新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.543 サービス品の返却義務の有無について


投稿者 太郎さん 新聞販売店従業員  投稿日時 2008.3.25 AM 1:18


新聞販売店で働いてる者です。

現在A新聞を購読中のお客さんの契約が、3月末終わりますが、その後4月から6月までA紙の継続契約があります。

その後は7月ー9月までY紙、その後10月ー12月までA紙の契約があるのですが、3月末に引っ越すので転居先では取れないとの事です。

実はこのお客さんは材料客で2回分の契約で6900円分のサービス品を上げています。

半分でも返却してくれないとうちの店も納得できないと言ったら返さないとの事です。

サービス品は返却義務がない。現状回復義務も民法にはあるようですが、どちらが優先でしょうか?

どうすれば良いでしょうか? アドバイスお願いします。


回答者 ゲン


『サービス品は返却義務がない』と言い出す客は、まれにいとる。

あんたと似たようなケースに『NO.491 原状回復義務にお客様が応じてくれないのですが』 というのがあるので、まずそれから先に見てほしい。

そうすれば、これから話すことが、より理解できるはずや。

確かに、一般常識として、安価なサービス品や記念品なら返還要求する業者もないやろうと思う。

この業界で言えば、新聞社名のロゴ入りゴミ袋などの「捨て材」と呼ばれとるものがそうや。

しかし、あんたのケースでのサービス品というのは、そういうものとは明らかに違う。

『6900円分のサービス品』をタダで何の見返りもなく渡す業者というのは、どんな業種であっても考えられんことで、あり得んことやさかいな。

一般の常識からも大きく逸脱する。

誰がどう見ても、その『2回分の契約』をする条件として渡された物やというのは歴然としとる。

今回の場合、引っ越しをするということやから、それを理由にしての契約解除は仕方ない。

それについては、あんたの店でも異論はないようや。

客の中には、これについて勘違いしている人が結構多く、契約解除をすれば、すべての責任から逃れられると思うとるフシがある。それで貰うた物もチャラになると。

そのサービス品を渡す際、あんたの所の勧誘員がどう言うて渡しとったかということも、その客が勘違いした大きな原因やと考えられる。

「3ヶ月契約でしたら、これだけのサービスをお付けしますので」と言うてのことなら問題ないが、「このサービスは別ですので」とか「これは気持ちなので受け取ってください」と言うてたら微妙なことになる。

そのサービス品が、契約の条件付きの物ではなく、単なる譲渡品として渡された物なら、どんなに高価なものでも、返還義務がないのは確かや。

また、「そんなサービスは、そっちが勝手にしたことで、オレが寄越せと言うたもんやない」と開き直る客もおる。

その客はそれらを根拠に『サービス品は返却義務がない』と主張しとるのやないかと考えられる。

まあ、それでも、この新聞購読契約の場合は、誰が見ても『6900円分のサービス品』は『2回分の契約』をするための条件のもとに渡されたと判断する人の方が多いとは思うがな。

営利目的の業者、勧誘員が何の見返りもなく、そんな高価な譲渡品をタダで渡すはずがないと考えるのが普通や。

そして、たいていの人は「契約を解除されるのでしたら、その契約を全うすることを条件にお渡しした景品は返してください」と言えば、それに応じることの方が多い。

契約というのは、言えば約束事なわけで、それが何かの理由で守ることができんようになれば、その約束を守ることを条件に貰ったものは返すのが、人の道やと思う。

こういうのを条件付き契約という。新聞の購読契約の多くは、その条件付き契約なわけや。

ただ、それを言うても、それには応じられんと強固に主張する客も、まれにおるのも確かや。

ワシの経験上、こういうことを言う客は、確信犯というのが多い。

その客がどうかというのは分からんが、その引っ越しをすること自体を、かなり前に知っていて、その上で契約をしたというケースなんかがそうや。

当メルマガで『第32回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■拡張員泣かせの人々 Part1 引っ越し取り込み』という話をしたことがある。

このケースは詐欺のようなもので、引っ越しする前に拡材だけ貰うてドロンしたら終わりやと考えとるような、えぐい人間やった。

その客が『3月末に引っ越す』という理由は知らんが、一般的に言えば、その3月末に転勤するので引っ越すという人間は、そういうケースもあり得る。

その人間が転勤族なら、会社により1年近く前から、その引っ越しをすることを予想できていたというのは考えられるさかいな。

ワシが確信犯かも知れんと言う所以(ゆえん)がそこにある。

もし、そうなら、その景品を返さんというのは最初からの計画の内やから、通常の方法では、それを取り返すのは難しいやろうと思う。

それでも一応、『NO.491 原状回復義務にお客様が応じてくれないのですが』 で言うた説得は試みた方がええと思う。

「契約の解除は仕方ありませんが、このまま、継続して頂けないのでしたら、契約時にお渡しした景品はお返し願うことになります。お渡しした景品は、あくまでも、その契約を守って頂くための物ですから、それができないと断られる以上、そちらにその景品を受け取られる正当性は何もないはずだと思いますが」と。

加えて、あんたのできる最大の譲歩として「全部とは言いませんので、せめて半分だけでも返してください」と頼んでみることや。

その上で、民法第545条の原状回復義務というのを説明するわけや。契約が解除されると、双方、もとの契約する前の状態に戻す義務が生じるのやとな。

たいていは、そこまで言うたら、普通の常識を持った客なら素直に応じるはずや。

しかし、世の中には、ごくまれに、どうしてもそれが分からん、理解したくないという者がおるのも確かや。

そういう説得のできん客から、それを返して貰うには、裁判に持ち込むしか他に方法はなくなる。

裁判というても、このケースなら、少額訴訟制度というのがあるからそれを利用するという方法がある。60万円以下の金銭の支払いを求めるケースについて提起できる。

訴訟費用は、訴額(相手方に対して支払いを求める金額)が5万円毎に500円と、書面送達等のための切手代が3000円〜5000円程度で済む。

しかも、その『訴訟費用』は原則として敗訴者の負担となるから、勝訴すれば、『6900円分のサービス品』がまるまる返ってくるはずや。

それについての詳しいことは『NO.515 代金を回収するのは不可能ですか?』 にあるから、見て貰うたら分かると思う。

但し、その判断は、あんたの店の経営者に委ねるしかないやろうがな。

結論として、まずは「お願いします」と説得を試みることや。

それで、どうしてもだめなら、その販売店の経営者の許可を得て「少額訴訟裁判にしますよ」と、その客に言うてみるのも手や。だめな場合は、本当にそうするつもりでな。

因みに、そう言うと「脅かすのか」と反論する者もおるが、これを言うくらいでは脅迫罪には当たらんから心配する必要はない。但し、言動には十分気をつけなあかんがな。

最後に、裁判というのは、どんなに有利な事案でも絶対に勝訴するとは限らんし、どう転ぶか分からんというのは認識しとってや。

あくまでも、その返還を嫌がる客から、それを返して貰おうと思うたら、それしか他に方法はないということやさかいな。

それが、面倒で嫌とか、経営者の理解が得られん場合は、あきらめるしかないということになる。


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