お互いにそうするメリットのないことやというのは十分に説得力がある。ワシも、BEGINさんの意見を支持する。

BEGINさんが『配達員の早朝の、信号無視などはほぼ摘発しない』という質問者の言に関して『ちなみにこれは事実なのでしょうか?』と疑問を投げかけておられることについてやが、これは、あり得んことやと思う。

ワシも、代配と言うてピンチヒッターとして奈良県のある販売店で、早朝の新聞配達をしてた経験があるけど、そのときその販売店にいた他の配達員たちから、信号無視をして捕まったという話は聞いたことがある。それも一度や二度やない。

また、逆に目こぼしがあるからと、警察官の前でこれ見よがしに信号無視をしたというのは、話にも聞いたことはない。そんな度胸のある人間はおらんやろと思う。

ただ、その警察官がおらんような所やと、信号無視する配達員はおるかも知れん。

しかし、そんなのは、別に配達員やなくても、早朝やと、その警察の目もなく、また人通りや車の通行量も少ないということで、トラックや乗用車の運転手でも信号無視をする者は結構いとる。

少なくとも、それをしとる配達員も警察に必ず目こぼしして貰えるという根拠のもとにしとることやない。警察も、目の前でそんな真似をされたら「なめとんのか」ということになり、意地でも捕まえるはずや。実際に捕まっとるしな。

これに関しては、あんたの思い込みの部分が強いのやないやろか。その現場を目撃して証拠があるというのなら別やがな。そういう現場を第三者に目撃されたとすれば、それはそれで大問題になると思う。

BEGINさんの話やないが、そんなリスクを冒してまで目こぼしをする理由は、少なくとも巡回する警察官にはないはずや。そんな指示を下す警察の上司も考えにくいやろしな。

ただ、注意程度で済むケースはあるにはあったがな。

配達員はバイクで所構わず走るというのがある。歩道の上も、平気で走ることもままある。

これは、道路に面してポストがある場合、歩道の手前に一々止めて降りて新聞を入れるというのが面倒臭いから、勢いバイクに乗ったまま歩道を走り、その家のポストに入れるためにそうする。

新聞を投函する家が続けば、そのまま歩道を走りながら入れることになる。向かいの家にも入れなあかん場合は、反対車線に移り、場合によったら逆走ということもあり得る。

これなんかは、完全に道路交通法違反や。

ワシは、このケースで、迂闊にも近づくパトカーに気付かず、それをしとるところを見つかったことが一度だけあった。

そのときは「危ないですから、歩道は走らないでください」とマイクで注意された。反則キップを切られることもなく謝っただけで済んだけどな。

これを、目こぼしと言えば言えるのかも知れんが、どうなんやろ。ワシには単に、その警察官がそういう性質の人やったということやないのかと考えるがな。すべての警察官が、それで許すことはないはずやと思う。

ただ、地域により警察署と販売店が密接に協力しとる場合があると聞く。何か事件が起きたとき、地域の情報ということなら、販売店に聞けば分かることも多い。

特に、販売店は新入居者情報を入手することにかけては相当のものがある。もちろん、それは契約を取るための情報として必要なわけやが、警察にとっては外部からの入居者情報というのは事件捜査上、得難いものがある。

そういう面で、協力しとる販売店には、些細なことは警察署、警察官の裁量の範囲内としてなら見逃す可能性は考えられんでもないと思う。

しかし、それも、昨今は怪しい状況になっとるようや。例の奈良小1女児殺害事件以後、それに類似した事件があると新聞販売店の従業員が真っ先に疑われとるという現実があるからな。

メルマガ『第70回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■くり返される悲劇!!広島小1女児殺害事件の現場では……』でそのことに触れとるから読んで貰うたら分かると思う。

これは、ほとんどの報道機関では話題にもされんかったことやが、事件発生直後、この地域全体のあらゆる新聞販売店に捜査官が出向いたということや。真っ先に疑われとるという証しやと思う。

あるいは『NO.108 近所で販売店員が逮捕されました』の事件のように、それまでは、大して問題にもされんかったようなことで、逮捕者まで出るということが現実に起きとる。

これらを見る限り、警察との癒着ということを考えるよりも、逆に目の敵にしとるのやないかと勘ぐりたくもなるという現実がある。

つまり、あんたが考えているほど、新聞販売店は、警察から優遇されとるわけでも、特別扱いされとるわけでもないと思うがな。

そして、新聞社と警察に関しても、BEGINさんの話から、癒着の構図というのは考えにくいと思う。


補足


今後、BEGINさんに、当Q&Aの回答者を快く引き受けて頂けることになったので、この場を借りてお知らせする。

但し『サポートできる部分があれば、協力させていただきます。もっとも、新聞の論調がどうだとか、ジャーナリストたるべきもの…みたいな話は苦手ですので、その点はご容赦ください。この手の話は収拾がつきませんので。

このHPに趣旨に沿った形で、あくまで現場一記者としての個人的な経験and見解ということでしたら、協力させていただきます』ということやから、分かって頂きたいと思う。


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