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NO.546 新聞のメガ文字導入はどのように感じますか?


投稿者 M.T さん  投稿日時 2008.3.31 PM 9:24


ゲンさんいつも楽しく読ませていただいています。

ところで4月からの新聞のメガ文字導入はどのように感じますか?

自分は30代ですので、文字の大型化よりニュースの裏側や解説記事がスペースの都合で今より減らされたり、本数が減るのかと残念です。

ネットの氾濫する時代、高齢者が新聞購読の有料顧客層と経営判断され、拡販・差別化の機会とされるのであれば、拡張競争ガチンコ勝負のA紙・Y紙が横並びで取り組むのも疑問です。

ゲンさんの紙面文字拡大へのご感想・購読者の反応等ぜひお聞かせいただければ。


回答者 ゲン


『ところで4月からの新聞のメガ文字導入はどのように感じますか?』ということやけど、ワシ自身、今回と同じように文字を大きくしたというのは、2000年の12月に一度、経験しとる。

その折り、それまでより22・4%文字を拡大し、50年続いた15段組みを14段組みとしたことで、見やすさ、読みやすさが格段にアップしたとの触れ込みがあった。

それで、客が喜び拡張しやすくなったかというと、それほどでもなかった。確かに、その当初こそ、その話題性をネタにはできたけど、効果のほどはもう一つやったと記憶しとる。

その裏付けとして、それ以降、現実には新聞の購読数は伸びてないし、じり貧状態のまま減少傾向に向かい、今日に至っとる。

過去にも、1983年にそれまでの文字の26・5%、1989年には、さらにその18・5%拡大したということがあった。

そのいずれの時も、話題性があったのは、その当初だけのようや。結果は、横ばい状態が続いただけで、そのために目立って部数が増えたということはない。

この新聞業界が飛躍的に部数を伸ばしたのは、1950年代から1980年代初頭にかけてや。

そのとき、終戦直後の昭和22年(1947年)時、約1400万部やった新聞の総部数が、昭和60年(1985年)には、現在の購読数にほぼ匹敵する5000万部に到達していた。

最初に、新聞社が文字の拡大に踏み切った1983年は、その伸びにかげりが見え始めた時期と妙に符号しとると思う。

そう考えれば、その後、2度の文字の拡大、および今回のケースも納得できる。

何のことはない、その頃から、部数減の特効薬にはそうするしかないと考えていたことになる。何も今回が特に画期的というわけでもないわけや。単にそのやり方を踏襲したにすぎん。

安易と言えば、これほど安易なことはない。加えて、今回はその文字の拡大を「メガ文字」と呼称することで、流行に乗ろうとしとるのが見てとれる。

まあ、昔から他業種に比べて新聞各社には独自のセンスというものが感じられんかったが、これはまさしくそれを象徴しとるネーミングやと思う。

もっとも、あんたが『高齢者が新聞購読の有料顧客層と経営判断され』と言うとおり、新聞の購読層をその高齢者中心に置いたということであれば、それがベストと判断したのかも知れんがな。

高齢者の中には、その文字が大きくなるのを喜ぶ人もおる。ワシも実際に、そういう話をじかに聞くことがあるさかいな。

それでも、新聞社の言う「老眼鏡がいらない」というほどやないと思う。軽度の老眼の場合やと、そう言えるかも知れんがな。

単に、今までよりは大きくなったというのにすぎん。それに慣れてくれば、結局は同じことやと思うがな。

そして、今の新聞社のやり方やと、また数年後、同じように文字の拡大に走るのやないかという気がする。

ただ、今回の場合は、字が大きくなることによって体にも脳にもいいと謳っとる。これは今までになかった論法ではある。

以下にその記事があるから、その部分を抜粋する。


「メガ文字」がひらく新聞の新時代 より抜粋


大きな文字で脳活性化 疲れ目防止も
 
 大文字は目にやさしいだけでなく、体にも脳にもよいことがわかってきた。
 慶応大学医学部眼科の坪田一男教授は「文字が大きくなるにつれて疲れ目(眼精疲労)になりにくくなる」と語る。
 同教授によると、文字を読んだり、パソコンに向かったりした時の疲れ目の原因の74%は眼球の表面が乾燥するドライアイだ。小さい文字の場合、目を見開いて判読しようとするため、まばたきの回数が減少する。まばたきの減少で眼球表面が乾き、ドライアイになりやすくなるという。
 
 坪田教授は「加齢によってドライアイになりやすくなる。その意味でも大きい文字は目によい。部屋が暗くても同様なことが言えるので明るいところで文字を読む習慣を」と強調する。
 「大きい見やすい字は肩こり、疲れ目などの不定愁訴のほか、イライラ感を減らす効果がある」と指摘するのは、文字の大きさなどが心理的にどんな影響を及ぼすかを研究する産業技術総合研究所上席研究員の佐川賢さん。
 文字が大きくなると文字情報を正確に判断する割合は向上し、理解度や満足感も高まっていくと考えられる。
 
 大きな文字による刺激が脳を活性化するという報告もある。
 脳科学を教育、発達などに生かす研究を進める日立製作所フェローの小泉英明さんは、「ある老人ホームで文字も読めないと思われていた認知症のお年寄りに、字を大きくしたり、老眼鏡の度を調整したりして文章を読ませる学習療法をしたところ、症状が著しく改善した。よく見えるということがいかに脳の活性化に重要であるかがわかる」と語る。


これについては、それなりに説得力はありそうやから、営業トークには使えると思う。

『拡張競争ガチンコ勝負のA紙・Y紙が横並びで取り組むのも疑問です』というのは、昔からそうやで。

一見、新聞社同士、熾烈な戦いをしとるように見えるが、お互いを潰すことまでは考えてない。A紙・Y紙は最近、特にその傾向が強いと思う。

言えば、各論対立、総論結託というところやな。

昔から新聞各社は、公正取引委員会のような外圧に対しては、一致団結して戦うという姿勢があった。

2年前にアンケートを取ったことのある当メルマガでの『第85回 ■新聞特殊指定について』 で言うてたのがええ例や。

このとき、公正取引委員会が、真剣に新聞特殊指定の見直しを検討しとるということで、新聞業界は大変な騒ぎになった。

新聞各社は、新聞特殊指定が廃止されると致命的なことになるということで、新聞各紙、一斉に、それを阻止しようと共同して大論陣を張った。

後に、このときの協力体制は尋常でなかったという話も漏れ聞こえてきたほどや。結果、その運動が功を奏したのか、新聞特殊指定の見直しは避けられた形になった。

この一時でも分かるとおり、新聞各社には、ええ意味でも悪い意味でも協力体制がいつでも組めるということがある。

その根拠として、お互いがお互いのことを、けなしたり批判したりして潰し合いをするようなことは、まずないさかいな。

それが新聞社から悪い膿が出ん一因にもなっとると、ワシは思うとる。

新聞社同士の関係を分かりやすく言うなら、プロ野球の球団同士のそれを考えたらええ。

お互い敵としてペナントレースは戦うが、組織全体を守ろうとするときには結束する。それと似たようなものやと思う。

ただ、あんたの懸念する『文字の大型化よりニュースの裏側や解説記事がスペースの都合で今より減らされたり、本数が減るのかと残念です』というのはそれほど心配せんでもええと思う。

今までも、そうやったが、字が大きくなって情報が減ったということはないさかいな。その分、紙面が増えてきたというのはあるがな。

そして、これからもその傾向に変わりはないと考える。

この字を大きくするというのは、メリットばかりやなく、購読者に違和感を与えることになるというマイナス面も新聞社は考えなあかんと思う。

このサイトでワシが良く言うてることに、長期購読者が長く取っている理由の大半が読み慣れとるからやというのがある。

それが、字を大きくすることで紙面の感じが一新されれば、何か違う新聞を読まされているような気がする人もいとるのやないかと思う。

ヘタをすると、その長期読者をも逃がす結果になるという気がするのやけどな。

まあ、それも、他紙がすべて横倣えになれば、結局は今までと同じやろうがな。

それよりも、あんたのような世代の人に懸念を感じさせることの方が、これからのことを考えればマイナスになるような気がする。

より新聞離れが進行するのやないかと。

ただ、これも企業努力をしているという点では、それなりには評価はできるが、あまりにも芸がないというのが、ワシの正直な印象や。

どこか視点が狂ってきとるとしか、ワシには思えんのやけどな。きつい言い方かも知れんが。

最後に、客の反応は、実際にそうなってからしか分からんと思う。これからやな。


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