新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.478 新聞業務の集金はやめられますか?
投稿者 inspiration さん 投稿日時 2007.10.28 PM 10:31
自分は新聞配達員です。今は配達と集金をしています。
それで友達に聞いた話ですが、集金業務は法律かなんかでやめることができると聞いたのですが本当ですか?
回答者 ゲン
あんたは新聞配達員ということやが、その販売店の社員なのか、アルバイトなのかにもよって若干回答が違うてくる。
通常、『自分は新聞配達員です』という場合は、アルバイトの配達員というケースが多いから、まず、それについて話す。
一般的なアルバイトの配達員は時間給というケースは少ない。たいていは、1部配達する毎にいくらというのが多い。
集金業務も同じように、集金ができた分だけの歩合制で、その報酬が決められとるはずや。
いずれも業務的には請負ということになる。
請負は随時契約やから、嫌な場合は双方で話し合ってその業務を解除できる。それについて何ら強制されることはない。
ただ、あんたが、配達と集金の両方をすることになった経緯次第では、そこの店主から「集金業務ができんのやったら配達も辞めてくれ」と言われるケースがあるかも知れん。
これは最初から、その「配達」と「集金」をセットで請け負うという取り決めのある場合や。
請負の随時契約というのは、お互いの合意の上に成り立つものやから、その合意に達しない場合は自動的に解除になると考えられる。
この場合、集金業務だけは、したくないという請負人を保護する法律はないと思う。
つまり、雇う側がそれを認めんかったら、仕事自体を辞めなあかんということを意味するわけや。
最初は「配達」だけやったのが、途中から「集金」が増えた場合はどうか。
これは、その増えた集金業務は、別の独立した随時契約と考えられるから、その分だけの解除を申し入れるのは可能や。
その際、「集金業務ができんのやったら配達も辞めてくれ」とは言えんことになる。最初に配達業務のみでええとして雇うとるわけやからな。
強引に経営者が、配達業務も辞めさせた場合、その立場保全の訴えを起こすことができると考えられる。
しかし、これは現実的なやり方ではないがな。
裁判を起こす費用とそれに係る時間もバカにならんし、例え、それで、その地位保全が確保されたとしても、今までどおりの仕事を与えてもらえんやろうとも思う。
仕事の割り振りは経営者の裁量で決めることができるから、冷遇されるのは目に見えとるやろうしな。
結局、辞めなあかんような状態になると思われる。
ただ、一般的には、配達業務の人員を確保するだけでも結構大変やから、そういうケースは少ないと思うがな。たいていは、「仕方ないな」と妥協する経営者の方が多いはずや。
いずれにしても、その経営者に「集金業務を辞めたい」と言うてみな分からんことやと思う。早い話が、経営者次第ということになるということやな。
その販売店の専業と呼ばれる従業員の場合はどうか。
通常、「配達」「集金」「勧誘」というのは、俗に専業の三業務と言われ、業界では、それらをするのが普通やと捉えられとる。
『それで友達に聞いた話ですが、集金業務は法律かなんかでやめることができると聞いたのですが本当ですか?』
というのことやが、法律でその集金業務を拒否、あるいは辞めることができるという話は聞いたことはないな。少なくともワシは知らん。
ただ、雇用契約のある従業員の場合、その集金業務の形態が違法性の高いというのは言えると思う。
たいていの販売店では、主に配達業務の時間帯の8時間を正規の労働時間としとる。これが月給として支払われる。
それに対して、なぜか「集金」と「勧誘」だけは出来高制が取り入れられ、例えそれらに長時間の手間がかかろうとも、その歩合分しか支給されんということがある。
以前、これについて、当サイトの法律顧問、今村英治先生から寄せられた見解があるので、その部分を抜粋して紹介する。
集金は業務外という理屈は、私には納得しかねます。100%歩合制だから労働じゃない・・・ここまでの理屈は分かります。
では労働じゃないんだから断る自由もなきゃおかしいです。私は労働である配達はしますが、請負の集金はしません。そんな自由が認められるとは到底思いません。
集金は業務に付随するどころか、業務そのものです。従業員の承諾なしにそれをやっているとしたら36協定違反や、残業代の未払いなども含め経営者サイドの責任は重いです。
契約上どのような取り決めになっていようと、外形上判断すると、集金業務は労働です。
多くの社会保険労務士及び労働基準監督官は、これを労働とみなすんじゃないでしょうか。
つまり、従業員という立場でありながら、集金と勧誘は請負制にしとるというのはおかしいということや。
本来なら、出来高ではなく、それに長時間要したのなら時間外手当が支給されてしかるべきやということになる。従業員は請負人とは違うさかいな。
もっとも、そんなことを販売店がしていたら、費用対効果でワリに合わんということになるやろうがな。
例えば、その住人となかなか会えず、何度も行かざるを得んことになり、結局、集金するのに、時間外労働として延べ5時間かかったとする。この程度のことはざらにありそうや。
その場合、1時間の時間外手当が1000円と算出すると5時間やから5000円ということになる。
新聞代がセット版の1ヶ月3925円やから、販売店はその集金をするのに5000円の残業代が必要になるということや。
勧誘にも同じようなことが言える。ワシらの世界でも、営業に費やした時間が多いほど、契約が多く上がるものとされとる。
かかった営業時間を上げた契約数で割ると、4、5時間に1本の契約が上がるというのが平均的な線やと思う。結果として集金と大差ない費用がかかることになる。
これでは、販売店は維持できん。そこで、その部分だけ請負という形にしたわけや。
法律的には、今村英治先生の『では労働じゃないんだから断る自由もなきゃおかしいです』と言われるとおりなのやが、それを認める販売店は皆無やと思う。
このケースも、集金業務だけ辞めたいと言うても、販売店がそれを認めな、結局は、そこで仕事がしづらくなり、仕事そのものを辞めなあかんということになると思う。
違法やからと、その実態を労働基準監督署に通報しても、どれだけ効果があるかは疑問や。良くて、その販売店への注意、指導が関の山やないかな。
それで、その従業員が救われることは考えにくい。当然やが、そんなことをした従業員に、その経営者がええ印象を抱くわけはないさかいな。これも、冷遇の対象になるのは目に見えとる。
いずれのケースでも「集金を辞めたい」と言うて、それに販売店の経営者が理解を示さんかった場合、そのまま仕事を続けるか、辞めて他の仕事を探すかという二者択一を余儀なくされると思う。
ただ、集金を逃れる、あるいは少なくする方法として、手集金を銀行振り込み、クレジット払い、コンビニ払いに移行してもらえるよう働きかけることが考えられるけど、これもその経営者の理解が必要になる。
あんたにとって、あまり救いのない回答やったかも知れんが、これが現実やと思う。
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