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NO.43  なぜゲンさんは拡張員を続けておられるのですか


投稿者 セキグチさん 男性45歳 自営業者 投稿日時 2004.11.20 PM10:32


初めまして、セキグチと申します。このサイトは当初から存じあげており、いつも楽しませてもらってます。

このホームページを拝見させていただく限り、ゲンさんは人間的にも立派でかなり見識も高いかたのようにお見受けします。また、最近発表された「短編集 第7話 ゲンさんの悪徳業者対処法」というお話を読まさせていただき、その知識の高さに驚きました。

実は私も、小さな住宅リフォームの会社を経営しておりますので、作中に描かれていることが良くわかります。そこで、一つ疑問に思うことがあります。ゲンさんほどの人なら、もう一度、会社を興すことが出来ると思うのですけど、なぜ今までそうされなかったのでしょうか。

ゲンさん自身も言っておられるように、人に嫌われる拡張員を長く続けておられる意味が私には良くわかりません。誤解しないでいただきたいのですが、拡張員という仕事にけちをつけているわけではありません。ただ、その能力を惜しむためのことで他意はないのです。

まことに立ち入った失礼な質問とは承知していますが、よろしければ教えていただけないでしょうか。


回答者 ゲン


はじめに断っておくが、ワシは人から立派とか見識が高いと言われるような人間やない。極、つまらん男や。勘違いはせん方がええ。誤解がかなりあると思う。

これは、何も謙遜しとるのとは違う。それには、ハカセがワシの悪い面をあまり書いとらんということもあると思う。ワシもその辺りはちょっと気になっとった。ハカセにも言うたことがある。「ワシの欠点も、もっとちゃんと話した方がええのと違うか」とな。

そういう訳で、今日は正直に思うてることを言わせて貰う。このサイトの中でも、所々で惰性とかずるずると流されてるだけのように話しとるが、もちろん、それだけやない。

正直、ワシも当初は、2,3年ほど、ほとぼりが冷めるのを待って、以前の住宅リフォームの仕事をするつもりやった。それなりに自信もあったしな。

しかし、仕事を離れて冷静に考えて、やっぱり出来んと思うたんや。ワシには、経営者としての資質がないのが良う分かった。

特に金儲けという点に関して言えば全く才能がない。客はそこそこおったのにも関わらず、金儲けが出来へんかった。

ええ格好したがる悪癖もある。ワシは金儲けのために仕事をしとるんやないという自負心やな。こんなやから、客からはあまり金を請求出来なんだ。

結果、いつも金に汲々としとった。それでも、その当時は今と違うて、銀行からはいくらでも金を借りることが出来た。今からはとても信じられへんかも知れへんけど、銀行からは、頼むから金を借りてくれと言うような時代やったんや。

せやから、大して儲かっておらんのやけど、不思議と金回りは良かった。借金が増えてただけやのに、それをそれほど深刻なことやと考えてへんかった。

しかし、バブルがはじけ世の中が不景気になると、その借金が重くのしかかって来た。気がつくと、その借金の支払いのために仕事をしとるようなもんやった。

あんたもワシと同じような会社を経営されとるということやから、良う分かると思うけど、支払いを滞らせることは絶対に出来んと踏ん張るのは当たり前やわな。せやけど、焦れば焦るほど深みに嵌る。いろんな歯車が狂うて来るようにもなる。

最後にはサラ金にまで、手を出す始末や。金の支払いで気の休まる時がなかった。嫁さんや子供にも苦労をかけた。しかし、人間、余裕のない時はあかん。ワシ自身、どうにもしょうもない人間に成り下がっとったと思う。

最後には自業自得とは言え、家も何もかもすべてなくし、家族も失った。すべて、これはワシのええ加減な会社経営と甘い性格のせいや。

そんな訳でワシは、自分には経営能力はないと痛感したんや。それに、また住宅リフォームの仕事を復活しようと思えば、多少なりとも資金もいる。その金をまた借金せんとあかんようになる。

ワシは、そんな経験から借金は金輪際せんとこて決めとるんや。せやから、今は、商売するとかそういう気持ちは一切ない。

もちろん、この拡張員がベストやとも思うとらんが、少なくとも気楽にはやれる仕事や。
人に嫌われているとしても、あんな思いをするより数段ましやと思うとるからな。

それに、ワシには今は大事な顧客がおる。ワシと会いたいとか話したいということだけで、新聞を購読してくれとる人がいてる。ワシにとっては、そんな人たちと語り合えるのが何物にも代え難い至福の時なんや。

加えて、このホームページの読者の存在もワシにとっては大きい。特にこのQ&Aで回答した読者からの返礼のメールには勇気付けられる。

ワシみたいな者でも、僅かでも人の役に立てるというのは嬉しいもんや。それも、拡張員を続けていたからこそ、味わえることやと思う。

世の中、何をしていようと、捨てたもんやないちゅうことや。せやから、当分、この拡張員は辞めるつもりはない。もっとも、将来的にはどうなるか分からんけどな。


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