新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.402 合配店の存在と「特殊指定外し」との因果関係について


投稿者 Jさん アルバイト配達員 投稿日時 2007.5. 5 AM 6:54


次のQ&A『NO.400 新聞販売店が1箇所しかないのですが』を読みました。

合配店の横暴さ、横柄さについては、私が勤める店のスタッフの雑談の中にも出てきます。

たとえば、お客さんが朝刊の不着の連絡を電話でしたら、「こんな時間では、もう従業員が帰ってしまった。なぜ、もっと早く連絡してくれなかったのか!」などと、逆に店主に怒られたという事例です。

しかし、どう考えても、新聞が雨水に晒され、びしょびしょに濡れてしまったりとか、定時に新聞が届かないという事例は、単に「サービス品質が低い」というレベルで済まされる話ではなくて、完全に販売店の「契約不履行」に当たるものではないかと思えるのです。

今回のゲンさんのコメントでは、「このままやと、取り返しのつかんほど客離れが進行する危惧が強いと新聞社が考えてもおかしくはない。」と、新聞社が危惧するだろうと予測しておられるようですが、私は、それだけには留まらず、ひょっとしたら、あの公正取引委員会もこのことに注目するのではないかと思います。(既に注目しているかもしれません。)

1年前、ハカセさんらは、新聞特殊指定に関してアンケートを実施されましたが、あのやりとりの中で、特殊指定から新聞が外された場合に起こる未来図として、「採算が合わなくなるであろう専門店が次々に店を畳んで、結果、合配店が増えるかもしれない」といった事態の予想もありました。

▼新聞特殊指定についての過去記事

第85回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞特殊指定について

第87回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞特殊指定についてのアンケート結果

このときには、「新聞の特殊指定からの除外 → 合配店の増加」という流れしか語られませんでしたが、こういったQ&Aを読むにつけ、私は、「合配店の横暴 → 公取が問題視 → 新聞の特殊指定からの除外」といった流れもあり得るのではないかと感じたのです。

契約不履行があっても、消費者に対して平気でいるという店の態度から、独占禁止法のことを連想したわけですが、こういった可能性について、ゲンさんのご意見を承りたいと思いました。


回答者 ゲン


合配店の横暴が独占禁止法に抵触し、公正取引委員会が問題視することによる、新聞の特殊指定からの除外という、あんたの論法は、正直、ワシには及びもつかんことやった。

まあ、それには、業界人として、そういう合配店の存在そのものが、あっても当然という気持ちがあったからやと思う。

えぐいことやとは思うてても、それが不自然なこととまでは感じてなかったさかいな。

ええ機会やから、それについて検証してみようと思う。

独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という。

その第1条に『私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする』というのがある。

これから言えば、新聞の宅配販売制度は、完全に違反行為ということになる。エリアを決めて特定の販売店のみしか営業が許されてないというのは、不公正な取引そのものやさかいな。

ところが、新聞は、再販売価格維持制度(再販制度)で手厚く保護されとる形になっとるわけや。例外ということやな。

この法律を運用する公正取引委員会は、差別定価や定価割引に対しては、かなり厳しく監視しとるようやが、定価販売のみの合配店のような所は、その対象外のようや。それに対しての公的な報告は何もない。

新聞業における特定の不公平な取引方法(特殊指定)について、1999年7月21日、公正取引委員会で告示されたものがある。以下がその主な内容や。


1.日刊新聞の発行業者は、直接、間接を問わず、地域、相手により異なる定価や定価を割り引いて販売すること。但し、学校教材、大量一括購読、その他、正当で合理的な理由の場合この限りではない。

2.新聞の個別配達をする販売業者(新聞販売店)が、直接、間接を問わず、地域、相手により異なる定価や定価を割り引いて販売すること。

3.発行業者が販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次の各号に該当する行為をすることで、販売業者に不利益を与えること。

一、販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること。販売業者からの減紙の申し出に応じない場合も含む。

二、販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること。


残念ながら、合配店の行為は、これに抵触しとるとは言い難い。むしろ、合配店の実情を取り上げることで、新聞の特殊指定での約束事が堅固に守られていると実証するだけになりかねんから、敢えて無視しとるのやないかとさえ思える節もあるくらいや。

法律は、抵触してない限り、その行為を裁くことはできん。

確かに合配店の行為そのものは、独占禁止法に違反するが、それも再販制度で例外とされとるのやから、いくら公正取引委員会が苦々しく思うてても、現状では、どうしようもないやろうと思う。

去年、平成18年6月2日の公正取引委員会の「新聞特殊指定見直しを見合わせる」という発表に、新聞業界は勝利宣言のようなものをしていたが、その内容は、必ずしも楽観できるものでもなかったと思う。

公正取引委員会の姿勢は、「新聞特殊指定は価格競争を原則的または全面的に禁止するとの考え方に立脚しており、同特殊指定を維持することは、法的正当性や消費者利益の観点から問題がある」で終始一貫しとる。

このことについての公正取引委員会の公式見解を一部抜粋する。


これまで、公正取引委員会と新聞業界との間で議論を繰り返してきたものの、議論が噛み合っておらず、これ以上の議論を続けても特段の進展は望めない状況にある。また、各政党においても、新聞特殊指定を存続させるべきとの議論がなされているところである。

これらの状況を踏まえ、公正取引委員会は、新聞特殊指定については、今回の見直しでは結論を出すことを見合わせることとした。


つまり、先送りしたということだけで、決着がついたわけやないということになる。ワシが、事ある毎に、いつこの問題が再燃するか分からんと言うてるのは、それがあるからや。

この公式見解には、政治的圧力があったかのように匂わせる部分があるが、それについても、具体的な政治家、有力者の動きも実名でサイトに報告されとるから、ワシらには、それも、なるほどと頷ける。

もっとも、このサイトは暴露目的のものやないから、そういうのは掲載せんがな。

それに、それが真実かどうかというのは、ワシらに検証できんさかいな。ワシらが信じるに足る情報というだけでは、迂闊に名指しの掲載もできんということや。

『しかし、どう考えても、新聞が雨水に晒され、びしょびしょに濡れてしまったりとか、定時に新聞が届かないという事例は、単に「サービス品質が低い」というレベルで済まされる話ではなくて、完全に販売店の「契約不履行」に当たるものではないかと思えるのです』

というのも、まったくそのとおりやが、この「契約不履行」については、民法の契約に関することやから、公正取引委員会が介入する問題でもないし、権限もないことやと思う。

対処できることは、それで被害を受けた場合、損害賠償請求ができることと、契約解除理由になるくらいのことや。

せやから、『私は、それだけには留まらず、ひょっとしたら、あの公正取引委員会もこのことに注目するのではないかと思います』というのは、可能性とすれば低いと思う。

もっとも、中には、これをもって、再販制度の弊害やと考える人もおるかも知れんがな。

はっきり言うて、合配店の販売エリア内で購読しておられる方は、かなりの人が、その横暴に悩まされ我慢を強いられとると思う。

ワシは、システムがあるのなら、それに従うしかないというのが基本的な考えや。悪法も法やさかいな。

しかし、実際、そこに住んでて、金払うて読んでる新聞屋のおっさんに横柄な態度をされたらたまらんわな。

ハカセも、そういうエリア内に住んでて同じような目に遭ったら、その合配店と必ず一戦交えてたはずやと言うてた。ワシもそう思う。間違うても泣き寝入りするような人間やないさかいな。

ただ、そうしてもどうにもならんやろうけどな。結局、購読者の取れる手段と言えば、そこの新聞を断るくらいしかできんと思う。

『特殊指定から新聞が外された場合に起こる未来図として、「採算が合わなくなるであろう専門店が次々に店を畳んで、結果、合配店が増えるかもしれない」といった事態の予想もありました』

これは、その新聞特殊指定についてのアンケートを集めていた際、幾つかの販売店関係者から、聞いた話や。実際、新聞特殊指定の見直しが決定されることを想定して、そういう廃業の準備をしていた所もあるということやったからな。

それも都市部よりも地方、全国紙よりも地方紙で、その動きが顕著やとの報告があった。それで「合配店が増えるかもしれない」と言うてたわけや。

『私は、「合配店の横暴 → 公取が問題視 → 新聞の特殊指定からの除外」といった流れもあり得るのではないかと感じたのです』

ワシの結論としては、合配店の横暴を公取が問題視することがあったとしても、それを理由として新聞の特殊指定からの除外というのは考えにくいと思うということや。

新聞の再販制度撤廃に向けた動機づけにはなるかも知れんがな。

この業界の人間からも横暴やと思われ批判的な見方をされている合配店の存在が、新聞の特殊指定堅持において、それなりの役割を果たしとるというのは、何とも皮肉なことや。

もっとも、例え、そうやとしても、そういう合配店の存在が是認できるというわけやない。

思い上がりや傲慢な態度で商売してて、ええ結果になるはずがない。いつかは、その報いを受ける時が必ずくる。少なくとも、ワシはそう信じとるさかいな。


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