新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.372 拡張員さんの認識を知りたいのですが
投稿者 K さん 販売店経営者 投稿日時 2007.2.19 PM 8:16
販売店の2代目として、日々の業務に精進している者ですが、ベテランのゲンさんにお聞きしたい事があります。これは、ゲンさん個人に関してではなく一般的な意見として聞いてみたい事なのです。
過去に何度も入店した拡張員さん達とのやり取りにおいて、拡張団ってそんなに偉いの?という疑問です。
その日、廻ってもらう読者のデータを渡して説明しているにも拘わらず、依頼条件以外の契約を揚げて来て、断ると開き直るし罵声を浴びせるしで、思わず入店禁止を告げそうになる時が多々あります。
通常の考えからすると、団は販売店に仕事をさせてもらっている立場であり、販売店はお客だと思うのですが?
団と本社との関係から、販売店よりも力関係で上だと思っているのでしょうか?
販売店サイドからすると、団とは持ちつ持たれつの関係ではあるので仕方ない部分はあるかとは思いますが、余りに不見識な輩が増えているような状況が散見されますので、ゲンさんのご意見を伺いたくて質問させて頂きます。
回答者 ゲン
『通常の考えからすると、団は販売店に仕事をさせてもらっている立場であり、販売店はお客だと思うのですが?』と言いたい気持ちは良く分かる。
実際、そう考えて仕事をした方が上手くいくはずやからな。結果的には、拡張員もそうした方が得をすることが多いと思う。何事につけ、えらそうにしても益はないはずやからな。
しかし、拡張員の考え方は、少し違う所にある。
すべての拡張員がそうやというわけやないが、仕事をさせて貰っているというより、営業をしてやっている、販売店を助けてやっているという意識の方が強い者もおる。
あんた所に出入りしとる、その拡張員が、その典型やと思う。
それには、営業力の差ということが、まず挙げられる。拡張員側からすると「ワシらがおらな客は増やせんやろ」となるわけや。
実際、拡張員と販売店側の営業力の違いというのは歴然としたものがある。少なくとも、拡張員側は、そういう認識を持っとる。
確かに、拡張料を拡張団および拡張員に直接支払うのは、販売店や。一般の企業間の関係で言えば、仕事の発注者と下請けということになる。
その下請けの人間が、発注元の会社に、横柄な態度をとるということは、普通はあり得んことやし、あってはならんというのが世間一般の常識や。
あんたも、おそらくその意味で言うてることやろうと思う。
ところが、この業界の仕組みは、その普通とは違うところが多い。拡張員にすれば、販売店から出る拡張料は、もとは新聞社から出とるやないかという考えになる。
購読客を増やす毎に、たいていの新聞社では、営業補助費というのを販売店に支払うからな。公には新聞社は否定するかも知れんが、これが拡張料を意味しとるのは、あんたも良う知ってとるはずや。
もっとも、ある販売店の店主の方からは「押し紙」の補填やと言う声も届くがな。
直接、その拡張料を拡張団に支払うのは、個別の購読契約については、一切関知せんという立場の新聞社にはできんから販売店経由でそれが支払われる。
そんなものは、一部で、大半は販売店の負担やという意見もあるかも知れんが、拡張員側には、そういう認識が強いわけや。
せやから、いくら直接、その拡張料を支払っていると言っても、世間でいう仕事の発注者と下請け業者の関係とは少し違うという発想になる。
必然的に、拡張員側には、販売店から使われているいう意識は少なくなるわけや。
それと、販売店と拡張団は、お互いに、その関係において、対等、もしくは自分たちの方が上やという認識があるのも確かや。これには、お互いの新聞社との関係が、そうさせるのやと思う。
販売店が、新聞社と業務取引契約書を交わすように、拡張団も新聞社と同じように業務取引契約書を交わしとる。どちらも、新聞社公認の組織なわけや。
ところが、販売店と拡張団との間にそれはない。発注者と下請けという関係が希薄やと言える所以や。
業務委託にしても、販売店は、個別に懇意の拡張団に依頼することはできん。新聞社の販売部を通すか、新聞社がその地域で認可しとる拡張団に限られる。
新聞社から販売店が宅配制度で、その営業エリアを決められとるように、拡張団も営業エリアと販売店への入店先が限定されとるということがあるからな。
表向き、販売店の依頼で、拡張団が入店するという構図にはなっとるが、実質は、新聞社の販売部の担当から、その営業エリア内の入店先および、そのの人員数などの細かな取り決めがされた日程表が、各拡張団へ回されとるのが現状や。
基本的に、拡張団は、その日程に従って動く。
ここでも、直接、販売店から仕事を発注されとるわけやないと考える要素がある。決められた販売店で拡張するのは、義務感のためと受け取る拡張員も実際におるからな。
拡張団の規模や、事情にもよるが、40〜50名程度を擁したこの業界で中堅と目される所やと、30数店舗の販売店で営業するのが一般的や。
つまり、その30数店舗を任されたという気になる。もっとも、販売店側に言わせれば、入店する拡張団は複数あるのが普通やから、逆に面倒見てやっているということになるのやがな。
組織的に上下関係は希薄やが、現実的には、お互いの組織力、影響力の違いで、その力関係が決定する場合が、ほとんどや。中には、個人の押し出しの強さで決まる場合もあるようやがな。
公売部数数万部という大規模販売店は、新聞社に対しても影響力は絶大や。そういう販売店には新聞社も気を遣うから、何事につけ、お願いしますという対応になることが多い。
当の新聞社がそれやと、そこに入店する拡張員は横柄な態度をとることはできんようになる。言うことを聞くしかない。
ヘタに逆らうと場合によれば、そいう販売店の影響力で閉め出された拡張団もあると聞くからな。
その拡張団は、新聞社にも見限られ、結局、廃団に追い込まれたという話や。
反対に、いくつかの拡張団グループを擁した大規模拡張団やと、その逆ということになる。そういう拡張団からすれば、公売部数1000部程度の販売店は、歯牙にもかけんということがある。
新聞社が、その販売店を評価する基準は、その購読数の増減で判断する。増加率が良ければ優良店と評価されるし、悪ければ、能力のない経営者やという烙印を押され、場合によると改廃、つまり廃業に追い込まれることすらある。
その窮地を脱しようと思えば、一時的にでも購読者を増やすしかない。
それで、頼った拡張団が実際にカード(契約)上げ、その窮地を脱することができれば、当然のようにそこの拡張員は「助けてやった」という気持ちになる。
特に、大規模拡張団なら、そういうことも多いやろうから、そこに所属する拡張員は、そういう販売店に対して強気に出るというのは、十分考えられる。
結局、ワシの言いたいことは、その当事者である、販売店、拡張団を取り巻く環境の違いで、いろいろなケースが生じるということや。一概に、こうやとは言い切れん部分も多い。
その拡張団が、あんたの所の販売店より上位やと思うとれば、そこの拡張員は、当然のように横柄な態度や言動をするということもあり得る。
それによって、あんたから「入店禁止や」と言われるとは夢にも思うてないということになる。そんなことができるはずがないと、タカをくくっとるわけや。
もっとも、そういうことには関係なく、押しの強いところを見せるのが拡張員やと錯覚しとるアホな人間も中にはおるがな。
拡張団の団長というのは、配下の拡張員には、そういう態度で接するし、販売店の所長クラスとも、よほどの力関係に差がなければ、同じように接する場合が往々にしてある。
それを間近で見ていると錯覚するわけやな。本当は、そういう団長であっても、新聞社の上層部や担当者には低姿勢で接しとるのやが、そういう現場は、下の者には絶対見せへんから、それが分からん。
ただ『その日、廻ってもらう読者のデータを渡して説明しているにも拘わらず、依頼条件以外の契約を揚げて来て、断ると開き直るし罵声を浴びせる』というのは、そういうのとは少し違った意図があると思う。
あんたの側にしたら、その依頼条件を守ることは絶対や。それを破った契約は認められんというのは正論やし、それに異を唱えることの方がおかしいということになる。
しかし、拡張員にとっては、何をおいても契約を上げることが第一義となる。どの拡張団でも、配下の団員には、そう厳命する。
班長クラス以上の人間は「とりあえずカード(契約)を上げろ。少々のことは、カードさえ上げたら、後はどないかしたる」と言うて、団員にハッパをかけとることが多い。
あんたも知っての通り、客の中にも一筋縄でいかん者も多い。拡材もできるだけ多く出させようとする人間もざらや。そういうのと相手をすれば、どうしても上限を超えた拡材を渡さな契約が取れんと考えそうする。
あんたは、そういう契約ならいらんということで断る。実際、店で決めた拡材の上限を超えた契約というのはリスクが大きいからな。
違反行為として、新聞社や公正取引委員会、新聞公正取引協議会から睨まれる可能性もあるし、他の購読客がそれを知って怒るということもある。
そして、何より、そういう客は永続性に欠ける。どう考えても、客としての旨みがないから、カードにする意味がないと思う。
ところが、そういう拡張員にとっては、ここで引き下がったら、自分の値打ちが下がると考える。
これが、班長クラスやと、せっかく団員の取ってきたカードをボツにされると沽券に関わることになる。
そこに、他の団員でもいれば、よけい必死にならざるを得んし、自分のカードであっても、あっさり引き下がったんでは、示しがつかんと思い込む。
団に帰って「販売店の条件と合わんからボツにされました」とは口が裂けても言えんわけや。団もそんな言い訳は取り合わんしな。押しの弱いやっちゃなという烙印を押されるということにもなる。
『断ると開き直るし罵声を浴びせる』という背景には、そういう場合もある。
こういう場合、老練な販売店主やったら、頭からあかんとは言わず、カードのランク下げということで、やんわりと納得させるようにしとる。
例えば、拡材超過で1年契約を取ってきたような場合、カードの値打ちとしては、6ヶ月分カードとして認め、その拡張料を支払うことで納得させるという具合や。
これやったら、頭から、あかんと言うよりも、拡張員としては受け入れやすくなる。カードとしては、つぶれてないわけやからな。実際、こういうケースは、ワシらの方では多い。
ただ、そういうのは、あくまでも販売店の考え方、姿勢次第やから、あんたが気にいらんと言うのなら、何を言おうが認めることはない。最終的には、あんたが認めん限りは、カードにはならんのやからな。
ワシ個人とすれば、こういう連中はアホとしか言いようがないと思う。販売店の店主と敵対してもワシらに得になることは何もないからな。
そこの店主をうまく取り込むのも営業のうちや。敵対せえへんかったら、お互い、魚心あれば水心ということにもなるけど、敵対ばかりしとれば、どうしても便宜を図ろうという気にはなれんからな。
ただ、あんたも、こういう連中を相手にするのなら『廻ってもらう読者のデータを渡して説明している』というような無駄なことはせずに「こういう場合は、当店ではカードは買い取りません」というのを文書にして渡しとく方がええと思う。
もしくは、相手の拡張団に、それをFAX文書にして送っとけばええのと違うかな。
文書にして、それに異議がなければ、それが決まり事ということになるから、争いの余地も少なくなるはずや。
他には、そういう拡張員は、おだて上げて使うというのも手やと思う。
「お宅の力なら、その条件で十分でっしゃろ」あるいは「あんたを一流のセールスと見込んで、この条件でもカードが上がるところを、うちの連中に見せてやってくださいよ」という具合やな。人は、使い方で結構、その気にさせられるもんやさかいな。
ただ、箸にも棒にもかからん者も、おるのも事実やから、すべての人間にそれが通用するとは限らんやろうけどな。
人を使う、人に仕事をさせるというのは難しいことや。特に、この業界はな。そんな拡張員を相手にせなあかんというのも大変やろうけど、何とかがんばってほしいと思う。