から新聞勧誘・拡張問題なんでもＱ＆Ａ
NO.56 小１女児誘拐殺人事件について
投稿者 オオヤマさん ３５歳 会社員 投稿日時 2005. 1. 5 PM8:45
はじめまして。ゲンさんのおもしろい語り口が好きでよくこのホームページを拝見させて頂いてます。
私には８歳と１０歳の娘がいます。そのせいもあって、N市の小１女児誘拐殺人事件のことが気がかりでよくニュースなどを見ていたのですが、昨年の暮れ、ついに、その犯人が逮捕されたという報道に安堵しました。
しかし、同時にその犯人が新聞店の従業員だったということに、少なからずショックを覚えました。というのは、私の取っている新聞がそのM紙だったのでよけいに複雑な思いでした。
もちろん、私の住む地域とその事件の現場地域とは離れているので、何の関係もないとは分かっているつもりですが、やはり複雑です。
私にはこの犯人をどうしても許せることは出来ません。被害者のご両親のお気持ちを察すると、自分のことのように心が痛みます。この犯人は極刑になるとは思いますが、それでも、なぜかすっきりとはしません。
ゲンさんの新聞関係者というお立場から、この事件についてコメントをお聞かせ願えないでしょうか。それと、こういう事件がこれからも起きることが予想されるのかも知りたいのですが、よろしくお願いします。
回答者 ゲン
大変な質問やな。責任ある回答が出来るかどうか自信もないし、誤解が生じたらあかんと思うから、最初に、ワシ個人の意見として言わせて貰うということを断っておく。
このホームページを良う見ていてくれているのやったら、ワシが無類の子供好きやということは知ってくれとると思う。
その子供を手に掛けた犯人をワシが許せるわけがない。ワシはこういう奴を人間とは認めん。人間に出来る所業やない。
ワシの犯人に対するコメントをと言うことなら、この犯人はこの凶行に及んだ瞬間から人間であることを放棄した奴や。そんな奴を人間として扱う必要はないと思う。
しかし、法律はそんな奴でも人間として裁く。やりきれん思いはワシもあんたと一緒や。
子供の命は何物にも代え難いもんや。人類の未来、そのものと言うてもええ。一人の子供の命を絶つということは、そこから未来へ繋がる多くの命の存在がなくなるということや。
その中には、将来、どんな素晴らしい人間が含まれとるか計り知れん。少なくとも、そういう可能性がある。子供を大事にするということは、未来を守ることに繋がる。
そして、この犯人が、新聞販売店の従業員やったというのも、心の痛むことや。しかし、これだけは、はっきり言えるが、その仕事と事件はまったく関係ない別物や。
ここで、ワシが常に口酸っぱく言うとる言葉を思い出して欲しい。職業に、貴賤なし、悪者なしや。悪者が職業を選ぶんや、ということを。
世の中、どんなことをしていても、悪い奴はどこにでも存在する。犯罪のない仕事や社会は皆無やと思う。少なくともワシは知らん。せやから、この犯人が新聞販売店従業員やったというのは、たまたまのことや。
こういう男は、どんな仕事をしていたとしても、こういう犯罪を犯していた可能性が高いと思う。しかし、世間は、こういう事件を起こすと必ず、その職業と犯罪を結びつけて考えようとする。
今回で言えば、新聞店従業員の仕事がその犯罪の温床であるかの如く、したり顔で言う何も知らん無責任な人間がおる。
その人間が、その仕事を知り、その内情を詳しく分かった上でなら、まだ話を聞く価値もあるが、多くは魔女裁判的に言うてるだけに過ぎん。
確かに、ワシら拡張員も含めて新聞販売業界は、その労働条件から人材難になりやすいということもあり、募集に関しては甘い面があるのは否めんということは認める。
実際、いろんな人間が集まるのも事実や。このホームページでもそれは言うてる。しかし、それが、すぐ犯罪と結び付くのかと言うとそんなことはない。
むしろ、逆の場合が多い。実際、この仕事で更正したという人間も何人も見て来て知っとる。もっとも、そういうことは、深くこの業界と接しとる人間でないと分からんことなんやけどな。
新聞屋と言うと、少なからず侮蔑を含んだ見方をされるのが、この業界やという現実がある。ある程度は、仕方ない面があるにせよ、この犯人の仲間のように扱われる謂われはない。
次元が全く違うことや。あくまでも、この犯人が特別で異常なんやからな。一人の異常者の行いを持って、その職業を誹謗中傷するべきやない。もちろん、多くの人がそれは承知していることやが、悲しいかな、中には、それが分からん人間もおる。
ワシら拡張員は、そういう誹謗中傷の的に常に晒されとるから良う分かる。そういう攻撃を声を大にして言う人間は、正義を主張しとるつもりやろけど、実は、何の罪もない人間を苦しめる加害者になっとるということも心しとかなあかんと思う。
この犯人個人への攻撃は、いくら言うてもええ。それだけのことをしとる。しかし、それ以外の人間まで同列に扱うのは、あまりにも心ない仕打ちやないやろか。
勘違いせんといて欲しいが、これはあんたに言うてるんやない。実は、あんたからこういう質問が来る前に、ワシも正月の間、インターネットでこの事件について見ていた。
すると、あるサイトでこの新聞配達店の写真や所在地が書かれ、そこの経営者の顔写真まで載せられていた。あたかもその経営者にも責任あると言わんばかりの論調やった。
ワシはその時、悲しいまでの憤りを感じた。管理責任を問うという正義という名の下に行われた非道な行為やと思う。
管理責任の意味が分かっとるとは思えん。経営者がその従業員を管理する責任があるのは、あくまでもその仕事上でのことや。
この事件は誰の目から見ても明らかやが、業務上のトラブルが原因やない。個人の性情の問題や。経営者と言えども、個人の領域に踏み込んで管理することなど出来ん。まして、事件はこの犯人の休日に行われたと言う。
この犯人が、そういう事件を起こそうとしていた以上、どうにもならんかったことや。現に「誰でも良かった」と自供したと言う犯人の言からも分かる。
誰かこの経営者の立場で、この事件を考えた者がおるやろか。この経営者にしたら自分の店の従業員が引き起こしたということだけでも堪らんことやと思う。
実は、ワシは数年前、この辺りで拡張の仕事をしたことがある。せやから、ニュースにその地域の映像が映る度に気になっていた。
この販売店の経営者とは直接、面識はないが、評判はその当時から知っていた。ワシの知る限り悪い評判はなかったと記憶している。そういう悪い評判があれば、ワシらには必ず分かるからな。
この事件直後も、この事件解決のため、或いは子供たちの安全のため相当な運動をしていたと伝え聞く。善良な一市民であり経営者やったはずや。この店の他の従業員にしても同じや。
どんな理由があれ、罪もない者への攻撃や非難中傷は許されることやない。それは人間として恥ずべき行為やし、それで罪もない人間を傷つけとるということを知らなあかん。
「坊主憎けりゃ、袈裟まで」式の考えは感心せん。憎むべきはあくまでそれを引き起こした犯人や。その犯人に向けてなら、何を言うてもワシは何の文句もない。
日本全国、４５，６万人にも上る新聞配達店勤務すべての人の名誉において、断言する。こんな事件を引き起こしたのは、１００年以上もの新聞配達の歴史でも、この男くらいしか存在せん。
しかし、あんたの『こういう事件がこれからも起きることが予想されるのかも知りたい』ということやけど、それは、ワシにも分からん。ワシには、未来を見通す力はないからな。
ただ、新聞配達店の従業員が、これからも同様の事件を引き起こす可能性と言うことであれば、限りなくゼロに近いとは思う。
数字的なことでしか言えんが、去年、子供に対する犯罪行為は３０万件以上もあるが、新聞配達関係の人間で検挙、逮捕されたのはこの男しか、ワシは知らん。
多くの新聞配達店従業員は普通の真面目な人間や。事件があまりにも大きく衝撃的やから、どうしても、その背景に何かあるかの如く勘ぐる人間も多いが、それはない。
あんたも複雑やと言う背景にはそういう危惧があるのやろと思う。心配せんでも今、購読しとるM紙を続けたらええ。
これは、ワシの感想やが、今回のこの事件の報道はこのM紙が一番、真摯な報道をしとると思う。問題意識も十分感じられる。
ある意味、この事件の被害者は、女児のご両親、ご家族の次に、このＭ紙関係の人たちやないやろかと思う。どうしても、話題にされ、ええイメージは持たれんからな。
最後にもう一度言うが、憎むべきはこの犯人や。死を持ってしても罪が購われることはない。この男は、死しても尚、地獄の責め苦に遭うと信じたいと思う。
しかし、それ以外の人間には罪はないというのも重ねて言いたい。そして、その人たちを攻撃する前にちょっと想像力を働かせて考えて欲しい。自分と同じ職業、仲間がこれと同じ事件を引き起こしたとしたらと。
ただ、ワシら拡張員も含め、あらゆる新聞関係者がこの事件のことを風化させることなく教訓として心する必要はあると思う。二度と同じ事が起こらないようにするために。
今回、犠牲となられた幼い女児のご冥福を心よりお祈りしたいと思う。合掌。
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