新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.380 このような考え自体腐ってきているのでしょうか?


投稿者 D.Nさん 関東在住 投稿日時 2007.3 9 PM 2:32


前回『NO.378 拡張団が勧誘に来る時期というのは予測がつくでしょうか?』でのご回答ありがとうございます。

あと、一つだけあえて反論させていただきます。

今の私の住む地域は、極端に折り込み広告の多い地域です。初めてのころは正月みたいと思いました。ニョキニョキマンションが建って、人口が増えているせいでしょうか?

地方の田舎ならともかく広告の極端に多い地域は、新聞社全体でみても広告で成り立つのではないでしょうか?

近年はフリーペーパーも多いですし広告だって馬鹿にならない(時には本業をしのぐ)利益を上げるはずです。

こういう考えは、再販制度と相反するので、新聞業界の人からは嫌われるかもしれませんが、わたしは採算の合うような地域ではタダで新聞をもらうこともあまり抵抗は感じません。

このような考え自体腐ってきているのでしょうか?

新聞代3000円じゃやっていけない地域もあるかもしれませんが、逆にそれでは儲けすぎの地域もあると思います。

そういう地域ではタダや値下げがあって本来自然だし、そうしなければ逆にどんどん他の広告媒体に客を奪われていくのが現実ではないでしょうか?

以上こんな考え方もあると思っていただければ幸いです。


回答者 ゲン


前回の『NO.378 拡張団が勧誘に来る時期というのは予測がつくでしょうか?』の回答の中でも言うてることやが、あんたの行為自体には、何の問題もない。

あんたが誤解して気を悪くされたというのなら、ワシの言葉が足らんかったのかも知れん。謝りたいと思う。

「新聞代をタダにするから取ってくれ」と持ちかけるのは勧誘員に非があることで、持ちかけられ、それを受けたあんたには何の落ち度もないことやと改めてこの場で補足しとく。

業者から「これはタダや」と言われて「おおきに」と貰うことは、世の中いくらでもあるさかいな。

ただ、こういうことを持ちかける勧誘員に対しては、ワシは無性に腹が立つんや。それで、つい言い過ぎたきらいがあった。あんたへの配慮が足らなんだようや。

新聞代をタダにして売るというのは、ワシら一般の勧誘員を含めて、すべての新聞関係者を、これほどバカにした行為もないわけや。そこまで、新聞の値打ちを落とされたら、まっとうな勧誘員が浮かばれん。

Q&Aにそういう話が届く度にそう思うてきた。どうやら、その思いが強すぎたようや。

『このような考え自体腐ってきているのでしょうか?』というのは、ワシとしては、あんたのためを考えてのことやったが、どうやら、それはいらんお節介やったようやな。

あんたに持ちかけた勧誘員は、やったらあかんことやと知った上で、その販売店に内緒にするよう口裏合わせを要求しとる。犯罪者に共通する思考やと言うてもええ。

それを平気でできる人間は、心底腐っとるというのが、ワシの見解や。実際、こういうことに慣れた人間はどうしようもないと思う。

『あんた自身もそれに影響され、知らず知らずのうちに腐る可能性がある』と言うたのも、そういう人間と接する機会が増えれば、そういうことに抵抗もなくなり疑問を感じることも少なくなると危惧したからや。

甘い誘いの言葉に乗ることに慣れるようになれば、他の悪徳業者の口車にも自然に乗りやすくなって、いずれは、えらい目に遭うかも知れんと感じたというのもある。

しかし、今回、寄せて貰うたメールを見たら、どうやら、それは杞憂やったようやな。あったに限っては、そんな心配もないと分かった。

さらに言えば、ワシのコメントの中には、そういう行為に走る勧誘員に対して、警告の意味もあったわけや。

言い訳をすれば、そうなる。

ここからは、ワシの反論ということやなく、客観的な事実として聞いてほしい。

『地方の田舎ならともかく広告の極端に多い地域は、新聞社全体でみても広告で成り立つのではないでしょうか?』

どういった情報をもとに言われていることか分からんが、広告収入だけで成り立っている新聞社も販売店も存在しないと断言はできる。

プラスアルファというのなら、確かに、販売店次第では大きなウェートを占めることもある。折り込みチラシが多ければ、その分、確かに潤うのも間違いない。

しかし、折り込みチラシの収入というのは、1枚あたり2円から3円くらいなものや。新聞代が3000円とすれば、それに匹敵させるには、実に1日平均40枚〜50枚のチラシ量が必要になる。

その地域が、そうであるなら、全国的にも、異常なほど多い地域と言える。それでも、新聞代をタダにしてはやっていけんはずや。

販売店は、予備紙も含めて約5.5割から6割の新聞代金を新聞社に納付することが義務付けられとる。仕入れ代金やな。

新聞代をタダにした場合、単純計算で、1日平均60枚以上の折り込みチラシを確保して、やっと、折り込みチラシゼロの販売店と同等になる。

平均的な販売店と同じくらいの収入を折り込みチラシだけで得ようと思えば、1日平均100枚程度は必要になる。

いくら何でも、そこまではないやろうと思う。毎日が正月並やとしてもな。

せやから、あんたの地域が、折り込みチラシの多い地域やとしても、それだけで新聞販売店の経営が維持できることはないと断言する。

それだけに頼れば、絶対につぶれるはずや。まあ、そんな販売店は存在せんがな。

それに、例え、その地域で折り込みチラシが、現在は異常に多いとしても、それがいつまでも続くという保証はどこにもないしな。

それには、電子チラシの存在が大きいと思う。

ネット上で折り込みチラシと同じものが、すでに見られる状況になりつつある。利用者も結構多い。当然やが、それにシフトする業者も確実に増えてきとる。

これについては、当サイトの開設直後の2年半ほど前の相談『NO.17 拡張員の嫌がる効果的な断り文句を教えて下さい』 の中でも、すでに言うてたことや。

その部分の抜粋をする。


B 新聞を取ってない無読の場合は、インターネットで新聞を読むと言う。拡張員はインターネットの言葉に弱い。ワシもこのサイトをハカセと開設する前は、それだけでそこには長居はせんかったもんな。

せやけど、しつこい拡張員の中にはインターネットではチラシが入らないから、地域のスーパーなんかの安売り情報が分からないと突っ込む者がおるが、最近は、インターネットでも地域のチラシは入ると言う。

これは事実で、現在は大都市に限られているが、スーパー各店のチラシがインターネットでも見られるようになっとる。その画面をプリントアウトすれば、チラシと同等の割引サービスを受けることも出来るらしい。これは、すぐに全国展開されるはずや。

これで、チラシの欲しい新聞購読層が減少するかも知れんな。新聞を取らんでもチラシが見られるんやからな。ワシらの仕事も少しづつ、やりにくくなるっちゅうことや。


それから、2年半。ワシの予想は、ほぼ的中した。

当然やが、技術的なものも確実に進化した現在では、すべての新聞関係者にとって、その危惧は、より現実味の帯びたものになりつつあるわけや。

近い将来、その折り込みチラシが激減する可能性は大きい。新聞衰退傾向の一因になるのも、ほぼ間違いないやろうと思う。

つまり、折り込みチラシに頼る経営では、すでに未来はないということや。

それらの理由から『そういう地域ではタダや値下げがあって本来自然だし』というのも、疑問視するしかないということになる。

一度、タダとか値下げをして「やはり折り込みチラシの収入が減ったから、もとの新聞代を徴収します」と言うても、それに慣れた客が応じるはずもない。

結果は、新聞離れを加速させるだけになる。経営戦略としては成立せんと言うしかない。

因みに、新聞本社へは、この折り込みチラシ代金は一切納付されん。すべて、販売店独自の収入になる。

もっとも、新聞社の一部の地域では、その折り込みチラシを印刷する業者を斡旋している所もあるようやが、そこからのキックバックがいくらあったにしても、新聞社の経営を左右するほどとは、とても考えられん。

これも、先の電子チラシの台頭で、その印刷自体が先細りするのは、目に見えとるしな。

『地方の田舎ならともかく広告の極端に多い地域は、新聞社全体でみても広告で成り立つのではないでしょうか?』というのも、成立はせん。

あんたは、新聞社と販売店が同一の企業体のように考えられておられるのかも知れんが、経営は、まったくの別ものや。

業務委託取引契約書一枚でつながっとるだけの、それぞれ別の企業体やさかいな。

新聞社がいくら儲かろうが、それが販売店に還元されることはないし、逆に、儲かった販売店が、その余剰利益を新聞社に差し出すということもあり得ん話や。

この業界は、新聞社、販売店、拡張団のそれぞれが独立採算で成り立っとる。儲かっとる所と経営の苦しい所が存在するのは、自然であり仕方ないことやということになる。

儲けとる企業体が、経営の苦しい企業体に、同じ新聞グループやからという理由だけで補填したり手を差し延べたりするということもまずない。その逆は、あり得るかも知れんがな。

あんたには理解しにくいことかも知れんが『新聞代3000円じゃやっていけない地域もあるかもしれませんが、逆にそれでは儲けすぎの地域もあると思います』というのが、むしろ、当たり前とされる世界なわけや。

この業界に関わるすべての人間が、それについて違和感もなければ、不条理とも考えてないと思う。自然な姿やと捉えとるはずや。

参考までに、新聞社に入る広告費というのは、新聞紙面に印刷されとるものだけやというのも言うとく。因みに、新聞社の収益配分は、新聞紙面の売り上げが55%で、広告収入が45%ということになっとる。

そのいずれが欠けても、経営はおぼつかんという。現在の新聞社の多くが、そのどちらか一方だけに依存することは難しいわけや。

それが、この新聞業界の実態ということになる。ええ悪いに関係なくな。

最後に『わたしは採算の合うような地域ではタダで新聞をもらうこともあまり抵抗は感じません』と考えるのは、あんたの自由やというのも付け加えとく。

それについては、何ら違法性もなければ、他からとやかく言われることでもない。ワシも、これ以上、何も言うつもりもないしな。

ただ、せっかく、今回、こういう踏み込んだやりとりになったわけやから、参考程度に『第50回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■拡張員事情の昔と今』 『第66回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の利点』 『第100回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の未来』 『第102回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■電子チラシの脅威?』あたりを読んでもらえれば、それに関連した内容のものがあるから、それなりに勉強になるかも知れんとは思う。

それらについての、意見や感想、特に反対意見や指摘をして頂ければ有り難い。ワシも、自分の意見が絶対に正しいと考えとるわけやない。違う見方も是非、知りたいからな。


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