新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.553 S(無代紙)の要求について


投稿者 H.Sさん 新聞販売店専業員 東京在住 投稿日時 2008.4.11 PM 7:39  


先だって質問したH.Sです。

ところでまた質問なのですが、東京に引っ越ししてこられるお客様の中で、関西方面からの方々は、転居通報で来ているにも関わらず、S(無代紙サービス)を要求してきます。

どうやら関西ではSが多いようですね。

東京ではSは、後バクや前バクに匹敵するものだとの認識でおり(私の周りの人達では)とても転居通報で来たお客様には、そんなサービスは出来ません。(ライバル誌も同様)

私の店も紙が余っていないとはいいませんが、関西はSをしても、配達に問題が生じる畏れが全くないくらい、予備紙を取っている販売店が多いのでしょうか?


回答者 ゲン


『どうやら関西ではSが多いようですね』ということやが、多いかどうかは、確かなデータがあるわけやないけど、S(無代紙サービス)というのは、ワシらの方ではサービスの一つとして広く認知されとるものや。

もっとも、その販売店主次第で、そのS(無代紙サービス)主体にするか、拡材主体にするかの方針は別れとるようやがな。

いずれにしても、どちらか一方だけのサービスというのは少ないようや。

この傾向は、関西に限らず全国的なものやと思う。

東京の方でそのS(無代紙サービス)がないとすれば、その方が業界全体からすると稀少なことやないかな。

S(無代紙サービス)主体ということで言えば、全国紙よりも、ブロック紙、地方紙の方がより顕著に存在する。拡材中心にしとる新聞販売店の方が圧倒的に少ないと思う。

少なくとも、このサイトに情報を教えて頂く新聞販売店の方々からは、そういう報告が数届くことが多いさかいな。

もちろん、ワシには、どちらがええとか悪いとかというのは分からん。

新聞販売店の経営者の判断であり、客のニーズでそうなるということやないのかな。

ただ、そういう地域で生活していれば、そのS(無代紙サービス)というのが、当たり前という感覚になるから、引っ越してもその要求になるのやろうと思う。

苦言になるが一言。

あんたの『そんなサービスは出来ません』という文章からは、それを要求する客の方に非がある、もっての外や、というニュアンスが伝わってくるが、もしその気持ちが心のどこかにあるのなら、そういう考えはあまり表に出さん方がええで。

人間は、誰しも自分の周りに起きていることが正しく当たり前、また自分の経験がその世界のすべてという考え方に陥りやすいということがある。

ワシにしても、ハカセに誘われて一緒にこのサイトを始める前までは、この道、10年の経験と20数年の営業経験があったから、知らんことはないとまで豪語していたし、自惚れてもいた。

ハカセに対しても、聞いてくれれば「何でも教えてやる」と、思い上がってたさかいな。

しかし、その考えは一変した。

理屈では、この業界は千差万別いろいろあるとは知っていたが、実際に多くの業界関係者の方々からの様々な情報を知るにつけ、自分の知識や思い込みの程度の低さにショックを受けたもんや。

まさに、「井の中の蛙、大海を知らず」やった。

特に、この業界は、地域性というものが色濃く出る仕事やさかい、どんなことでも一概にこうやとは決めつけることはできん。

単に、その地域、その販売店ではそうやというだけのことでな。

せやから、あんたも関西、あるいは他の地域では、そうなんやなという程度の認識に止(とど)めといて、それを要求されるのは非常識で嫌やという素振りは見せん方がええと思う。

客は、そういう雰囲気というのは敏感に感じ取るから、留め押しの段階になったら、その客に逃げられるおそれがあるさかいな。

「まことに申し訳ありませんが、こちらでは、どこともそういったサービスはしていませんので」といかにも申し訳なさそうに断る方がベターや。

『私の店も紙が余っていないとはいいませんが、関西はSをしても、配達に問題が生じる畏れが全くないくらい、予備紙を取っている販売店が多いのでしょうか?』

これについては、予備紙と言えるのかどうかは分からんが、押し紙、積み紙の類で新聞が余っとるのは確かや。

予備紙というのは、業界では、その取り扱い部数の2%までと決められとるが、押し紙、積み紙となると、10%程度あるのが常識の範囲やさかいな。それ以上の所も多いと聞く。

S(無代紙サービス)を使うのは、一つには、それを捌(は)かすという目的もあるやろうな。

押し紙、積み紙に対して、補助金や助成金を貰うとるとしても、金のかかっとることには変わりはないし、どのみち、古紙回収業者に直行するのなら、それをサービスに使えという発想になるのやと思う。

そちらの東京の方で、それがないというのは、おそらくは、新聞社からの通達があるからやと考える。

S(無代紙サービス)自体は、景品表示法では値引き扱いとされ違法扱いにはならんが、新聞特殊指定の違反行為にはなる。

その地域の新聞各社にとっては、景品表示法よりも、その新聞特殊指定の違反行為で摘発される方が怖いということやと思う。

2006年に問題となった、新聞特殊指定の見直し騒動では、結局、保留ということになったが、いつまた、それが再燃せんとも限らん微妙な状況にある。

万が一、新聞特殊指定の見直しということになれば、再販制度という、現状の新聞を守っている唯一の仕組みが崩壊すると考える新聞社は多い。

ただ、拡材サービスにしても、景品表示法という法律もあるわけで、前回の相談で、あんたが言われてたようなサービス量やと、完全にそれに抵触する。

サイトに届く情報でも、関東の方の拡材量は、全国的にもトップクラスと言えるくらい多いようや。あんたの言う『後バクや前バク』のひどさというのも目立つ。

しかし、そうでありながら、平成14年以降、新聞業界は、その景品表示法違反に問われたというケースはない。少なくとも、それに関した公正取引委員会の報道発表は見当たらんさかいな。

もっとも、それやから大丈夫とは言い切れんがな。違法なことには変わりないんやから、摘発する気になれば、いつでもできる。

ただ、それはS(無代紙サービス)についても同じで、こちらの方は、過去にも新聞特殊指定違反として指摘、摘発されたという記録はない。

もちろん、その両方の事実を公正取引委員会が知らんはずはない。その証拠も掴んどるはずや。

何しろ、全国に900名ほどもいとるという監視モニターから、逐一、その情報と状況証拠が報告されとるのやからな。

勧誘員の多くは、その監視モニターの正体などは知らんから、そこでも、えげつない勧誘をする者は平気でする。当然、そのすべてが報告されることになるわけや。

彼らは、ほぼボランティアでありながら、実にこまめに報告しとるという。その率、常時95%以上やという話や。

それぞれの地域の新聞社、新聞販売店では、どちらの危険性を重視するかということなのやろうと思う。それによって、その方法が違うてきとるのやないかな。

本当は、景品表示法に定められたサービスに止め、S(無代紙サービス)は一切せんというのがベストなのやが、なかなかそうはできん所もあるのやと思う。

もちろん、それらの法律を堅守しとる販売店も多いがな。結局のところ、いろいろやと言うしかないわな。


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