新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.492 複数回訪問による契約率アップの可能性について
投稿者 Jさん 投稿日時 2007.12.29 PM 0:48
このQ&Aには、現役拡張員さん達(もしくは、拡張員の仕事を希望する方)からの相談が目立つようになってきたという印象を受けます。
この背景には、数年前と比べて、「ネットを利用する拡張員が増えた」とか、業界の中でこのサイトが知られるようになってきたといったものがあるのでしょう。
さて、それらを読んでいて、ふと思ったことがあります。
それは、新聞の営業スタイルに関する根本的なことなのですが、従来からの「1回だけのアプローチ」で契約まで完結するという営業方針を改める余地はないのだろうか? ということです。
たとえば、Q&Aの「NO.488 正攻法の解釈を教えてください」に、他の業界の営業員(↓)が引き合いに出されていますが、これらの業界では、一人の見込み客に対して、複数回のアプローチ(訪問)をしている会社もけっこうあるはずと思いました。
同じ訪問営業でも、建築関係、保険勧誘、物品販売などの営業員からは、そういう言葉はあまり聞かんしな。
特に契約金額が100万円を超えるような規模の話なら、なおさら1回だけの訪問でクロージングにまで持っていくのは不可能でしょうから、そういった物件を扱う業界でそのような傾向になるのは、当たり前といえば当たり前なんでしょうけど、新聞契約においても、1年以上の長期契約が期待できるのであれば、総額も10万円代に乗ったりするわけですから、「複数回のアプローチ」や「訪問以外の方法でのアプローチ」を前提とした営業方針でもって顧客を説得するという考え方があってもいいように思いました。
たとえば、次のゲンさんの回答にも、私の主張しようとする意見の根拠が隠されています。
▼NO.481 商談、クロージングについて
(一部抜粋)
人間関係重視の客、取引関係(付き合い)重視の客というのは、その逆や。
これは、よほど性格的に合うて意気投合でもせん限り、すぐの契約は望めんと考えてなあかん。
こういう相手には、その懐(ふところ)に入って信用を得る努力をするしかない。
普通は、時間のかかる営業になるが、そうせんと人間関係重視、取引関係(付き合い)重視と考えとる相手には難しいやろうと思う。
つまり、ワシの言いたいことは、相手次第で営業方法もクロージングの方法も変えていかなあかんということや。
ただ、複数回のアプローチといっても、新聞販売店の従業員ならともかく、一日毎に、まったく違うエリアで営業しなければならない拡張団(拡張員)の場合は、一人の見込み客に対して複数回の訪問でクロージングまで持っていくことを前提とした営業手法は物理的に不可能のはずと思いましたので、もし、そういう方針を採り入れるのであれば、業界の方針の大転換が必要になるのでしょうね。
もっとも、複数回訪れることができるスタイルにすれば、どんな拡張員でもカードの上がる率が高まるという保証はないわけですが、そうは言っても「もしも短い期間に2度3度訪れていたなら、きっとくどき落とせたであろうお客さん」の数も、過去にけっこうあったのではないでしょうか?
最近は小物の買い物にでさえ、原材料ラベルをじっくり見たりして、慎重になる人が多いご時世ですから、見込み客に「先日の件は、ご検討いただけましたでしょうか?」というスタイルが定着する余地があれば、消費者から新聞業界への好感度もアップするような気もするのですが。
回答者 ゲン
今回のあんたからの問題提起には、考えさせられることが多いと思う。
『複数回の訪問でクロージングまで持っていくことを前提とした営業手法は物理的に不可能のはずと思いましたので、もし、そういう方針を採り入れるのであれば、業界の方針の大転換が必要になるのでしょうね』
と言われることにも一理あるが、この業界は、そもそも統一された組織というものが少ないから、一口に方針の転換と言うても簡単なことやないと思う。
業界の意志決定機関というものの存在がないというか、希薄やさかいな。
まだ、新聞販売店なら、地域毎にそれらしき組織も存在し、一般からも分かりやすい所に店舗を構えとるけど、新聞拡張団のそれになると、その実態の把握は、業界関係者ですらほとんどできんのが現状や。
加えて、表向きはそれらを管理するのは新聞社ということになっているが、こと経営に関しては他企業ということもあり、深く立ち入ることができんということもある。
もっとも、立ち入ったとしても、その営業ノウハウを持ってない新聞社では、営業面で教え導くとか指導といったものは無理やと思うがな。
一般の企業ならどこでも頻繁に行っている営業セミナーの類もほとんど行われていないのが現状やさかいな。
せやから、営業に関しては、販売店、拡張団への、あなた任せにするしかないのやと思う。
新聞社のできることは、「それは禁止や」という通達くらいなものや。役所のそれと似たようなところがある。
その中に、あんたの言うような建設的なものは極端に少ない。少し言いすぎかも知れんがな。
さらに言えば、そのトップの新聞社にしても、勧誘員の存在する全国紙、ブロック紙、地方紙、機関紙を合わせると優に100社を超えるわけやから、全体としての意志統一というのも難しいわな。
それらは、お互いがライバル関係にあるのやから尚更や。
現在の飽和状態に近い購読率の中では、すべての新聞社が業績を伸ばすこと自体、絶対に不可能やさかいな。どこかが伸びれば、どこかは必ず減少するしかない。
日々、熾烈(しれつ)な競争に明け暮れ、読者という限られたパイの取り合いに血道を上げとるわけやから、みんなで仲良くということになりにくいのは、当然と言えば当然ということになる。
『NO.488 正攻法の解釈を教えてください』の中で、この業界には営業マニュアルが存在しないという話をしたが、実際には、拡張団、販売店それぞれにある程度のものは存在すると思う。
ただ、この業界の営業では、自分以外はすべてがライバルという構図が出来上がっとるから、いくら素晴らしいマニュアルがあったとしても表には出んのやと思う。
ハカセもたまに、拡張団、販売店関係者の方々に、その営業法を尋ねることがあるようやが、ほとんどが社外秘ということを理由に教えてもらえることはないそうや。
それが、業界の営業システムが千差万別、いろいろな手法が存在する根本の理由やないかと思う。
言えば、なんでもありがこの業界の実態ということになる。そして、それは残念ながら、あまりええ方向には行ってなかったわけや。悪い面ばかりが目立ってな。
ただ、中には、あんたの言う『複数回の訪問でクロージングまで持っていくことを前提とした営業手法』を取り入れとる拡張団も実際に存在する。
建築業界の営業の場合、アポイントメント(会う約束)を取り付ける者と実際に交渉するクローザーと呼ばれる者とに別けられ、それぞれ役割分担することが多いが、それと同じシステムを実際に取り入れとる拡張団もある。
建築業界のアポイントメントは電話で取るというのが多いが、それを採用しとるわけや。
ただ、それは、ワシの知る限り、極一部で、あまり成果の上がっている方法とは言えんようやがな。
それで、成果が上がるのやったら、長い歴史の中で広まってなあかんのやが、それはない。
もちろん、あんたの言わんとするのは『複数回のアプローチ』により、客と人間関係を作った上で契約に持っていったらどうやということやと思う。
ワシもそれについては反対やない。むしろ、それも営業方法の一つとして推奨しとるくらいや。
それが『消費者から新聞業界への好感度もアップする』ことにつながるのやないかというのも分かる。
しかし、それをシステム化するというのは難しいと思う。
一般的に、会社のため、組織のために仕事するのは当然という考え方をする人は多い。会社として、組織として成果が上がればええやないか考える。
せやから、良くあることに、こういうのがある。
ワシも長期でないと落とせんと判断した客には何度となく訪れることがある。すると、その客の中には、次回で契約してもええなと考える人も現れるわけや。
そんなときに「あっ、ゲンさん、あんた、しばらく来られなかったから、同じ○○新聞の販売店さんの人と契約しときましたよ」と言われることがままある。
客にすれば、同じ新聞の販売店で契約したからええやろうという気持ちでそう言うわけや。喜んでくれと言わんばかりの人さえおる。
ワシも表面上は「ありがとうございました」とは言うが、内心は面白くない。
これは、ワシら拡張員にしてみれば最悪ということになる。それまでの苦労が水泡に帰したことになるわけやからな。
当たり前やが、拡張員個人にとっては、新聞社が部数を増やそうが、販売店が儲かろうが、拡張団の成績が伸びようが、はっきり言うて何のメリットもない。関係ないわけや。
そら、業界としての成績が上がるというのは悪いことやないかも知れんが、それで納得するほど、心の広い者はおらんと思う。
それでは、一銭にもならんし、めしも食えんのやから、当たり前やという気にもなる。ワシを含めてな。
それなら、アシストすることにより、稼げるシステムがあればええということになる。
そのプランも幾つか考えられる。
現在の個人成績による収入制度を変えるというのが、一つの方法や。
勧誘員が、『新聞社が部数を増やそうが、販売店が儲かろうが、拡張団の成績が伸びようが、はっきり言うて何のメリットもない』と考えるのは、それで稼げんからで、その利益が還元されるのやったら、また違うかも知れん。
一般の会社のように業績が給料に反映し、ボーナスが増えるということであれば、全体として考えなあかんから、評判を上げることに務めるようにもなると思う。
拡張団の名前も積極的にアピールするようになる。今やと、一般客で訪れる拡張員の所属団を知ってる顧客はほとんどおらんやろうと思う。
そうなれば、個人プレイで無理することもないから、トラブルも減るのは間違いないと考える。
先に挙げた建築業界のように、アポイントメントとクローザーの完全分業制という方法も給料体系を考える上では効果があるかも知れん。
理想を言えば、キリがないほどあるが、ワシには、そのいずれも実現可能なことには思えんのや。残念やがな。
その方法があるとすれば、業界関係者個々の考え方を少しづつでも変えることしかないと思う。
そのためには、『このQ&Aには、現役拡張員さん達(もしくは、拡張員の仕事を希望する方)からの相談が目立つようになってきたという印象を受けます』ということは、重要な意味を持つ。
そういう拡張員を含む勧誘員の人たちは、このままやとあかんというのが分かっておられるわけや。そう考えると、ワシのアドバイスにも責任を感じるが、やりがいもある。
また、最近では、拡張員に対して否定的やった人も数多く、このサイトを訪れるようになっており、拡張員への見方が変わったと言って頂けることも多くなった。
牛歩の歩みには違いないが、ワシらが今までの姿勢を崩さず、このサイトを続けとれば、いつかは世間の目も変わり、『消費者から新聞業界への好感度もアップする』ことにつながるのやないかと信じとる。
それで、この業界が変わるかどうかは疑問やけどな。数十年来の悪しき慣習やしがらみは、そう簡単なものやないと思うしな。
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