新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.558 飛び込み勧誘全面禁止の新聞報道について


投稿者 Jさん  投稿日時 2008.4.18 AM 10:44


すでにご存じかもしれませんが、15日のA新聞の朝刊の一面に、次の記事がありました。

▼飛び込み勧誘全面禁止、高齢者保護狙い秋田で条例素案
http://www.asahi.com/life/update/0414/TKY200804140239.html

▼Yahoo!ニュースでは
高齢者宅への訪問販売禁止=悪質業者排除で条例検討−秋田県議会
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080415-00000058-jij-pol

この記事を一面に持ってくるのは、新聞社として、当然と言えば当然ですが。

私は特に、その記事にある「特に問題の大きい商品・サービスに規制対象を絞るべきだ」
というフレーズが目に留まりました。

仮に、規制対象となる業種を指定することになったならば、特殊指定に含まれているような新聞であれば、まっとうな商品であることは、誰の目にも明らかですから、安泰となるでしょう。

しかし、売られている商品がいくらまっとうでも、売り方に問題があったなら、これはやはり、規制をするべき、という議論がどこからか上がってきてもおかしくないと言えるかもしれません。

これがもし、評判の悪い関東での話だったらどうなるかと考えると、新聞の勧誘においても、いかに普段から良識のある営業をしていないといけないかということが、当事者の方々も認識できるのではないでしょうか。


回答者 ゲン


ワシもハカセもその記事のタイトルを見て少なからず驚いた。

『飛び込み勧誘全面禁止』というのは、ワシらのように訪問営業で生計を立てとる者にとっては、かなり衝撃的な文言やさかいな。

いくら新聞のタイトル記事が、10文字以内の制約のもとに集約して表現された結果とはいえ、思わず「ほんまかいな」と目を疑うたくらいや。

以前、このQ&Aの『NO.169 新聞勧誘が来ないようにする方法はありますか?』の中で、


拡張員が、常識的な範囲内で行う営業行為は、法律的にも認められとる。立派な職業としても成り立っとるもんや。

何でもそうやが、合法的に行われているものは、どんな力や圧力を持ってしても、それを阻害することはできん。阻害の方法次第では、その行為自体が営業妨害に問われることもある。新聞の勧誘が法律違反やということにならん限りはな。


と、言うてたが、ほんまに、法律でそうなるのやとしたら洒落にならん。ワシも、まさか、そんなことにはならんやろうという思いで、そのときには安心して、そう言うてたわけやしな。

それが現実になったとしたら、ワシらにとっては大変な問題になる。

まず、その記事の内容を先に紹介する。


飛び込み勧誘全面禁止、高齢者保護狙い秋田で条例素案
2008年04月15日03時00分
http://www.asahi.com/life/update/0414/TKY200804140239.html より引用


消費者が求めていないのに訪問などで商品を勧める「飛び込み勧誘」を禁じる全国初の条例が秋田県議会で検討されている。悪質商法から高齢者らを守る狙いで、他の自治体にも影響を与えそうだが、関係業界は「営業できなくなる」と強く反発している。

 条例は「不招請勧誘禁止条例」。高齢者を狙った投資詐欺事件などの被害が多発していることを受け、自民党を含む超党派の県議らが秋田弁護士会と協力して条例案を詰めている。今後、一般から意見を聴いた上で、年内にも議員提案で成立させ、早ければ09年度からの施行を目指している。

 素案によると、65歳以上の高齢者のほか、未成年者など「判断力不足」とされる消費者には、あらゆる商品・サービスについて、事前の求めがない限り、訪問、電話、ファクス、電子メールでの勧誘を禁止。また、投資信託、株式、変額年金保険などの元本保証のない金融商品については、すべての消費者に対する飛び込み勧誘を一律に禁止する内容になっている。

 「不招請勧誘拒否登録制度」も導入する。金融商品以外の商品・サービスについて、飛び込み勧誘禁止対象の高齢者などではなくても、住所や電話番号を県に登録すれば、登録者に対する飛び込み勧誘が原則禁じられる。登録者は、玄関先などにステッカーを張ることもできる。

 違反した業者には、県が勧誘の禁止や業務の停止などを命じることができ、応じなければ、2年以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。

 国の制度では、金融先物取引法(現・金融商品取引法)が05年7月から、投機の性格が極めて強い金融先物取引に限り、飛び込み勧誘を禁じている。訪問販売などのルールを定めた特定商取引法や一部自治体の条例には、勧誘をいったん拒んだ消費者への再勧誘を制限する規定があるが、初回の接触は認めている。

 訪問や電話でのセールスに頼る金融業界や訪問販売業界などは、飛び込み勧誘禁止の動きが広がるのを懸念。「特に問題の大きい商品・サービスに規制対象を絞るべきだ」などと修正を求めている。

■不招請勧誘禁止条例(素案)骨子

●高齢者、判断力不足の人に対する飛び込み勧誘を一切禁止

●元本保証のない金融商品の場合、どんな人にも飛び込み勧誘を禁止

●勧誘を受けたくない県民の登録制度を導入

●業務停止処分への違反には2年以下の懲役または100万円以下の罰金


というものや。

これは、秋田県での条例案ということやが、万が一、これが制定されれば、一地方の法律ということだけでは済まんやろな。

全国に波及するのは必至やと思う。

条例というと、法律の中では何か軽く扱われとるような印象を持つ人も多いかも知れんが、そんなことはない。

ある意味、刑法以上の拘束力を持つものやと考えてもええくらいや。

このサイトの法律顧問をして頂いている法律家の今村英治先生も『NO.108 近所で販売店員が逮捕されました』の中でのコメントで、


法律は一般法より特別法が優先します。あいまいな刑法を適用するより具体的に訪問販売の禁止行為を定めた特定商取法を適用するのは当局としてはもっともなことです。根拠がハッキリしないと逮捕状も出づらいです。


と、言うておられたことからも裏付けられる。

『高齢者、判断力不足の人に対する飛び込み勧誘を一切禁止』『元本保証のない金融商品の場合、どんな人にも飛び込み勧誘を禁止』というのが、その狙いやということのようやが、それやと、現在でも『国の制度では、金融先物取引法(現・金融商品取引法)が05年7月から、投機の性格が極めて強い金融先物取引に限り、飛び込み勧誘を禁じている』ということになっとるのやから、それで対応できるのやないかという気がする。

『高齢者、判断力不足の人』というのを、どういう基準でそう判定するのかは知らんが、認知症患者への勧誘ということなら、現行でも『法定後見制度』というのがあり、法定後見人の判断で、そういう勧誘により結ばれた契約は無効にできるわけや。

その程度次第で、当然やが詐欺罪にも問える。

特別に、その条例が必要やとも思えんのやがな。

これは、現在、国会で審議中の『特定商取引に関する法律』の改正案の影響が強いものやという気がしてならん。

その詳しい内容は、当メルマガ『第180回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■『特定商取引に関する法律』の改正への動きについて』 を見て頂ければ分かると思うので、ここではその説明は省く。

ただ、骨子案にある『勧誘を受けたくない県民の登録制度を導入』なんかは、その特商法の改正案を取り入れたものやと言えると思う。根本は同じものやないのかと。

また、これなら、世論の多くを味方につけられるという計算もあるやろうと思う。それに反対するのは、その関連の業界しかないということでな。

確かに、ワシはその訪問営業する側の人間として、この記事を見とるから「堪忍してや」という気になるのは否定せん。とんでもないことやとも少なからず考えとる。

しかし、その営業を30数年に渡って続け、人生の大半を費やしてきた人間として言わせて貰えば、そうすることのプラスもあるかも知れんが、社会的なマイナスも、相当大きなものになると覚悟せなあかんと思うのやけどな。

日本を代表する産業の自動車業界などのセールスは、その飛び込み営業が主体なわけやし、建築業界、不動産業界なども、その依存率はかなり高い業界や。

金融業界、とりわけ銀行などは預金獲得のための勧誘営業も表にはあまり表れとらんけど、かなり過激な競争が繰り広げられとるという。

他にも、証券業界、保険業界、物品訪問販売業界など、その関連業界というても、相当多岐に渡る。その中には、当然、新聞業界もある。

『飛び込み勧誘全面禁止』というのは、それらすべてに大きく影響するわけや。

現在は、個人への飛び込み勧誘禁止ということやが、その法律が制定されれば、その個人に対してのものが、企業や団体へと拡大解釈され適用されるようになるのは目に見えとる。

それが法律やと思う。すると、どうなるか。

一般の営業会社ですら、満足な営業行為ができんようになる可能性がある。その相手先の許可を得てからしか訪問できんようになるのやさかいな。

それでは、資本主義の経済活動は危うい状態になると危惧する。

そうなれば、それらの多くの業界の衰退は避けられんのやないかと考えられる。必然的に、それに関係している多くの人が職を失い、今よりも深刻な不景気に突入すると予想される。

これは、突き詰めれば、そこまで大きな問題に発展する可能性があるものなわけや。

それでも、「そんな勧誘は迷惑やから賛成や」という意見が多いやろうというのは予想される。実際、それで困っておられる、迷惑やと感じておられる人も多いさかいな。

また、悪質な勧誘業者を排除したいというのも分かる。ワシもそれには賛成や。せやからこそ、このQ&Aをやっとるわけやしな。

本来なら、関連業界の言うとおり『特に問題の大きい商品・サービスに規制対象を絞るべきだ』とは思うが、その線引きは難しいやろうと思う。

確かに、あんたの言われるとおり『特殊指定に含まれているような新聞であれば、まっとうな商品であることは、誰の目にも明らかですから、安泰となるでしょう』と、考えるのが普通やろうが、必ずしもそうとも言えんかも知れん。

例えば、この新聞の勧誘一つとってみても、『特に問題の大きい』ものに該当するかどうかというのは、誰がどう判断するのかということになる。

あんたの『売られている商品がいくらまっとうでも、売り方に問題があったなら、これはやはり、規制をするべき、という議論がどこからか上がってきてもおかしくないと言えるかもしれません』と言われるとおり、新聞とて例外やないということにもなりかねんと思う。

それには、悪質な勧誘員が存在し、悪質な営業が行われとるのは確かなことで、否定できん事実やさかいな。それで、迷惑、被害を被っとる人も実際におられる。

しかし、当然やが、それがすべてやない。

ルールに則って真面目に営業しておられる勧誘員の方が圧倒的に多いのも、また間違いないのない事実や。そのデータを示せと言われれば、いつでも示すことはできる。

ただ、この問題は、その視点の違いで大きく変わってくるというのがある。言えば、立場の違いというやつやな。

そこで、ワシらは、読者の方々に、この問題について広く意見を募集しようと考えた。

正直、ワシらとすれば、怖い結果になるのやないかと予想されるが、それはそれや。意見は意見として真摯に聞くべきやと思う。

これは、当サイトとしては、久しぶりのアンケートということになる。

ただ、意見を募集すると言うても、ここで示した情報だけでは少ないやろうし、判断も難しいと思うので、次回、4月25日発行予定の『第194回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■飛び込み勧誘全面禁止条例案についてのアンケート募集(仮題)』の中で、この問題に関して、いろいろな角度から見た情報を提示したいと考えとる。

判断は、それからで十分や。

しかし、現在、もうすでに意見をお持ちという方は、これからすぐにでも受け付けるので寄せて頂きたいと思う。


アンケート依頼内容(案)

1.秋田県の飛び込み勧誘全面禁止条例案について(賛成・どちらでもない・反対)

2.関連業界の特に問題の大きい商品・サービスに規制対象を絞るべき(賛成・どちらでもない・反対)

3.これについての意見

ご意見は、下記のメールボックスからお願いしたい。


現在、募集期間は特に決めてないが、それも、そのメルマガの中で知らせるつもりや。

最後に、今回、こういう問題を提示して頂いたことに感謝したいと思う。


書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売中


ご感想・ご意見・質問・相談・知りたい事等はこちら から


Q&A 目次へ                                 ホーム