新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.288 故人が契約した新聞購読をやめる時


投稿者 奈良県滞在中の遺族さん 投稿日時 2006.8.14 AM 2:10


はじめまして。いろいろQ&Aを読ませていただいて参考になりましたが、自分の例をもっと詳しく教えてほしいと思い、メールしました。

先日、独居していた父が亡くなりましたが、法定相続人の息子2人は、他県に住んでいるため、新聞の購読を止める旨を新聞店に連絡しました。

すると新聞店から、平成14年に交わした、平成17年からの2年契約の契約書と、商品券、ビール券のサービスをうけたとの父の名前の領収書を持ってこられ、「8月の新聞代と解約違約金はいただきませんから、商品券とビール券代を返してください」と言われました。

実際の配達は、平成18年からに変更したらしく、今年7月の1ヶ月と8月の数日のみ配達されました。7月分の新聞代は支払済みです。

その時はこのサイトを知らなかったので、サービスを返金するというのはどうにも納得が行かず、ちゃんとした解約違約金があるならそっちを計算してくれと言って帰ってもらいました。

契約書は、小さな紙切れで、月の表に丸が打ってあるだけの簡単なものです。父の名前は書いてありますが、印鑑はなく、サービスの領収書も、商品券JCB10枚、ビール券5枚と書いてあるだけで、いくらの商品券なのかは明記してありません。サービスの筆跡は、父の筆跡とは違うようです。

生前の、しかも4年も前の契約で、契約が履行開始された7月の時点では、父の病状は悪化し入院していたため、どうして新聞の種類がかわったのかもわからない状態でした。

8月の新聞代を支払うのは納得できますが、そのような契約書を全面的に信用できないのと、父が死亡したという、どうしようもない状況でも、商品券代を返せ、解約違約金を返せと言ってくるのに、誠意のなさを感じてしまいます。

販売店で損害を被ったのを補填するという話はわかりますが、そもそもあとから返さなければならないサービスなど、詐欺のような勧誘自体なくなるべきと思うので、余計に支払いたくないと考えています。

現時点では、このようなケースは通常どのように処理されることが多いのか、教えてください。

よろしくお願いいたします。


回答者 ゲン


お父さんが亡くなられたとのこと、お悔やみ申し上げる。

『現時点では、このようなケースは通常どのように処理されることが多いのか、教えてください』

ということやが、今回のようなケースで契約時の景品として渡した『商品券とビール券代を返してください』と言うのはあまり聞いたことはない。

普通は、仕方ないとあきらめるもんや。ワシも、7,8年前やが、奈良県でこの仕事をしてたことがある。そのときの経験から言えば、独居契約者の死亡ということになると、たいていの販売店では、何も言わずあきらめてたと記憶しとる。

もっとも、奈良県というても広いし、全新聞販売店について詳しく知っとるわけやないから、すべてで、そうやとは言い切れんがな。ただ、一般的な対応ということなら、そうや。

これは、ワシの想像やが、それを言うてみて、それで払うて貰えれば儲けものということやないのかな。ダメもと、というやつやという気がする。

今回のケースは、遺族の方が不承知なら何も支払う必要はないのやないかと思う。

ワシが、このサイトで契約解除による景品の返還はするべきやと言うてるのは、それなりの条件が揃うてる場合に限ってや。

景品の量はその契約期間により違う。3ヶ月契約より6ヶ月契約の方が景品は多く、1年契約より2年契約の方がさらに多いのが普通や。

それからすれば、契約の残期間により、景品の返還率も少なくなるのが一般的であり、常識的な線ということになる。

お父さんのケースで言えば『平成17年からの2年契約の契約書』で、入り月は話の内容から7月のようやから、ちょうど半分の1年を経過しとるということになる。

ただ『実際の配達は、平成18年からに変更したらしく、今年7月の1ヶ月と8月の数日のみ配達されました』と販売店が主張しとるとのことやが、その契約書でもあるのかな。

おそらくないのやろと思う。それがあれば、その販売店は最初から『平成18年7月からの契約』やと言うてるはずやからな。

契約書がなければ、その真偽は分かるはずがない。

今回の場合は、契約者の死亡ということやから、契約解除について争うことはできん。販売店が主張できることと言えば、渡した景品を返してくれということやが、それも1年が経過しとると請求しにくい。

そこで、急遽、契約が変更され今年の7月から入れたということにしたのやないかな。そう考えた方が、景品の返還請求をしたという理由とすれば納得できる。

もっとも、本当に契約の変更がそうなってたのかも知れんが、それやったら、その変更したという契約書を作ってなかったという落ち度がその販売店にあると言える。

その落ち度を棚に上げて図々しく、それで請求したということになる。いずれにしても、あまり感心できる販売店やなさそうや。

『契約が履行開始された7月の時点では、父の病状は悪化し入院していたため、どうして新聞の種類がかわったのかもわからない状態でした』『8月の新聞代を支払うのは納得できますが、そのような契約書を全面的に信用できない』

という不信感があるのなら「そちらの言うことは一切信用できないから、応じられない」と突っぱねるのも方法や。そうしても、あんたの方の理屈の方が勝ると思う。

その販売店が、どうしてもその渡した景品の返還を望むのなら、法定相続人に対して、その損害賠償訴訟を起こすしかないが、それは、まずないやろと思う。

割に合わんということだけやなしに、主張しとることの正当性を立証するのも無理やろと考える。その販売店もそれくらいのことは自覚しとるはずやからな。

参考までに言うとくけど、たいていの販売店では、この景品付与に対するリスクは織り込み済みや。特に今回のように死亡ということになれば、それを返してくれとは言いにくいということがある。

新聞購読のような契約を「継続的役務提供契約」という。これは、契約期間を設定した上でお互いが交わす契約のことや。これには、そこでの居住と生存ということが条件になる。

景品付与はそれを前提として渡される。居住の変更の場合は、その契約者から、その景品分を返還して貰うたらそれでええが、死亡の場合は、その本人の意思が残ってない限り、本人からの返還はあり得んことになる。

今回のように、それを請求するのは、その遺族ということになるが、拒否されたらどうしようもない。業界の常識やとワシは思うとる。それが、リスクになるということや。

今回のように、堂々と景品の返還を主張することの方が珍しい。それも、奈良でとなると尚更や。

それには、遺族であるあんたが他府県の人やというのもあるかも知れん。このことは、その場だけの一過性で地元で噂にならんと踏んだのと違うかな。

ワシには、そうとしか思えんがな。ワシの知る限り、奈良という土地柄は、噂、風聞というのを特に気にする所やからな。

この際やから、あんたの質問の中にある、その他の疑問にも答えておく。

『ちゃんとした解約違約金があるならそっちを計算してくれと言って帰ってもらいました』ということやが、契約解除自体は無条件に認められるから、そのための解約違約金というのは一切、発生することはない。これについての請求は考えられん。

『契約書は、小さな紙切れで、月の表に丸が打ってあるだけの簡単なものです』というのは、新聞購読契約というのは、たいていそうしたもんや。必要事項の記載が洩れてなければ、これはこれで立派な契約書として通用する。

『父の名前は書いてありますが、印鑑はなく』これは、名前、住所の欄が、お父さんの筆跡に間違いがなければ、契約書として認められる。

日本は印鑑社会ということになっとるが、それは、実印が必要な契約書とか、銀行印のような特別な所でしか認められん印鑑が必要な契約書に、それが必要やというだけのことや。

『サービスの領収書も、商品券JCB10枚、ビール券5枚と書いてあるだけで、いくらの商品券なのかは明記してありません』というのは、問題やな。

普通、新聞販売店で扱う商品券には、500円券と1000円券がある。その金額が記入してないというのは頂けん。加えてビール券もビンと缶、その大小くらいは記載しとかなあかん。あんたの言う通り、いくらか分からんからな。

それと、これを確かに渡したとするには、契約者にその部分に「済み」と書いて貰う必要がある。これも、きちんとした販売店ならどこでも義務付けとることや。せやないと希に客から「そんなもの貰うてないで」と言われることもあるさかいな。

『サービスの筆跡は、父の筆跡とは違うようです』これを書くのは、たいていワシら勧誘員や。サービスの内容そのものを契約者に書かす方が不自然やと思う。

その契約書に、直筆のサインがあるのなら、その内容を確認したという証しになる。その控えがある以上、いつでもそれに対して異議を唱えられたということでな。

『そもそもあとから返さなければならないサービスなど、詐欺のような勧誘自体なくなるべきと思うので、余計に支払いたくないと考えています』

これについては、少し誤解もあると思うので説明させて頂く。

景品というのは、あくまでも、その約束の期間、新聞を購読して貰えることを条件として渡すものや。当たり前やが、営利企業に無条件で無償サービスをするというのはあり得ん。

契約が約束通り履行されれば問題はない。問題は、その契約が履行されんかった場合ということになる。

例えば、クーリング・オフで解約したとする。この場合も契約時に、それに見合う景品付与が必ずある。

クーリング・オフで解約したら、その景品は、民法の原状回復義務により返還せなあかんことになる。たいていの人は、それに違和感なく応じることが多い。

このこと自体は、詐欺のような勧誘と呼べるものやないと思う。たいていの客も、その景品の意味することは承知しとるはずや。承知して受け取っとる以上、詐欺でも騙しでもない。景品付与自体は、法律で認められた立派な商行為やさかいな。

その返還を求めとるのは、契約を履行せんかったからで、それを返すことを拒むのは、明らかにその契約者の方に非のあることやと考える。それを自分の物とする根拠がないはずや。

契約書にその景品を記載することの理由の大半が「条件付き契約ですよ」というアピールのためやさかいな。暗に「これだけのサービスをするのやから、約束は守ってくださいよ」と言うてるわけや。

ただ、あんたの場合は、あくまでも特別なケースということになる。それには、あんたが契約当事者やないということが大きい。今回のように、事情が良う分からんという無理からぬことがあるさかいにな。

何度も言うが、あんたが、その販売店を信用できんというのなら、応じる必要もないやろと思う。

ただ、そこでの揉め事が嫌というのなら、話し合いということで手を打つのも一つの方法や。その場合は、あんたの納得できる条件を示すことやと思う。

それで、あんたと相手の販売店が納得できたら、それが一番ええことや。そうなれば、お父さんも喜ぶのと違うかな。

例えば、契約書に記載しとる最低の線で、商品券は500円が10枚、ビール券350ミリ缶2本券1枚458円が5枚ということで、合計7290円分を貰ったものとする。

契約書では、1年経過しとることになるのやから、その半分として、3645円分で話をつけるという具合や。もちろん、それ以下でもええ。話し合い次第や。

どうするかは、あんたの方で、良う考えたらええと思う。いずれを選んでも、間違いやないと考えるしな。


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