新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.515 代金を回収するのは不可能ですか?


投稿者 happy さん 販売店従業員  投稿日時 2008.1.26 AM 0:43


僕は、新聞屋さんの従業員をしてます。

最近困ってしまい法律的にどうなのか!? 教えてください。

毎月、集金業務をしているのですが、半年滞納している学生がいます。今まで他の人が払ってもらうために何度か行っていたみたいです。なかなか取れないということで僕にまわりまわってきました。

学生とコンタクトをとり話をしてみると、騙されて契約したと一言。契約したのは昔の専業さんで今はいない人です。内容はいつでもやめられるからと言ったそうです。新聞は半年間配達しましたが、本人は手をつけてないし読んでないからと。

うちの店の落度は新聞が入れる前に確認に行った際、学生と口論になり学生が話す言葉を無視して強引に配達したことと、契約書の名前記入欄の所に印鑑(サイン)をもらってないことです。尚、本人に直筆で名前は書いてもらってあります。

何回か話をしに行ったのですが、段々と向こうが悪質になり話を聞かなくなってきてます。

僕としては新聞を配達した以上商品を渡したということで代金を回収したいです。はたして代金を回収するのは不可能ですか? 法律的にどうか教えてください。

解約の申し出があったのはク−リング・オフ期間内ではないです。サ−ビス品は渡してあります。

よろしくお願いします。


回答者 ゲン


こういうケースは、程度の差こそあれ、新聞販売店によくあることや。

『法律的にどうか教えてください』ということやが、法的に言えば、その学生さんが、その新聞代を支払う義務があるのは明らかやと思う。

但し、その学生さんが契約当時、未成年やなかったらという条件付きやけどな。未成年者の場合は、それと知っているケースが多いから法律論で争っても分が悪い。未成年者と契約するというのは、そういうリスクもあると承知してた方がええやろうな。

せやから、これから以降は、その学生さんが未成年者やないとして話を続ける。

『本人に直筆で名前は書いてもらってあります』ということなら、その契約書が有効とされるケースは高い。

『契約書の名前記入欄の所に印鑑(サイン)をもらってないことです』というのも、物品の売買契約には特に必要とされることやないから問題はないはずや。

逆に一般的な認めの印鑑だけが押してあって、本人、及び配偶者の直筆の署名と違えば、否定されたら、その契約が認められるケースはほとんどないと言うてええ。

これについては、新聞販売店の多くも勘違いされておられるようや。

まあ、常日頃からワシら拡張員には、その印鑑を貰うてくるように強制しとるから、それが決まり事として思い込んどるのやろうけどな。

あんたは、落ち度として『学生と口論になり学生が話す言葉を無視して強引に配達した』というのを挙げておられるが、契約が成立しとる以上、販売店がそうしたのは、やむを得んことやと思う。

もっとも、この部分だけを抜き出すと、その販売店がいかにもえげつないという風に見られるかも知れんがな。

新聞購読契約というのは、契約者は契約期間はその購読代金を支払う義務が生じ、新聞販売店は遅滞なくその新聞を配達するという責務を負うことになる。

嫌でも、新聞販売店は、その契約を自ら放棄せん限り、その契約者に対して新聞を配達し続けるしかないわけや。

それで言えば、販売店のとった行動に間違いはないと思う。

その契約者の言い分は『騙されて契約した』『いつでもやめられるからと言った』ということで、契約自体が不法行為のもとに為されたと言いたいのやろうが、それなら、その契約の解約手続きを取ってなかったらあかんわな。

まず、クーリング・オフ制度がある。新聞購読契約の場合は契約日を含めて8日間以内なら、文書での通告をすれば、その理由を告げる必要もなく無条件に契約解除できるという特権がある。

それをしてないということは、その権利を放棄したということになる。

それ以外での、契約者の側から一方的な契約解除ができるのは、急な引っ越しや独居者の死亡、および明らかな不法行為により契約したというケースくらいなものや。

『騙されて契約した』『内容はいつでもやめられるからと言った』というのを、具体的に証明できれば、消費者契約法の「不実の告知」違反に問え、契約解除ができることになる。

しかし、このケースはその当事者同士の言うた言わんという水掛け論になりやすい。

また、『契約したのは昔の専業さんで今はいない人です』ということなら、販売店の方でもそうやろうが、その学生さんにその人間を探し出すのは困難やろうと思う。

日本の法律、裁判の場では、その異議を申し立てた方に立証責任があるとされとるから、その学生さんの方が法的には不利ということになる。

契約書のどこかに、それについての特記事項でも書いてあれば別やが、そんなものはないやろうしな。

さらに言えば、新聞購読契約において、『いつでもやめられる』というのは、その契約書自体がない場合だけや。そういうケースも人によりある。

契約書があり、契約期間が明記してあれば、その間は契約したものと見なされる。そして、その契約書に契約者自身が署名していれば、それに書いてあることすべてを認めたことになる。

そんなことは知らなんだ、説明を受けてないと言う人もまれにおられるが、法律は知らんかったからと言うて、それから逃れることはできん。知らん者が悪いとされるのが普通や。

また、今のところ業者にその説明責任を果たす義務までは課していない。

よって、販売店としては、その新聞代の請求は、法的には正当なものやということになる。

ただ、いくら正当やからと言うても、支払いを拒む者から実力行使で無理矢理金を払わせることはできん。そんなことをすれば強盗やさかいな。

その場合は、支払いを要求する業者側が裁判に訴えるしかない。それが法治国家での唯一の方法や。

裁判というと、金がかかりすぎて費用対効果を考えたらワリに合わんということで、たいていの販売店では、そうすることはないが、やり方によれば、それほどの費用をかけずに済む。

少額訴訟制度というのがそれや。

少額訴訟制度は60万円以下の金銭の支払いを求めるケースについて提起できる。

訴訟費用は、訴額(相手方に対して支払いを求める金額)が5万円毎に500円と、書面送達等のための切手代が3000円〜5000円程度で済む。

このケースは、その請求額が5万円以下やろうから、最大でも、5500円以内ということになる。

しかも、『訴訟費用』は原則として敗訴者の負担となる。

そのかけた訴訟費用は、このケースの場合、勝訴する可能性はかなり高いから全額返ってくるものと思われる。

但し、弁護士費用や、訴状の作成を司法書士に依頼した場合の費用などは『訴訟費用』には含まれない。原則として当事者各自の負担となる。

通常、これがあるために、新聞販売店も二の足を踏むわけやがな。

弁護士に頼らずにするのなら、それなりのメリットはある。その方法もそれほど難しいものやない。誰にでも可能なことやと、ワシは思う。

その手順を教える。

少額訴訟裁判は各地の簡易裁判所において行われ、原則として1日で審理を終え、判決が下される。

少額訴訟の訴状も、簡易裁判所に定型の用紙が用意されており、手続も簡単になっとる。

通常の裁判で提出する訴状は、法律に疎遠な一般人にとって、煩雑な記載事項が多いから、普通は弁護士に任せるしかない。

これに対して少額訴訟場合、簡単で迅速な処理をめざすという理念があるため、訴状への記載事項は法律の素人でも比較的簡単で分かりやすいものになっとる。

具体的には「誰が」「いつ」「どこで」「どこの誰と」「何をしてどうなったのか」また、それによって、相手方に対して何を求めるのかということが記載されとれば十分ということになる。

今回のケースやと、「販売店の代表者」「契約日」「その学生さんの氏名、住所」「契約どおり新聞を配達したが、○年○月から○年○月までの新聞代金が未払いで払ってくれないからその支払いを求める」という事柄が記載されとればええと思う。

それで、たいていの訴えが受理される。

しかも、少額訴訟では、そのときに記載についての要点などのアドバイスを、その裁判所の方から丁寧に教えてくれるケースが多く、教わったとおり必要個所を埋めていけば、訴状は簡単に作成することができると思う。

このケースでの証拠の提示は「契約書」と「支払い請求書」程度でええとは思うが、念のため、裁判所の方に相談すれば、その他の必要なものも教えてくれるはずや。

少額訴訟の判決は、原則として審理終了後、その日のうちに言い渡される。

あんたの話どおりやとしたら、勝訴する可能性は高いとは思うが、裁判のことやから、絶対という保証はない。

どんな裁判でもそうやが、裁判官の心証、判断によって違う場合があるさかいな。

今回のケースで言えば、その学生さんが主張すると思われる、勧誘員による「不実の告知」を裁判官が証拠として取り上げる可能性もゼロやないかも知れん。

裁判と名の付くものは、実際にやってみな結果は分からんということや。ワシに言えるのは、今回のケースなら有利なはずやという程度ということになる。

この少額訴訟は一人の原告につき、同一の簡易裁判所において、年10回までという制限があるというのを念のために言うとく。

いずれにしても、その判断は、あんたにできることやないから、販売店のトップに任せるしかない。実際に裁判所に行って手続きをするのは、弁護士に任せる以外は、その販売店のトップがする必要があるさかいな。

あんたにできることは、「この方法がありますよ」と提言することくらいやと思う。

ただ、トップの了解が得られたら、実際に訴訟する前に、その学生さんに「新聞代を支払って貰えないなら裁判にしますよ」と言うてみるのも手や。

それで、支払いに応じて貰えればええわけやさかいな。案外、効果的かも知れんという気はする。


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