新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.437 新聞社の営業実態について
投稿者 クッキーさん 某新聞社勤務 投稿日時 2007.8.10 PM 9:25
ここは、新聞の販売店用のサイトでしょうか?
実は、新聞社に勤めていますがどこに相談したり調べたりすればいいのかわからなくココにたどり着きました。
新聞の拡張もそうですが、新聞社なので広告の獲得や出版物の販売ノルマが課せられます。
もし、出来なかったら出来るまで嫌がらせをされることもあり、それが苦しくて架空の契約をして自腹を切って払っているというのが今の現状です。自腹で払えとまで言う始末です。
私は、営業ではありませんが多額の自腹を切って精神的に追い込まれ病気になり退職する人を見てきました。
それを会社側は、知っていて精神的に弱い人間と片付けます。それは、法的に許されるものなのでしょうか?
不思議なことに、ノルマ達成しない人は誰一人もいません。
ノルマを達成する人は、あらゆるやり方で契約をごまかして達成するしかないのです。実力により正しい契約でノルマを達成している人は、誰一人としていないのです。
出来なかった人は、精神病になり退職する。また、現在100万円の自腹を切って病気になっている人がいます。
どうにかできないものでしょうか?
回答者 ゲン
まず、『ここは、新聞の販売店用のサイトでしょうか?』ということについてやけど、それは少し違う。
新聞販売店に関連した部分だけを読まれて、そう思われたのかも知れんがな。
このコーナーは、表題に『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A』とあるとおり、新聞の勧誘や拡張に関しての質問や相談を主に受け付けとるところや。
ただ、実際には、それ以外の質問や相談も多く収録しとるがな。このコーナーの『その10 その他のQ&A』がそのええ例やと思う。
ここには、殺人事件、放火事件、家出人捜索、確定申告、果ては古紙回収に関した相談までいろいろある。
このサイト内で話したことや僅かでも新聞に関連があることなら、すべて受付けとる。『なんでも』と銘打っとるのは、そういう意味からや。
せやから、ここでは、あんたの相談についても問題なく受け付ける。
しかし、『どこに相談したり調べたりすればいいのかわからなくココにたどり着きました』と言われておられるとおり、この手の問題を相談するところや的確な答えを得られるところは、どこを探されてもおそらくないやろうと思う。
ワシにしても相談は受け付けるが、あんたの望む回答やアドバイスができるという自信は正直言うてあまりないさかいな。
ワシ自身、30数年間営業に携わってはきたが、新聞業界に関しては拡張員としての経験しかない。
勧誘の現場についてなら、そこそこアドバイスはできるが、新聞社内部の事情については憶測でしか分からんしな。
そのあたりの事を多少割り引いて聞いてほしい。
『広告の獲得や出版物の販売ノルマが課せられます』というのは、営業の仕事なら、それは当然やと思う。
しかし、『もし、出来なかったら出来るまで嫌がらせをされることもあり、それが苦しくて架空の契約をして自腹を切って払っているというのが今の現状です。自腹で払えとまで言う始末です』
というのは、かなり衝撃的な話やな。俄には信じがたいというのが正直な印象や。
どんな営業も楽なものはない。契約を上げられん営業マンに対しては、その上司も甘い顔はできんから、きつめに叱責するというのは普通にある。
嫌がらせの種類や程度にもよるが、ネチネチと小言を言われるとか、成績を上げられんかったらクビやと宣告されるというくらいは、営業の世界には良くあることや。
せやからと言うて『それが苦しくて架空の契約をして自腹を払う』というのは、いただけん話や。はっきり言うが、それは、それをする人間が悪い。
ワシら拡張員の世界でも、その日のメシ代にも事欠いた末、てんぷら(架空契約)を上げる奴がおるが、それと同じや。
確かに同情の余地はあるかも知れんが、けっしてほめられることやない。それに、その行為は、厳密に言えば、詐欺罪と文書偽造罪に該当するからな。
架空契約を上げるということは、本来貰えるはずのない営業報奨金を得ることにつながるわけや。これは、立派な詐欺になる。契約書の偽造については今更説明するまでもないわな。
自腹を切るからええやろうというのは、自分勝手な論理ということになる。どんな理由があれ、法律違反を犯した事実は消えん。良くて情状酌量の余地があるくらいや。
仕方なく犯罪を犯すというのは、この人間の社会ではいかなる事情があれ認められることやない。
それは分かるやろ?
厳しいようやが、その営業員は根本的なところで勘違いしとるとしか、ワシには思えん。
営業というのは自らの生計を立てるための仕事なわけや。その仕事で自腹を切って尚かつ不法行為までせなやっていかれへんのやったら、そんな仕事は、さっさと辞めた方がええ。
そんなもの仕事でもなんでもないさかいな。
ワシは、不法行為を働く拡張員には、いつもそう言うてる。「お前はこの仕事には向いてない」と。
ただ、『自腹で払えとまで言う始末です』というのは問題やな。これは絶対に言うたらあかん言葉や。
今日び、どんなにあこぎな拡張団でも「てんぷらしてでも契約を上げてこい」とは言わんで。
てんぷら行為を見逃すことはあるかも知れんが、あってもその程度や。それを承認したり推奨したりする団は、ほとんどないと思う。少なくとも表向きはな。
その上司が、そう命令して、架空契約行為に走った、走らせたというのなら、事情が違うてくる。これは、詐欺教唆に問われる可能性があるさかいな。
ただ、それを実証するのは、かなり難しいとは思う。
特に他の部署にいてて第三者やというあんたの立場では、そのすべてが伝聞証拠でしかないと思うからよけいや。おそらく、あんたは、その営業員の一方的な話しか聞いてないやろうからな。
もっとも、その上司に「そんなことを本当に言わはりましたんか?」と聞くわけにもいかんから、そこまで確かめろというのも酷な話やけどな。
それを実証するとしたら、その営業員自身が、その上司と差し違えるくらいの気持ちが必要になる。先にも言うたように、その営業員自身も法律違反に問われる可能性があるわけやさかいな。
『多額の自腹を切って精神的に病気になり退職した人』が民事裁判でも起こして、その因果関係が証明されたら、あるいは、その上司を追い込むことができるかも知れん。
但し、できてもその程度やと思う。
例え、裁判所でその主張が認められたとしても、その言動の責任は、それを言うた上司だけが被ることになるはずや。新聞社の上層部にまでその責任がおよぶことは、まずないやろうなという気がする。
『自腹で払え』というのが、業務命令として書類として残っているというなら別やが、そんなものはないやろうからな。
言うた言わんの世界は、その証拠がなかったら、ただの水掛け論にしかならん。その上司が「そんことを言うた覚えはないで」と言えば逃げられる可能性は高い。
反対に、その営業員の行ったという架空契約の不正行為というのは、その偽造契約書やデータが残っとる限りは否定のしようがない。
「それは、営業員が勝手にやったことや」とされる可能性はかなり高いやろうと思う。例えリスクを承知で訴えても勝てる見込みは限りなく低いのやないかと言うしかない。
これが、新聞社以外の他企業での話なら、新聞やテレビなどのメディアが叩く可能性も考えられるが、新聞社内部に対しては、他の新聞社は疎かテレビ各社も扱う可能性もほとんどないやろうから、問題になる事すらないと思う。
『多額の自腹を切って精神的に病気になり退職する人を見てきました。それを会社側は、知っていて精神的に弱い人間と片付けます』というのも、客観的に見たらそういう事になる。
もっとも、それを会社側の人間が広言するのは問題やとは思うがな。人として言うべき事やない。それだけを見ても、その新聞社の体質と程度が知れる。
その追い詰められ方がどんなものなのかは、実際にそれを体験したわけやないから何とも言えんが、ワシら拡張員にも似たようなケースはある。
拡張団にもよるが、契約が上げられんかった拡張員が悲惨な状況に置かれることはありがちな事や。
ビンタをされるという団もあるし、地べたに長時間正座させられる団もある。その反省の弁を大声で他の団員の前で言わされるケースも珍しいない。
およそ恥ずかしいという行為は一通り味あわされる。
しかし、それでも、それを苦にして精神を病んだという拡張員は、皆無とは言わんが、極端に少ない。少なくとも、ワシの知る限りはおらん。
もっとも、拡張員と新聞社の営業員を比較するのは無理やとは思うがな。
新聞社に入社する人間多くは、一流ないし、そこそこの有名大学を卒業した者が多い。
つまり、学歴はあるが、世間の荒波に揉(も)まれたことがないわけや。そういう人間が、あんたの言うたような状況に置かれたら、それに対処する術がないというのも良く分かる。
それに対して拡張員は、それまで他の世界で、散々もまれてきた人間が大半や。学校を卒業してすぐこの世界に飛び込んだ人間の方が珍しいくらいやさかいな。
拡張員は、ええ意味でも悪い意味でも図太い者が多い。この営業の世界は、少々、図太い面を持ち合わせてな無理やと思う。
その違いがある。
ただ、あんたの言う実態が大半の新聞社にあるというのなら、これはかなり深刻な事やと思う。
ここ数年来、新聞社の広告収益は下降線気味やというのは聞いて知っている。ある新聞社の場合、その収益は、30年以上前と同じレベルにまで下がってきたというさかいな。
これまでの営業が通用せんようになったという話も良く聞く。
もっとも、ワシから言わせれば、新聞社は殿様営業で、待っていれば広告依頼があったという時期が長かったから、急に落ち込んだ場合の備えというか心構えがなってなかったのやろうと思うがな。
部数さえ伸ばせば、勝手に広告収益は増えるもんやと思うとったというのもあったやろうからな。
部数至上主義というのは、そういう背景から生まれたものやと考える。
ところが、バブル崩壊以降、経費の節約を余儀なくされた多くの広告主は、その新聞の広告効果に疑問を持つようになった。
結果、広告主の多くは、テレビ広告は全国ネットのものばかりやなく、ローカル局、BS局など比較的安価な媒体に流れるようになったわけや。
あるいは、広告そのものを自重するようになった。
『ノルマを達成する人は、あらゆるやり方で契約をごまかして達成するしかないのです。実力により正しい契約でノルマを達成している人は、誰一人としていないのです』
というのが本当なら、正に末期的状況というしかないな。どう考えても、そんなことが長続きするはずがあらへんしな。
しかし、どんな営業のやり方をしとるのかは知らんが、そんことをせずとも他に必ず道はあるはずやと思う。
『どうにかできないものでしょうか?』ということなら、まず、その営業方法を当事者が真剣に考え直すことが先決や。必ず打開策があると信じてな。
営業さえ順調に伸びとれば、すべての問題が解決するはずや。
まあ、営業に関しては、これでも一家言はあるつもりやから、その事情も含めて質問して貰えればアドバイスくらいはできると思う。
もっとも、聞かれんことに答えるつもりはないがな。そういうのは、ただのお節介にしかならんと思うし、その人の身にもつかんさかいな。
今のあんたができることは、そういう状態に陥った仲間には「お前は営業には向いてないから、大ケガせんうちに辞めた方が無難やで」と忠告するくらいやないかな。
どのみち、それしかできんという人間は、最後には破滅するしかないわけやから、辞めるという選択肢を早めに示唆するというのも、一つの親切になると思う。
ただ、そうするのなら慎重にな。そういう動きを上層部に察知されたら、あんたの身も危うくするさかいな。
ワシの結論としては、営業することで解決できんのなら辞めた方がええということや。酷なようやが、営業というのは万人向きの仕事やないさかいな。
『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』書籍販売開始