新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.487 販売店の言うとおりにしなければいけませんか?


投稿者 SOさん 奈良県在住  投稿日時 2007.11.20 AM 8:07 


S新聞の勧誘で平成18年5月から23年5月までの5年契約で1年無料、商品券2万円、米10キロいただきましたが、家計の事情で平成19年11月19日に解約を希望しました。

契約書の控には、解約の際には商品券を返すようにと書かれていたので、その条件を飲むつもりで販売店に電話をしました。

ところが、それだけではだめだと言われました。残りの契約分、満額の購読料の請求をされました。

販売店が言うには、「翌日の確認の電話で、契約書の内容に間違いないと言った以上、商品券だけの返還だけじゃ商売あがったりやないか!」と。

いくら、そんなこと契約書に書かれていないし、最初の電話でもそこまでの解約条件については一切聞いていないと主張しても一回「はい」と言ったから、販売店に不当性はないと言います。

そんな条件なら契約しなかったし、一方的にサービスを薦めておいて後付けの解約条件を出してくるなんてひどい商売だと思います。

商品券は返すと言ってしまいましたが詐欺にあった気持ちで絶対に許せません。販売店の言うとおりにしなければいけませんか? 助けて下さい。


回答者 ゲン


新聞の購読契約程度のものは、いつでも解約できると考えておられる人は多いが、書面を交わしての契約は、公序良俗に違反しない限り、すべてが法によって守られるということをまず理解してほしいと思う。

訪問販売の場合、契約者による一方的な契約解除は、クーリング・オフの期間内か、明らかな不法行為、急な引っ越し、独身契約者の死亡といった理由以外では、法的にはできんとされとる。

今回のケースでは、話を聞く限り、その販売店の対応に若干、横柄な感じはするものの、特段、その販売店に違法性のようなものは感じられず、解約理由も『家計の事情で』ということなら、あんたの自己事由による中途解約希望ということになる。

この場合は、お互いが話し合って解約するしかないとされとる。一般的には、契約者が解約違約金を支払ってというケースが多い。

と言うても、『残りの契約分、満額の購読料の請求をされました』というのは、行き過ぎた請求やから、そのとおりにする必要はないがな。

これから、あんたが、自己事由で中途解約を希望する場合の責任について少し話す。

どんな形であれ、契約解除になった場合、守らなあかんことがある。

民法545条に現状回復義務というのがある。

1.当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2.前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3.解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

とあるのがそれや。

つまり、契約解除になった場合は、その契約が結ばれる前の状態に戻そうという考え方やな。それで、双方のいずれも、得も損もしないというのが理想なわけや。

これに従うと、その契約の条件に貰ったものは返還せなあかんことになる。

あんたの場合は、『1年無料、商品券2万円、米10キロいただきました』というのが、それに当たる。

この内、商品券2万円分というのは納得されておられるようやが、米10キロ分と、1年無料というのは、通常、先にするから既に終了しているものと思うから、その場合、それに該当する新聞代の返還も必要ということになる。

この1年間の無料分に関して、販売店も新聞社には、その分の新聞仕入れ代金を支払い済みやし、配達人の給料もそれで払っとるわけやから、解約された上、それを払うて貰えんとなると大損やという気になる。

解約を希望するあんたが、それらの返還に応じなかったら、その契約の条件についての恩恵だけを受けるのは、どう考えてもおかしな話やということにもなるしな。

ここに、相談された方の多くは、それに納得されておられるが、それ以外では、まだまだ受け入れ難い一般の人は多いように思う。

それだけでも、総額はかなりな額になるから、その正当な請求が、何か途方もない無法なものに感じるわけやな。

しかし、自己事由による一方的な契約解除を希望する限り、ある意味仕方のないことやと言える。双方が得も損もせんという方法はそれしかないさかいな。

これについては『そんなこと契約書に書かれていないし、最初の電話でもそこまでの解約条件については一切聞いていない』あるいは『そんな条件なら契約しなかったし、一方的にサービスを薦めておいて後付けの解約条件を出してくるなんてひどい商売だと思います』と言いたい気持ちは良く分かる。

しかし、法律は販売店にそこまでの説明義務を課してはいない。これは、民法上の決まり事なわけや。

あんたには厳しいかも知れんが、法律は知らんかったから許される、免除されるというものやない。知らん者が悪いとされるのが普通や。いくらそれが、あんたにとって理不尽なことであってもな。

せやから、今回のケースは『契約書の控には、解約の際には商品券を返すようにと書かれていた』というのがなかったとしても、その返還は必要やったと考えられるわけや。

もっとも、その一文があるからこそ、他も説明してくれてたらという気にもなったんやろうがな。

普通は、こんな一文を契約書に書いてある販売店はない。こういうのを「蛇足」と言うのやと思う。

『3.解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない』というのが、解約違約金の請求を認めた条文ということになる。

つまり、原状回復義務に上乗せさせられる負担ということやな。

これが、『残りの契約分、満額の購読料の請求をされました』ということなわけやが、先にも言うたとおり、これに関しては、そのまま応じる必要もなく、あくまでも話し合いで決めたらええことや。

法律は、その具体的な損害賠償額を決めとるわけでもないし、新聞購読契約の解約違約金に関して判例が今のところ見当たらんから、その適正額を言及することもできんと思う。

当サイトでは、その販売店の程度を見極める手段として、1年を超える契約の解約違約金は高くても2万円までと言うてる。

それ以下は、常識的な販売店で、それ以上は非常識という線引きやな。

もちろん、これには、根拠のあることや。新聞購読契約やないが、類似の継続的役務提供契約について最高裁の判例にそれがある。

もっとも、これはあくまでも参考として便宜的に言うてるにすぎんことやがな。

それからすると、この販売店の請求は非常識で、程度の悪い販売店ということになる。

まあ、この販売店も本気でそれが貰えるとは思うてないやろうから、実質的な解約拒否ということやと思う。

ただ、はっきり言うて、こういう販売店との話し合いは難しいと思う。おいそれと折れるということはないやろうしな。

こういう場合は、お上に、その裁定を委ねるという手もある。

具体的には、「その要求は呑めないから、裁判に訴えてくれ」と言うことや。おそらく、あんたがあきらめん限り、十中八九物別れになり、そう言うしかないやろうがな。

原状回復義務分は仕方ないとしても、その解約違約金は、その販売店の要求以下になることは、まず間違いないと思う。

このままで納得できんでも、裁判所の決定なら従えるやろうしな。

また、その支払いが嫌やと言うて拒むあんたから、それ以外の方法で支払わせることも不可能やからな。

客観的に見て、裁判になれば、あんたの完全勝利は考えにくいが、その解約違約金額が減るのは確かやと思う。

ただ、その販売店が、その裁判をするとは限らんがな。今までのところ、そうしたという例は聞いてないさかいな。

希望的観測やが、そこまで腹をくくって対抗すれば、その販売店が折れるというのも考えられんこともない。保証はできんけど。

中には、裁判に訴え出ん代わりに、それを支払ってくれと日参する販売店もあると聞く。そこまで行くと、お互いの根比べとなる。

通常は、払う者と払うて貰う立場の者を比べると、払う方が強いもんやが、それも当事者の考え方次第やと思う。

今回のケースは、新聞社に言うても、契約上のことやから、販売店と話し合ってくれということで終わると思う。

新聞社は、公には購読契約にはタッチせんという姿勢やさかいな。あまり、あんたの役には立たんやろな。

唯一、この販売店の違法性を問えることがあるとしたら、景品表示法ということになる。

独占禁止法の補完法ということで、この景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)というのがある。

この法律を運用する機関が公正取引委員会や。国の行政機関で内閣府の外局という位置づけになる。

新聞勧誘の景品がこの法律の対象になる。新聞勧誘の場合、景品の上限は業界の自主規制によるものとされとる。新聞業界の自主規制が、公正取引委員会の認定を受けることで法律になるということや。

因みに、現在の新聞業界の自主規制は、景品の最高額を取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲ということになっとる。

これを業界では、「6・8ルール」と呼んどる。

この法律で言えば、6ヶ月契約以上はすべて同じ金額相当の景品以内ということになる。つまり、6ヶ月契約も5年契約も渡す景品は同じやないとあかんということや。

それで計算すると、あんたの場合、渡せる景品の上限は、1884円にしかならん。

それを、1年の無料サービス分、2万円の商品券、10キロの米となると、単純に計算しても、実に7万円ほどにもなる。

これは、大幅な違法行為ということになるが、残念ながら、これは警察あたりに言うても、管轄違いで門前払いやし、それを取り締まる唯一の機関である公正取引委員会に通報しても、果たして摘発するかどうかも甚だ疑問やと思う。

事実、その地域での摘発例は聞いてないしな。

このサイトの『拡張の歴史』の中に、ワシが8、9年ほど昔に、そのあたりで仕事をしていたときの経験を話した部分がある。

そのときは、4年契約で5万円分の商品券を渡すというサービスをしていた。これも、相当な景品表示法の違法行為や。あんたも、聞いたことがあるのやないかな。

そのときの方が、今よりはるかに新聞販売店の摘発件数はあったが、それでも不思議とその奈良ではなかったと記憶しとる。

もちろん、その事実は、公正取引委員会も把握してたはずやと思うがな。

違法行為は摘発されて違反行為になる。その点、駐車違反なんかと似とる。駐車違反も違反場所に停める限りは違法なんやが、それで摘発されんかったら違反とはならんさかいな。

現在は、その景品表示法の景品付与自体が大幅に緩和されたということもあるのかも知れんが、新聞業界の過剰景品付与に対する公正取引委員会の摘発はさらに鈍っとると思われる。

もっとも、この法律でその販売店が摘発されたとしても、民事で争うことになるあんたには大した影響はないとは思うがな。

民事の争点は、そのことによる被害があったかどうかということになるが、その点で言えば景品の貰いすぎが被害になるとは考えられんしな。

つまり、一般にとって、この法律に違反してたとしても、何らマイナス面はないということやと思う。契約どおり購読すれば得やし、自ら解約するのなら、貰うたものを返すだけの話やさかいな。

あくまでも、この法律を運用するのは公正取引委員会やから、裁判所ですら門外漢なわけや。そこで争われることもない。

ちなみに、この法律で公正取引委員会に摘発されたとしても、罰金刑という決まりはあるが、たいていは、排除命令と言うて、「これからはこういうことはしないと公示しなさい」ということで終わると思う。

もっとも、すべてがそうやと言うわけでもないから、通報するなとか、しても無駄やと言うてるのやないで。万が一ということもあるからな。

あんたが、がまんできんというのなら、通報するのは自由や。場合によれば、その販売店にとって打撃になるかも知れん。ただ、それにより過度な期待はせん方がええとは思うがな。

それでも、販売店との交渉時に、その違法性を突くというのは、交渉事を有利にできるかも知れんという気はする。

また、このことを新聞社に通報すれば、その担当者次第では、この問題を大きく取り上げ、その販売店に注意、指導がある可能性も考えられる。

ただ、これも、その地域で景品の過剰付与が日常化されとる現状は、その新聞社も把握しとるはずやから、そのことを知らんはずはないと思う。

にも関わらず、それが長年に渡り放置されてきたということを考えれば、それに期待するのもどうかなという気はするがな。

ただ、販売店によれば、負い目を感じて、それで考えを変えることもあるかも知れんから、その指摘をするのは、まったく無駄とも言えんとは思う。

最後に『商品券は返すと言ってしまいました』ということやが、それは、すべて解決してからでええ。先にそれを返しても、それで終わるとは考えられんしな。

あんたにとっては、あまり期待した回答やなかったかも知れんが、ワシのアドバイスとしたら、こんなところや。

結論として、あくまでも争うか、あきらめて購読するかという選択になると思う。いずれにしても、良う考えて決めることやな。

また、状況が変わったり、分からんことがあればいつでも遠慮なく相談してくれたらええさかいな。


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