新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.453 新聞の営業時間は法律的には夜の何時まで大丈夫なのですか?


投稿者 近所の新聞屋さん  投稿日時 2007.9. 7 PM 4:36


自分は現役の新聞営業員です。質問があります。

新聞の営業時間は法律的には夜の何時まで大丈夫なのですか?

夜間に営業にまわっていると、ごく稀にお客様から苦情を言われることがあります。ちなみに自分の団のあがり時間(販売店に集合する時間)は、夜の八時四十五分です。

営業地域は東京です。ちなみに、団長の指示で残業させられる時は夜の十時くらいまで営業にまわることもあります。


回答者 ゲン


『新聞の営業時間は法律的には夜の何時まで大丈夫なのですか?』ということやが、ワシらの営業に関して言えば法律的には何の規制もされてはおらん。

ただ、新聞各社の通達として夜9時以降の勧誘は自粛するようにというのはある。それを法律の決まり事と勘違いしとる人は多いようやがな。

そうは言うても、この新聞社の通達というのは、業界の人間にとってはある意味、法律よりも厳しいものがあるから、たいていの拡張団や販売店はその通達を守っとるはずや。

もっとも、この業界、特に拡張団を受け入れる新聞販売店側の都合で、その夜の9時頃までというのが限界の線なんやがな。

ほとんどの新聞販売店では、拡張員の取ってきた契約を調べるために「監査」というのをする。客への電話連絡が主になる。その後に、契約が間違いないと認めたうえで支払額を決定する「引き継ぎ」と呼ばれとるものがある。

それらの作業は、たいていどこでも販売店の従業員がする。

その販売店の従業員の多くは、次の日、遅くとも深夜2時くらいには起きてアルバイトの配達員たちのための配達準備をし、自らも担当区域の配達をする。例え、経営者や店長であっても、そうする販売店は多い。

あまり遅くまで、それに付き合うとると、彼らの寝る時間がなくなるわけや。せやから、物理的にも、夜の9時くらいまでが限界ということになる。

しかし、なかには新聞社や地域、その担当員と拡張団、販売店とのそれぞれの関係で、その通達がおざなりにされるというのは良く聞く話や。

あんたのところで『団長の指示で残業させられる時は夜の十時くらいまで営業にまわることもあります』というのが、日常化されとるのなら、そういうことなのかも知れんな。

この業界は、契約を上げてナンボという観念の強い仕事や。特に、成績の上がらん拡張団や契約のほしい販売店にしたら、制限時間云々よりも、今日の契約1本が必要やとなる。

それがないと、ヘタをすると成績不良を理由に、新聞社との業務委託契約を解除されかねんわけや。それは取りも直さず、潰れるということを意味するからな。

普通の仕事なら、今日あかんかっても明日頑張ればええやないかで終わるが、その明日がないと考えるのが、この業界なわけや。

そういう脅迫観念に囚われとる人間にすれば、通達というのはあってなきがごとくということになる。

それを本来、監督する立場の新聞社の販売部担当員も、そういう状況なら見て見ぬふりくらいはするようや。

その担当員にしても、成績を上げてもらわんことには、自身の新聞社での立場が危うくなると思うとるから、自然と言えば自然なことなのかも知れんがな。

もっとも、どこの新聞社も絶対にそんなことは認めんやろうけどな。

客の中には「こんな夜遅くに勧誘に寄越しやがって、ええ加減にせいよ」と新聞社に苦情を言うケースもある。新聞社としても体面上、「厳重に注意しますので」と言うしかない。

どこまでその注意が徹底されるかは、その新聞社やその地域の販売担当員次第ということになる。

夜の9時以降の訪問が禁止されとるのは、金融屋なんかの借金の取り立てくらいなものや。貸金規制法(貸金業の規制に関する法律)に、夜間の取立て行為の規制というのがある 。

借金の取り立て行為を夜間規制しとるというのを、訪問営業にもそれをしたらあかんという風潮、常識になっとるようなところがある。そう信じとる人は多いようや。

もちろん、多くの業者は夜間の訪問販売はせんもんや。これは、相手方に迷惑云々というよりも、効果が薄いということが第一の理由として挙げられるからや。

やはり、この夜間の訪問を嫌う人は圧倒的に多い。その時間帯に来て「こんな時間まで、ご苦労さんやな。ほな契約しようか」という奇特な人も皆無とは言わんが、極端に少ない。

たいていの客は怒る。しかし、それをする方もある程度、それは織り込み済みやから、簡単には引き下がらん場合が多い。

そこまでせなあかん勧誘員というのは、尻に火がついとる状態やから少々のことには構うてられんと考える者もおる。

当然の結果としてトラブルになる。それで契約が上がることを望むのは無理やわな。評判を落とすだけや。せやから、たいていの業者は夜間の訪問を自粛するケースが多いということになる。

あんたも、夜の10時まで勧誘に廻ってても、それほど効果がないというのは実感するやろ。

むろん、それをすることで拡張団もカード(契約)が伸びるとも期待してへんはずや。やらす方もやる方も罰ゲーム的な意味合いと考えとるのやないかな。

この業界にしても、あんたのところのような拡張団は少ないと思うで。話には聞くことはあっても、実際にそうしとる団をワシは知らんしな。

ただ、この時間の観念というのは、地域によりかなり違うのだけは確かやと思う。

あんたの住む東京のような大都会やと、夜の10時はそれほど遅い時間やという感覚はないやろうが、地方やと、深夜というとらえ方をする所もある。また、同じ地域であっても繁華街と住宅地というのとでも大きく違うと思う。

せやから、この時間の概念を法律に持ち込む難しさというのがあるわけや。

法律で良く、一般社会通念上という考え方が出てくるが、時間に関しては、その住む環境、個人の生活、考え方でそれぞれ大きく違うのが当たり前なわけや。統一せんもんに、一般社会通念上を持ち込むのは無理やわな。

あんたの質問の結論としては、新聞の営業には夜の何時までという法律の規制はないが、新聞各社の通達はあるということになる。

それなら、法律的には、夜、何時に訪問してもええのかというと実際にはそうはいかんと思う。

たいていの客は、そういう時間の訪問を嫌う。当然のように「遅いからか帰ってくれ」と言われるケースが増える。

それでも居座れば、これは、刑法第130条の不退去罪ということになる。3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられるとある。立派な犯罪や。

せやから、いくら夜の勧誘は法律で規制されておらんと言うても、実質的には法に触れやすいということになる。

夜の勧誘には、そういうリスクが高まるということや。

加えて、その9時以降の勧誘を理由に新聞社に苦情を言う人間もおる。このサイトでも、そうするようにアドバイスしたこともあるさかいな。

そうなれば、その時間に勧誘してたというのが発覚するから、厳しい新聞社、販売店やと出入り禁止ということにもなりかねん。

夜遅くの勧誘というのは、常識的におかしいというだけやなく、しても効果が少なくリスクが高くなるだけでワリに合わんやり方やということになる。

それに、やる方も長時間労働を余儀なくされるわけやから、しんどいだけやと思う。あらゆる方向から見ても止めといた方がええのは間違いない。

ただ、そうは言うても団の方針なら、拡張員は基本的には、それに従わなあかんから、やれと言われればやるしかないやろうがな。

あんたも、その夜の勧誘には懐疑的なようやから、それをしたとしても、客が怒るか、帰ってくれと言われれば、謝って、すぐその場を立ち去るように心がけとくことやな。

それが、あんたの立場でリスクを少なくする一番の方法やと思う。


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