新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.319 こういったことが現状なのでしょうか?


投稿者 ダイスケさん 19歳 学生 投稿日時 2006.10. 2 PM 9:25


NO.307 十代ならば解約できるとあったのですが』での詳しくわかりやすい、何より熱のこもった返事を感謝します。

さて、ゲンさんの助言どおりに、親に手助けをしてもらいました。その結果、解決することができました。

でも、なんとも後味が悪く、しかも対応がテレビで見る悪徳業者やヤクザのようで、新聞の販売所がこんなものでいいのかと失望しました。

以下がそのいきさつです。時間があったらで結構ですので、こういった販売店やその背景に対するゲンさんの意見を伺えたら幸いです。こういったことが今の社会の現状なのでしょうか?

このメールの返事をみてすぐに親にこの問題を説明し,電話してもらいました。しかしながら未成年者の契約をいくらつきつけても納得してもらえませんでした。

「1ヶ月3000円ちょいで半年なんだから小遣いの範囲だろ!払え」と。「問題は総額じゃないのか、しかも小遣いはあげていない」と言ってもよくわからない理屈を述べるばかりで。

ここで親は、この販売店と話しても意味がないと判断して、本社に電話しました。そこでは、一応販売店には連絡するが本社のほうではなにもできないということでした。

その後、再び販売店の方から電話が来て、「うちとおたくの話し合いでしょ。本社は関係ないでしょ」と。ここでは本社に連絡をしたことを長々と親に文句を言っていたそうです。やっぱりこういう実態を本社にばれるのはまずいのでしょうか?

親元から離れているため、直接は聞いていませんが。親と販売店のやりとりの間に、僕は、よく考えてみたら、契約書の自分の氏名欄に、自分自身で名前を書かずに拡張員に書いてもらったことを思い出しました。実際、筆跡が全く違いましたし。

ためしに、このことを親にメールしてみると、親がそのことを告げ、そうすると販売店は、「お子さんと話をします」と言ってすぐに僕に電話をかけてきました。僕も、ここしかないと思って、強気にいきました。「筆跡鑑定でも裁判でもご自由にどうぞ」と。やっぱり名前も自分で書かなければいけないのですね。

ここまでくると販売店も、法律で契約に縛ることができなくなり(未成年契約の時点で既にかもしれませんが・・・)あきらめざるを得なくなったみたいです。

ただ、「弁護士の後ろ盾はいくらでもある」とか「名前を自分で書かなかったというのは、勧誘員とあなたが、私たちを騙していたということですよね。」だとか、沢山の人が利用する新聞店には口にしてほしくない言葉を散々浴びせられました。

そもそも客の立場からすれば、勧誘員も社員も一緒です。こんな店からサービスは受けたくありません。こんな店に未来はあるのでしょうか。

この契約問題がおきてすぐに、隣に住んでいる、いつも仲良くしてくれるお兄さんに相談してみたのですが、お兄さんも以前、他紙で、同じ感じで契約をしたそうです。

それで自分と同様に断りの電話をいれたら、「勧誘員がそのように言ったのなら」と、すぐに解約の書類を持ってきてくれて、しかも、数日間の新聞代もビール券、洗剤も請求せず、「勧誘員がしつこくせまり勝手なことを言っていたのなら申し訳ありません。信頼があって成り立っている仕事ですから。」と言っていたそうです。

それで今、隣のお兄さんはその新聞をとっています。同じ地区の同じ業者でここまでちがうものなのですね。どちらがこの町で信頼されているか自然とわかる気がします。

話がそれてしまいましたが、ゲンさんの言うとおり、ビール券は返せといわれました。幸いまだ1枚も使っていませんでしたが。

時間と神経ばっかり使いましたが、結局元通り。やっぱり甘い話ってなかなかありませんね。でも、「社会勉強できたんだ」、と思うことにします。一つの契約の重さというものを痛感しました。


回答者 ゲン


こういうことで揉める販売店の言い分として『1ヶ月3000円ちょいで半年なんだから小遣いの範囲だろ』というのが多いようやな。

その根拠とする頼みは、民法第5条3項の『法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする』というものやと思う。

この文言の中の「未成年者が自由に処分することができる」というのを、未成年者も契約に拘束されるものという捉え方をしとるということになる。

それが、小遣いの範囲なら契約者である未成年者も責任を負うべきという拡大解釈につながっとるわけや。実際にそれを支持する法律家もおるようやけどな。

しかし、ワシらは、それには無理があると思うとる。前回の回答時でも言うたが、この小遣いの範囲というのは、あまりにも曖昧で漠然としたものや。どの程度までが、小遣いかどうかという明確な線引きは規定されとらんからな。

金銭感覚というのは、生活環境、考え方で人それぞれ大きく違うもんや。例え、1000円の金であっても、人に寄れば貴重な生活費に相当するわけや。まして、小遣いがないと主張する人間に「小遣い程度」もないやろと考えるがな。

この判断は、その各事例毎に裁判所の裁定を仰ぐしか法的にも確かにこうやとは言い切れんやろうと思う。つまり、今回の場合は、あんたの主張を撤回させるには、その販売店が民事訴訟を起こすしかないということや。とことん揉めるのならそれしかない。

それがない以上、民法第4条の「未成年者と契約するには、原則として法定代理人(親権者)の同意が必要で、同意のない行為は、取り消すことができる」というのを遵守せなあかん。せやなかったら、そもそも、この法律の存在意義がなくなるからな。

さらに言えることは『小遣いの範囲だろ!払え』と主張する販売店は、20歳未満の学生さんのあんたを、その民法4条に抵触することを知った上で契約に持ち込んどる、あるいは勧誘員に契約を取るよう指示しとったと思えるふしがある。これが、事実やとしたら違法行為になる。

つまり、初めからそうと知った確信犯というわけや。せやなかったら、民法第5条3項の内容を持ち出し『小遣いの範囲だろ!払え』と言えるわけがないからな。

この場を借りてはっきり言うとくが、販売店は明らかに未成年と思える人間と契約した場合、こうなるということは覚悟しとかなあかん。保護者が「認めとらん」と言えば、契約解除に応じるしかない。それを承知で契約することや。

参考までに、たいていの販売店は、保護者からそう言われれば、素直に解約に応じとる。こういう販売店のように、それに異を唱える方が希や。

勘違いされては困るが、ワシは何も未成年の学生さんと契約するなと言うてるのとは違う。多くの学生さんは、納得されて新聞を購読されとられるからな。

ただ、保護者からこういう主張をされて納得できんということなら、最初から契約時に、その保護者の承諾を取っておくことや。それなら、問題は少ないと思う。

『よくわからない理屈を述べるばかりで』というのは、生半可な法律知識と自分に都合のええことしか頭にない者の典型的な考え方や。相手にする必要はない。

『ここで親は、この販売店と話しても意味がないと判断して、本社に電話しました。そこでは、一応販売店には連絡するが本社のほうではなにもできないということでした』

これは、契約に関しては、あくまでも契約者と販売店との間のことで、新聞社には関係ないというスタンスがあるから、たいていはそう返事する。それなら、言うても無駄なのかというと、必ずしもそうやない。

『その後、再び販売店の方から電話が来て、「うちとおたくの話し合いでしょ。本社は関係ないでしょ」と。ここでは本社に連絡をしたことを長々と親に文句を言っていたそうです。やっぱりこういう実態を本社にばれるのはまずいのでしょうか?』

表向き、新聞社は契約事にはタッチせんというのが建前やが、苦情があれば、その事情を必ずその販売店に聞く。これは、販売店にとってかなりプレッシャーになる。言えば、警察に事情聴取されるようなもんやからな。

それが、あるからこその文句ということになる。こういうのが度重なれば、実態調査に乗り出す新聞社もあると聞くから、あんたの言う通り、まずいと受け取る販売店もあるやろな。

『契約書の自分の氏名欄に、自分自身で名前を書かずに拡張員に書いてもらったことを思い出しました。実際、筆跡が全く違いました』

こういうケースも良く報告されるし、このQ&Aの相談にもあることやが、これは、明らかに無効や。

ただ、問題がないわけでもない。『拡張員に書いてもらった』というのが、あんたの了解の上でのことなら、勝手に書いたという主張は難しい。その拡張員が「あんたが書いてくれと言ったから書いた」と主張して、それに反論できん場合は、委託契約と見なされる場合もある。

実際、ワシらも客から「ゲンさん、信用してるから、そっちで書いといて」と言われることがある。それでも「いえ、決まりですからお願いします」とは言うてるが、中には、気難しい人もおって、仕方なくこっちで契約書に記入することもある。

もっとも、そういうケースで揉めたことは一度もないがな。しかし、これは、勧誘員がしたらあかんことは確かや。法律上は、自筆のサインがなかったら契約書とは認められんからな。

せやけど、道義的には問題があると思う。自分で書いたか書いてないかの違いだけで、実質的には、その契約をあんたは認めてたわけやからな。

今回は、それで解約できたということのようやからええが、法律的なことを抜きにして道義的なこととして責められる可能性もあったわけやから、それは注意してた方がええ。

せやないと、次回も似たようなことになり「名前と住所はそっちで書いといて」とその拡張員に言うて、それで解約に持ち込んだらええという風に考えていたら、足下をすくわれる畏れがあるからな。

『名前を自分で書かなかったというのは、勧誘員とあなたが、私たちを騙していたということですよね』と、その販売店の人間が言うたのも、それを突っ込みたかったのやろと思う。

ただ、突っ込み方が稚拙やから、あんたには負け犬の遠吠え程度にしか聞こえてなかったんやろうがな。

もちろん、こんな主張は通用せん。その勧誘員は、その販売店の「社員証」あるいは「業務委託証明書」を携帯して勧誘しとるわけやから、法的には、そこの社員と同等の営業員という扱いになる。

その販売店に使用者責任というのが発生する。せやから、その責任者である販売店自らが「勧誘員」が騙したと言う主張はどう考えてもおかしなことやとなるわけや。

もっとも、これは、長く続いてきた販売店と拡張員という対立の構図からの発言やろけどな。また、販売店と拡張団は、それぞれお互いが別組織、別会社との認識が強いというのもある。

いずれにしても、その販売店が、客であるあんたに言えることやない。

『弁護士の後ろ盾はいくらでもある』というのも、負け惜しみの一つやが、実際、販売店に弁護士がついとる所というのも結構ある。彼らを講師として法律的な勉強会というのも、開いとる所も多いと聞くからな。

ただ、今回、その販売店の人間の主張を聞く限り、法律に関しては大して勉強しとるとも思えん。もっとも、自分の都合のええように解釈する術には長けとるかも知れんがな。

『そもそも客の立場からすれば、勧誘員も社員も一緒です』これが、一般読者の感覚なのは間違いない。新聞社の看板を背負って営業するからには、一緒やからな。

『こんな店からサービスは受けたくありません。こんな店に未来はあるのでしょうか』

多くの人に、あんたと同じ印象を持たれるとしたら、やはり、商売として継続するのは難しいと思う。その意味では、その販売店の未来はないやろと答えるしかないな。

隣のお兄さんの話として、同じようなケースで他の販売店では『「勧誘員がそのように言ったのなら」と、すぐに解約の書類を持ってきてくれて、しかも、数日間の新聞代もビール券、洗剤も請求せず、「勧誘員がしつこくせまり勝手なことを言っていたのなら申し訳ありません。信頼があって成り立っている仕事ですから。」と言っていたそうです』とのことやが、これが一般的な販売店の対応やと思う。

あんたと揉めた販売店との対比で、かなりな優良店に感じるやろうがな。たいていの販売店は、評判というものを気にするもんや。悪い印象をもたれたくない、またはそういう風聞が拡がるのを畏れる。

せやから、そうすることで、例え、その場は、その客から契約を断られたとしても、それが必ず後日生きてくると信じとる。

『それで今、隣のお兄さんはその新聞をとっています』というのが、正にそれを如実に証明しとるということになるわけや。

最後に『一つの契約の重さというものを痛感しました』という、あんたに今さらな助言やが、これを単に新聞契約のことだけとして捉えるのやなく、すべての契約に対して同じように慎重であるべきやと言うておく。


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