新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.482「無料にします」はウソでした


投稿者 匿名希望さん 27歳 会社員 投稿日時 2007.11.04 PM 10:38


はじめまして、突然のメールで失礼します。こちらのサイトを楽しく拝見させていただいている者です。本日はご相談にのっていただきたく、ご連絡差し上げました。

かなり前にこちらのサイトを初めて知り、「未だに悪い奴が新聞の勧誘をしてるんだな〜」と、感心していたのですが、半年ほど前の3月、ウチにも拡張員がやってきました!

内容はよくある相談と同じで、

「ノルマがあと1件足りないんです。あと1件のせいでボーナスが貰えません。1件分ぐらい自腹を切っても、ボーナスが入ったほうが大きいんです。集金の人には私がお金を出しますんで、とりあえず新聞を入れさせてください。古紙も回収します。」

というものでした。ただ、4月〜9月の半年間は別の人に頼んであるので、ウチには10月〜3月の半年間を頼みたい、というものでした。

「おぉ、これが噂の!」と思い、当然断ろうと思いましたが、最悪半年ぐらいなら契約してもいいかな、と思い、拡張員の中には本当に負担する人もいるというのに期待して(!?)、契約しました。

契約書は下記のような感じです。
・19年10月〜20年3月まで、とはっきり書かれている。特に不備はない。
・特約事項は古紙回収のみ、「無料」は一言も書かれていない(控えにも)。
・(控えのみ)拡張員が自分の携帯番号を書いていったが、電話しても出ない。

10月、予定通り新聞は届き、11月、予定通り(?)集金の者はやってきました。

この場合、こちらだってウソをつかれて契約した立場なわけで(確信犯ですが・・・)、このような拡張員を雇った販売店にも責任を感じてもらうべく、素直に支払いには応じたくありません。

このような拡張員に泣き寝入りばかりしていては、こういう輩が野放しになる、という理由です。

そこで質問なのですが、このような場合、

1、ゲンさんは「甘い言葉に騙された奴が悪い、素直に支払うべき」とお考えでしょうか?

2、販売店が契約の無効に応じない場合、(たとえ負けることがわかっていても)こちらから契約の無効を訴えることはできるでしょうか?(どこに、どのように)

3、支払う意思がないことを告げ、販売店が法的手続きに出るのを待つ、というのはどう
でしょうか? 曖昧な質問ですが、そういうのも手段の1つとしてアリか? ということです。

4、その他、この拡張員の責任を問う方法はないでしょうか?

くどいようですが、私の場合は、半年間新聞をとってみてもいいと思って契約したわけですが、嘘つき拡張員に抵抗する意思を示したい、ということです。

上記質問には同様のケースで「騙された!」と怒っている方々に向けた回答をしていただければ幸いです。

お忙しいところ申し訳ありませんが、可能であれば回答のほど、よろしくお願いいたします。

今後とも変わらぬご活躍を期待しております。


回答者 ゲン


『1、ゲンさんは「甘い言葉に騙された奴が悪い、素直に支払うべき」とお考えでしょうか?』ということやが、何も素直には支払う必要はないと思う。

騙した人間と騙された人間を比べれば、文句なく騙した人間が悪いのは明白や。ただ、騙された側にも、いくらかの隙と落ち度があったことは否めんがな。

騙されたと主張するのは、正当な権利や。それに対して販売店が素直に認めれば、その契約は解除され何の問題も残らんやろうとは思う。

それには、販売店側からすれば、今回の件を「不良カード」として拡張団に差し戻すことで、その損失分を補填できるということがある。

そういうシステムが確立されとる所やと、あんた言うとおりなら、販売店は損失を被ることが少ないから「済みませんでした」と認め、謝罪するということもあり得るということや。

加えて、穏便に何事も済ませたいという販売店もあるから、そういう所やと、仕方ないと引き下がることもあるという。悪い噂を立てられたくないということでな。

もちろん、認めん販売店があるのも確かやがな。そういう所は、たいてい「不良カード」としての損失分の回収をその拡張団からするのは困難と判断しとるようや。

その拡張員、拡張団が、そんな事実はないと言うた場合、その証拠がなければ、販売店としては当該の拡張員、拡張団にはそれ以上言えんということになる。

あきらめ切れん販売店とすれば、あんたにその新聞代の請求をするしかないと考えるというのも十分あり得る話や。契約上は、その権利を有するということでな。

『2、販売店が契約の無効に応じない場合、(たとえ負けることがわかっていても)こちらから契約の無効を訴えることはできるでしょうか?(どこに、どのように)』

あんたのケースで摘要される可能性のある法律は、消費者契約法第4条の『不実の告知』ということになる。

ただ、この法律は、民法と商法の特別法という位置づけになっとるもので、主に民事扱いやから、どこかの法的機関に訴えて解決できるものやないと考える。

この法律は、その契約を拒否する理由となるもので、あんたのように支払いを拒否することで実質的な被害が出てない状態では、民事としての訴えを起こすことも難しいと思う。

これを訴えるには、新聞社の苦情係、地域の新聞公正取引評議会あたりがええのやないかな。その際、その拡張員の『不実の告知』に該当する法律違反を強調することや。

その担当者次第では、その販売店にきつめの注意や連絡が行くやろうから効果的な場合もある。

念のために言うとくけど、新聞公正取引評議会というのは、そのネーミングから、公正取引委員会と同列の組織のように思われる一般の方が多いが、これは、まったく別の組織で民間団体や。

正しくは『社団法人新聞公正取引協議会』という。

これには、111新聞社(発行本社)と150系統会(新聞社別・地域別の新聞販売業者団体)の参加事業者が会員となり、組織されとるものや。分かりやすく言えば、新聞社、販売業者の代表組織ということになる。

ここでは、新聞の勧誘においての違反行為を監視することが、その主な仕事であり、目的の組織ということになっとる。

後は「消費者センター」というのもある。

しかし、これは販売店にとって直接の管理組織やないから、上記の新聞社の苦情係、地域の新聞公正取引評議会あたりと比べると、どこまで効果があるかは疑問やがな。

『3、支払う意思がないことを告げ、販売店が法的手続きに出るのを待つ、というのはどうでしょうか? 曖昧な質問ですが、そういうのも手段の1つとしてアリか? ということです』

確かに、あんたがその支払いを全面拒否した場合、その販売店が、どうしてもその支払いを求めるのなら、損害賠償訴訟を起こして、その判決を勝ち取るしか方法はない。

その意味で言えば『そういう手段もアリ』ということになる。

しかし、実際には、こういうケースで裁判に訴える販売店は少ないと思う。少なくともワシは知らん。

裁判に訴え出ん代わりに、販売店によれば「支払いをしてほしい」と日参することはあるようや。

これに関しては、商行為上の支払い請求やから「もう来るな」と言うて、それを止めることは難しいと思う。実質的には、単に新聞代の集金に来とるというだけにすぎんさかいな。

それが、できるとすれば、代理人としての弁護士を立てて、その販売店との交渉を依頼するくらいやと思うが、これも費用対効果の面から考えれば、そこまでする人は少ないわな。

もっとも、販売店にしても、僅か1ヶ月程度の新聞代にそれほど剥きになって日参するというケースも少ないとは思うがな。

ただ、契約者側もいつ来られるか分からんというプレッシャーには、相当きついものがあると訴える方もおられる。

こういう事態になれば、お互いの我慢比べのような様相を呈してくることが多い。つまり、それくらいの覚悟は必要やということになる。

ただ、万が一、その販売店が、損害賠償訴訟を起こした場合、客観的に見てあんたの方が不利やというのは言うとく。

不実の告知を主張するにしても『集金の人には私がお金を出しますんで』とその拡張員が確かにそう言うたという証拠が必要になる。

その場に第三者が同席していたというのなら別やが、こういうのはたいてい当事者の二人しかおらんやろうしな。

加えて、契約書に『19年10月〜20年3月まで、とはっきり書かれている。特に不備はない』『特約事項は古紙回収のみ、「無料」は一言も書かれていない(控えにも)』と記されていたということやが、それに対して、その場で意義を唱えず受け取ったということは、第三者から見たらその契約内容を承諾したということになるわけや。

また、たいていの販売店は、その当日、契約の確認の電話を入れとるはずやから、そのときに、例え、拡張員から頼まれていたにせよ「その契約のとおりです」と言うてたら、さらに弱い立場となると考えられる。

当の拡張員に「確かに私がそう言いました」と認めさせられれば問題ないが、そういう輩に限って、それは絶対にあり得んことやと思うてなあかん。

現在、その拡張員の言うたような『置き勧』と呼ばれる手口は、業界ではかなり厳しく取り締まられとる行為や。バレたら、クビになることも珍しいないさかいな。

当然、「死んでも口は割らん」と考えとるはずや。

ワシら業界関係者なら、そういう拡張員もおるというのは知っとるから、あんたの言うとおりにほぼ間違いないやろなというのは分かるが、裁判所では、そんな予断をすることはない。判断するのは、証拠と心証でということになる。

それなら、どうしようもないのかというと、そうでもない。逆転の可能性はある。

こういうことを口にして勧誘する人間は、必ず他でもそう言うてるはずや。しかも、あんたの近所でな。それも一人や二人やないと考えてええ。複数いとる可能性は高い。

せやから、多少は面倒かも知れんが、そういう人間を探し出して、証人を頼めばええということになる。

それは、別に契約した人間でのうても構わん。その拡張員が、確かにそう言うてたという実証ができればええわけや。

それで、確実に勝てるとは限らんが、少なくとも、お互いの発言の信憑性を裁判官が判断する材料にはなる。心証の面で有利になる可能性があるということや。

『4、その他、この拡張員の責任を問う方法はないでしょうか?』というのも、重複するが、その拡張員が、確かにその発言をしたという実証ができれば、それ相応の処分はされると思う。

ただ、あんたの『確信犯ですが』と言うてる意味の真意を測りかねるが、その拡張員が約束を守らず、こういう結果を引き起こすのを予想してたというのなら、あまり賢い選択とは言えんな。

確かに「タダでもいいですから取ってください」という拡張員は存在する。

しかし、その場合は、その場で、それに匹敵する金銭の授与があって初めて成立する話で、「後で」となると、かなりの高確率で、その約束が反故(ほご)にされとるという現実がある。

それ以外は、すべてウソとかかった方がええと、この手の相談には常にそう答えとる。

あんたの口ぶりから、拡張員は信用ならんというのは十分感じられる。それにも関わらず、そうして騙されたというのは、こういう結果も計算してたということなのやろうか。

もし、騙された場合は開き直ったらええとでも考えていたのなら、正直、ワシの出る幕やない。また、ワシなんかのアドバイスも、あまり必要ないと思う。

『私の場合は、半年間新聞をとってみてもいいと思って契約したわけです』というのは、拡張員の『私がお金を出しますんで、とりあえず新聞を入れさせてください』と言うとおりの『タダの場合なら』ということなのかな。

言うとくけど、こういうのは『契約』と呼べるものやないと思うで。タダで貰うのは、普通は『譲渡』と呼ばれるものや。

もっとも、言葉として『譲渡契約』というのはあるが、少なくとも、営業員の端くれのワシとしては、そういうのを契約と認めるわけにはいかん。

勘違いせんといてほしいが、これはあんたを一方的に責めて言うてるのやない。そんな話を持ちかけた拡張員の方が悪いのは間違いないさかいな。そうすることで、法的にも、受け手のあんたには何のお咎めもないことやしな。

ただ、その新聞を売ることに、心血を注いどるワシら拡張員にすれば、残念なことには違いない。ワシらは、そんな値打ちのないものを売っとるとは考えとらんからな。

そういう意味でも、「タダにするから取ってくれ」という拡張員もどきの人間は許せんのやけどな。そんな人間がいとるから、妙な誤解をされることになるわけや。

ワシが「拡張員もどき」と言うたのは、そういう人間は拡張員ですらないと思うからや。

少なくとも、営業員である拡張員は、新聞を売ることで、新聞社、販売店、拡張団それぞれに利益をもたらす存在やなかったらあかんさかいな。タダで新聞を配り歩く人間を拡張員とは呼ばん。

ただ、業界関係者からすれば、あんたのような人は客の範疇には入らんと思う。

顧客と呼べるのは、最初から、その対価に対して金銭を支払うことを納得した人だけやさかいな。これは、新聞業界に限らず、すべての業種で言えることや。

あんたは、会社員をされておられるとのことやが、あんたの会社でも商品、もしくはサービスを対価とすることで経営が成り立っとるはずや。

その商品、サービスにそれなりの誇りもあると思う。それを、「タダやったら貰うてやってもええで」と言われたら、どういう気がするやろうか。

ワシの言いたいのは、それと同じということやと思うて貰えたらええ。

もっとも、そうは言うても、あんたに今回のことをあきらめろと言うつもりはない。考え直してくれとも思わん。あんたなりの正義があるというのも分かるしな。

どうするかの最終判断は、あんたが下せばええことや。

ワシらも、そういうしょうもないことをする拡張員の存在が迷惑で許せんというのは一緒やから、そういう連中から守るためのアドバイスなら惜しむつもりはないさかいな。

せやから、今回のことで、何か進展があり困ったことにでもなれば、遠慮せんとまた相談してくれたらええ。


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